第78話 強さを並べるだけでは、六人では戦えない
翌朝。
アリシアは。
昨日よりも。
少しだけ早く目を覚ました。
目を開ける。
天井。
薄い朝の光。
窓の外。
まだ。
完全には明るくなっていない。
鳥の声も。
遠い。
部屋の中には。
夜の冷たさが。
少し残っていた。
そして。
アリシアは。
目を覚ました瞬間。
今日のことを思い出した。
模擬戦。
六人で。
初めて。
実際に戦う。
昨日。
教官が言った。
最大出力ではない。
誰が強いかを見るのでもない。
六者輪郭記録。
それを。
使って。
組み方を試す。
それでも。
戦う。
戦闘。
動く。
判断する。
止める。
守る。
失敗すれば。
誰かの動きまで止めるかもしれない。
昨日まで。
紙の上。
できる。
できない。
怖い。
止める。
戻る。
そう書いていたものが。
今日。
実際に。
自分たちの身体へ。
返ってくる。
アリシアは。
布団の中。
指を。
少し握った。
『朝から固い』
足元。
ノアの声。
「起きてた?」
『あなたより先に』
「いつも?」
『だいたい』
「寝てる時もある」
『休息よ』
「寝てる」
『休息』
「同じ」
『違う』
いつもの。
やり取り。
でも。
アリシアの身体。
まだ。
少し固い。
ノア。
分かっている。
『模擬戦』
「うん」
『怖い?』
「うん」
『何が』
昨日。
最初の頃なら。
ただ怖い。
そう答えていた。
今は。
少し。
分けられる。
「自分が遅れて」
『ええ』
「誰かが危なくなる」
『ええ』
「止めるのが遅れる」
『ええ』
「名前を呼んでも、聞こえないかもしれない」
『ええ』
「あと」
少し。
言葉。
止まる。
『何?』
「役に立てないかもしれない」
やっぱり。
そこ。
ずっと。
残っている。
役に立つ。
必要。
六つ目。
戻った。
席。
ある。
名前。
呼ばれた。
仲間。
なれたらいい。
でも。
戦えば。
もっと。
はっきりする。
誰が。
何ができる。
自分。
どこまで。
できる。
もし。
自分が。
一番。
足を引っ張ったら。
『アリシア』
「うん」
『昨日、何を確認したの』
「止める条件」
『他』
「戻り方」
『他』
「できたこと」
『他』
「できなかったこと」
『では』
ノア。
静か。
『今日の目的は』
アリシア。
少し。
考える。
「勝つことじゃない」
『ええ』
「一番役に立つことでもない」
『ええ』
「六人で。どう組むか」
『そう』
「でも」
『何』
「負けたら、嫌」
『それは別に持っていていい』
アリシア。
少し。
顔を上げる。
『勝ちたいと思ってはいけないとは言っていない』
「うん」
『ただし。勝つために、昨日決めた止め方を捨てない』
「うん」
『役に立つために。三まで行かない』
「うん」
『怖くないふりをしない』
「うん」
『それができれば』
ノア。
少しだけ。
尾。
動く。
『今日は十分』
「百点?」
『始まる前から採点しない』
「昨日はした」
『昨日は昨日』
「便利」
『何が?』
「ノアの基準」
『柔軟と言いなさい』
アリシア。
少し笑う。
身体。
まだ。
怖い。
でも。
動く。
寝台から。
降りる。
◇
朝食。
祖父。
いつもの。
パン。
スープ。
今日は。
アリシア。
食べる速度。
少し遅い。
祖父。
気づく。
「訓練か」
「うん」
「昨日もだろ」
「今日は模擬戦」
「六人で?」
「うん」
「初めてか」
「うん」
祖父。
スープ。
一口。
飲む。
「誰が指揮する」
アリシア。
止まる。
「……分からない」
「決まってない?」
「たぶん。戦う前に決める」
「そうか」
「誰がいいと思う?」
「知らん」
「おじいちゃん」
「五人を知らない」
「昨日話した」
「少しな」
「火は」
「声が大きい」
「水は」
「細かい」
「風は」
「嫌味」
「土は」
「明るい」
「光は」
「無理をする」
「覚えてる」
「それだけでは指揮役は決められん」
「じゃあ」
「戦う本人たちで決めろ」
「うん」
「ただ」
祖父。
パン。
ちぎる。
「一番強い者が指揮をするとは限らん」
アリシア。
見る。
「どうして?」
「強い者が前へ出た方がいい時もある」
「うん」
「よく見える者」
「風?」
「かもしれん」
「正確な人」
「水かもしれん」
「でも」
祖父。
アリシアを見る。
「指揮する者が。全部を決める必要もない」
「全部じゃない?」
「六人いるなら」
祖父。
静か。
「六人分の目を使え」
昨日。
教官。
六人。
それぞれ。
違うところを見た。
レオの火。
広がり。
床。
手。
呼吸。
上。
六人。
見るところ。
違った。
「六人分の目」
「そうだ」
「でも、私は」
「何だ」
「影」
「それも目だろ」
祖父。
当たり前のように言う。
アリシア。
少し。
胸。
温かい。
「うん」
「食え」
「うん」
「冷める」
「うん」
『三回目』
「何が?」
『うん』
「ノア」
『食べなさい』
朝。
進む。
◇
学園。
教室。
今日は。
入った瞬間。
メリルが。
手を上げる。
「おはよう、アリシア」
「おはよう、メリル」
名前。
昨日より。
自然。
まだ。
少し。
意識する。
でも。
言える。
メリル。
すぐに。
顔を見る。
「緊張してる?」
「分かる?」
「少し」
「模擬戦」
「今日?」
「うん」
「六人で?」
「うん」
「楽しみ?」
「少し」
「怖い?」
「かなり」
メリル。
少し笑う。
「両方あるね」
「うん」
「何が怖い?」
昨日まで。
ノア。
教官。
仲間。
何度も。
聞かれた。
だから。
答え。
少し早い。
「私が遅れて、誰かが危なくなること」
「うん」
「あと。止めるのが遅れる」
「うん」
「あと。役に立てない」
メリル。
最後。
少し。
間。
「それは」
ゆっくり。
「今日、分かる?」
「何が?」
「役に立ったかどうか」
「戦えば」
「本当に?」
