第79話 昨日できたことは、今日も同じ形ではできない
翌朝。
アリシアは。
目を覚ましたあと。
すぐには起き上がらなかった。
天井を見ていた。
白い。
いつもの天井。
木の梁。
朝の淡い光。
窓の隙間から。
少し冷たい空気。
何も。
昨日とは変わっていない。
でも。
胸の中には。
まだ。
昨日の音が残っていた。
『アリシア!』
レオの声。
『冷たい? 感覚が遠い?』
セレナ。
『後方上。二。壁沿い』
フィン。
『私が行く!』
ミリア。
『呼吸、合わせて』
ルシアン。
そして。
拍手。
模擬戦。
勝利。
十二体。
標柱。
無傷。
最後。
自分で。
書いた。
『私は、六人の中で役に立った』
昨日。
何度も。
思い返した。
今朝も。
最初に浮かんだ。
嬉しい。
それは。
本当。
でも。
その次に。
別のものが。
浮かんでくる。
「……今日も、できるかな」
『何が?』
足元。
ノア。
目。
閉じたまま。
返事。
「昨日みたいに」
『具体的に』
「勝つ」
『それは結果』
「みんなの声を聞く」
『今日はあなたが中央とは限らない』
「うん」
『他』
「二で止まる」
『それはやりなさい』
「戻る」
『それも』
「役に立つ」
言った瞬間。
少し。
胸。
重い。
昨日。
できた。
だから。
今日も。
できなければ。
昨日の言葉まで。
嘘になるような気がした。
『昨日できたから』
ノア。
ゆっくり。
目を開ける。
『今日も同じようにできなければならない?』
「……少し」
『なぜ』
「昨日、役に立ったって書いた」
『ええ』
「今日、役に立てなかったら」
『昨日の事実が消える?』
アリシア。
黙る。
消えない。
分かる。
昨日。
できた。
それは。
今日。
失敗しても。
なくならない。
頭では。
分かる。
でも。
身体が。
そう簡単に。
分けてくれない。
「でも」
アリシア。
少し。
布団を握る。
「昨日できたのに、今日できなかったら」
『悔しい?』
「うん」
『恥ずかしい?』
「うん」
『嫌われる?』
「……少し思う」
『役に立たないと思われる?』
「うん」
ノア。
起きる。
掛け布の上。
前足。
一つ。
アリシアの膝。
近く。
「昨日の六者輪郭記録」
「うん」
「暫定だったわね」
「うん」
「なぜ」
「変わるから」
「誰が」
「みんな」
「何が」
「できること。できないこと。怖いこと。止め方」
「なら」
ノア。
金色の瞳。
真っすぐ。
「昨日できたことも。今日、形が変わる可能性がある」
「……うん」
「昨日の組み方が。今日も正解とは限らない」
「うん」
「昨日のあなたが。今日のあなたへ、命令する必要もない」
アリシア。
少し。
顔を上げる。
「昨日の私が?」
「昨日できた。だから今日もやれ」
「……言ってる」
「誰が」
「私」
「では」
ノア。
尻尾。
ゆっくり。
「今日のあなたは?」
アリシア。
考える。
今日。
まだ。
始まっていない。
身体。
昨日より。
少し重い。
冷え。
ない。
頭痛。
ない。
でも。
緊張。
ある。
「今日の私は」
少し。
間。
「昨日より、疲れてるかもしれない」
「ええ」
「昨日より、できることもあるかもしれない」
「ええ」
「分からない」
「それでいい」
ノア。
すぐ。
答える。
「今日の状態で。今日の判断をしなさい」
アリシア。
ゆっくり。
頷く。
「百点?」
「起きなさい」
「まだ?」
「採点の前に顔を洗いなさい」
「厳しい」
「昨日勝ったからって、朝の支度まで免除されないわ」
アリシア。
少し笑う。
寝台。
降りる。
昨日の勝利。
今日。
そのまま。
持ち込まない。
持っていくもの。
記録。
経験。
名前。
でも。
今日の自分は。
今日。
見る。
◇
朝食。
祖父。
パン。
スープ。
アリシア。
今日は。
昨日より。
食べる。
少し早い。
「今日は」
祖父。
「何だ」
「中央、交代」
「決まったか」
「まだ」
「そうか」
「誰になると思う?」
「またそれか」
「昨日は知らないって」
「今日も知らん」
「レオは」
「声が大きい」
「それ以外」
「昨日、休めと言われても戦いたがった」
「うん」
「前に向く」
「うん」
「セレナは」
「情報整理」
「でも長い」
「昨日短くするって」
「なら候補」
「フィン」
「見えるが、確信を待つ」
「昨日、言えた」
「なら候補」
「ミリア」
「守る」
「狭いの苦手」
「中央なら?」
「前へ出たくなるかもな」
「ルシアン」
「傷ついた者へ寄る」
「うん」
「アリシア」
「昨日」
「今日は?」
祖父。
聞く。
アリシア。
少し。
止まる。
「今日は、分からない」
「そうか」
「それでいい?」
「俺が決めることか?」
「……違う」
「なら、自分たちで決めろ」
ノア。
椅子の下。
『正論』
「二人とも同じ」
「誰とだ」
『聞こえていないわよ』
「ノア」
『事実』
祖父。
パン。
少し。
アリシアの皿。
追加。
「食えるか」
「うん」
「無理するな」
「大丈夫」
言った。
止まる。
祖父。
ノア。
二人。
見る。
「……食べられる」
言い直す。
祖父。
「それなら食え」
ノア。
『よろしい』
「毎回?」
『慣れるまで』
「いつ慣れる?」
『その質問をしなくなった頃』
「遠い」
『そうね』
朝。
静か。
でも。
少し。
笑い。
ある。
◇
教室。
扉。
今日は。
ほとんど。
止まらない。
『八秒』
「数えてた」
『習慣』
「採点は?」
『九十九』
「減った?」
『点数を聞いた』
「また」
『学ばない』
アリシア。
教室。
入る。
「おはよう、アリシア」
「おはよう、メリル」
自然。
昨日より。
少し。
自然。
メリル。
すぐ。
顔。
見る。
「昨日より、眠そう?」
「少し」
「疲れた?」
「たぶん」
「模擬戦のあとだもんね」
「今日も訓練」
「また?」
「役割、変えるって」
メリル。
少し。
心配そう。
「身体、大丈夫?」
大丈夫。
言いかける。
止める。
「冷えはない」
「うん」
「頭痛もない」
「うん」
「少し眠い」
「じゃあ、少し眠いんだ」
「うん」
「それでいいね」
アリシア。
少し笑う。
「大丈夫より?」
「私は分かりやすい」
「うん」
机。
鞄。
昨日。
勝った。
今日は。
少し眠い。
両方。
置ける。
「昨日」
メリル。
「みんな、話してたよ」
「何を?」
「六神器の模擬戦」
アリシア。
身体。
少し。
固い。
「何て?」
「すごかったって」
「誰が?」
「見た子」
「全員?」
「分からない」
「他は?」
「火の子がうるさかったって」
「レオ」
「うん」
「やっぱり」
「それと」
メリル。
少し。
笑う。
「闇の子が思ったより、ちゃんと指示出してたって」
ちゃんと。
少し。
引っかかる。
思ったより。
期待されていなかった?
見下されていた?
アリシアの顔。
少し。
変わった。
メリル。
気づく。
「嫌だった?」
「思ったより、って」
「うん」
「最初は。できないと思われてた?」
「そう聞こえるかも」
「うん」
メリル。
すぐ。
否定しない。
少し。
考える。
「でも」
「うん」
「その子。たぶん、アリシアが人前で話すの苦手なの知ってる」
「うん」
「だから。指示できると思わなかったのかも」
「同じ?」
「完全には分からない」
メリル。
正直。
「でも、悪く言ってる感じじゃなかった」
「……うん」
「気になる?」
「少し」
「聞きに行く?」
アリシア。
廊下。
昨日までなら。
聞きたい。
確認。
意味。
追う。
でも。
今。
「行かない」
「どうして?」
「危険じゃない」
「うん」
「私のこと。どう思ったかは、その子の側」
メリル。
少し。
目。
細める。
「覚えてるね」
「うん」
「でも、嫌だったは?」
「残る」
「うん」
「嫌だった」
「うん」
「でも、行かない」
「うん」
メリル。
笑う。
「それもできた」
アリシア。
胸。
少し。
温かい。
「できた?」
「うん」
「まだ朝」
「朝でも」
できた。
小さい。
でも。
できた。
◇
午前。
戦術理論。
昨日の続き。
黒板。
『成功した戦術を繰り返せば、次も成功するか』
アリシア。
思わず。
顔。
上げる。
まるで。
朝。
自分。
ノア。
話。
「答えは」
教師。
少し。
間。
「分からない、です」
教室。
何人か。
ざわめく。
「同じ敵」
「同じ場所」
「同じ人数」
「同じ技」
「それでも」
黒板。
『疲労』
『慣れ』
『相手の対策』
『心理』
『偶然』
「条件は変わります」
アリシア。
ノート。
書く。
『昨日の成功を、そのまま今日へ命令しない』
ノア。
朝.
