第243話 次に確かめるのは、二つだけ
三日後の放課後、アリシアは研究棟とは反対の方向へ歩いていた。
午後まで空を覆っていた薄い雲は少しずつ切れ始めており、校舎の西側へ回ると、雲の隙間から差した光が石造りの渡り廊下を斜めに照らしている。授業を終えた生徒たちの足音が重なり、いつもより人の流れが多いのは、今日から始まった展示週間の自由見学会が理由だった。
「こっち」
少し先を歩いていた友人が振り返る。
「分かってる」
「さっき違う方見てたよ」
「掲示板見てただけ」
「研究棟の方じゃなくて?」
「……違う」
『間が怪しいわね』
アリシアの足元を歩いていたノアが、すぐに余計な一言を挟んだ。
「ノアは黙ってて」
「やっぱり気になってるんじゃん」
「気にはなるよ。でも今日は染色」
「よろしい」
「何で偉そうなの」
友人は笑いながら、実習棟へ続く廊下を曲がった。
研究棟から届いた連絡票は、今朝も鞄の内側へ入っている。
既存九記録で、東側奥部と西側の確認/非確認判定がすべて一致していたこと。
新規前向き独立二記録でも、東西はともに確認されていること。
ただし両者を一つの十一件としてまとめず、役割を分けて扱うこと。
そして、東西二領域の確認判定共起を、独立した前向き質問候補として次の検討会で扱うこと。
気にならないはずがなかった。
それでも今日は、先に友人と約束していた。
(研究棟は逃げない)
そう思えること自体が、以前とは少し違う。
「アリシア、早く」
「今行く」
友人の声に返し、アリシアは実習棟へ入った。
◇
染色の見学場所には、すでに十人ほどの生徒が集まっていた。
普段は裁縫や生活実習に使われている広い部屋らしく、壁際には作業台が並び、その上へ大きさの違う鍋や木べら、乾燥させた植物の束、小瓶に分けられた粉末などが置かれている。
部屋へ入った瞬間、アリシアは少しだけ鼻を動かした。
「匂いする」
「草?」
「草だけじゃない気がする」
『煮詰めた庭』
「変な言い方しないで」
ノアは入口近くの椅子の下へ入り、邪魔にならない場所を見つけると丸くなった。
担当教師のほか、上級生が三人いる。
一人は濃い黄色に染まった布を広げ、もう一人は淡い赤茶色の糸束を木枠へ掛けていた。最後の一人は鍋の中をゆっくり木べらで混ぜている。
「今日は見学なので、最初から最後まで一種類を完成させるわけではありません」
担当教師が集まった生徒たちへ説明した。
「材料から色を取り出すところ、布や糸を染液へ入れるところ、そして乾燥後の色の違いを順番に見てもらいます。材料によっては匂いが強いものもありますので、気分が悪くなった場合はすぐ申し出てください」
生徒たちが作業台の周りへ分かれる。
アリシアと友人は、植物材料が並ぶ台へ向かった。
「これ、全部色になるの?」
友人が乾いた葉の束を指差す。
「なるみたい」
「緑?」
「葉だからって緑とは限らないんじゃない?」
「何で?」
「……知らないけど」
「知らないのに言った」
「だって乾いて茶色いし」
近くにいた上級生が笑った。
「二人とも半分正解かな」
「半分?」
「見た目の色がそのまま布へ移るとは限らないよ。同じ植物でも、使う部分や煮出し方、布の種類、定着に使うものなんかで変わるから」
友人が目を丸くする。
「じゃあ、この茶色い葉から黄色になることも?」
「あるよ」
「青は?」
「材料によるかな」
「黒は?」
「それも材料とやり方次第」
友人が次々に質問する横で、アリシアは並んでいる小さな見本布へ目を向けた。
同じ材料名が書かれているのに、色の濃さが少しずつ違う。
「これ、同じ葉?」
「そう」
上級生が答えた。
「でも色違う」
「染めた回数が違うものもあるし、布が違うものもあるよ」
「同じにするの難しい?」
「完全に同じ色を毎回出すなら、かなり気を使うね。材料も毎回全く同じじゃないし」
アリシアは「へえ」と小さく声を漏らした。
それ以上、研究へ結びつける言葉は出さなかった。
同じ材料でも違う色になる。
面白い。
今は、それだけでよかった。
◇
別の台では、実際に糸を染液へ入れるところを見せてもらった。
温められた液体は深い赤茶色で、上級生が木の棒へ掛けた白い糸束をゆっくり沈めると、周囲の生徒たちが少し前へ身を乗り出した。
「触っちゃ駄目?」
誰かが尋ねる。
「今は熱いから駄目」
「冷めたら?」
「見学用の乾いた見本なら触っていいよ」
別の上級生が籠を持ってきた。
染色済みの糸束や小さな布片が入っている。
友人が真っ先に薄い黄色の布を取った。
「柔らかい」
「元の布が柔らかいんじゃない?」
「夢ないなあ」
「色で硬さ変わるの?」
「変わる場合もあるって」
