第145話 同時に動いたからといって、同じ理由で動いたとは限らない
夜半に起きた東側の二つの反応は、朝になっても観測記録の中心に残っていた。
小空洞で確認された五度目の周期反応。
その開始から五呼吸ほど遅れて、さらに奥側で続いていた新しい微弱反応がわずかに強まり、小空洞側が先に基準値へ戻ったあとも十呼吸ほど高い状態を保っていた。
名前のない光には、そのあいだ目立った変化がなかった。
位置は同じ。
接続値も低い。
輪郭光量にも、四度目の小空洞反応後に一度だけ確認されたような上昇は出なかった。
朝の中継観測室では、夜勤から引き継がれた記録が机の上へ時系列に並べられていた。
夜明けの光が高窓から差し込み、紙の端を薄く照らしている。長時間灯されていた魔導灯は何本か消され、夜特有の白い明るさから、少しずつ自然な朝の色へ室内が戻り始めていた。
サーラは小空洞、新反応、名前のない光という三つの記録を同じ大きさの紙へ書き直し、その横へ時刻だけを合わせた比較表を置いていた。
「五呼吸差」
若い観測員が、眠気の残る目を擦らずに記録へ顔を近づける。
「はい」
「そのあと、小空洞が先に下がって、新反応が十呼吸くらい遅れて下がった」
「はい」
「同時ではないけど、かなり近い」
「時間的には近いですね」
サーラは否定しなかった。
それが余計に気になるのか、若い観測員は二枚の記録を何度も見比べる。
「これ、昨日までよりずっと関係ありそうじゃないですか?」
「そう見えますね」
「言っていいんですか、それ」
「“そう見える”とは言えます」
「関係がある、は?」
「まだです」
「やっぱり」
若い観測員は肩を落とした。
朝勤の記録係が、昨夜の観測表を一枚めくる。
「五呼吸ずれていたら、“同時反応”にはしないんですか?」
「しません」
サーラが答える。
「ただ、同一の原因に対する時間差反応という可能性は残ります。逆に、偶然近い時間に別々の変化が起きた可能性もあります」
「同じ原因で、動くタイミングだけ違う?」
「あり得ます」
「別の原因だけど、たまたま近かった?」
「それも」
「小空洞が新反応を動かした?」
「それも候補です」
「新反応が小空洞を動かした?」
「開始順だけを見るなら小空洞が先ですが、観測できていない別の変化が先行している可能性を捨てられません」
若い観測員が額を机へ付けそうなほど俯いた。
「増える」
「何がです?」
「昨日、三つ目が増えて組み合わせが増えたって言ったじゃないですか。今度は理由の組み合わせまで増えてる」
記録係の一人が笑う。
「光も含めたらもっとありますよ」
「言わないでください」
「名前のない光が何も変わらなかったことも、情報ですからね」
「分かってますけど」
若い観測員は仕方なく身体を起こし、三つ目の紙へ目を向けた。
名前のない光。
昨夜は動かなかった。
小空洞が反応しても。
新しい微弱反応が強くなっても。
目立った変化は出ていない。
「光だけ仲間外れみたいに見える」
若い観測員が呟く。
サーラの視線がすぐに向いた。
「何からですか?」
「小空洞と新反応が一緒に動いて、光だけ動かなかったから」
「それを“仲間外れ”と表現すると、最初から三つが一つの集団だったように聞こえます」
「あ」
「三つが同じ系統だという前提は、まだありません」
「そうでした」
若い観測員は苦笑し、記録欄へ視線を戻した。
「じゃあ、光は変化なし」
「はい」
「小空洞と新反応は近い時間に変化した」
「はい」
「理由はまだ分からない」
「その通りです」
「……でも、同じ時間に動いたら、同じ理由って思いたくなるなあ」
サーラは少しだけ窓の外を見た。
朝の空が、夜の青から明るい色へ変わっている。