アリシア。
少し。
止まる。
「勝ったら?」
「役に立った?」
「負けたら?」
「役に立ってない?」
アリシア。
答えられない。
メリル。
机。
指。
軽く触れる。
「昨日、アリシアが言ってたでしょう」
「何?」
「できたことと。できなかったこと。分けるって」
「うん」
「なら」
メリル。
少し笑う。
「負けても、できたことあるかも」
胸。
入る。
簡単。
でも。
大事。
「うん」
「勝っても、できなかったことあるかも」
「うん」
「じゃあ、終わったら」
メリル。
「両方、聞かせて」
「怖かったも?」
「それも」
「疲れたも?」
「それも」
「誰かがうるさかったも?」
「それはたぶんレオ君でしょう」
アリシア。
少し笑う。
「まだ分からない」
「でも、たぶん」
「うん」
昨日。
火の人。
今日は。
レオ。
メリルも。
もう。
名前。
知っている。
少しずつ。
輪郭。
外にも。
広がる。
◇
午前。
戦術理論。
教師。
黒板。
『集団戦闘における指揮』
アリシア。
思わず。
顔を上げる。
今日。
まるで。
自分たちのため。
でも。
通常授業。
教師。
一般論。
「指揮官が全てを判断する」
教師。
教室を見る。
「これは理想的に聞こえます」
チョーク。
『一人の判断』
その下。
『情報集中』
「ですが」
次。
『遅延』
『見落とし』
『偏り』
「一人の人間が、戦場の全てを見ることはできません」
アリシア。
祖父。
六人分の目。
思い出す。
「優れた指揮官とは」
教師。
「全てを知る者ではありません」
教室。
静か。
「必要な情報を受け取り。誰の判断を信じるかを選び。決定する者です」
ノート。
書く。
『全部を見る人ではない』
『必要な情報を受け取る』
『誰の判断を信じるか』
教師。
続ける。
「また。小規模班では、固定指揮官がいない場合もあります」
アリシア。
少し。
筆。
止まる。
「状況に応じて」
『前方判断』
『後方判断』
『医療判断』
『撤退判断』
「それぞれ。最も情報を持つ者へ、一時的に判断を預ける」
昨日。
六人。
名前。
輪郭。
今日。
戦い。
「ただし」
教師。
声。
少し強く。
「判断者が変わるなら。誰の声を優先するか。事前に共有しておく必要があります」
アリシア。
大きく。
書く。
『判断者を事前に決める』
班練習。
題材。
『六人班。前方二名。後方二名。治療一名。探索一名』
誰が。
指揮。
トマ。
「一番強い人」
ミーナ。
「でも、一番前にいるなら全体見えない」
メリル。
「後ろの人?」
「後ろでも。前が見えないかも」
アリシア。
少し。
考える。
「一人にしない」
三人。
見る。
「どういうこと?」
メリル。
「前は、前にいる人」
「うん」
「後ろは、後ろの人」
「うん」
「危ない人がいたら、近い人」
「じゃあ、誰が最後に決めるの?」
ミーナ。
難しい。
全員。
同時。
違う。
混乱。
最後。
必要。
アリシア。
考える。
「全体を見てる人」
「それが指揮官じゃない?」
「……うん」
「でも、一人にしないって」
アリシア。
言葉。
探す。
「決める人は一人でも。見る人は六人」
メリル。
少し。
目を細める。
「六人分の目?」
「うん」
「それ、いいね」
セリア先生。
近く。
聞いていた。
「良い整理です」
アリシア。
少し。
緊張。
「今日、模擬戦ですか」
「……はい」
「使えそうですね」
「誰が指揮か。まだ」
「それも」
先生。
穏やか。
「戦う前に、話せばいい」
話す。
六人。
できる。
少しずつ。
アリシア。
頷く。
◇
昼休み。
今日は。
六人。
食堂の端。
大きな窓の近く。
昨日の空き教室ではない。
理由。
模擬戦前。
食べる。
休む。
それを。
教官から。
強く言われた。
「訓練前に会議しすぎて、昼食を減らすな」
そう。
記録官にまで。
書かれたらしい。
食堂。
生徒。
多い。
六人が。
同じ卓。
やはり。
視線。
集まる。
「今日、模擬戦らしいぞ」
「見学できる?」
「一部だけ公開だって」
「六神器全員?」
「たぶん」
「誰が一番強いんだろ」
「火じゃない?」
「光じゃないの?」
「闇、昨日すごかったって」
「でも戦闘なら別じゃない?」
強い。
一番。
周囲。
そう見る。
自然。
アリシア。
少し。
胸。
固くなる。
誰が。
一番。
自分。
比べられる。
でも。
今日の目的。
勝つこと。
だけではない。
「聞こえる?」
ミリア。
「うん」
「気になる?」
「うん」
「私も」
「ミリアも?」
「誰が一番強いって」
ミリア。
少し笑う。
「土って、あんまり一番って言われないから」
「嫌?」
「少し」
「でも」
ミリア。
フォーク。
野菜。
刺す。
「守る時は。私が一番になりたい」
アリシア。
見る。
「一番」
「うん」
「でも、比べる?」
「比べるというより」
ミリア。
少し。
言葉。
探す。
「守るって決めた時に。私がいるから大丈夫って思ってほしい」
強い。
一番。
意味。
違う。
自分。
影。
何。
自分がいるから。
何と思ってほしい。
まだ。
分からない。
「今日」
セレナ。
食事。
進めながら。
「指揮系統を決める必要があります」
フィン。
「食べながら会議しないって言われなかった?」
「必要事項だけです」
レオ。
「俺!」
すぐ。
手。
上げる。
「何がですか」
「指揮!」
「理由」
「声が大きい!」
五人。
少し。
沈黙。
フィン。
「否定しづらい理由」
ミリア。
笑う。
「聞こえるもんね」
セレナ。
「声量と判断力は別です」
「じゃあセレナ?」
レオ。
「私は情報整理に向いていますが、前方反応が遅れる可能性があります」
「フィン?」
ミリア。
「僕、確信ないと遅れる」
「ルシアン?」
アリシア。
白髪。
ルシアン。
少し。
考える。