上級生が補足した。
「染める工程で繊維に影響が出ることもあるから、材料によるよ」
「ほら」
「知らなかったくせに」
「今知ったからいいの」
友人は得意そうに布をアリシアへ渡した。
アリシアも指先で触れる。
薄い布はさらりとしている。
色は黄色というより、少し橙に近い。
「綺麗」
「でしょ?」
「あなたが染めたんじゃないでしょ」
「でも綺麗って言った」
「言ったけど」
「アリシア、こういう色似合いそう」
「私?」
「うん」
突然自分へ話が向き、アリシアは布と友人を交互に見た。
「何に使うの?」
「髪飾りとか」
「黄色の?」
「嫌?」
「嫌じゃないけど……」
自分の黒い髪へ黄色い布を当てる姿を想像する。
少し目立つ気がした。
「もっと暗い色がいい」
「ほら、すぐ暗い方行く」
「好きなんだからいいでしょ」
「じゃあこれ」
友人が今度は深い青緑の糸を取る。
「こっちなら?」
アリシアは少し考えた。
「……こっち」
「やっぱり」
『分かりやすいわね』
いつの間にか椅子の下から出てきたノアが、少し離れた場所で座っていた。
「ノアは黒しか似合わないよ」
『猫に染色布を着せようとしないで』
「してない」
◇
見学が終わる頃には、外の光がかなり傾いていた。
参加した生徒たちはそれぞれ感想を言いながら廊下へ出ていく。
友人は最後まで見本布を眺めていた。
「植物管理と染色、どっちがいい?」
「何が?」
「選択授業」
「まだ決めない」
「また?」
「他も見てから」
「慎重」
「悪い?」
「全然。私は染色ちょっと好きかも」
「やるの?」
「候補」
「同じじゃん」
「私は候補って言ってるだけ」
「私も」
二人で顔を見合わせ、少し笑った。
実習棟を出る。
友人は今日は部活動があるため、途中の渡り廊下で別れることになった。
「じゃあまた明日」
「うん」
「研究行く?」
「今日は行かない」
「本当に?」
「今日は見学って決めてたから」
「終わったけど」
「……生活観測区画に戻る」
「偉い」
「またそれ」
友人は手を振り、別の校舎へ走っていった。
アリシアはその背中を見送る。
『研究棟、寄らないの?』
「寄らない」
『連絡票持ってるのに』
「持ってるだけ」
『へえ』
「何?」
『別に』
「その言い方やめて」
アリシアは研究棟のある方向を一度だけ見た。
それから、生活観測区画へ向かって歩き始めた。
◇
検討会は翌日の放課後に開かれた。
研究棟の会議室には、学院長、副学院長、サーラ、魔導具担当教師、若い観測員、記録担当職員、安全管理担当者が集まっていた。
アリシアはいつもの席へ座る。
ノアは窓辺だ。
「今日は人工刺激を行いません」
最初に副学院長が言った。
「うん」
「実施日の決定もしません」
「うん」
「主な議題は、東西二領域の確認判定共起を、今後の独立した前向き質問として扱える形へ絞ることです」
「分かってる」
机の中央には、前回作成した整理紙が置かれていた。
既存九記録。
東側と西側の確認/非確認判定は九件すべて一致。
ただし、九件の取得背景や条件を一つの均質な集合と見なしてはいない。
その下には、線で区切られて新規前向き独立二記録。
どちらも東確認、西確認。
一件目はアリシア対象感覚も確認。
二件目は既存対象感覚非確認だが、閾値未満の胸部異常報告がある。
「最初に確認します」
若い観測員が紙を指す。
「現在見えている一致を、そのまま次の試験の答えとして扱うことはしません」
「うん。結果見てから気づいたから」
「はい」
「次に確かめる候補」
「その通りです」
「それで、東と西だけを見る」
「今日はそこを具体化します」
アリシアは背筋を少し伸ばした。
◇
「まず、広すぎる問いを避けます」
副学院長が黒板へ書く。
『東側と西側は関係しているか』
「これは駄目?」
「駄目というより、一つの試験で答えられません」
魔導具担当教師が答えた。
「関係という言葉に、何を含めますか?」
「一緒に出るとか」
「確認の共起ですね」
「時間」
「時間配置」
「強さ」
「波形量や変化量」
「形」
「波形形状」
「……いっぱいある」
「ですから分けます」
黒板に四つの候補が書かれた。
一、確認/非確認の共起。
二、時間配置。
三、反応量。
四、波形形状。
「今回は一だけ?」
「それを候補としています」
「二は前に少しやった」
「過去記録の時間窓整理としては行っています。ただし、それを新しい前向き主質問として検証したわけではありません」
「三と四は?」
「まだ独立した方法の準備が不足しています」
アリシアは黒板を見る。
「じゃあ、一が一番今できそう」
「そう考えています。ただし、もう一段絞る必要があります」