「人間は、同時に起きたことへ線を引きやすいですからね」
「昨日は、近いものが答えに見えやすいって言ってました」
「時間の近さも同じです」
「でも、本当に同じ原因のこともある」
「もちろん」
「だから調べる」
「はい」
若い観測員は少し考えたあと、比較表の端へ小さく印を付けた。
「次も同じ順番になるか見る?」
「それは重要です」
「小空洞が先。五呼吸前後で新反応上昇。そのあと小空洞が下がって、少し遅れて新反応が下がる」
「同じ形が再現されれば、関連性を考える材料は増えます」
「違ったら?」
「それも材料です」
「便利ですね、違っても材料」
「観測では、予想通りにならなかったことも大切です」
若い観測員は少し笑った。
「外れた予想も捨てない?」
「予想そのものではなく、“外れた”という結果を残します」
「子供が右って予想して、光が左へ行ったみたいな?」
「それと似ていますね」
サーラも少し笑う。
観測盤では三つの値が、朝になって静かな状態へ戻っていた。
小空洞。
新反応。
名前のない光。
昨夜は二つが動き、一つが動かなかった。
その違いを、誰も急いで一つの意味へまとめなかった。
◇
生活観測区画では、子供が目を覚ましたとき、白い花の茎からさらに小さな欠片が一つ落ちていた。
花弁と呼べるほどの大きさではない。
茎の先に残っていた乾いた部分が、夜のあいだに欠けたらしい。
小皿の外側。
棚の上に、ほんの小さな茶色い欠片がある。
窓の外では、昨日より雲が少し増えていた。
晴れてはいるが、薄い雲が朝日を柔らかくし、庭の石畳へ落ちる影も輪郭が淡い。鳥の姿は見えず、ときおり植え込みの奥から短い鳴き声だけが聞こえていた。
子供は寝台の中で、その声を一度聞いた。
「鳥」
「いるみたいだね」
「見えない」
「うん」
「昨日は一羽見えた」
「そうだね」
「今日は声だけ」
「うん」
子供は窓をしばらく見た。
「昨日の鳥?」
「分からない」
「うん」
もう探さない。
「今、鳥の声がする」
「そうだね」
それから隣の寝台へ向く。
顔のない存在は横になったままだった。
「おはよう」
子供が声をかける。
少し待つ。
一つ。
二つ。
今日は二つの光が淡く明るくなった。
「今は二つ」
昨日の朝は三つ。
夜も三つだった。
けれど子供は、それを口に出して比較しなかった。
少しだけ見つめたあと、布団から出る。
足の確認。
痛みなし。
赤みなし。
足首を回し、二歩、三歩と歩く。
「大丈夫」
「あとでセレナ?」
「うん。見るだけ」
子供はまず木箱へ向かった。
昨日、初めてほんの少しだけ蓋を持ち上げた箱。
留め具は外れたまま。
蓋は閉じている。
見た目だけなら、昨日の夕方より前と大きく変わらない。
それでも子供は、そこに一度小さな隙間ができたことを知っている。
「閉じてる」
「うん」
「夜、開かなかった」
「うん」
「昨日、一回開けた」
「うん」
「見たら分からない?」
アリシアが木箱を見る。
「今の状態だけ見た人なら、昨日少し開けたかどうかは分からないかもしれないね」
「じゃあ、昨日開けたことなくなったみたい?」
「見た目には残ってないだけじゃない?」
「私、覚えてる」
「うん」
「アリシアも?」
「覚えてるよ」
「ノアも?」
『見てたわよ』
「ノアも覚えてるって」
子供は少し安心したように箱を見る。
「見た目に残らなくても、あったことある」
「あるね」
「記録も?」
「昨日の観測記録には残ってると思うよ」
「私の?」
「子供の行動記録としてね。細かい感情まで全部じゃないけど」
「少し開けて、閉じたって?」
「たぶん」
「怖かったも?」