「全体は見るけど。誰かが傷つくと、その人へ集中するかもしれない」
「ミリア」
フィン。
「前に出る」
「うん」
「アリシア」
全員。
少し。
見る。
アリシア。
身体。
固い。
「……私?」
レオ。
「影で広く見えるだろ」
「情報、多いと」
セレナ。
「処理が難しい」
「でも、基準点」
ルシアン。
「昨日までの訓練では」
アリシア。
少し。
考える。
六人。
配置。
自分。
基準復帰点。
一時介入。
全体。
見る。
でも。
指揮。
全部。
怖い。
「無理」
先に。
出た。
レオ。
少し。
驚く。
でも。
誰も。
責めない。
アリシア。
続ける。
「全部は、決められない」
「全部じゃなければ?」
ルシアン。
午前。
授業。
一人。
決める。
でも。
見る。
六人。
「最終判断だけ?」
アリシア。
言う。
「みんなが。見たことを言う」
セレナ。
すぐ。
理解。
「分散情報。中央判断」
「固い」
フィン。
「でも分かる」
ミリア。
「誰が中央?」
沈黙。
レオ。
「アリシア?」
胸。
強く。
鳴る。
「どうして?」
「基準点だから」
単純。
でも。
今まで。
戻る場所。
基準復帰点。
アリシア。
担当。
ルシアン。
「僕も、合うと思う」
「でも」
アリシア。
「怖い」
「うん」
ルシアン。
「だから、全部決めなくていい」
セレナ。
「前方判断はレオとミリア」
フィン。
「遠距離と索敵は僕」
ルシアン。
「負傷と継続判断は僕」
セレナ。
「全体状況整理は私」
全員。
アリシア。
「アリシアは」
ミリア。
笑う。
「みんなの声を聞いて。止めるか。続けるか。どこへ戻すか」
止める。
続ける。
戻す。
それ。
アリシア。
少し。
胸。
落ち着く。
「それなら」
「できる?」
レオ。
「……やってみる」
「よし!」
「声」
セレナ。
「今日は必要!」
「食堂です」
周囲。
何人か。
笑う。
「あの六人、仲いいな」
「作戦会議してる?」
「火の子、また怒られてる」
アリシア。
少し。
笑う。
今日。
自分。
中央。
全部ではない。
聞く。
決める。
戻す。
◇
午後。
第一戦術演習室。
今日は。
昨日より。
人が多い。
壁際。
見学席。
上級生。
教員。
記録官。
戦術科の生徒。
人数。
二十人以上。
公開範囲。
限定。
理由。
六神器。
初。
合同模擬戦。
噂。
広がる。
見学席。
ざわめき。
「闇の子が中央?」
「火が指揮じゃないんだ」
「白猫杖、後方?」
「六人で何と戦うの?」
演習室。
中央。
六人。
教官。
年配の男性。
今日。
説明。
「模擬戦」
黒板。
想定。
『防衛』
『制限時間十五分』
『訓練用魔導獣十二体』
『中央標柱を守る』
『標柱破壊で敗北』
『時間終了まで維持で勝利』
レオ。
少し。
顔。
輝く。
「十二!」
「喜ぶな」
教官。
いつもの。
「敵は三方向」
「三?」
セレナ。
「前。右。左」
「後ろは?」
フィン。
「現時点ではなし」
現時点。
その言葉。
全員。
少し。
気づく。
後から。
何か。
あるかもしれない。
「能力制限」
教官。
「昨日確認した安全域内」
レオ。
少し。
肩落ちる。
「最大火力なし」
「はい」
「ルシアン。治癒は訓練用損傷のみ」
「はい」
「ミリア。完全閉鎖壁禁止」
「はい」
「アリシア。二で停止」
「はい」
「フィン。仮説報告を省略しない」
「はい」
「セレナ。情報過多兆候で一時縮小」
「はい」
「判断役」
教官。
六人。
少し。
見る。
アリシア。
声。
小さく。
「全体継続と。停止。復帰は、私」
「他」
レオ。
「前は俺とミリア!」
セレナ。
「全体情報整理」
フィン。
「索敵と遠距離」
ルシアン。
「負傷と継続可否」
「よし」
教官。
「一つだけ」
六人。
見る。
「指示が間違うことはある」
アリシア。
胸。
少し。
固い。
「間違った指示を出した者を、その場で責めるな」
「はい」
「危険なら訂正」
「はい」
「止める」
「はい」
「続けられるなら続ける」
「はい」
「振り返りは後」
「はい」
全員。
返事。
見学席。
静か。
神器。
六人。
初。
模擬戦。
大きな。
期待。
でも。
六人。
今。
見る。
互い。
名前。
顔。
紙。
輪郭。
「配置」
アリシア。
初めて。
少し。
大きい声。
「レオ、正面」
「おう!」
「ミリア、右寄り前」
「はい!」
「フィン、左後方。広く」
「了解」
「セレナ、中央右」
「はい」
「ルシアン、後方」
「はい」
「私は、標柱」
中央。
標柱。
白い。
胸の高さ。
守る。
六人。
配置。
見学席。
ざわめき。
「闇の子、指示出してる」
「聞こえる」
「思ったより普通」
「何が普通?」
「もっと静かな子だと思ってた」
アリシア。
聞こえる。
でも。
今。
全部。
追わない。
前。
六人。
「開始!」
◇
魔導獣。
三方向。
動く。
正面。
四。
右。
三。
左。
三。
残り。
二。
どこ。
フィン。
すぐ。
「未確認二!」
レオ。
正面。
火鳥剣。
構える。
「来る!」
正面。
一体。
速い。
レオ。
斬る。
火。
小さく。
精密。
一体。
止まる。
二体目。
ミリア。
右。
土壁。
斜め。
進路。
変える。
「右、流した!」
フィン。
「左三、二列!」
セレナ。
水。
中央。
薄い膜。
動き。
「左先頭、速い」
アリシア。
影。
左。
伸ばす。
一体。
足。
絡む。
「左一、止めた!」
声。
出す。
フィン。
風矢。
止まった一体。
撃つ。
「一、落ちた」
連携。
できた。
見学席。
「今の速い」
「闇が止めて風が落とした」
「前だけじゃない」
アリシア。
嬉しい。
でも。
今。
次。
正面。
レオ。
「正面二、同時!」
ミリア。
右。
「こっち一体抜ける!」
どちら。
アリシア。
一瞬。
迷う。
レオ。
正面。
二。
自分で。
いける?