言葉.
似ている.
「成功した方法を捨てろ、という意味ではありません」
教師.
続ける.
「記録する」
「再現を試す」
「違いを見る」
「必要なら変える」
黒板.
『成功=固定ではない』
アリシア.
強く.
書く.
班練習.
題材.
『昨日、成功した防衛配置。今日、相手が対策してきた』
トマ.
「同じ配置で押し切る」
ミーナ.
「昨日勝ったから?」
「勝ったんだから強いだろ」
「でも対策されてる」
「じゃあ、もっと強くやる」
メリル.
「それ、失敗したら?」
「火力足りなかったってこと」
アリシア.
少し.
考える.
「配置が悪いかもしれない」
トマ.
「昨日は良かった」
「昨日は」
「うん」
「今日も?」
トマ.
止まる.
「分からない」
「なら」
アリシア.
言う.
「昨日の配置を基準にして。違うところを変える」
セリア先生.
近く.
「どこを変える?」
アリシア.
少し.
緊張.
「相手が。昨日どこを見てたか」
「はい」
「昨日、止められなかったところ」
「はい」
「今日、疲れてる人」
「良いです」
「あと」
少し.
考える.
「昨日の成功で。自信がありすぎる人」
トマ.
「それ俺?」
班.
笑い.
アリシア.
少し.
「題材」
「でも見てたよね」
ミーナ.
「少し」
セリア先生.
笑う.
「成功後は、過信も条件の変化です」
アリシア.
レオ.
思い出す.
勝った.
自分も.
今日も.
役に立ちたい.
それも.
条件.
「今日」
先生.
アリシアを見る.
「昨日と同じ模擬戦ですか」
「役割を変えるって」
「なら」
少し.
笑う.
「昨日と同じように勝とうとしないことです」
「……はい」
「今日の六人で。今日の戦いを」
「はい」
胸.
少し.
落ち着く.
◇
昼休み.
六人.
今日は.
中庭.
理由.
食堂が混んでいる.
それと.
セレナが.
「昨日と同じ卓だと、また会議を始める可能性があります」
と.
自分たちを.
警戒した.
芝.
木陰.
長椅子.
石卓.
六人.
少し.
広がって座る.
周囲.
生徒たち.
遠巻き.
でも.
食堂より.
声.
少ない.
風.
木の葉.
昼.
穏やか.
レオ.
パン.
大きい.
「今日、俺が中央!」
最初.
それ.
セレナ.
「食事中です」
「必要事項!」
「午前中に考えたのですか」
「考えた!」
「理由」
「声が大きい以外」
「……前が分かる!」
フィン.
「中央にいたら前だけ見ない?」
「みんなの声聞く!」
ミリア.
「本当に?」
「昨日アリシアがやった!」
「同じにするの?」
レオ.
止まる.
昨日.
同じ.
成功.
今日.
午前.
授業.
アリシア.
言う.
「同じじゃなくていい」
レオ.
見る.
「じゃあ、どうする?」
「レオが中央なら」
アリシア.
考える.
「前に出たくなる」
「……うん」
レオ.
自覚.
ある.
「だから」
フィン.
「中央から出ない条件?」
セレナ.
「三歩以上、標柱から離れない」
「牢屋みたいだな!」
ミリア.
笑う.
「でも、レオ中央ならそれくらい必要」
「俺、そんな信用ない?」
ルシアン.
「前に出ることについては」
少し.
笑う.
「ないかも」
「光まで!」
でも.
レオ.
怒らない.
少し.
考える.
「じゃあ、三歩」
セレナ.
「判断役は?」
「俺!」
「全て?」
アリシア.
レオ.
少し.
止まる.
昨日.
自分.
全部.
決めなかった.
「……全体の続行と、止めるのと、戻す?」
アリシア.
「うん」
「前は?」
ミリア.
「私?」
レオ.
考える.
「ミリア、前!」
「右?」
「昨日と同じじゃない方」
フィン.
「僕が前?」
全員.
見る.
フィン.
「何」
レオ.
「風、前で使える?」
「中距離から遠距離が得意」
「なら前すぎるのは駄目」
セレナ.
「配置から考えましょう」
紙.
出そうとする.
ルシアン.
「食事」
「……はい」
紙.
しまう.
少し.
笑い.
「昨日と違う」
アリシア.
言う.
「何が?」
ミリア.
「昨日は、私が中央。レオ前」
「うん」
「今日は。レオ中央」
「うん」
「じゃあ、私」
少し.
考える.
「前じゃない方やってみたい」
レオ.
「何がいい?」
「後ろ」
全員.
少し.
驚く.
アリシア.
今まで.
基準点.
中央.
一時介入.
後方.
ルシアン.
多い.
「後ろ?」
アリシア.
「うん」
「どうして?」
「昨日、中央で。後ろ見えなかった」
「フィンが見た」
「うん」
「今日は、私が後ろを見る」
フィン.
「影なら後方検知、合うかも」
セレナ.
「ただし、広げすぎに注意」
「うん」
ルシアン.
「僕は中央寄り後方」
ミリア.
「じゃあ私、正面!」
レオ.
「やりたい?」
「やりたい!」
「よし!」
セレナ.
「二人とも勢いで決めないでください」
フィン.
「でも土前衛は合理的」
セレナ.
少し.
「……そうですね」
今日.
配置.
『中央:レオ』
『正面:ミリア』
『右:セレナ』
『左:フィン』
『中央後方:ルシアン』
『後方・索敵補助:アリシア』
「昨日と」
ミリア.
嬉しそう.
「全然違う」
アリシア.
少し.
怖い.
でも.
楽しみ.
ある.
「指示」
セレナ.
「レオ」
「おう!」
「前へ出ない」
「三歩!」
「声量」
「必要なら大きく!」
「不要なら」
「普通!」
「普通の基準が不安」
フィン.
「それはある」
「お前ら!」
声.
大きい.
周囲.
生徒.
見る.
ミリア.
笑う.
「今のは不要!」
「……はい」
レオ.
少し.
小さくなる.
アリシア.
笑う.
中央.
レオ.
どうなる.
昨日.
できたこと.
今日.
同じではない.
でも.
それでいい.
◇
午後.
第一戦術演習室.
今日は.
昨日より.
見学者.
さらに多い.
昨日の模擬戦.
噂.
広がった.
上段見学席.
生徒.
三十人近い.
教員.
記録官.
中には.
昨日いなかった者も.
「今日は火が中央?」
「昨日、闇だったよな」
「配置変えるの?」
「昨日勝ったのに?」
「なんで変えるんだろ」
外.
同じ疑問.
成功したのに.
変える.
年配の男性.
今日.
演習室中央.
「昨日と同じ条件」
黒板.
『防衛』
『十五分』
『魔導獣十二体』
『標柱維持』
レオ.
少し.
「同じ?」
「同じに見えるか」
男性.
レオ.
少し.
顔.
変わる.
「違う?」
「始まれば分かる」
フィン.
「嫌な言い方」
「褒め言葉として受け取る」
「褒めてない」
男性.
無視.
「配置」
レオ.
中央.
標柱.
立つ.
アリシア.
後方.
昨日.
自分が中央.
今日は.
標柱から.
離れる.
後ろ.
視界.
違う.
六人.
背中.
見える.
前.
ミリア.
土亀斧.
正面.
セレナ.
右.
フィン.
左.
ルシアン.
中央後方.
レオ.
中央.
「中央判断」
男性.
「レオ」
「はい!」
「昨日のアリシアと同じことをする必要はない」
「はい!」
「お前のやり方でやれ」
「はい!」
「ただし」
「三歩!」
男性.
少し.
止まる.
「何だ」
セレナ.
「中央離脱制限です」
「自分たちで決めたのか」
「はい」
「妥当だ」
レオ.
少し.
複雑な顔.
「評価されてるのに嬉しくない」
ミリア.
笑う.
「信用ないってことだから」
「言うな!」
見学席.
笑い.
緊張.
少し.
ほどける.
「開始!」
◇
最初.
静か.
何も.
来ない.
昨日.
開始直後.
三方向.
来た.
今日.
十秒.
二十秒.