「必要な範囲なら書いてあるかもしれない。でも、子供の気持ち全部を決めて書くことはしないと思う」
「うん」
子供は箱へ手を伸ばさなかった。
「朝は開けない」
「分かった」
「昨日開けたから、今日も開けるじゃない」
「うん」
「今日は今、見てるだけ」
「うん」
木箱から離れた子供は、白い花の棚へ向かった。
「あ」
小さな茶色い欠片。
昨日までの花弁よりさらに小さい。
「落ちた」
「うん」
「これ、何?」
「茎の先の乾いた部分かもしれないね」
「花弁じゃない?」
「私にはそう見えるけど、断言はできないかな」
子供は顔を近づける。
「白い花の一部?」
「それはそうだと思う」
「じゃあ小皿?」
手を伸ばしかける。
止まる。
「……でも、花弁じゃない」
「うん」
「小皿は花弁置いてた」
「そうだね」
「一緒に入れる?」
子供は少し悩んだ。
小皿の中には茶色い花弁が重なっている。
その横に、小さな欠片。
「別にする」
「どうする?」
「小さい皿ある?」
治療教師が少し離れた位置から答える。
「ありますよ」
「一個借りたい」
「分かりました」
すぐに、小さな平皿が子供の見えるところへ置かれた。
子供は自分で取り、棚の横へ並べる。
「花弁はこっち」
「うん」
「これは、こっち」
「名前は?」
「……まだ分からない」
「無理に付けなくていいね」
「うん」
子供は薄い木板を使わず、今朝は指先で直接欠片を拾った。
小さい。
軽い。
途中で割れそうだったが、無事に新しい皿へ置かれる。
「入った」
「うん」
「同じ白い花から落ちた。でも、同じ皿じゃない」
「うん」
「どうして?」
自分で尋ねる。
「花弁と違うから」
「うん」
「でも白い花の一部は同じ」
「そうだね」
子供は二つの皿を見比べた。
「同じところもある。違うところもある」
「うん」
それを言ったあと、少しだけ笑った。
◇
朝食では、東側の夜間反応について学院長から話を聞いた。
「小空洞、また反応した?」
「ああ。昨夜、五度目が出た」
「長かった?」
「四度目よりは短かった。二十一呼吸ほどだ」
「新しい方も?」
「小空洞が反応し始めてから五呼吸ほどあとに、少し強くなった」
子供の匙が止まる。
「一緒?」
「同時ではない」
「五呼吸あと」
「ああ」
「小空洞が先?」
「観測上はな」
「そのあと?」
「小空洞が先に元へ戻り、新しい反応は十呼吸くらい遅れて戻った」
「光は?」
「目立った変化なし」
子供は難しい顔をする。
「小空洞と新しいの、一緒に動いた?」
「近い時間に変化した」
「同じじゃない?」
「時間が少しずれているから、完全に同時とは呼ばない」
「でも近い」
「ああ」
「じゃあ関係ある?」
「可能性を考える材料は増えた」
「またそれ」
子供は少し頬を膨らませる。
アリシアが笑いそうになり、口元を押さえた。
「同じ理由で動いたかは?」
「分からない」
「小空洞が新しいの動かした?」
「分からない」
「新しいのが小空洞動かした?」
「観測した順番だけなら小空洞が先だ。ただ、見えていない別の原因が両方へ影響した可能性もある」
「見えてないのまで出てくる」
「出てくるな」
学院長が少し笑った。
「嫌」
「分かりにくいから?」
「うん」
子供は朝食に添えられた淡い緑色の果実を一つ取り、口へ運んだ。
「同じ時間に動いたら、同じ理由って思う」
「そうだな」
「違うことある?」
「ある」
「例えば?」
学院長が少し考える。
「朝になって、学院の鐘が鳴るのと、鳥が鳴き始めるのが近い時間だったとしても、鐘が鳥を鳴かせているとは限らない」
「鐘で鳴く鳥もいる?」
「驚いて鳴く可能性はあるな」
「じゃあ分からない」
「そういうことだ」
子供は少し不満そうだ。
アリシアが別の例を考える。