ミリア。
右。
一。
標柱。
近い。
「右、支援!」
アリシア。
影。
右へ。
でも。
その瞬間。
レオ。
正面。
一体。
火。
広げる。
二体。
同時。
止めようとする。
火。
広い。
セレナ。
「レオ、範囲!」
レオ。
少し。
出力。
落とす。
一体。
残る。
正面。
突破。
ルシアン。
後方から。
光弾。
押し戻す。
「正面、継続!」
ルシアン。
でも。
右。
アリシア。
影。
ミリア。
土。
二人。
止める。
「右、安定!」
アリシア。
正面。
見る。
一体。
まだ。
動く。
レオ。
少し。
焦り。
「俺が!」
「待って!」
セレナ。
「左も来る!」
情報。
多い。
正面。
左。
右。
アリシア。
中央。
聞く。
フィン。
「左二! でも速度遅い!」
セレナ。
「正面優先!」
ルシアン。
「同意!」
アリシア。
「正面!」
レオ。
「おう!」
一体。
斬る。
落ちる。
左。
フィン。
風。
遅らせる。
ミリア。
右から。
中央へ。
壁。
移動。
「左、壁出す!」
「お願い!」
アリシア。
ミリア。
土壁。
完全。
閉じない。
斜め。
魔導獣。
進路。
変わる。
「フィン、流れ先!」
「見えてる!」
風矢。
一体。
落とす。
もう一体。
標柱。
近い。
アリシア。
影。
伸ばす。
足。
掴む。
冷たい。
一。
「冷たい」
すぐ。
言う。
セレナ。
「一、確認」
影。
止める。
フィン。
撃つ。
落ちる。
見学席。
小さな。
歓声。
「すげえ!」
「六人、ちゃんと回ってる」
「闇の子、報告してる」
「冷たいって何?」
「負荷じゃない?」
外。
聞こえる。
でも。
今。
前。
残り。
数。
レオ。
「七落ちた!」
セレナ。
「残り五」
フィン。
「見えてる三」
「二は?」
沈黙。
後ろ。
今まで。
なし。
アリシア。
影。
広げたい。
でも。
一。
冷たい。
広げすぎ。
情報。
多い。
「フィン」
「何」
「後ろ」
フィン。
すぐ。
風。
広げる。
耳。
音。
少し。
顔。
集中。
「……たぶん」
止まりかける。
アリシア。
「仮説」
フィン。
「後方上。二。壁沿い」
教官。
何も言わない。
正解か。
分からない。
でも。
アリシア。
信じる。
「ルシアン、後ろ確認!」
「はい!」
光。
後方。
照らす。
上。
壁。
二体。
小型。
這う。
見学席。
「後ろ!」
「いた!」
アリシア。
胸。
強く。
「全体、後方二!」
レオ。
「俺行く!」
「待って!」
アリシア。
声。
出る。
レオ。
止まる。
「正面、まだ三!」
セレナ。
「レオは正面!」
ミリア.
「私、後ろ行く!」
「ミリア」
アリシア。
閉鎖。
後方。
狭い。
壁沿い。
でも。
演習室。
広い。
出口。
見える。
「行ける?」
ミリア。
一瞬。
後ろ。
見る。
「行ける!」
「ルシアンと!」
「はい!」
ミリア。
後ろ。
移動。
ルシアン。
支援。
土。
壁。
小型。
落とす。
光。
一体。
封じる。
後方。
安定。
アリシア.
正面。
レオ。
一人。
三。
危ない。
「セレナ、正面支援!」
「はい!」
水.
拘束.
一体.
レオ.
二.
「いける!」
火.
一体.
二体目.
広がる.
右手.
握り.
強い.
アリシア.
見る.
昨日.
兆候.
「レオ、手!」
「まだ!」
大丈夫.
似た.
アリシア.
迷う.
止める?
正面.
二.
でも.
セレナ.
一体拘束.
レオ.
一体だけ.
「レオ、一体だけ!」
レオ.
聞く.
火.
狭める.
一体.
斬る.
落ちる.
残り.
拘束.
セレナ.
「今!」
レオ.
斬る.
正面.
全滅.
「できた!」
アリシア.
言う.
レオ.
息.
少し.
荒い.
笑う.
「おう!」
でも.
右手.
震え.
「一分!」
アリシア.