何も.
レオ.
「来ない!」
セレナ.
「聞こえています」
フィン.
「静かすぎる」
アリシア.
後方.
影.
足元.
小さく.
広げる.
冷たい.
まだ.
なし.
ルシアン.
「待つ?」
レオ.
「待つ!」
声.
大きい.
でも.
判断.
正しい.
アリシア.
少し.
嬉しい.
前へ.
出ない.
待つ.
三十秒.
突然.
右.
床.
開く.
魔導獣.
三体.
セレナ.
「右三!」
左.
壁.
二体.
フィン.
「左二!」
正面.
なし.
レオ.
中央.
一瞬.
迷う.
「ミリア!」
「何!」
「右!」
ミリア.
正面から.
右.
走る.
「セレナ、一体止めろ!」
「はい!」
水.
拘束.
ミリア.
土壁.
二体.
進路.
変える.
左.
フィン.
一人.
二体.
「左、支援!」
フィン.
早い.
レオ.
中央.
見る.
誰.
アリシア.
後ろ.
ルシアン.
中央後方.
「ルシアン、左!」
レオ.
判断.
ルシアン.
「はい!」
光.
左.
支援.
フィン.
風.
連携.
一体.
落ちる.
見学席.
「速い!」
「火、前出てない!」
レオ.
聞こえる.
「出ないぞ!」
セレナ.
「戦闘中です!」
「はい!」
アリシア.
少し.
笑いそう.
でも.
後方.
静か.
何.
違う.
昨日.
後方.
途中.
二体.
上.
今日.
同じ?
見ない.
今日.
今日.
影.
狭く.
後方.
床.
触れる.
一.
石.
壁.
靴.
何も.
「後方、今はなし」
アリシア.
報告.
レオ.
「了解!」
正面.
突然.
床.
揺れる.
ミリア.
右.
まだ.
三体.
対応.
正面.
標柱.
近く.
床から.
魔導獣.
二体.
出る.
レオ.
中央.
目の前.
「来た!」
火鳥剣.
抜く.
でも.
三歩.
範囲.
標柱.
守る.
一体.
斬る.
もう一体.
横.
抜ける.
「アリシア!」
レオ.
呼ぶ.
後方.
自分.
距離.
ある.
影.
伸ばす.
止める.
でも.
昨日.
自分.
後方.
検知.
役割.
介入.
できる.
一体.
足.
絡む.
「止めた!」
レオ.
火.
小さく.
一体.
落とす.
「できた!」
アリシア.
声.
後ろから.
レオ.
「おう!」
中央.
動かない.
できた.
でも.
次.
右.
ミリア.
「右、一体抜ける!」
セレナ.
「拘束解除!」
ミリア.
壁.
一体.
標柱.
向かう.
レオ.
中央.
「俺行く!」
三歩.
一.
二.
三.
止まる.
距離.
まだ.
届かない.
「くそ!」
レオ.
前へ.
四歩目.
出そう.
セレナ.
「レオ、三歩!」
声.
レオ.
止まる.
一瞬.
本当に.
止まる.
「ミリア!」
レオ.
大声.
「戻せるか!」
「できる!」
ミリア.
土.
地面.
盛り上げ.
魔導獣.
進路.
曲げる.
セレナ.
水.
横.
押す.
標柱.
逸れる.
レオ.
三歩以内.
待つ.
近づいた瞬間.
火.
斬る.
一体.
落ちる.
「よし!」
見学席.
拍手.
少し.
「火、出なかった!」
「自分で止まった!」
レオ.
嬉しそう.
でも.
「前!」
フィン.
正面.
今度.
四体.
同時.
残り.
数.
アリシア.
「残り、今見える四!」
セレナ.
「合計、九処理。残り三のはず!」
フィン.
「見えてる四なら、数おかしい!」
全員.
一瞬.
固まる.
昨日.
十二.
今日.
数.
合わない.
「十三?」
ミリア.
「増えてる!」
見学席.
ざわつく.
「条件同じじゃない!」
「十二じゃなかった?」
男性.
無言.
レオ.
顔.
少し.
怒る.
「十二って!」
でも.
今.
戦闘.
アリシア.
「レオ!」
名前.
呼ぶ.
レオ.
見る.
「後!」
今.
振り返り.
後.
あと.
「……後で!」
レオ.
自分で.
言う.
正面.
四.
「全体、正面!」
声.
大きい.
聞こえる.
ミリア.
正面へ.
戻る.
セレナ.
右から.
中央.
フィン.
左.
射線.
ルシアン.
後方.
アリシア.
さらに.
後ろ.
「ミリア、壁!」
「出す!」
土壁.
中央.
低い.
四体.
二.
右へ.
二.
左へ.
「分けた!」
レオ.
「セレナ右!」
「はい!」
「フィン左!」
「了解!」
「ミリア中央!」
「はい!」
「ルシアン、全体見て!」
「見てる!」
「アリシア!」
「何!」
呼ばれ.
少し.
強く.
返す.
「後ろ!」
「見る!」
自分.
後方.
影.
広げる.
少し.
冷たい.
一.
「一!」
報告.
セレナ.
戦闘中.
でも.
「一、確認!」
返る.
影.
床.
壁.
後方.
何も.
でも.
上.
天井.
影.
届かない.
フィン.
前.
左対応.
後方.
誰.
「ルシアン!」
「何?」
「上、見える?」
光.
照らす.
天井.
影.
動く.
「一!」
ルシアン.
「後方上、一!」
アリシア.
自分.
見えなかった.
でも.
ルシアン.
見た.
「レオ! 後方上、一!」
「了解!」
レオ.
中央.
判断.
正面.
四.
後方.
一.
「アリシア、止められるか!」
聞かれる.
自分.
影.
一.
冷たい.
距離.
上.
触れる?
試せる.
でも.
情報.
多い.
「たぶん!」
フィン.
少し.
こちら.
見る.
仮説.
アリシア.
言い直す.
「仮説。影、壁経由なら届く!」
レオ.
「やれ!」
影.
壁.
上.
伸ばす.
冷たい.
一.
天井近く.
魔導獣.
触れる.
「触った!」
影.
脚.
掴む.
強い.
暴れる.
二?
まだ.
冷たい.
でも.
指.
少し.
遠い?
分からない.
あと.
止める.
レオ.
「状態!」
中央.
聞く.
アリシア.
少し.
驚く.
レオが.
聞いた.
「冷たい!」
「一?」
セレナ.
「たぶん一!」
ノア.
『曖昧』
「一と二の間!」
言った.
セレナ.
「停止準備!」
レオ.
「後方一体、誰行ける!」
ルシアン.
「僕!」
ミリア.
「正面三、私持つ!」
レオ.
「セレナ右!」
役割.
回る.
ルシアン.
後方.
光.
上.
魔導獣.
照らす.
「アリシア、離して!」
アリシア.
影.
離す.
すぐ.
戻す.
感覚.
まだ.
ある.
「冷たい。一」
「確認!」
レオ.
大声.
ルシアン.
光弾.
上.
一体.
落とす.
後方.
安定.
アリシア.
影.
戻る.
止められた.
二まで.
行かなかった.
「できた」
自分.
小さく.
言う.
でも.
前.
まだ.
三.
正面.
戦い.
続く.
◇
ミリア.
正面.
三.
土壁.
低い.
広い.
でも.
一体.
壁.
越える.
「跳んだ!」
ミリア.
驚く.
昨日.
魔導獣.
跳ばなかった.
今日.
対策.
壁.
越える.
標柱.
レオ.
中央.
すぐ.
火.
でも.
上.
標柱.
近い.
火.
広げると.
危ない.
レオ.
一瞬.
止まる.
「撃てない!」
判断.
声.
大きい.
でも.
正しい.
フィン.
「風で落とす!」
左.
射線.
でも.
もう一体.
左.
フィン.
対応中.
「遅れる!」
セレナ.
「水で軌道ずらす!」
水.
上.
でも.
角度.
足りない.
アリシア.
後方.
見える.
影.
伸ばす.
一.
さっき.
止めた.
まだ.
余裕.
「私、行ける!」
レオ.
「アリシア、影!」
影.
床.
標柱.
上.
跳んだ魔導獣.
空中.
影.
直接.
届かない.
でも.
標柱.
影.
使う.
黒い.
柱の影.
伸ばす.
脚.
触れる.
引く.
軌道.
変わる.
魔導獣.
標柱.
横.
落ちる.
「今!」
レオ.
火.
小さく.
斬る.
落とす.
見学席.
歓声.
「今の!」
「連携!」
「火、待った!」
レオ.
「俺待ったぞ!」
セレナ.