「何を?」
「『共起』をどう判定するかです」
アリシアは少し考える。
「東が確認なら西も確認。東が非確認なら西も非確認?」
「それが最も単純な形ですね」
「逆も同じじゃない?」
「確認/非確認の二値判定だけなら、二領域が一致しているかを見るのであれば同じです」
「じゃあ、東から西って書かない方がいい?」
「重要です」
副学院長が黒板の文を消した。
「『東側反応が起きたとき、西側反応が起きるか』と書けば、東を先行条件、あるいは原因候補のように読ませる可能性があります」
「まだ原因って分からない」
「はい」
「だから……」
アリシアは少し考え、ゆっくり言う。
「東側奥部と西側の対象反応の確認判定は、一致するか」
「候補としては良いと思います」
若い観測員が答えた。
「確認だけじゃなくて非確認も?」
「はい。両方確認でも一致、両方非確認でも一致。一方だけ確認なら不一致です」
「前の三領域の問いと似てる」
「判定構造は似ています。ただし、対象領域が二つだけです」
アリシアは整理紙へ目を落とした。
「私の感覚は入れない」
「主判定には入れません」
「でも記録はする?」
「通常通り記録します」
「六つ目の反応も?」
部屋の空気が少しだけ変わった。
アリシア自身も、口にしてから自分の胸元を見る。
「六つ目の神器そのものに、明確な独立計測項目はまだありません」
サーラが答える。
「アリシアさんの身体感覚や、既存の神器反応として認識できる現象があれば安全上も記録します。ただし、それを今回の東西二領域の主判定へ含めるかは別です」
「含めない」
「その方が問いは狭く保てます」
「じゃあ、私が冷たいって感じても感じなくても、東と西だけで一致か不一致を決める?」
「はい」
アリシアは少し不思議な気持ちになった。
これまで、自分の胸の冷たさは重要な観測対象だった。
人工刺激の試験でも、東側、アリシア、西側という三領域を一緒に見てきた。
その真ん中から、自分が外れる。
(私がいらないって意味じゃない)
さっき説明されたばかりだ。
研究参加者としての自分が消えるわけではない。
安全確認も、主観報告も続く。
ただ、一つの問いだけを東と西に絞る。
「……やってみたい」
アリシアが言った。
「何をですか?」
「私を答えに入れない試験」
サーラがわずかに眉を上げる。
「理由を聞いても?」
「第二の新しい記録で、私は対象感覚非確認だった。でも東と西は両方確認だった」
「はい」
「Cも、昔の判定では私の対象感覚は非確認。でも東西は確認だった」
「はい」
「だったら、私が冷たいかどうかを真ん中に置いたままだと、東と西だけで何が起きてるのか見にくい気がする」
アリシアは一度言葉を止めた。
「六つ目と関係ないって言いたいんじゃないよ」
「分かっています」
「私が感じなくても六つ目が何かしてる可能性もあるし、私が感じたことと東西が同じ別の何かの結果かもしれないし、全部別かもしれない」
「はい」
「だから一回、答えだけは東と西にする」
若い観測員が頷いた。
「筋の通った切り分けです」
ノアが窓辺から尻尾を揺らす。
『本人が一番邪魔な変数になったわね』
「言い方!」
『主判定から外れるってそういうことでしょう』
「もっと他に言い方あるでしょ」
『研究対象兼研究参加者兼学生兼面倒な黒髪娘』
「増えた!」
学院長が咳払いをしながら笑いを堪えていた。
「ノア君の表現はともかくとして、アリシアさんの主観報告を捨てるわけではありません。副次記録として残します」
「うん」
◇
「次に、どの条件で確かめるかです」
魔導具担当教師が資料を広げる。
ここでアリシアは少し身構えた。
「新しい強さ?」
「候補にはしません」
「速さ変える?」
「今はしません」
「二回揺らす?」
「しません」
「じゃあ同じ?」
「まず検討すべきは、既存の安全範囲内で、すでに手順を固定している意図的小変動条件を使うことです」
アリシアは頷く。
前向き試験で二度使った、早い位置に一度だけ安全範囲の小変動を入れる条件。
一度目は、東、アリシア、西の三領域すべて確認。
二度目は、東と西は確認、アリシアの対象感覚は非確認。ただし弱い胸部異常報告が残った。
「それをもう一回やる?」
「まだ決定ではありません」
「今日決めないって最初に言った」
「はい」
「……忘れてない」
『今やりたそうな顔してたわよ』
「顔の話やめて」
安全管理担当者が資料を確認する。
「同条件を使う場合でも、目的は以前と変わります」
「三つが一致するかじゃなくて、二つが一致するか」
「はい」
「でも入力は同じ」
「可能ならそうします。新しい入力条件を追加すると、問いが増えます」