「私とノアが同時に立ったとしても、同じ理由じゃないことあるよ」
『あなたが勝手に立って、私はご飯の匂いで立つとかね』
「ノアはご飯で立つって」
「アリシアは?」
「窓閉めようと思って立つとか」
「同じ時間でも理由違う」
「うん」
「でも、ノアが立ったからアリシアも立つこともある?」
「あるよ」
「じゃあ、見ただけじゃ分からない」
「うん」
子供は少し考えた。
「顔のない人と光も?」
「どういうこと?」
「この人の胸の光が明るくなって、この人が歩く。近いときある」
「うん」
「光が明るくなったから歩いたかもしれない。歩いたから明るくなったかもしれない。違う理由で両方だったかもしれない」
アリシアは少し驚いた。
「そうだね」
「……難しい」
「うん」
子供は溜息をつき、それでも少し笑った。
「でも、同じ時間だから同じ理由、じゃない」
「そうだね」
「西は?」
今度は学院長が答える。
「今日は第二排水支路点検口候補を、外側からさらに調べる」
「開けない?」
「まずは開けない」
「何見る?」
「石材の継ぎ目。周囲の魔力反応。固定方法。向こうに空間があるかどうか」
「開けないで分かる?」
「取れる範囲はな」
「昨日、新しい候補見つけた」
「ああ」
「前の古い扉もある」
「ある」
「両方扉っぽい」
「そうだ」
「同じ?」
「まだ分からない」
「また」
「まただな」
子供が笑った。
◇
西側旧排水坑では、朝食の頃から第二排水支路点検口候補の非接触調査が始まっていた。
昨日確認された縦長の異材。
周囲の石壁よりわずかに色が濃く、継ぎ目が細い。
表示板の固定跡と思われる二つの穴からは数歩も離れていない。
人間側から見れば、点検口である可能性はかなり高く感じられる。
だからこそ、副学院長は入口で改めて確認した。
「今日は開けない」
「はい」
若い観測員が即答する。
「押さない」
「はい」
「叩かない」
「はい」
「隙間へ道具を差し込まない」
「はい」
「ずいぶん素直だな」
「昨日、“明日は外側から調べる”って聞いてたので」
「成長した」
若い観測員が目を見開く。
「今、褒めました?」
「今の返事だけな」
「狭い」
「調子に乗るな」
魔導具教師が笑いながら測定具を準備する。
縦長の石材へ直接触れず、周囲の壁面から魔力の流れを読む。
「反応、ほぼありません」
「完全に死んでる?」
「“ほぼない”です」
「はい」
若い観測員が自分で言い直す。
「向こう側の空間は?」
土属性術師が床へ掌を当てる。
一度。
短い感知。
少し位置を変えて二度目。
「……あります」
全員の空気が変わる。
「広さ?」
「人一人が入れる程度の小空間。奥行きは三歩か四歩ほど」
「通路?」
「続いていないように見えます」
「点検室?」
若い観測員が言ってから、すぐ口を押さえる。
「候補」
「早い」
「自分でも分かりました」
魔導具教師が石材の外周を観察する。
「左側に、わずかな金属反応があります」
「蝶番?」
「可能性はあります」
「右側は?」
「金属反応なし」
「左を軸に開く?」
「その構造なら」
副学院長が通信越しに尋ねる。
『内部魔力は?』
「ほぼありません。ただし、奥の壁際に非常に弱い残留があります」
『種類』
「古い制御系統に近いですが、量が少なすぎて断言できません」
『生命反応』
「なし」
『水』
土属性術師が少し感知を広げる。
「床下に湿気。空間内そのものは大きく水没していません」
『今の点検口候補を開ける必要性は?』
若い観測員が答える前に、自分で少し考えた。
「第二排水支路の排水状態を確認するなら、内部に点検設備や記録が残っている可能性があります」
『それは理由になるな』