「自分で言わないでください!」
「できたこと残すんだろ!」
戦闘中.
でも.
少し.
笑い.
出る.
残り.
二.
ミリア.
正面.
一.
フィン.
左.
一.
セレナ.
右.
なし.
ルシアン.
後方.
戻る.
「残り二!」
セレナ.
「同時!」
レオ.
「ミリア正面! フィン左! 他、支援準備!」
分かりやすい.
短い.
セレナ.
少し.
驚く.
でも.
笑う.
「適切です!」
ミリア.
正面.
一体.
土壁.
今度.
高くしない.
低い.
でも.
段差.
足.
取る.
魔導獣.
速度.
落ちる.
ミリア.
斧.
叩く.
停止.
「一!」
フィン.
左.
風矢.
一体.
しかし.
外れる.
「外れた!」
すぐ.
報告.
以前.
黙る.
今日.
すぐ.
「次、右へずれる!」
仮説.
魔導獣.
本当に.
右.
レオ.
「セレナ!」
「拘束!」
水.
右.
絡む.
フィン.
次.
風矢.
命中.
停止.
全滅.
静か.
一瞬.
六人.
息.
見学席.
まだ.
誰も.
拍手.
しない.
なぜ.
昨日.
十二.
今日.
十三.
でも.
終わった?
教官.
まだ.
「継続」
声.
低い.
六人.
顔.
変わる.
「まだ?」
レオ.
中央.
見る.
セレナ.
「処理十三」
フィン.
「追加可能性」
ミリア.
「どこ?」
アリシア.
後方.
影.
冷たい.
一.
まだ.
広げる?
二.
行く可能性.
でも.
今.
必要.
ノア.
『対象を絞る』
そう.
全部.
広げない.
「後方だけ見る」
アリシア.
宣言.
影.
後方.
床.
狭く.
広げる.
情報.
少ない.
壁.
足元.
「後方、今なし」
フィン.
耳.
風.
前.
右.
左.
「音……」
止まりかける.
レオ.
「仮説!」
フィン.
少し.
笑う.
「上じゃない。床下。正面側」
ミリア.
「床下?」
地面.
土.
彼女.
分かる.
斧.
床.
触れる.
目.
閉じる.
「……いる」
声.
少し.
低い.
「大きい」
次の瞬間.
正面床.
割れる.
大型.
一体.
今まで.
小型.
違う.
大きい.
見学席.
ざわめき.
「大型!」
「条件違うだろ!」
レオ.
「聞いてない!」
男性.
無言.
大型.
正面.
ミリア.
目の前.
土.
相性.
受ける.
でも.
衝撃.
強い.
ミリア.
後ろ.
一歩.
「重い!」
レオ.
中央.
「ミリア、下がれ!」
ミリア.
でも.
「まだ持てる!」
昨日.
今日.
まだ.
みんな.
言う.
レオ.
中央.
一瞬.
迷う.
自分も.
まだ.
行ける.
他人.
止める.
難しい.
「ミリア、状態!」
レオ.
聞く.
ミリア.
呼吸.
速い.
でも.
広い.
閉鎖.
なし.
「怖くない! でも重い!」
正確.
セレナ.
「負荷は恐怖ではなく筋力!」
フィン.
「右脚、踏ん張りずれてる!」
ルシアン.
「ミリア、一回下がって!」
声.
重なる.
レオ.
中央.
選ぶ.
「ミリア、一歩下がれ! 土壁残せ!」
「はい!」
ミリア.
下がる.
壁.
残す.
大型.
ぶつかる.
壁.
亀裂.
「セレナ、右拘束!」
「はい!」
「フィン、左脚!」
「了解!」
「ルシアン、ミリア確認!」
「はい!」
「アリシア!」
レオ.
呼ぶ.
後方.
「何!」
「大型の影、止められる?」
見る.
大きい.
影.
強い.
止める.
できる?
昨日まで.
大型.
試してない.
「未確認!」
正直.
「なら仮説!」
レオ.
今度.
促す.
アリシア.
胸.
少し.
動く.
「脚一本なら、たぶん!」
「一でやれ!」
一.
負荷.
一で.
止める.
「やる!」
影.
正面.
一本.
大型.
右後脚.
絡む.
重い.
引かれる.
冷たい.
すぐ.
一.
「一!」
「確認!」
レオ.
大型.
動き.
少し.
鈍る.
セレナ.
水.
右前脚.
拘束.
フィン.
風.
左.
バランス.
崩す.
ミリア.
一歩.
下がった.
呼吸.
戻る.
ルシアン.
「ミリア、行ける?」
「行ける!」
「何する?」
ルシアン.
聞く.
ミリア.
見る.
大型.
脚.
固定.
「正面、押す!」
レオ.
「やれ!」
ミリア.
土.
床.
盛り上げ.
大型.
胸元.
持ち上げる.
重心.
崩れる.
「今!」
レオ.
火.
でも.
大型.
中央.
標柱.
近い.
火.
広範囲.
危ない.
レオ.
剣.
握る.
精密.
一点.
昨日.
苦手.
でも.
今日.
試す.
「首!」
セレナ.
「一点だけ!」
フィン.
「風で火、絞る!」
レオ.
「できるか!?」
フィン.
「仮説!」
レオ.
一瞬.
笑う.
「やれ!」
風.
火.
細く.
集まる.
レオ.
斬る.
一点.
大型.
首元.
魔導核.
命中.
光.
弾ける.
停止.
大きな.
音.
演習室.
静か.
六人.
全員.
動かない.
教官.
手.
上げる.
「終了」
瞬間.
見学席.
大きな.
拍手.
歓声.
昨日より.
大きい.
「今のすげえ!」
「火と風!」
「土が崩した!」
「闇、脚止めてた!」
「水も拘束!」
「光、ずっと見てた!」
「全員だ!」
全員.
その言葉.
アリシア.
胸.
強く.
鳴る.
でも.
影.
冷たい.
一.
まだ.
言う.
「一」
拍手の中.
小さい.
でも.
セレナ.
聞く.
「一、確認」
ルシアン.
「感覚」
「ある」
「身体」
「分かる」
「復帰不要?」
「うん」
止めた.
一で.
終われた.
「できた」
アリシア.
自分.
小さく.
言う.
ノア.
『聞こえた』
「うん」
◇
休憩.
四分.
今では.
自然.
六人.
床.
水.
呼吸.
レオ.
中央.
座る.
今日は.
前へ.
ほとんど出なかった.
「どうだった?」
ミリア.
レオに.
「何が?」
「中央」
レオ.
少し.
考える.
「……前行きたかった」
全員.
笑う.
「知ってる」
フィン.
「三回」
セレナ.
「数えてたの!?」
「四歩目へ移動しかけた回数です」
「三回も?」
「三回です」
「一回だと思ってた」
「本人評価と周囲評価」
アリシア.
言う.
レオ.
見る.
「アリシアまで!」
少し.
笑い.
でも.
レオ.
真面目.
戻る.
「でも」
少し.
手.
見る.
「前に出ない方が、見えた」
全員.
少し.
静か.
「何が?」
ルシアン.
「みんな」
レオ.
中央.
昨日まで.
前.
敵.
見てた.
今日.
中央.
「ミリアが重そうなの」
「うん」
「セレナが右やってるの」
「うん」
「フィンが外したの」
「見てた?」
フィン.
「見てた!」
「恥ずかしい」
「でも二発目当てた!」
「それは言って」
「アリシアが後ろで一って言ったのも」
アリシア.
少し.
見る.
「聞こえた?」
「聞こえた」
レオ.
少し.
声.
小さく.
「前だと。聞こえてなかったかも」
中央.
見える.
違う.
「指揮、楽しかった?」
ミリア.
レオ.
すぐ.
答えない.
「……怖かった」
全員.
少し.
驚く.
レオ.
怖い.
言う.
「どこ行かせるか。間違えたら」
声.
いつもより.
低い.
「俺が行けば済むって思った」
「でも三歩」
アリシア.
「うん」
「出なかった」
「うん」
「できた」
レオ.
少し.
笑う.
「できた」
自分で.
言う.
セレナ.
紙.
出そう.
ルシアン.
「まだ二分」
「……はい」
紙.
戻す.
笑い.
◇
振り返り.
黒板.
今日.
『結果:勝利』
『処理数:十四』
レオ.
「十四!?」
男性.
「昨日十二と伝えた」
「今日も同じ条件って!」
「同じ条件とは言っていない」
「同じって!」
「黒板の初期表示は十二」
「増やした!」
「ああ」
「ずるい!」
見学席.
少し.
笑い.
フィン.