「ええ!?」
「休んで!」
「まだ敵!」
「後ろ、二!」
ルシアン.
「こちら処理中!」
ミリア.
「一体落ちた!」
フィン.
「残り一、右に流れた!」
右.
新しい.
一体.
標柱.
向かう.
レオ.
「俺行ける!」
アリシア.
胸.
判断.
レオ.
休止.
昨日.
一分.
精密.
戻る.
でも.
今.
敵.
一.
誰.
フィン.
左.
遠い.
セレナ.
中央.
水.
アリシア.
影.
一.
冷たい.
まだ.
二ではない.
「私、止める!」
アリシア.
影.
右.
伸ばす.
一体.
速い.
距離.
標柱.
近い.
足.
掴む.
でも.
勢い.
強い.
影.
引かれる.
冷たい.
強く.
一.
二.
近い.
「……感覚」
言う.
前に.
もう少し.
止めたい.
あと.
一体.
だけ.
影.
強く.
掴む.
自分の左手.
少し.
遠い.
セレナ.
「アリシア!」
名前.
聞こえる.
「冷たい? 感覚?」
「遠い!」
言えた.
「二!」
セレナ.
「止め!」
アリシア.
でも.
敵.
まだ.
動く.
「あと一体!」
言う.
その瞬間.
ミリア.
右.
戻ってくる.
「私が行く!」
土壁.
標柱前.
出る.
魔導獣.
ぶつかる.
止まる.
フィン.
風.
一体.
射抜く.
落ちる.
全部.
停止.
時間.
まだ.
三分.
魔導獣.
十二.
全滅.
見学席.
大きな.
ざわめき.
拍手.
歓声.
「全部倒した!」
「十五分前!」
「強い!」
「闇、止めた!」
「土が最後守った!」
六人.
勝った.
でも.
アリシア.
影.
戻す.
感覚.
遠い.
左手.
少し.
曖昧.
「アリシア」
ルシアン.
近く.
でも.
接触.
まだ.
しない.
「足」
「床」
「右手」
「黒月」
「左手」
また.
一瞬.
分からない.
怖い.
「……胸」
今回は.
触れる.
ある.
「戻ってる」
セリナ.
声.
「影、半分」
フィン.
「呼吸」
ミリア.
「ゆっくり」
レオ.
一分休み.
忘れず.
座ってる.
でも.
こちら.
見る.
「アリシア!」
大きい.
声.
「戻ってこい!」
少し.
うるさい.
でも.
聞こえる.
自分.
ここ.
六人.
演習室.
影.
戻る.
冷たい.
一.
「冷たい」
アリシア.
「一!」
セレナ.
「感覚?」
「戻った」
「身体?」
「分かる」
ルシアン.
少し.
笑う.
「復帰」
アリシア.
息.
吐く.
戻れた.
勝った.
でも.
勝ったこと.
まだ.
実感.
遅い.
「終わり?」
アリシア.
教官.
低い声.
「模擬戦終了」
見学席.
拍手.
今度.
はっきり.
六人.
全員.
聞く.
アリシア.
少し.
怖い.
でも.
昨日ほど.
意味を追わない.
勝利.
連携.
多分.
いろいろ.
拍手.
今.
受け取る.
六人.
戦った.
終わった.
それへ.
◇
六人.
床.
座る.
水.
休む.
レオ.
本当に.
一分.
経ってから.
手.
確認.
「戻った!」
セレナ.
「精密操作はまだ確認していません」
「でも震え止まった!」
「それはできた」
アリシア.
言う.
レオ.
少し.
笑う.
「おう」
ミリア.
呼吸.
少し.
荒い.
アリシア.
見る.
「狭くなかった?」
「後ろ?」
「うん」
「壁沿いだったけど」
ミリア.
少し.
考える.
「ルシアンがいた」
「それで?」
「一人じゃなかったから。平気だったかも」
新しい.
輪郭.
閉鎖.
だけではない.
一人.
誰か.
「記録」
セレナ.
すぐ.
紙.
出そうとする.
ルシアン.
「四分」
全員.
セレナ.
見る.
セレナ.
止まる.
「……四分」
紙.
戻す.
全員.
少し.
笑う.
見学席.
まだ.
ざわざわ.
「休憩までルールあるんだ」
「何か徹底してる」
「普通の神器訓練と違う」
「弱点共有してるって本当かな」
アリシア.
聞こえる.
でも.
今.
四分.
休む.
水.
飲む.
ノア.
足元.
『二の報告』
「遅れた」
『ええ』
「でも言えた」
『ええ』
「止められた」
『ええ』
「でも、あと一体って言った」
『ええ』
「減点」
『後で』
「今じゃない?」
『四分休憩』
ノア.
いつもの.
アリシア.
少し.
笑う.
休む.
◇
四分後.
振り返り.
黒板.
教官.
最初.
「結果」
『勝利』
レオ.
少し.
嬉しそう.
「十二体全滅。標柱損傷なし」
ミリア.
「やった!」
見学席.
また.
少し.
反応.
でも.
教官.
次.
『問題』
レオ.
少し.
顔.
引き締める.
「多いぞ」
六人.
姿勢.
変わる.
「一つ目」
黒板.
『中央判断遅延』
アリシア.
胸.
少し.
痛い.
「右支援と正面優先」
「はい」
「最初の判断。遅れた」
「はい」
「理由」
「どっちも危ないと思った」
「その後」
「セレナが正面優先。ルシアンも同意」
「結果」
「決められた」
「改善」
アリシア.
考える.
「危険度を。先に言ってもらう」
セレナ.
「賛成です」
フィン.
「右:標柱まで何歩。正面:残数。みたいに」
教官.
「記録」
次.
『レオ:高出力傾向』
レオ.