「総変位量も測る?」
「すでに固定済みの補助入力指標としては記録できます」
「答えにはしない」
「はい」
「東側の事前状態も?」
「既存の固定項目として記録します。ただし、結果を見てから有利な状態だけを選ぶことはしません」
「局所形状は?」
「まだ独立手法が固定されていないので、主試験へ追加しません」
「分かった」
アリシアは少し安心した。
新しい問いができるたびに、新しい測定を足していけば、結局何を確かめているのか分からなくなる。
今度は二つだけ。
東。
西。
それぞれの既存確認基準。
確認/非確認が一致するか。
「一回で決める?」
「いいえ」
若い観測員が即答した。
「一回の前向き試験で一致しても、東西が常に共起するとは言えません」
「不一致だったら?」
「少なくとも、固定した条件下で不一致例が一件得られたとは言えます」
「それで昔の九件が間違いになる?」
「なりません。既存九件で一致していた事実は残ります」
「新しい二件も?」
「残ります」
「じゃあ、次で違っても消えない」
「はい」
「同じでも証明じゃない」
「はい」
「……分かりやすい」
『散々やったからね』
「ノアが先生みたいに言わないで」
『嫌よ、こんな生徒』
「ひどい」
◇
黒板の中央に、仮の主質問が書かれた。
『既存の安全範囲内で固定した意図的小変動を含む試験において、東側奥部対象反応と西側対象反応の確認/非確認判定は一致するか』
アリシアはしばらくそれを眺めた。
「長い」
「必要な情報を入れると、ある程度は」
「でも分かる」
「短くすることはできますが、意味を落とす必要はありません」
「そのままでいい」
記録担当職員が正式な候補文として転記する。
「判定規則も確認します」
東確認/西確認――一致。
東非確認/西非確認――一致。
東確認/西非確認――不一致。
東非確認/西確認――不一致。
「四つ」
「はい」
「私の対象感覚は、どれでも判定に入れない」
「はい」
「私が冷たいって言っても東西が違えば不一致」
「その通りです」
「私が何も感じなくても東西が両方確認なら一致」
「はい」
「私が何も感じなくて東西も両方非確認でも一致」
「はい」
「変な感じだけあっても?」
「主判定には影響しません。原文として記録します」
「後から『やっぱりこれも入れよう』は?」
「しません」
アリシアは頷いた。
「それがいい」
◇
「ただし、一つ考える必要があります」
副学院長が言った。
「何?」
「東西両方非確認も『一致』に含めるため、試験の観測時間が十分でなければなりません」
「あ」
アリシアはすぐ理解した。
反応がないと判定するには、どこまで見たのかが必要になる。
過去の無反応記録を整理したときにも、何度も確認したことだった。
「東と西で最後まで見られる共通のところ」
「はい」
「片方だけ長く記録できても、二つ一緒に非確認って言えるのは重なるところまで」
「その通りです」
「前向き試験なら、最初から終わり決める?」
「既存の固定観測終点を使用する案があります」
「前の二回と同じ?」
「比較可能性を保つなら、それが第一候補です」
「反応なかったら延ばさない」
「はい」
「出たから早く終わるのもなし」
「安全上の理由を除けば、ありません」
アリシアは黒板へ目を戻す。
確認/非確認の共起。
単純に見えても、非確認を含めるなら時間が必要になる。
「西だけ途中で機械止まったら?」
「その試験の二領域共通判定可能区間が短くなります。事前に定めた必要範囲を満たさなければ、主判定不能とする案が妥当でしょう」
「無理に一致か不一致にしない」
「はい」
「東だけ止まっても同じ?」
「同じです」
「私が途中で具合悪くなったら?」
「安全のため即時中止です。主判定が成立するかどうかは、その時点までの共通観測範囲によります」
「でも、成立させるために続けない」
「絶対に続けません」
安全管理担当者の声だけが少し強くなった。
アリシアは素直に頷いた。
「分かってる」
◇
話し合いはそこで一度止まった。
サーラが飲み物を配り、アリシアは温かい茶を両手で持った。
窓の外は、もう夕方の色へ変わり始めている。
「アリシアさん」
「何?」
「今の気持ちはどうですか?」
「今?」
「はい」
アリシアは湯気の向こうで少し考えた。
「やりたい」
「数値なら?」
「八」
「怖さは?」
「三」
「何が怖いですか?」
「東と西が違ったら、今まで見てたものが分からなくなりそう」
「違えば、分からなくなる?」
問い返され、アリシアは黙った。
「……違う」
「どう違いますか?」
「今まで同じだった記録は消えない」
「はい」