「教官、性格悪い」
「昨日も聞いた」
「褒めてない」
「知っている」
男性.
続ける.
「なぜ増やした」
六人.
少し.
見る.
「昨日の戦術を。そのまま繰り返すか確認するため」
アリシア.
午前.
授業.
ノア.
朝.
全部.
つながる.
「昨日」
男性.
「お前たちは十二体を処理した」
「はい」
「今日。同じ配置。同じ動き。同じ判断を再現すれば」
黒板.
『敗北可能性』
「追加二体と大型一体に対応できなかった」
レオ.
「大型入ってたら十五じゃない?」
記録官.
「小型十三+大型一」
「十四」
「俺、数え間違えた」
セレナ.
「記録に残します」
「やめろ!」
少し.
笑い.
男性.
「今日の評価」
黒板.
一.
『配置変更』
二.
『中央役交代』
三.
『昨日の成功を固定しなかった』
「これが良かった」
アリシア.
少し.
胸.
軽い.
昨日.
同じに.
しなかった.
正解.
ではない.
良かった.
「問題」
次.
『条件変更への感情反応』
六人.
少し.
顔.
変わる.
「十三体目を確認した時」
男性.
「レオ」
「怒った」
「はい」
「なぜ」
「十二って聞いてたから」
「怒ったあと」
「アリシアに呼ばれた」
アリシア.
見る.
「後でって言った」
「そうだ」
男性.
「戦闘後に確認するべき不満を、戦闘中へ持ち込まなかった」
レオ.
少し.
嬉しい.
「できた?」
アリシア.
「できた!」
声.
大きい.
でも.
今は.
いい.
「セレナ」
「はい」
「数が合わないと気づいた」
「はい」
「推測」
「条件変更」
「しかし言わなかった」
「確定していなかったため」
フィン.
「僕と同じ」
セレナ.
止まる.
本当に.
同じ.
確信.
ない.
黙る.
「……はい」
男性.
「次は」
セレナ.
「条件変更の可能性、と仮説報告します」
「よし」
「フィン」
「はい」
「床下」
「仮説で言えた」
「正解」
「はい」
「ミリア」
「はい」
「大型対応」
「まだ持てるって言った」
「なぜ」
「本当に持てると思った」
「周囲は」
フィン.
「右脚ずれてた」
ルシアン.
「呼吸上昇」
セレナ.
「押圧負荷増加」
アリシア.
「一歩、下がったら戻れた」
ミリア.
少し.
考える.
「……まだ持てると。持ち続けていいは違う?」
男性.
「そうだ」
「はい」
「ルシアン」
「はい」
「今日は治癒なし」
「はい」
「代わりに」
男性.
「ミリアの継続判断をした」
「はい」
「昨日は、自分の治癒を止められなかった」
「はい」
「今日は他人を止めた」
ルシアン.
少し.
目.
細める.
「違いました」
「何が」
「止めるの。難しい」
「なぜ」
「本人がまだできると言うから」
アリシア.
胸.
自分.
思い出す.
大丈夫.
もう一つ.
まだ.
「でも止めた」
「はい」
「次」
「もっと早く。足と呼吸を見る」
「よし」
「アリシア」
「はい」
「一と二の間」
「はい」
「以前なら?」
「もう一つって」
「今日は」
「言えた」
「なぜ」
アリシア.
考える.
「レオが聞いた」
「他」
「後方一体を。ルシアンへ渡せた」
「他」
「止める前提だった」
「何を」
「一でやれって言われた」
レオ.
少し.
胸.
張る.
「俺言った!」
「聞こえてる」
ミリア.
笑う.
男性.
少し.
頷く.
「条件が明確なら。止めやすい」
アリシア.
「うん」
「では次から」
セレナ.
すぐ.
「アリシアへの影介入指示時は、負荷上限も併記」
「例」
フィン.
「一まで。二に入ったら交代」
ルシアン.
「いいと思う」
ミリア.
「私も」
レオ.
「じゃあそれ!」
六人.
自分たちで.
追加.
輪郭.
運用.
変わる.
「今日の中央」
男性.
レオを見る.
「自己評価」
レオ.
少し.
考える.
「七十点」
全員.
少し.
驚く.
「低い?」
ミリア.
「前行きそうになった」
「うん」
「数増えて怒った」
「うん」
「ミリア止めるの遅れた」
「うん」
「でも」
レオ.
少し.
笑う.
「三歩出なかった」
「うん」
「みんなの声聞いた」
「うん」
「大型倒した」
「うん」
「七十」
セレナ.
「妥当かもしれません」
レオ.
「百じゃないのか」
アリシア.
聞く.
「百だったら、次直すところないだろ」
その言葉.
アリシア.
少し.
目.
大きく.
ノア.
百点.
でも.
意味.
違う.
レオ.
続ける.
「七十でも勝った」
「うん」
「じゃあ、次八十」
単純.
でも.
いい.
「私」
アリシア.
小さく.
「昨日。役に立ったって書いた」
レオ.
「うん」
「今日。昨日と同じじゃなかった」
「うん」
「でも」
少し.
言葉.
探す.
「今日も。役に立った?」
聞いてしまう.
五人.
少し.
沈黙.
アリシア.
怖い.
でも.
レオ.
最初.
「立った!」
即答.
セレナ.
「後方検知。介入。大型脚拘束。全て有効です」
フィン.
「僕が見えない後ろを見てた」
ミリア.
「最後、大型止めるの助かった」
ルシアン.
「一で戻れたことも」
アリシア.
胸.
熱い.
「でも」
フィン.
続ける.
「昨日と同じ役立ち方じゃない」
アリシア.
見る.
「昨日は中央」
「うん」
「今日は後ろ」
「うん」
「同じ形じゃなくても、役に立つ」
その言葉.
朝.
怖かったこと.
昨日できた.
今日.
同じ.
できなければ.
でも.
今日.
違う形.
役に立った.
「……うん」
アリシア.
小さく.
頷く.
ノア.
影の中.
『百一点』
「今?」
『今』
アリシア.
少し.
笑う.
◇
見学終了後。
廊下。
生徒たちが。
演習室から。
次々に出ていく。
さっきまで。
上段の見学席を埋めていた。
三十人近い生徒。
その声が。
石造りの廊下へ。
広がっていた。
「最後の大型、見た?」
「見た!」
「あれ昨日いなかったよな?」
「絶対いなかった」
「教官、追加したんだって」
「性格悪くない?」
「でも対応したじゃん」
「火のやつ、昨日ずっと前だったのに、今日中央だったぞ」
「三歩までって自分たちで決めたらしい」
「何それ」
「前に出すと止まらないからじゃない?」
「聞こえるぞ!」
レオの声。
廊下。
響く。
少し離れたところで。
話していた男子生徒たち。
一斉に。
振り返る。
「聞こえてた!」
「そりゃあの声なら本人も聞こえるだろ!」
「逆だろ!」
笑い。
起こる。
レオ。
少し。
むっとする。
「俺、今日は出なかったぞ!」
「知ってる!」
「三歩!」
「そこまで聞いてたのか!」
また。
笑い。
昨日とは。
少し。
違う。
昨日。
模擬戦。
終わったあと。
向けられた視線。
すごい。
六神器。
勝った。
闇。
指示。
そんな。
驚き。
今日は。
もっと。
細かい。
火。
中央。
土。
前。
闇。
後ろ。
風。
仮説。
水。
拘束。
光。
確認。
一人ずつ。
見られている。
アリシア。
廊下。
歩きながら。
少し。
周囲。
気になる。
「闇の子」
聞こえる。
身体。
少し。
固くなる。
でも。
続き。
「昨日と全然違ったな」
「昨日は中央だった」
「今日は後ろ」
「どっちが得意なんだろ」
「両方できるんじゃない?」
「でも最後、一って言ってたよな」
「あれ何?」
「負荷じゃない?」
「自分で止めてるってこと?」
アリシア。
足。
少し。
遅くなる。
後ろ。
セレナ。
気づく。
「アリシア?」
「聞こえた」
「何がですか」
「私の話」
セレナ。
少し。
周囲。
見る。
まだ。
話している。
生徒たち。
「気になりますか」
アリシア。
少し。
考える。
朝。
『思ったより、ちゃんと指示出してた』
嫌だった。
でも。
聞きに行かなかった。
今。
また。
自分。
話されている。
「少し」
「確認しますか」
セレナ。
聞く。
以前なら。
たぶん。
自分も。
確認したい。
意味。
正確に。
知りたい。
でも。
アリシア。
首。
横。
「しない」
「理由は?」
「危険じゃない」
「はい」
「悪口でも、たぶんない」
「はい」
「それに」
少し。
間。
「どっちが得意か。私もまだ分からない」
セレナ。
少し。
目。
細める。
「確かに」
「昨日は中央」
「はい」
「今日は後ろ」
「はい」
「明日は」
「分かりません」
「うん」
分からない。
でも。
それで。
いい。
後ろから。
フィン。
「でも、今日の後方は合ってたと思う」
会話。
聞いていた。
「本当?」
「うん」
「どうして?」