「やっぱり!」
「二体同時で出力を上げた」
「でも落とせた!」
「一体残った」
「……はい」
「周囲」
アリシア.
「手の握りが強くなった」
セレナ.
「火線が拡張」
ルシアン.
「呼吸上昇」
フィン.
「本人はまだいけると言った」
ミリア.
「でも、一体に絞ったらできた」
教官.
「改善」
レオ.
少し.
考える.
「二体以上を同時に見たら。一人で全部やろうとしない」
教官.
「よし」
『フィン:後方二体仮説』
フィン.
少し.
顔.
固い.
「正解」
「……はい」
「何が問題」
フィン.
少し.
考える.
「最初、たぶんで止まりかけた」
「誰が促した」
「アリシア」
「次」
「仮説って言ってから出す」
「よし」
『ミリア:後方対応』
「はい」
「壁沿い」
「少し狭かった」
「呼吸」
「少し速かった」
「報告」
「してない」
ミリア.
肩.
少し.
下がる.
「理由」
「ルシアンがいたから、大丈夫だと思った」
ルシアン.
すぐ.
「大丈夫と、負荷報告は別」
ミリア.
見る.
少し.
苦笑.
「そうだった」
アリシア.
胸.
自分と.
同じ.
「次」
ミリア.
「少しでも狭いって感じたら言う」
「誰かと一緒でも?」
「言う」
「よし」
『ルシアン:後方対応中、治癒判断なし』
ルシアン.
「今回は治癒対象がなかった」
「問題なし」
少し.
笑い.
レオ.
「何で書いたんだ!」
「確認だ」
『セレナ:情報整理良好。ただし』
セレナ.
少し.
構える.
『同時報告時、言葉が長い』
フィン.
小さく.
「やっぱり」
セレナ.
「具体例は」
教官.
「右支援時。『正面側の残存二体が継続接近していますので正面優先が妥当です』」
レオ.
「そんな言ってた?」
「言いました」
フィン.
「戦闘中は長い」
セレナ.
少し.
考える.
「正面優先、二体」
「それでいい」
「……はい」
『アリシア』
胸.
強く.
「二の報告遅延」
「はい」
「理由」
「あと一体」
「昨日と同じ」
「はい」
「ただし」
アリシア.
顔.
上げる.
「今回は、状態質問で二を言えた」
「はい」
「停止指示後。影を戻せた」
「はい」
「身体位置確認。復帰」
「はい」
「できたこと」
アリシア.
考える.
「二を言えた」
「他」
「止められた」
「他」
「戻れた」
「他」
まだ.
ある?
教官.
待つ.
アリシア.
模擬戦.
思い出す.
右.
支援.
正面.
判断.
後方.
フィン.
仮説.
ミリア.
ルシアン.
レオ.
休む.
「みんなの声を」
少し.
「聞けた」
教官.
頷く.
「それが一番だ」
アリシア.
少し.
目.
大きく.
「中央判断役は。自分で全部見る必要はない」
午前.
授業.
祖父.
六人分の目.
「六人分の目」
アリシア.
小さく.
「そうだ」
教官.
「今日。最も価値があったのは」
見学席.
静か.
「誰が一番強かったかではない」
周囲.
朝.
食堂.
誰が一番.
その話.
教官.
続ける.
「六人が。自分の見たものを言葉にし。中央が。それを使ったこと」
黒板.
大きく.
『共有』
「これがなければ。六神器を並べても。ただ強い六人がいるだけだ」
アリシア.
胸.
入る.
強さを.
並べる.
だけ.
六人.
ではない.
「六人で戦うとは」
教官.
低い声.
「六つの力を同時に使うことではない」
レオ.
セレナ.
フィン.
ミリア.
ルシアン.
アリシア.
「六人分の判断を。つなげることだ」
沈黙.
長い.
見学席.
誰も.
すぐ.
話さない.
アリシア.
床.
影.
六つ.
夕方の光.
少し.
重なる.
昨日.
六つの席.
今日.
六つの目.
六つの判断.
つなぐ.
「次回」
教官.
「役割を入れ替える」
レオ.
「え?」
「中央判断役。変更」
アリシア.
少し.
ほっとする.
同時に.
少し.
寂しい.
不思議.
「次は誰?」
ミリア.
「未定」
「俺!」
レオ.
すぐ.
「却下」
セレナ.
「何で!」
教官.
「候補には入る」
「ほら!」
「ただし、声量以外の理由を用意しろ」
「……考えます」
フィン.
「そこは素直なんだ」
「うるさい!」
笑い.
見学席も.
少し.
笑う.
緊張.
ゆっくり.
ほどける.
◇
訓練後.
演習室の外.
見学していた生徒たち.
廊下.
残る.
六人.
出る.
視線.
多い.
でも.
昨日までと.
少し違う.
「すごかった!」
「闇の影、あれどうなってるの?」
「火、もっと出せたよな?」
「土の壁、最後すごかった!」
「風、後ろ見つけたの格好よかった!」
「水の指示、聞きやすかった!」
「光、後ろ回ってたよな!」
一人.
だけではない.
六人.
それぞれ.
声.
飛ぶ.
レオ.
すぐ.
「ありがとう!」
大声.
セレナ.
「通路を塞がないでください」
見学者.
少し.
下がる.
ミリア.
手.
振る.
フィン.
少し.
居心地悪そう.
ルシアン.
笑顔.
アリシア.
どうする.
声.
たくさん.
「闇の子!」
誰か.
呼ぶ.
アリシア.
少し.
止まる.
「最後、危なかった?」
質問.
周囲.
少し.
静か.
答える.
公開.
範囲.
「感覚が。少し遠くなりました」
「大丈夫だった?」
大丈夫.
言葉.
止まる.
「戻れました」
答える.
相手.
少し.
安心.
「よかった」
短い.
それだけ.
アリシア.
胸.
温かい.