「でも、今すぐ?」
『そこは別だ』
「はい」
魔導具教師が縦長の石材の上部へ観測板を向けた。
「文字の痕跡らしきものがあります」
「読める?」
「かなり薄い。……一文字だけなら、“二”に見える」
「第二?」
「かもしれません」
若い観測員の顔に期待が出る。
「表示板と合う」
「そうですね」
「点検口でほぼ――」
一度止まる。
「……かなり可能性高い?」
「昨日よりは上がりました」
「開ける?」
自分で聞いてから、少し笑う。
「聞くだけです」
副学院長が通信越しに息を吐く。
『午後の会議で判断する。午前はここまで』
「了解」
昨日なら、若い観測員は少し残念そうな顔をしただろう。
今日も、気になってはいる。
それでも、以前ほど強く先を急ぐ顔ではなかった。
「同じ場所まで来ても、昨日と気持ち違うな」
「何が?」
魔導具教師が尋ねる。
「昨日は見つけたからすぐ開けたいって思ってました。今日は、開けたら何が変わるかも考えるようになった」
「いい変化ですね」
「先生は普通に褒めてくれる」
『聞こえてるぞ』
「副学院長にも聞かせてます」
『余計なことをするな』
通路に笑いが広がった。
◇
昼前。
東側では、名前のない光が久しぶりに動いた。
「位置変化」
観測員の声に、サーラがすぐ盤面へ向かう。
「方向」
「さらに奥です」
「新反応の方?」
若い観測員が反射的に言う。
サーラが彼を見る。
「方向だけなら、近づく側です」
「はい」
「目的は分からない」
「はい」
光点がゆっくり移動する。
小空洞との距離は、少しずつ離れていく。
新しい微弱反応との距離は縮まる。
「小空洞から離れる」
「はい」
「新反応へ近づく」
「距離上は」
若い観測員は、盤面を食い入るように見る。
「昨日の夜、小空洞と新反応が近い時間に動いた。そのあと光が新反応へ近づく」
「そう見える並びですね」
「でも、だから新反応を目指してるとは言わない」
「はい」
光はさらに少し進む。
そのとき、新反応側の値がわずかに揺れた。
「変化」
「上昇?」
「いや……一度だけ下がりました」
サーラの表情が変わる。
「時刻記録」
「十一時三十二分」
「光の移動開始から?」
「二十呼吸程度」
「小空洞?」
「反応なし」
新反応はすぐ元の水準へ戻った。
光はさらに一歩相当進み、そこで止まる。
「位置停止」
「新反応との距離?」
「昨日よりかなり縮まりました」
「かなり、で記録しないでください」
「数値出します」
若い観測員が慌てて距離を測り直す。
「直線で、およそ昨日の三分の二です」
「記録」
「新反応は今、元の値」
「はい」
「光が近づいたら、一回下がった」
「はい」
若い観測員が首を傾げる。
「普通、関係あるなら上がりそうって思ってた」
「なぜですか?」
「小空洞が反応したとき、新反応は上がったから」
「同じ仕組みとは限りません」
「ああ」
「近づいて上がるとも限らない」
「そうですね」
「下がったことが意味を持つかも分からない」
「はい」
若い観測員は少し笑った。
「予想の逆が出ると、余計分からなくなる」
「その分、思い込みを減らせます」
「それはいいのか悪いのか」
「調査としては良いでしょう」
光は新反応へ近づいた位置で止まった。
小空洞は静か。
新反応も静か。
昨夜まで三つ並んでいた位置関係が、また少し変わった。
◇
昼食時、その報告を聞いた子供は、果実を噛んだまましばらく黙っていた。
「光、新しい方に近づいた?」
「ああ」
「小空洞からは離れた」
「ああ」
「新しいの、強くなった?」
「逆に、一度だけ少し弱くなった」
「弱く?」
「すぐ戻ったがな」
子供が露骨に困った顔をする。
「昨日は一緒に強くなった」