「新しく違うのが出たら、『いつも同じじゃない』って分かる」
「はい」
「それは……分からなくなるんじゃなくて、分かることが変わる」
「そうですね」
アリシアは茶を一口飲んだ。
「でも怖いのは残る」
「残って構いません」
「うん」
サーラはそれ以上、怖さを下げさせようとはしなかった。
◇
「もう一つ」
休憩後、アリシアが自分から言った。
「Cと新しい二枚目のこと、今回の問いに入れないの?」
「どういう意味ですか?」
「どっちも私の対象感覚は確認されてないけど、東西は確認だった」
「はい」
「それがあったから東西だけ見ようって思った。でも、試験の答えには入れない?」
「主判定には入りません」
「理由は?」
「新しい主質問は、東西二領域の確認判定共起だからです。アリシアさんの対象感覚を条件にすると、再び三領域の関係へ戻ります」
「そっか」
「ただし、試験後に副次的な記述として、アリシアさんの主観報告を併記することはできます」
「先に決めておけば?」
「はい」
「じゃあ、私の主観報告はいつも通り原文で残す。でも東西一致か不一致には使わない」
「それでよいと思います」
「後からCに似てるって思っても?」
「次の探索候補として記録できますが、今回の主質問の答えにはしません」
「分かった」
アリシアは紙の余白へ視線を落とす。
C。
第二の新しい記録。
二つが似ているように見える。
でも同じかは分からない。
だから今は、そこを答えにしない。
東と西だけ。
(本当に二つだけ)
それが少し嬉しかった。
◇
「では、今日決められる範囲を整理します」
副学院長が黒板の横へ立った。
「一つ目。東西二領域の確認判定共起を、独立した前向き主質問候補として扱う」
「うん」
「二つ目。主判定は東側奥部と西側のみ。アリシアさんの主観報告は通常通り取得するが、副次記録とする」
「うん」
「三つ目。入力条件は、新規前向き二試験で用いた既存安全範囲内の早い位置の単一意図的小変動を第一候補とし、新しい強度・速度・複数変動は導入しない」
「うん」
「四つ目。観測終点、確認基準、報告方法、機器配置については既存の固定手順を基本とし、変更が必要か次回までに点検する」
「うん」
「五つ目。総変位量は既存の補助入力指標として記録。局所形状の新規指標は未固定のため主試験へ追加しない」
「うん」
「六つ目。実施日はまだ決めない」
アリシアは少しだけ口を尖らせた。
『そこだけ返事遅い』
「分かってる」
「今日は実施条件の点検までです」
安全管理担当者が笑う。
「体調がよくても、準備が終わっていなければ行いません」
「はい」
「逆に準備が終わっていても、アリシアさんの状態が悪ければ行いません」
「はい」
「東側の事前状態が都合よく見えるかどうかで実施を決めません」
「はい」
「結果が欲しいから予定を前倒しもしません」
「……はい」
『最後ちょっと嫌そう』
「嫌じゃない」
『はいはい』
◇
会議が終わったあと、アリシアはすぐに席を立たなかった。
黒板には、まだ仮の主質問が残っている。
『東側奥部対象反応と西側対象反応の確認/非確認判定は一致するか』
自分の名前はない。
アリシアの対象感覚もない。
六つ目の神器という言葉もない。
それなのに、自分にとってとても重要な問いに見える。
「サーラ先生」
「はい?」
「私がいない問いでも、私が参加するの変じゃない?」
「変ではありません」
「何で?」
「アリシアさんが、研究の問いそのものではなく、研究を行う人の一人だからです」
アリシアは少し目を見開いた。
「研究される人じゃなくて?」
「それでもあります」
「両方?」
「両方です」
サーラは机の上の紙を整えながら続ける。
「身体感覚を観測する必要があるときは、アリシアさん自身が重要な観測対象になります。しかし、問いを考え、手順の意味を理解し、参加するかどうかを決め、結果の読み方を一緒に考えるのもアリシアさんです」
「……うん」
「今回、主判定からアリシアさんの対象感覚を外しても、その役割まで消えるわけではありません」
アリシアは黒板を見た。
(研究されるだけじゃない)
以前より、それを自然に信じられる。
「分かった」
椅子から立つ。
「じゃあ次も参加する」
「実施が決まれば」
「そこ大事?」
「大事です」
『釘を刺されてるわよ』
「分かってるってば」
◇
研究棟を出ると、外気は少し冷えていた。
昼間の雲は消え、薄い夕焼けの上に青い空が残っている。
アリシアは歩きながら、鞄の中に入れた見学会の小さな紙を思い出した。
「ノア」
『何?』
「染色、面白かったね」
『私はほとんど寝てたけど』
「知ってる」
『匂いは面白かったわ』