大丈夫.
ではなく.
戻れた.
今.
言えた.
「闇、強かったよ!」
別の生徒.
アリシア.
少し.
困る.
強い.
でも.
今日.
「みんなが」
言う.
「見てくれたから」
「え?」
「一人だったら。後ろの二体、分からなかった」
周囲.
少し.
静か.
フィン.
隣.
「それは僕が見つけた」
「うん」
「もっと言って」
アリシア.
少し.
笑う.
「フィンが見つけた」
「よろしい」
ミリア.
吹き出す.
「そこ、ちゃんと主張するんだ」
「できたことは残すんでしょう」
フィン.
「そう」
セレナ.
頷く.
見学していた生徒たち.
少し.
笑う.
「なんか普通だな」
「神器継承者って」
「もっと怖い人たちかと思ってた」
「火だけうるさい」
「聞こえてるぞ!」
レオ.
また.
大声.
教師.
遠く.
「廊下で叫ぶな!」
「はい!」
笑い.
広がる.
アリシア.
少し.
笑う.
◇
夕方.
教室.
メリル.
今日は.
窓際.
待っている.
アリシア.
入る.
「おかえり」
「ただいま」
「どうだった?」
いつもの.
質問.
アリシア.
鞄.
置く.
座る.
少し.
疲れ.
身体.
重い.
「勝った」
最初.
それ.
メリル.
目.
大きく.
「本当?」
「うん」
「すごい!」
嬉しい.
でも.
アリシア.
すぐ.
「でも」
「うん」
「できなかったこともあった」
メリル.
少し.
笑う.
「聞く」
アリシア.
ゆっくり.
話す.
レオ.
火.
広げすぎ.
でも.
一体に絞れた.
セレナ.
正確.
でも.
長い.
フィン.
仮説.
当たった.
外れた.
でも.
言えた.
ミリア.
狭さ.
少し.
でも.
戻れた.
ルシアン.
後方.
一緒.
自分.
二.
遅れた.
でも.
言えた.
止められた.
戻れた.
「それで」
メリル.
聞く.
「一番、できたことは?」
アリシア.
少し.
考える.
教官.
言葉.
「みんなの声を聞けた」
「一番?」
「うん」
「アリシアが全部決めた?」
「違う」
「じゃあ?」
「みんなが見た」
「うん」
「私が、聞いた」
「うん」
「それで決めた」
メリル.
少し.
考える.
「六人で決めた?」
「うん」
「でも、最後に言うのはアリシア?」
「うん」
「怖かった?」
「かなり」
「間違えた?」
「少し」
「怒られた?」
「後で直した」
「そっか」
メリル.
笑う.
「じゃあ」
少し.
間.
「今日のアリシア。役に立った?」
朝.
怖かった.
役に立たない.
それ.
メリル.
覚えていた.
アリシア.
すぐには.
答えない.
自分.
影.
止めた.
判断.
遅れた.
二.
遅れた.
でも.
聞いた.
戻した.
勝った.
「……うん」
声.
小さい.
でも.
言う.
「役に立った」
自分で.
言えた.
胸.
熱い.
少し.
泣きそう.
メリル.
すぐ.
大げさに.
褒めない.
ただ.
笑う.
「できたね」
「うん」
その言葉.
今日.
一番.
欲しかった.
かもしれない.
◇
夜.
家.
夕食.
祖父.
「勝ったか」
「うん」
「そうか」
「それだけ?」
「何を言えばいい」
「すごいとか」
「自分で言えるだろ」
「……役に立った」
祖父.
少し.
手.
止まる.
アリシア.
自分で.
続ける.
「私。役に立った」
祖父.
ゆっくり.
頷く.
「ああ」
「でも、失敗もした」
「そうか」
「感覚が遠くなった」
祖父.
顔.
少し.
厳しい.
「二か」
「うん」
「止めたか」
「少し遅れた」
「次は」
「すぐ言う」
「ならいい」
「怒らない?」
「怒ってどうする」
「危なかった」
「危なかったことを、危なかったと分かってるなら。次だ」
教官.
みんな.
同じ.
次.
戻る.
「うん」
「それで」
祖父.
「六人分の目は使えたか」
アリシア.
少し.
笑う.
「使えた」
「そうか」
「フィンが後ろを見た」
「風か」
「うん」
「ミリアが最後守った」
「土」
「うん」
「セレナが数えた」
「水」
「レオが前」
「火」
「ルシアンが後ろ」
「光」
「私が聞いた」
「闇」
祖父.
少し.
首.
振る.
「アリシア」
アリシア.
止まる.
属性.
ではない.
名前.
「……うん」
祖父.
それ以上.
何も言わない.
ノア.
足元.
『百一点』
「今?」
『今』
「理由」
『闇と言われて、自分の名前へ戻った』
「おじいちゃんが」
『それでも』
アリシア.
少し.
笑う.
◇
夜.
練習帳.
頁.
開く.
『第78日』
ではない.
日数.
書かない.
ただ.
今日.
『初めての六人模擬戦』
書く.
『目的:勝利だけではない』
『六者輪郭記録を使う』
『最大出力を出さない』
『危険域へ入らない』
『止める』
『戻る』
『六人分の情報を共有する』
配置.
書く.
『レオ:正面』
『ミリア:右前』
『フィン:左後方・索敵』
『セレナ:中央右・情報整理』
『ルシアン:後方・継続判断』
『アリシア:標柱・全体継続/停止/復帰判断』
次.
『できたこと』
大きく.
見出し.
先.
失敗より.
できた.
『六人の声を聞けた』
『右支援と正面優先で迷ったが、セレナとルシアンの情報で決められた』
『フィンの仮説を受けて、後方二体へ対応できた』
『レオを一体へ絞れた』
『ミリアへ後方対応を任せた』
『二を言えた』
『止められた』
『戻れた』
『勝った』
最後.