「小空洞が反応した少しあとにな」
「今日は光が近づいたら弱くなった」
「そう見える」
「じゃあ、光嫌い?」
言ったあと、子供自身が眉を寄せた。
「……違う。嫌いって分からない」
「うん」
「近づいたあと弱くなっただけ」
「そうだ」
「同じ理由じゃないかも」
「うん」
子供は匙を置き、少し真剣に考える。
「昨日、新しいの強くなった。今日弱くなった。どっちが本当?」
「どっちも起きたことは本当だよ」
アリシアが答える。
「違うのに?」
「違う変化が、違うときに起きた」
「同じ新しい反応なのに?」
「同じ場所で観測してる反応でも、毎回同じ動きをするとは限らないよ」
「顔のない人の光みたい?」
「朝二つだったり、三つだったり?」
「うん」
「少し似てるかもね」
子供は隣の寝台を見る。
顔のない存在は、まだ昼前から動いていない。
「同じものでも毎回同じじゃない」
「うん」
「じゃあ、同時に動いたから同じ理由じゃない。違う動きしたから関係ないでもない」
「そうだね」
子供は両手で頭を抱える真似をした。
「若い観測員みたい」
アリシアが吹き出す。
「何で知ってるの?」
「学院長、昨日少し話してた」
扉の外から学院長の声が飛ぶ。
「余計なところまで覚えるな」
「面白かったから」
「本人には言うなよ」
「言わない」
子供は笑ったあと、木箱を見る。
「箱も昨日少し開いた」
「うん」
「今日開けたら、同じくらい怖い?」
「分からないね」
「昨日より怖いかも?」
「あるかも」
「昨日より平気かも?」
「うん」
「同じ箱なのに」
「うん」
子供はしばらく箱を見た。
「じゃあ、昨日できたから今日も同じようにできる、じゃない」
「そうだね」
「今日の気持ちで決める」
「うん」
◇
午後。
西側では、第二排水支路点検口候補を開けるかどうかの会議が行われた。
副学院長。
魔導具教師。
土属性術師。
安全管理担当。
そして、旧排水坑の状況を直接見た観測員二名。
机の上には、昨日までの排水路情報と、今日確認した点検口候補の構造が並べられている。
「開ける理由はある」
副学院長が最初に言った。
「第二排水支路の排水状態を確認し、水没区画の水を安全に抜ける可能性を検討するためだ」
安全管理担当が頷く。
「緊急性は?」
「低い」
「内部生命反応?」
「なし」
「危険値?」
「低い」
「開けずに取れる情報は?」
魔導具教師が答える。
「外形、内部空間の大きさ、左側に蝶番らしき金属反応、奥の微弱残留までは確認済みです。これ以上は、開けないと難しい」
「開けることで状態変化する可能性は?」
「古い扉ほど強い保持術式はありません。ただし、長期間閉じていた空間なので、空気、水圧、泥の移動は考慮が必要です」
副学院長は資料を見る。
「つまり、以前の古い扉とは条件が違う」
「はい」
若い観測員が発言する。
「前の扉は、壊さないと開かない可能性があった。今回は、開閉構造が残っている可能性がある」
「そうだ」
「内部空間も小さい」
「そうだ」
「開ける目的も、排水系統確認で明確になっている」
「そうだ」
「じゃあ開ける?」
副学院長は少し笑った。
「お前が言うと急いで聞こえるな」
「かなり考えてから言いましたよ」
「それは分かる」
安全管理担当が資料へ視線を落とす。
「私は、条件付きなら開扉に賛成です。完全には開けず、最初は数寸。内部の空気と圧力変化を確認。問題なければ人が覗ける程度まで」
「人は入らない?」
「今日は入らない」
魔導具教師も頷いた。
「それが妥当でしょう」
副学院長は少し考えた。
「では午後後半、部分開扉を行う。最初は数寸。異常があれば即時閉鎖」
若い観測員の顔が明るくなる。