「煮詰めた庭?」
『そう』
「変なの」
研究の話ではない。
それが少し心地よかった。
◇
生活観測区画では、子供が夕食前に紙箱の中身を出していた。
小さな石。
木の実。
以前ノアから抜けた黒い毛。
短い白い紐。
色紙の小片。
どれも重要な木箱とは関係のない、子供が自分で集めたものだ。
「何してるの?」
「入れ直してる」
「何で?」
「入らなくなった」
「増やしすぎたんじゃない?」
「でも全部いる」
『あなたと同じね』
ノアが言った。
「何が?」
『候補を全部持っておきたがる』
「一緒にしないで」
子供は紙箱の底へ小さな石を置いた。
「研究、決まった?」
「少し」
「何するの?」
「東と西を見る」
「アリシアは?」
「私はいるよ」
「見る?」
「私は東と西の機械を直接見る係じゃないけど、参加する」
「冷たいのは?」
「感じたら言う。でも今度の答えには入れない」
子供は手を止めた。
「入れないの?」
「うん」
「何で?」
「東と西だけが一緒になるか見たいから」
「アリシアいなくてもいい?」
胸の奥に、昼間とは違う小さな引っかかりが生まれた。
サーラへ尋ねたばかりのことだ。
「いなくてもいい、じゃないよ」
「違う?」
「私も参加するし、感じたことはちゃんと残す。ただ、今度の質問の答えを決めるのが東と西だけ」
「ふうん」
「分かる?」
「ちょっと」
子供は白い紐を丸めて箱へ入れる。
「ぼくの箱で、石と木の実だけ見るみたいな?」
アリシアは紙箱を見る。
「……まあ、少し似てるかも。でも箱とは関係ないよ」
「分かってる」
「本当に?」
「紙の箱だよ」
「ならいい」
『先回りして釘刺すの上手くなったわね』
「変につなげないため」
◇
その夜は、研究のことを考える時間がいつもより短かった。
アリシアは染色見学でもらった小さな説明紙を机に広げ、見本として貼られた糸の色を眺めていた。
淡い黄色。
赤茶。
青緑。
薄い灰色。
どれも小さな糸片でしかないが、並べると綺麗だった。
「青緑」
『何?』
「これ好き」
ベッドの上からノアが見る。
『髪につけるの?』
「まだ言ってる」
『友達が言ってたでしょう』
「つけないよ」
『似合うんじゃない』
アリシアが振り返る。
「……褒めた?」
『気のせい』
「今褒めた」
『寝る』
「逃げた」
ノアは本当に目を閉じた。
アリシアはしばらく青緑の糸を見てから、紙を丁寧に畳んだ。
◇
二日後、研究棟では試験手順の点検が進んでいた。
アリシアはその作業には参加していない。
魔導具担当教師と記録担当職員、安全管理担当者が、前向き二試験で使用した手順書を一項目ずつ確認していた。
入力の立ち上がり。
戻り。
早い位置の単一意図的小変動。
既存安全範囲。
固定観測終点。
東側奥部の確認基準。
西側の対象反応確認基準。
観測者が互いの判定を途中で知れない配置。
アリシアへの質問順。
試験中のスタッフの動き。
記録板を動かすタイミング。
以前までの三領域主質問では、アリシアの対象感覚判定も主結果だった。
今回は、それが副次記録へ移る。
だからこそ、手順を雑に変えない。
「質問数を減らしますか?」
記録担当職員が尋ねる。
「減らす必要はないでしょう」
安全管理担当者が答えた。
「主判定から外れたからといって、身体状態の確認を薄くする理由にはなりません」
「対象感覚報告も従来通り?」
「本人の自発報告を基本に、固定された安全確認を維持。結果を誘導するような問いはしない」
「了解です」
「スタッフ位置も前回と同じに」
「はい」
机の上の手順書へ、一つずつ確認印が増えていった。
◇
その日の夕方、アリシアへ点検結果が伝えられた。
大きな手順変更は不要。
既存の固定手順を使用可能。
ただし主質問文と判定表のみ、東西二領域用に別紙化する。
人工刺激実施日はまだ未定。
「まだなんだ」
『不満?』
「二」
『聞いてない』
「ノアが聞いたでしょ」
『本当に数字で返すようになったわね』
「便利だから」
『人間の感情は便利さで測るものじゃないでしょうに』
「でも不満二」
『はいはい』
アリシアは連絡票をもう一度読んだ。
実施日はない。
けれど、主質問はかなり形になった。
次の一歩は、刺激を入れることではない。
正式にこの問いを固定するかどうか。
その前に、自分が本当にこの問いへ参加したいのか。
安全条件は維持できるか。
同じ入力条件を使う意味は十分か。
確認することが残っている。
(急がなくていい)
そう思いながらも、胸の奥には小さな期待があった。
◇
翌日の授業では、地理の時間に街道網の話を扱った。
王都から各地方へ延びる主要街道だけでなく、途中の町同士を結ぶ小さな道も地図へ書かれている。