勝った.
大きく.
書く.
少し.
嬉しい.
次.
『できなかったこと』
『中央判断が遅れた』
『二を感じてから、あと一体と思った』
『自分で全部見ようとしかけた』
次.
『直す』
『危険度を短く報告してもらう』
『二を感じたら成果より報告』
『六人分の目を使う』
次.
一人ずつ.
『レオ』
『高出力後も、まだいけると言う』
『一体へ絞ると精密にできた』
『一分休めば戻れた』
『できた』
『セレナ』
『情報整理が正確』
『同時報告時は言葉が長い』
『短くする』
『フィン』
『仮説で後方二体を見つけた』
『一度外れても、報告速度は改善』
『できたことを自分でも残した』
『ミリア』
『狭さを少し感じたが、ルシアンと一緒なら動けた』
『負荷報告は次からする』
『止めたあと戻れた』
『ルシアン』
『後方支援』
『治癒対象なし』
『ミリアと一緒に後方へ行った』
『アリシア』
自分。
少し。
止まる。
『役に立った』
書く。
文字。
見る。
消さない。
『失敗もした』
『でも、役に立った』
もう一度。
書く。
ノア。
机。
跳び乗る。
「二回書くの?」
「残したい」
『ならいい』
「今日は何点?」
『百点』
「百一点じゃない?」
『欲張り』
「だって昨日」
『昨日は昨日』
「便利」
『柔軟』
いつもの。
でも。
アリシア。
笑う。
「どこが百点?」
『自分で、役に立ったと書けた』
「メリルに聞かれたから」
『答えたのはあなた』
「うん」
『それと』
ノア。
練習帳。
『六人分の目を使う』
そこ。
前足。
「これ」
「うん」
『あなたは。自分が見えないものを、他人が見ることを許した』
アリシア。
少し。
考える。
「許した?」
『以前なら』
「うん」
『自分が見えないことを、不安にした』
「うん」
『今日は。フィンが見た後方を信じた』
「うん」
『セレナが正面優先と言ったのを聞いた』
「うん」
『ミリアが行けると言ったのを任せた』
「うん」
『ルシアンが戻れると言ったのを受け取った』
「うん」
『レオに一分休めと言った』
「うん」
『六人』
ノア。
静か。
『少しずつ。使えている』
「人を?」
『目を。判断を。言葉を』
「人を使うみたい」
『言い方』
「ノアが」
『なら』
少し。
尾。
動く。
『頼れている』
アリシア。
胸。
温かい。
「頼る」
『ええ』
「私、頼った?」
『ええ』
「いっぱい?」
『今日は』
少し。
間。
『かなり』
アリシア。
少し。
笑う。
「百一点?」
『百点』
「増えない」
『点数を目的にしない』
「ノアが始めた」
『今は私がやめさせている』
「ずるい」
『寝なさい』
「最後」
アリシア。
練習帳。
最後。
書く。
『強さを六つ並べるだけでは、六人では戦えない』
ノア。
見る。
『六人分の目。六人分の判断。六人分の怖さ。六人分の戻り方をつなぐ』
次。
『一人で全部見なくていい』
『見えないところは、誰かに見てもらう』
『分からないところは、聞く』
『止める時は、止める』
『戻れたら、また始める』
最後。
少し。
考える。
『私は、六人の中で役に立った』
今度。
一回。
はっきり。
書く。
手。
少し。
震える。
でも。
消さない。
ノア。
何も。
言わない。
アリシア。
頁。
閉じる。
◇
灯り。
消す。
寝台。
夜。
静か。
今日。
模擬戦。
歓声。
拍手。
大きな声。
火。
水。
風。
土。
光。
闇。
でも。
頭の中。
残るのは。
名前。
『アリシア!』
レオ。
大きい。
『冷たい? 感覚が遠い?』
セレナ。
正確。
『後方上。二。壁沿い』
フィン。
仮説。
『私が行く!』
ミリア。
明るい。
『呼吸、合わせて』
ルシアン。
穏やか。
六人。
声。
違う。
でも。
届いた。
アリシア。
目を閉じる。
「ノア」
『何?』
「今日」
『ええ』
「一番強かったの、誰?」
ノア。
少し。
沈黙。
『まだ気にしていたの?』
「少し」
『では答える』
「うん」
『誰でもない』
「……うん」
『今日、一番強かったのは』
少し。
間。
『つながった時の六人』
アリシア。
胸。
少し。
熱い。
「それ、ずるい答え」
『なぜ』
「格好いい」
『事実よ』
「ノアも、そういうこと言うんだ」
『失礼ね』
「毒舌だけじゃない」
『明日から毒舌だけに戻すわよ』
「嫌」
『なら黙って寝なさい』
「うん」
アリシア。
少し。
笑う。
「おやすみ、ノア」
『おやすみ、アリシア』
夜。
闇。
静か。
六人。
初めて。
戦った。
勝った。
でも。
勝ったことより。
残ったもの。
六人分の声。
一人では見えないもの。
一人では止められないもの。
一人では戻れない時。
そこへ。
誰かの名前が。
入る。
強さを。
六つ。
並べるだけでは。
六人にはならない。
違う目で。
違う場所を見て。
違う怖さを持ち。
違う失敗をして。
それでも。
声をつなぐ。
判断をつなぐ。
止め方をつなぐ。
戻り方をつなぐ。
その時。
初めて。
六人になる。
アリシアは。
そのことを。
今日。
少しだけ。
身体で知った。
そして。
眠りへ落ちる直前。
最後に。
自分へ。
もう一度だけ。
心の中で言った。
私は。
今日。
役に立った。
その言葉は。
誰かに言ってもらったものではなく。
自分で。
自分へ置いた。
初めての。
小さな。
確かな言葉だった。