「開ける」
「開けることを目的にするなよ」
「分かってます」
「何のためだ」
「第二排水支路の状態確認」
「よし」
「今度こそ褒めました?」
「確認しただけだ」
「厳しいなあ」
会議室に笑いが起こった。
開けない日が続いていた。
だからといって、開けないことそのものが正しいわけではない。
条件が変われば、判断も変わる。
それを忘れないための会議でもあった。
◇
夕方前。
生活観測区画では、顔のない存在がゆっくり寝台から立ち上がった。
子供は机で白い花の二つの皿を見ていた。
花弁の皿。
今朝新しく分けた、小さな欠片の皿。
人影が立つ気配に気づき、顔を上げる。
一歩。
二歩。
三歩。
今日は足取りが少し遅い。
四歩。
そこで止まった。
子供は黙っている。
数呼吸。
人影は五歩目へ進む。
六。
七。
八。
さらに九。
子供の目が少し大きくなる。
以前、窓の一歩手前まで進んだときと同じくらいの位置。
人影は九歩目で止まった。
子供の口が開きかける。
けれど、まだ何も言わない。
人影は立ったまま、窓の方へ身体を向けているように見えた。
もう一歩。
十。
子供が息を呑む。
顔のない存在は、ついに窓辺近くまで進んだ。
以前なら「窓まで行った」と言っていたかもしれない。
けれど厳密には、窓枠へ触れてはいない。
窓の前に立てる位置まで来ただけだ。
人影はその場で止まった。
子供はしばらく何も言えなかった。
目が明るくなる。
口元が緩む。
嬉しさが隠せない。
「……十」
ようやく声が出た。
「うん」
「今日は十」
「うん」
「窓の近く」
「うん」
「行った」
言ってから少し止まる。
「近くまで行った」
「そうだね」
子供は椅子から立ち上がりかけた。
けれど、途中で止まる。
「近く行きたい」
「人影のところへ?」
「うん」
「行く?」
子供は少し迷った。
「……行く。でも、近づきすぎない」
「うん」
ゆっくり立ち、窓の反対側へ回る。
顔のない存在との距離を保ったまま、自分も窓の外を見る。
庭。
乾いた石畳。
植え込み。
水溜まりはもうない。
「水、ない」
「うん」
「この人、前は水あるとき窓まで来なかった」
「そうだね」
「今来た」
「うん」
「水見たかった?」
「分からない」
「今の庭見たかった?」
「それも分からない」
「窓行きたかった?」
「分からない」
子供は少し笑った。
「全部分からない」
「うん」
「でも、今ここにいる」
「そうだね」
人影の胸では、十一のうち三つが淡く明るくなっていた。
「三つ」
「うん」
「歩いたから?」
子供は言いかけて、自分で首を横へ振る。
「分からない」
「うん」
「でも十歩歩いたのと三つ明るいの、今一緒にある」
「そうだね」
「同じ理由か分からない」
「うん」
子供は窓の外を見る。
「今日の東みたい」
「そうかもね」
顔のない存在は、そのまま窓の近くで立っていた。
子供も急かさなかった。
◇
同じ頃、西側では、第二排水支路点検口候補の部分開扉が始まっていた。
周囲には必要最低限の人員だけがいる。
安全縄。
空気測定具。
圧力変化を読む小型盤。
土属性術師は少し離れた場所で壁と床の状態を監視している。
「最初は数寸」
副学院長が確認する。
「はい」
魔導具教師が縦長の石材へ初めて直接触れた。
左側を軸にする構造。
予想通りなら、右側を手前へ引く。
ゆっくり。
力をかける。
最初は動かない。
「固着」
「無理するな」
「少しだけ角度変えます」
下側の泥を必要最小限だけ避ける。
もう一度。
低い擦過音。
縦長の石材が、ほんのわずかに手前へ動いた。
「開きます」
若い観測員の声が少し上ずる。
「静かに」
「はい」
一寸。
二寸。