「僕が前と左に集中できた」
フィン。
歩きながら。
少し。
肩。
回す。
「昨日は僕が後方上まで見てた」
「うん」
「今日はアリシアとルシアンが見た」
「でも、上は見えなかった」
「だからルシアンに聞いた」
「うん」
「それも役割」
アリシア。
少し。
考える。
自分で。
全部。
見えなくても。
いい。
見えない。
だから。
聞く。
ルシアン。
見た。
報告。
できた。
「見えなかったことも」
アリシア。
「失敗じゃない?」
「見えないのに、見えたって言ったら失敗」
フィン。
すぐ。
答える。
「見えないって分かって、見える人に聞いたなら」
少し。
間。
「普通に連携」
「普通」
「うん」
普通。
その言葉。
少し。
嬉しい。
特別。
神器。
闇。
六番目。
ではなく。
見えない。
聞く。
誰か。
答える。
それが。
普通の。
連携。
「フィン」
「何?」
「今日、すぐ外れたって言った」
フィン。
一瞬。
顔。
少し。
嫌そう。
「見てた?」
「見てた」
「忘れていい」
「嫌」
「何で」
「できたから」
フィン。
少し。
止まる。
昨日。
位置。
外した。
でも。
反射仮説。
合った。
今日。
風矢。
外した。
でも。
すぐ。
『外れた!』
言った。
次。
『右へずれる!』
仮説。
出した。
当たった。
「……できた?」
「うん」
アリシア。
少し。
笑う。
「外れたって言えた」
「そこ?」
「そこ」
「命中じゃなく?」
「二発目は当たった」
「それも言って」
「両方」
フィン。
少し。
口元。
上がる。
「じゃあ残して」
「セレナ」
アリシア。
呼ぶ。
「記録」
「聞いています」
セレナ。
すでに。
小さな紙。
出している。
「休憩終わったから?」
ルシアン。
「はい」
「さっき止められてたもんね」
「今は記録可能時間です」
真面目。
でも。
少し。
嬉しそう。
レオ。
横。
「俺も!」
「何ですか」
「三歩出なかった!」
「記録済みです」
「早い!」
「三回出かけたことも」
「それ消して!」
「事実です」
「できたことだけ残すんじゃないのか!」
「できなかったことと、できたことを分けて残します」
「俺に厳しくない!?」
ミリア。
笑う。
「レオだから」
「理由になってない!」
廊下。
六人。
声。
重なる。
アリシア。
その中。
歩く。
昨日。
勝った。
今日。
また。
勝った。
でも。
同じではない。
昨日。
自分が中央。
今日。
レオ。
昨日。
自分。
声。
集めた。
今日。
後ろ。
見た。
昨日。
フィン。
後方。
今日。
左。
昨日。
ミリア。
右。
今日。
正面。
昨日。
ルシアン。
後方。
今日。
中央近く。
昨日。
レオ。
前。
今日。
中央。
セレナ。
昨日も今日も。
整理。
でも。
今日。
自分の仮説を。
言えなかった。
同じ人。
同じ神器。
同じ六人。
それでも。
毎日。
違う。
◇
階段。
下りる。
途中。
前。
見学していた。
二人の女子生徒。
こちら。
何度か。
見る。
アリシア。
気づく。
目。
逸らす。
でも。
一人。
近づく。
「あの」
声。
アリシア。
止まる。
誰?
見たこと。
ある。
同じ学年。
でも。
名前。
知らない。
「はい」
「今日の」
女子生徒。
少し。
緊張。
「後ろから影を伸ばしたやつ」
「うん」
「昨日も使ってた?」
アリシア。
少し。
考える。
「使った」
「同じ?」
「違う」
「どう違うの?」
質問。
危険?
違う。
興味。
アリシア。
少し。
喉。
緊張。
でも。
答える。
「昨日は。中央から、必要なところ」
「うん」
「今日は。後ろを見るため」
「索敵?」
「少し」
「攻撃も?」
「止める」
「倒すんじゃなく?」
「うん」
「へえ……」
女子生徒。
少し。
目。
輝く。
「闇って、もっと攻撃系だと思ってた」
アリシア。
胸。
少し。
動く。
闇。
怖い。
攻撃。
危険。
以前なら。
引っかかった。
でも。
今。
「私も」
「え?」
「最初。そう思ってた」
女子生徒。
驚く。
「自分の神器なのに?」
「うん」
「今は?」
アリシア。
少し。
黒月。
腰。
見る。
「止めるのが。多い」
「へえ」
「でも」
「うん」
「まだ分からない」
「何が?」
「他にできること」
女子生徒。
少し。
笑う。
「じゃあ、これから?」
「うん」
「また見てもいい?」
アリシア。
止まる。
見られる。
怖い。
失敗。
見られる。
今日。
外した。
止まりかけた。
冷たい。
一と二。
全部。
見られる。
でも。
「……うん」
言う。
「ありがとう!」
女子生徒。
友人のところ。
戻る。
小さな声。
「話せた!」
「普通に?」
「普通に!」
聞こえる。
アリシア。
少し。
複雑。
「普通に、って」
ミリア。
隣。
笑う。
「気になる?」
「少し」
「でも」
アリシア。
少し。
笑う。
「悪くない」
「うん」
普通に。
話せた。
以前なら。
それも。
驚かれる。
嫌。
だったかもしれない。
今。
少し。
できた。
に。
聞こえる。
◇
午後の残り。
通常授業。
魔力制御。
今日は。
簡単な。
出力維持。
小さな魔石。
一定量。
魔力。
流す。
昨日。
模擬戦。
今日。
大型。
身体。
疲労。
ある。
アリシア。
魔力。
流す。
最初。
安定。
でも。
三分。
光。
少し。
揺れる。
「……あ」
昨日なら。
できた。
同じ課題。
昨日。
四分。
安定。
今日。
三分。
揺れた。
胸。
瞬間。
重くなる。
昨日より。
できない。
朝。
怖かった。
それ。
来た。
隣。
メリル。
「揺れた?」
「うん」
「疲れてる?」
「たぶん」
「止める?」
アリシア。
魔石。
見る。
まだ。
できる。
でも。
光。
揺れ。
少し。
増える。
教師。
「無理に維持しないように」
教室。
全体。
声。
「昨日の記録と比較する者は、今日の疲労状態も必ず記録してください」
アリシア。
手。
止める。
魔力。
切る。
三分十二秒。
昨日。
四分。
短い。
でも。
紙。
書く。
『三分十二秒』
少し。
手。
止まる。
その横。
『前日:四分』
負けた。
みたい。
でも。
さらに。
『本日:模擬戦後。疲労あり』
書く。
教師。
机。
間。
歩く。
アリシアの紙。
見る。
「良い記録です」
「短くなった」
「はい」
「昨日より」
「はい」
「悪い?」
聞く。
教師。
少し。
考える。
「何を測りたいですか」
「魔力制御」
「今日の三分十二秒は。昨日より能力が落ちた証明ですか」
「……分からない」
「そうです」
教師。
紙。
指。
「昨日は通常授業後」
「はい」
「今日は模擬戦後」
「はい」
「条件が違います」
「はい」
「比較するなら。条件も残す」
「はい」
「そして」
教師。
少し。
笑う。
「疲労状態で三分十二秒維持できた、という見方もできます」
アリシア。
少し。
目。
上げる。
「できた?」
「できます」
教師。
「記録は。自分を責める材料ではありません」
胸。
少し。
刺さる。
「次に使う材料です」
「……はい」
昨日。
できた。
今日。
短い。
でも。
それだけで。
悪くなった。
ではない。
条件。
違う。
今日の身体。
今日の結果。
記録。
する。
アリシア。
紙。
最後。
『疲労状態でも三分十二秒』
書く。
メリル。
横。
覗かない。
でも。
「できた?」
小声。
「うん」
「何分?」
「三分十二秒」
「昨日は?」
「四分」
「じゃあ今日は短いね」
「うん」
「でも?」
アリシア。
少し。
笑う。
「今日は今日」
メリル。
笑う。
「うん」
◇
放課後。
六人。
今日は。
すぐには。
集まらない。
訓練。
終わった。
振り返り。
した。
だから。
それぞれ。
教室。
戻る。
でも。
アリシア。
鞄。
持って。
校舎。
出ようとした時。
「アリシア!」
後ろ。
声。
大きい。
振り返る前に。
誰か。
分かる。
「レオ」
「おう!」
走ってくる。
「廊下」
「走ってない!」
「走ってた」
「早歩き!」
「嘘」
「ちょっと走った!」
認める。
レオ。
隣。
止まる。
少し。
息。
上がっている。
「何?」
「聞きたい」
「何を?」
「今日の俺」
アリシア。
少し。
見る。
「七十点?」
「それは自分で言った」
「そうじゃなくて」
レオ。
頭。
少し。
掻く。
「中央」
「うん」
「どうだった?」
聞かれる。
評価。
自分。
昨日。
中央。
今日。
レオ。
比べる?