教師が黒板へ簡略図を描いた。
「地図上で線がつながっているからといって、同じ目的で作られた道とは限りません。古い交易路へ後から軍用路が接続された例もあれば、村道が拡張されて街道の一部になった例もあります」
アリシアは地図を見た。
隣では友人がノートへ線を引いている。
「ここ間違えた」
「どこ?」
「道一本多い」
「消せば?」
「紙薄いから破れそう」
「軽く消して」
「アリシアやって」
「自分でやって」
「冷たい」
「消し方くらい自分でできるでしょ」
友人はぶつぶつ言いながら消し始めた。
アリシアは少し笑い、もう一度黒板へ目を戻した。
線がつながっている。
だから同じ目的。
そんな単純な話ではない。
けれど、アリシアはそこから研究へ思考を飛ばさなかった。
今は地理の授業だ。
教師が次に説明した橋の管理制度を、普通にノートへ書いた。
◇
昼休み。
「そういえば」
友人がパンをちぎりながら言った。
「染色どうだった?」
「一緒に行ったでしょ」
「選択授業にするかって意味」
「ああ」
アリシアはスープを一口飲む。
「まだ決めてない」
「植物管理とどっち?」
「それもまだ」
「他も見る?」
「見たい」
「何?」
「地図制作ちょっと気になる」
「今日の授業で?」
「うん」
「研究っぽいから?」
「違うよ」
アリシアは即座に否定した。
「地図見るの好きかも」
「初めて聞いた」
「今気づいた」
「じゃあ見に行こうよ」
「あなたも?」
「面白そうなら」
「部活は?」
「その日はない」
「じゃあ行く」
約束が一つ増えた。
研究とは関係のない予定。
アリシアはそれを、ちゃんと嬉しいと思った。
◇
さらに翌日。
研究棟の会議室には、正式候補となった主質問文が置かれていた。
アリシアは座る前に、それを読む。
『固定済みの安全範囲内・早期位置単一意図的小変動条件において、東側奥部対象反応と西側対象反応の確認/非確認判定は一致するか』
「前より少し変わった」
「入力条件を曖昧にしないようにしました」
「うん」
「この文を、次の人工刺激試験の主質問として固定する案です」
アリシアは席へ座った。
「今日は決める?」
「条件が揃えば」
「実施日も?」
「それは別です」
「分かってる」
サーラがアリシアの状態確認票を開く。
「まず身体状態から」
「痛みゼロ。息苦しさゼロ。胸の冷たさも違和感もゼロ。頭痛なし。吐き気なし。めまいなし」
「疲労」
「二」
「怖さ」
「三」
「参加したい気持ち」
「八」
「やりすぎそうな気持ち」
アリシアは少し考えた。
「六」
「理由は?」
「早く見たいけど、今日やるとは思ってないから」
「もし今日できると言われたら?」
アリシアは口を開きかけ、止まった。
「……八になるかも」
『正直ね』
「だから今日やらない方がいい」
部屋にいた何人かが、わずかに表情を和らげた。
「その判断も記録します」
サーラが言った。
「うん」
◇
主質問を固定する前に、最後の確認が行われた。
「この試験で東西が一致した場合、何が言えますか?」
若い観測員が尋ねる。
アリシアは答える。
「決めた条件で取った新しい前向き記録一件でも、東と西の確認判定が一致した」
「何は言えませんか?」
「東が西を起こしたとは言えない。西が東を起こしたとも言えない。いつも一致するとも言えない」
「ほかには?」
「六つ目がつないだとも言えない」
「はい」
「私が必要か不要かも言えない」
「はい」
「時間順も、この質問の答えじゃない」
「その通りです」
「反応の強さが関係あるかも別」
「はい」
「一致しなかった場合は?」
「決めた条件で、東西の確認判定が不一致になった前向き記録が一件できる」
「過去九件の一致は?」
「消えない」
「新規前向き二件の一致は?」
「消えない」
「では、どちらの結果が出ても記録を残しますか?」
「残す」
「不一致だったら再試験して消したくなりませんか?」
アリシアは少しだけ嫌そうな顔をした。
「……したくなるかもしれない」
『そこ認めるのね』
「でも消さない」
「なぜ?」
「それが答えだから」
言い切ってから、アリシアは少し考え直す。
「違う。一回分の答え」
「はい」
「全部の答えじゃない」
若い観測員が頷いた。
「十分です」
◇
主質問文の下に、固定日が記入された。
判定規則も同時に固定される。
東確認/西確認――一致。
東非確認/西非確認――一致。
片側のみ確認――不一致。
主判定不能条件も記載された。
安全中止などにより、事前に必要と定めた共通観測範囲を確保できない場合。
機器異常で一方の対象領域が判定不能となった場合。
入力が固定済み許容範囲から外れた場合。