違う。
「声、大きかった」
「それ以外!」
「三歩」
「出なかった!」
「三回出そうだった」
「セレナから聞いたな!」
「見てた」
「……そうだった」
レオ。
少し。
落ちる。
でも。
アリシア。
続ける。
「でも」
「うん」
「私より、早かった」
「何が?」
「人を動かすの」
レオ。
止まる。
「本当?」
「うん」
「私は昨日。聞いて。考えて。言った」
「うん」
「レオは」
思い出す。
『ミリア、右!』
『ルシアン、左!』
『アリシア、後ろ!』
速い。
短い。
「すぐ言った」
「間違ってた?」
「少し」
「どこ!?」
「大型。ミリア止めるの遅かった」
「……そこか」
「でも」
「うん」
「私だったら。もっと迷ったかも」
レオ。
少し。
目。
大きく。
「昨日勝ったじゃん」
「昨日は大型いなかった」
「そっか」
「だから」
アリシア。
少し。
考える。
「レオの中央は。私の中央と違う」
「悪い?」
「違うだけ」
「良いところは?」
「速い」
「悪いところ」
「自分で行こうとする」
「……はい」
「怒る」
「……はい」
「声が大きい」
「それは良い方にも入れて!」
アリシア。
少し。
笑う。
「聞こえる」
「だろ!」
「でも大きい」
「どっちなんだ!」
声。
大きい。
近く。
通り過ぎた生徒。
振り返る。
レオ。
口。
閉じる。
「……今のは大きい?」
「うん」
「分かった」
小さい。
極端。
アリシア。
笑う。
「レオ」
「何?」
「今日」
「うん」
「私が一と二の間って言った時」
「うん」
「一でやれって言った」
「言った」
「どうして?」
レオ。
少し。
考える。
「昨日」
「うん」
「二で止まっただろ」
「うん」
「今日は後ろだったし」
「うん」
「大型もいたし」
「うん」
「二まで使わなくていいと思った」
単純。
でも。
それ。
今日の条件。
見て。
変えた。
「ありがとう」
アリシア。
言う。
レオ。
少し。
照れたように。
顔。
逸らす。
「中央だから」
「うん」
「俺の仕事」
「うん」
「でも」
少し。
間。
「アリシアが昨日やったから。分かった」
「何が?」
「中央って」
レオ。
校舎。
出口。
向こう。
見る。
「強いやつが立つ場所じゃない」
アリシア。
黙る。
「みんなを見て。止める場所」
「うん」
「俺、前にいる時」
拳。
握る。
「敵しか見てなかった」
「うん」
「今日」
少し。
手。
開く。
「みんな見えた」
アリシア。
胸。
温かい。
昨日。
自分が。
中央。
やった。
それ。
今日。
レオ。
違う形。
使った。
同じではない。
でも。
つながっている。
「レオ」
「何?」
「役に立った」
「俺?」
「うん」
「知ってる!」
即答。
アリシア。
少し。
笑う。
「聞かなくても?」
「大型倒した!」
「みんなで」
「じゃあ、みんな役に立った!」
「うん」
「アリシアも!」
「うん」
今日は。
すぐ。
言える。
「役に立った」
自分。
声。
小さい。
でも。
はっきり。
レオ。
笑う。
「じゃあまた明日!」
「うん」
「次は誰が中央かな!」
「分からない」
「俺もう一回でもいいぞ!」
「セレナが止める」
「何で!?」
走りかける。
アリシア。
「廊下」
レオ。
歩く。
「……はい」
◇
校門。
夕方。
メリル。
待っている。
今日は。
先に。
帰らなかった。
「おかえり」
「ただいま」
「またレオ君?」
「うん」
「声で分かった」
「みんな分かる」
二人。
歩く。
夕方。
空。
薄い橙。
風。
少し。
冷たい。
「今日、どうだった?」
メリル。
聞く。
昨日。
同じ質問。
でも。
今日。
答え。
違う。
「勝った」
「また?」
「うん」
「すごい」
「でも、昨日と違った」
「何が?」
「全部」
「全部?」
「配置」
「うん」
「敵」
「うん」
「中央」
「うん」
「私の役割」
「うん」
「レオ」
「うん」
「みんな」
メリル。
少し。
笑う。
「じゃあ、同じなのは?」
アリシア。
考える。
六人。
名前。
神器。
場所。
勝利。
でも。
「名前」
「名前?」
「レオ」
「うん」
「セレナ」
「うん」
「フィン」
「うん」
「ミリア」
「うん」
「ルシアン」
「うん」
「アリシア」
「うん」
同じ。
人。
でも。
昨日と。
今日。
違う。
「同じ人だけど」
アリシア。
言う。
「同じじゃない」
「難しい」
「うん」
「でも」
メリル。
少し。
考える。
「私も昨日と今日、違うよ」
「何が?」
「今日は朝、少し寝坊した」
「それ?」
「大事」
「何分?」
「七分」
「少し」
「七分あれば髪が大変」
「今日、普通」
「頑張ったから」
アリシア。
笑う。
普通。
毎日。
違う。
それで。
当たり前。
「今日」
メリル。
「昨日できたこと、できなかった?」
アリシア。
少し。
止まる。
「魔力制御」
「うん」
「昨日四分」
「今日?」
「三分十二秒」
「短い」
「うん」
「嫌だった?」
「最初」
「今は?」
「疲れてた」
「うん」
「だから。今日の三分十二秒」
「うん」
「昨日の四分と。同じじゃない」
「うん」
「でも」
少し。
言葉。
選ぶ。
「どっちも、できた」
メリル。
笑う。
「いいね」
「うん」
「じゃあ明日は?」
「分からない」
「何分できる?」
「分からない」
「中央?」
「分からない」
「勝つ?」
「分からない」
「役に立つ?」
アリシア。
少し。
止まる。
朝。
同じ。
問い。
今日。
役に立てる?
昨日。
できた。
今日。
できなかったら。
怖い。
でも。
今。
「分からない」
答える。
メリル。
少し。
驚く。
「そこも?」
「うん」
「怖くない?」
「少し」
「でも?」
「今日になったら。今日の私でやる」
メリル。
少し。
黙る。
それから。
「そっか」
柔らかく。
言う。
「それでいいね」
「うん」
◇
家。
夕食。
祖父。
「今日は」
「レオが中央」
「前へ出たか」
「三歩まで」
「出たんじゃないか」
「三歩はいい」
「四歩目」
「止まった」
「誰が」
「レオ」
「自分で?」
「セレナが名前呼んだ」
「なら半分自分」
「うん」
「結果」
「勝った」
「そうか」
「敵、増えた」
「何体」
「十四」
「昨日」
「十二」
「大型」
「一」
「怪我」
「なし」
「冷え」
「一」
「二」
「行かなかった」
「そうか」
祖父。
スープ。
一口。
「昨日より良かったか」
アリシア。
止まる。
比べる。
昨日。
十二。
今日。
十四。
大型。
勝った。
なら。
今日。
上?