標準手順を維持できなかった場合。
その場合は、無理に一致/不一致へ入れない。
アリシアは最後まで確認した。
「これで決まり?」
「主質問と判定規則は固定です」
「変えない?」
「結果を見てからは変えません」
「うん」
「次は実施可能日の調整と、当日の状態確認です」
「いつ?」
「候補日は二日あります」
アリシアの目が少し大きくなる。
「一つ目は三日後の放課後。ただし、前日に研究参加を入れず、通常授業後の状態が良好であることが条件です」
「もう一つは?」
「その二日後」
「どっちにする?」
「今は決めません」
「何で?」
「三日後の前日に、アリシアさんの学校予定と体調を確認するためです」
「学校予定?」
「地図制作の見学へ行くのでしょう?」
アリシアは目を瞬いた。
「何で知ってるの?」
「あなたが日程確認のときに自分で言いました」
「……言った?」
『言ってたわよ』
「覚えてない」
「地図制作見学は試験候補日の前日です。見学自体をやめる必要はありません。ただ、疲労が強く残った場合は試験を後ろへ送ります」
「見学、行っていい?」
「もちろんです」
「研究のために休まなくていい?」
「普段通り過ごせる条件で試す方針です」
アリシアは少しだけ笑った。
「じゃあ行く」
「はい」
◇
会議を終えて研究棟を出ると、夕方の風が頬に触れた。
次の人工刺激試験は、まだ実施されていない。
けれど問いは固定された。
今度見るのは、二つだけ。
東側奥部。
西側。
自分の胸がどう感じるかは、記録される。
でも、それで主結果は変わらない。
(どうなるんだろう)
期待が膨らむ。
同時に、不安もある。
これまでの九件と新規二件で揃っていた東西が、次も揃うのか。
初めて分かれるのか。
あるいは、両方とも確認されないのか。
どれもあり得る。
『また考えてる』
「今はいいの」
『何で?』
「質問決めた後だから」
『予想大会は?』
「しない」
『偉い』
「また雑」
◇
生活観測区画へ戻ると、子供は窓辺で鉢植えを見ていた。
以前、乾いた土と湿った土を比べてから、時々この鉢を覗くようになっている。
「今日、水いる?」
アリシアが尋ねる。
「まだ」
「触った?」
「職員さんと」
「どうだった?」
「中、ちょっと湿ってた」
「じゃあまだだね」
「うん」
子供は鉢から離れた。
「研究決まった?」
「決まった」
「東と西?」
「うん」
「いつ?」
「早ければ三日後」
「アリシアも行く?」
「行く」
「冷たいのは答えに入れない?」
「入れない」
子供は少し考えた。
「冷たかったら言う?」
「言うよ」
「何で?」
「答えに入れなくても、大事な記録だから。それに身体のことは安全にも必要」
「じゃあ、いらないんじゃないんだ」
アリシアは一瞬だけ黙った。
自分がサーラへ聞いたことと、ほとんど同じだった。
「うん」
今度は迷わず答える。
「いらないんじゃないよ。今回は、答えを決める係じゃないだけ」
「そっか」
子供は納得したように頷き、紙箱を取りに行った。
アリシアはその背中を見ながら、胸の奥が少し温かくなるのを感じた。
◇
その夜、自室へ戻ったアリシアは、机の上へ二枚の紙を置いた。
一枚は、地図制作見学の案内。
もう一枚は、研究棟から渡された試験候補日の確認票。
見学は先。
試験はその翌日が第一候補。
以前なら、試験前日は何もしない方がいいのではないかと自分から考えたかもしれない。
今は違う。
学校へ行く。
友人と見学する。
食事をする。
眠る。
そのうえで状態が良ければ参加する。
悪ければ延期する。
「ノア」
『何?』
「三日後、東と西どうなると思う?」
『予想しないんじゃなかったの?』
「ノアの予想」
『しない』
「何で?」
『当たったら偉そうにしたくなるし、外れたら腹立つから』
アリシアは思わず笑った。
「ノアらしい」
『あなたは?』
「……両方ある気がする」
『それ予想でしょう』
「期待」
『言い換えただけ』
「でも、違っても見たい」
言葉にしてから、アリシアは少し驚いた。
以前なら、欲しい結果が出てほしい気持ちの方がずっと強かった。
今も一致してほしい。
これまで見えてきた形が、もう一枚の前向き記録でも残ってほしい。
けれど同時に、違うなら違うところを見たいとも思う。
(怖いけど)
怖さは消えていない。
それでも、見たい。
アリシアは二枚の紙を机の端へ並べた。
先にあるのは、友人との地図制作見学。
その次に、まだ実施されるか分からない試験。
研究だけを待つ三日間にはしない。
そのことを確認してから、アリシアは灯りを消した。
東と西。
次に確かめるのは、その二つだけだった。