でも。
違う。
「分からない」
「なぜ」
「違うから」
「何が」
「全部」
祖父。
少し。
見る。
「なら比べなくていい」
「簡単」
「難しくする必要があるか?」
「……ない」
「昨日は昨日」
「うん」
「今日は今日」
「うん」
「明日は」
「明日」
「分かってるじゃないか」
アリシア。
少し。
笑う。
「おじいちゃん」
「何だ」
「今日、百点?」
「何の」
「私」
「知らん」
「ノアは百一点って」
「猫に聞け」
『猫ではない』
「聞こえない」
『失礼』
「ノア、怒ってる」
「飯を食え」
「はい」
でも。
祖父。
少し。
間。
「一で止めたんだろ」
「うん」
「なら、それは良かった」
「うん」
「昨日より、とは言わん」
アリシア。
少し。
顔。
上げる。
「今日、良かった」
「うん」
その言葉。
胸。
ゆっくり。
入る。
昨日より。
ではなく。
今日。
良かった。
「うん」
もう一度。
答える。
◇
夜。
練習帳。
机。
灯り。
ノア。
横。
今日は。
書くこと。
多い。
でも。
最初。
題。
『昨日できたことは、今日も同じ形ではできない』
書く。
その下。
『昨日』
『中央:アリシア』
『十二体』
『標柱無傷』
『勝利』
『今日』
『中央:レオ』
『十四体。大型一』
『標柱無傷』
『勝利』
結果。
同じ。
勝利。
でも。
中身。
違う。
『レオ』
『中央』
『三歩制限』
『前へ出ようと三回』
『四歩目は出なかった』
『判断が速い』
『条件変更で怒ったが、後回しにできた』
『他者の状態確認がまだ遅れる』
『本人評価七十点』
次。
『セレナ』
『処理数の不一致に気づいた』
『条件変更を推測したが、確定していないため言わなかった』
『次:仮説として報告』
『フィン』
『一射外した』
『すぐ報告』
『次のずれを仮説で共有』
『二射目命中』
『床下の大型を仮説報告』
『ミリア』
『正面』
『大型を受けた』
『「まだ持てる」と申告』
『右脚ずれ、呼吸上昇』
『一歩下がって復帰』
『まだ持てる≠持ち続けていい』
『ルシアン』
『治癒なし』
『ミリアの状態確認』
『本人が「まだできる」と言う時に止める難しさを経験』
『次:身体兆候を早く見る』
そして。
『アリシア』
ペン。
少し。
止まる。
昨日。
『中央』
今日。
『後方』
『後方索敵』
『上方は見えず、ルシアンへ確認』
『見えないことを他者へ渡せた』
『一と二の間を申告』
『一でやれ、という条件で停止しやすかった』
『大型:脚一本のみ拘束』
『負荷一』
『終了後も一』
『復帰不要』
『役に立った』
最後。
その言葉。
昨日も。
書いた。
同じ。
でも。
意味。
少し。
違う。
昨日。
中央で。
役に立った。
今日。
後ろで。
役に立った。
昨日。
声。
集めた。
今日。
見えないと。
言えた。
昨日。
二で。
止まった。
今日。
一で。
終えた。
『昨日と同じではない』
『でも、今日も役に立った』
書く。
ノア。
見る。
『続き』
「何?」
『今日、できなかったこと』
アリシア。
少し。
嫌。
でも。
書く。
『魔力制御』
『昨日:四分』
『今日:三分十二秒』
少し。
胸。
重い。
でも。
その横。
『条件:模擬戦後。疲労あり』
『疲労状態で三分十二秒』
書く。
「できた?」
『できた』
「昨日より短い」
『だから?』
「……今日の記録」
『ええ』
「悪くない?」
『記録に良い悪いをつける必要がある?』
「ない」
『なら』
アリシア。
ペン。
動かす。
『短くなった=弱くなった、ではない』
『条件を見る』
『今日の身体を見る』
次。
朝。
自分。
『昨日の成功が、今日の自分へ命令していた』
『昨日できたから、今日もできなければならない』
『昨日役に立ったから、今日も同じように役に立たなければならない』
少し。
手。
止まる。
それ。
怖かった。
『でも』
『昨日の私は中央』
『今日の私は後方』
『同じ形ではできない』
『同じ形でなくていい』
ノア。
尻尾。
机。
ゆっくり。
動く。
「ノア」
『何?』
「昨日の私と。今日の私」
『ええ』
「どっちが強い?」
『比較条件不足』
「セレナみたい」
『正しいでしょう』
「うん」
『それに』
「何?」
『強さを一列に並べる癖をやめなさい』
アリシア。
少し。
止まる。
昨日より。
今日。
上。
下。
強い。
弱い。
できた。
できない。
全部。
一列。
並べたくなる。
「じゃあ」
『何』
「昨日の私は?」
『昨日のあなた』
「今日の私は?」
『今日のあなた』
「明日」
『明日のあなた』
「それだけ?」
『それだけ』
「簡単」
『難しい?』
「……少し」
『だから練習する』
「何を?」
『今日を見ること』
アリシア。
静か。
その言葉。
書く。
『今日を見る』
短い。
でも。
大事。
昨日の成功。
記録。
残す。
忘れない。
使う。
でも。
昨日へ。
戻ろうとしない。
今日。
疲れているなら。
疲れている。
怖いなら。
怖い。
できるなら。
できる。
分からないなら。
分からない。
その状態で。
今日の判断。
する。
「ノア」
『何?』
「今日、百一点?」
『百一点』
「理由」
『昨日と同じ百点を取りに行かなかった』
アリシア。
少し。
笑う。
「でも百一点」
『今日は今日の採点』
「昨日より一増えたわけじゃない?」
『違う』
「じゃあ明日も百一点?」
『知りません』
「減る?」
『知りません』
「百二点?」
『知りません』
「厳しい」
『今日のあなたが明日の点数を決めようとしない』
「……はい」
『今まさにやっている』
「分かった」
少し。
笑う。
練習帳。
最後。
一行。
『昨日できたことは、今日も同じ形ではできない』
その下。
『でも、昨日できたことは消えない』
『今日できなかったことがあっても、昨日の成功は嘘にならない』
『今日違うことができても、昨日より上になったわけではない』
『昨日は昨日』
『今日は今日』
『今日の私は、今日の状態で、今日できることをする』
さらに。
少し。
考える。
『六人も同じ』
『昨日のレオは前衛』
『今日のレオは中央』
『昨日のミリアは右』
『今日のミリアは正面』
『昨日の私は中央』
『今日の私は後方』
『役割が変わると、見えるものが変わる』
『見えるものが変わると、できることも、難しいことも変わる』
『だから』
『六者輪郭記録は、完成しない』
アリシア。
その一文。
少し。
見る。
完成。
しない。
以前なら。
不安。
だった。
完成しない。
正解。
固定。
ない。
でも。
今。
少し。
違う。
『完成しないから、更新できる』
書く。
胸。
温かい。
ノア。
練習帳。
見る。
『良い』
「百二点?」
『欲張り』
「聞いただけ」
『今日は百一点』
「分かった」
ペン。
置く。
灯り。
少し。
落とす。
寝台。
入る。
ノア。
いつもの。
足元。
「明日」
アリシア。
言う。
『何?』
「誰が中央かな」
『知りません』
「セレナ?」
『知りません』
「フィン?」
『知りません』
「ミリア?」
『知りません』
「ルシアン?」
『知りません』
「私?」
『知りません』
「レオもう一回」
『セレナが止めるでしょうね』
アリシア。
少し。
笑う。
「同じこと言った」
『妥当だから』
「明日、勝てるかな」
『知りません』
「役に立てるかな」
少し。
間。
ノア。
すぐには。
答えない。
『明日になったら』
「うん」
『明日のあなたを見なさい』
「うん」
『それから決める』
「うん」
「今日の私は?」
『今日のあなたは』
ノア。
尻尾。
小さく。
動く。
『今日の戦いをした』
アリシア。
目。
閉じる。
「うん」
昨日の勝利。
今日の勝利。
同じ。
勝利。
でも。
同じではない。
昨日できたこと。
今日。
できなかったこと。
今日。
初めてできたこと。
昨日。
怖かったこと。
今日。
少し。
平気だったこと。
昨日。
平気だったこと。
今日。
難しかったこと。
全部。
動く。
変わる。
人。
だから。
記録する。
でも。
縛らない。
昨日の成功を。
今日の義務にしない。
今日の失敗を。
昨日の否定にしない。
そして。
今日できたことを。
明日の命令にしない。
アリシアは。
眠りへ落ちる前。
今日。
自分が。
後方から見た。
六人の背中を。
思い出した。
中央。
レオ。
正面。
ミリア。
右。
セレナ。
左。
フィン。
中央後方。
ルシアン。
そして。
後方。
自分。
昨日とは。
違う景色。
でも。
そこには。
同じ五人がいた。
同じ名前。
違う役割。
違う動き。
違う怖さ。
違うできたこと。
だから。
明日も。
きっと。
同じ六人で。
同じではない戦いをする。
それでいい。
今日のアリシアは。
昨日のアリシアを。
再現するためにいるのではない。
昨日を持ったまま。
今日を選ぶためにいる。
そして。
明日の自分へ。
命令ではなく。
記録を渡す。
『昨日は、こうだった』
『今日は、こうだった』
『明日は』
まだ。
空白。
その空白を。
怖いだけではなく。
少し。
楽しみだと。
思えるようになったこと。
それも。
今日。
新しく。
できたことだった。