そこで止める。
中から、冷たい空気が細く流れ出した。
「空気測定」
「有害反応なし」
「圧力?」
「変化小」
「水?」
土属性術師が床を確認する。
「動きなし」
「内部魔力?」
魔導具教師が細い感知具を隙間へ向ける。
「低い。外側で読んだ残留とほぼ同じです」
「生命反応?」
「なし」
副学院長が短く息を吐く。
「あと二寸」
少しずつ開く。
隙間が広がる。
中は暗い。
小型魔導灯を隙間から照らす。
「見えます」
投影盤へ内部が映った。
小さな空間。
奥行きは、土属性術師の感知通り三歩ほど。
右壁に古い配管。
床には泥が少し。
そして奥の壁に、丸い金属蓋のようなものがある。
「何だ、あれ」
若い観測員が息を呑む。
「触るな」
「触りません」
魔導具教師が映像を拡大する。
丸い蓋。
周囲に刻まれた文字。
一部だけ読める。
「……『排水圧』」
「圧力調整?」
「続きが欠けています」
「弁?」
「可能性はあります」
副学院長が言う。
「今日はそこまで」
「やっぱり」
若い観測員が思わず笑った。
「不満か?」
「いえ。予想してました」
「閉じる」
部分的に開けた点検口候補は、ゆっくり元へ戻される。
完全固定まではしない。
再開できるよう、外側へ仮留めだけ行う。
「開けたのに、入らない」
若い観測員が言う。
「今日は内部確認までだ」
「丸い蓋、かなり気になります」
「俺もだ」
「また」
「気になるものが増えたな」
「新しいもの見つけたら、前の疑問増える」
「その通りだ」
若い観測員は少し笑った。
◇
夕食後。
子供は学院長から西側の報告を聞いた。
「開けた?」
「ああ。第二排水支路点検口候補を少しだけ」
子供の目が大きくなる。
「私の箱みたい」
「かなり似た開け方だったな」
「中、見えた?」
「少し」
「何あった?」
「小さな点検空間。奥の壁に丸い金属蓋らしきものがあった」
「また新しい」
「そうだ」
「何?」
「文字の一部に『排水圧』と読めるものがある。圧力調整用の設備かもしれない」
「答え?」
「まだ」
子供が笑う。
「やっぱり」
「何だ」
「開けても答え全部出ない」
「昨日、自分の箱で分かっただろう」
「うん」
「今日は人間も分かった」
「そうだな」
「閉じた?」
「閉じた」
「怖くなった?」
「危険反応はなかった。ただ、今日の目的は内部確認までだったからな」
「怖くなくても閉じることある」
「ある」
「私、昨日怖くて閉じた」
「うん」
「人間は、今日は目的終わったから閉じた」
「そうだ」
「同じ閉じるでも理由違う」
「うん」
子供は嬉しそうに頷いた。
「今日の話いっぱい同じ時間でも理由違う」
「そうだね」
アリシアが答える。
「東も?」
「うん」
「顔のない人も?」
「うん」
「西も?」
「うん」
「箱も?」
「そうだね」
子供は少し考えた。
「同じことしてても、同じ理由じゃない」
「うん」
「同じ理由でも、違うことすることある?」
アリシアは少し考える。
「あると思うよ」
「例えば?」
「怖いから離れる日もあるし、怖いけど確かめるために近づく日もある」
「私みたい」
「うん」
「同じ怖いでも、動き違う」
「そうだね」
子供は少し黙った。
「じゃあ、外から見ただけで理由決めるの難しい」
「難しいね」
「この人も」
顔のない存在を見る。
夕方、十歩まで進んだあと、しばらく窓の近くに立ち、今は自分で寝台へ戻っている。
「窓まで行った理由、分からない」
「うん」
「でも行った」
「うん」
「戻った理由も?」
「分からない」
「でも戻った」
「そうだね」
子供は小さく息を吐いた。
「分からないいっぱい」
『今さらね』
ノアが言う。
「ノア、今日は何割?」
『何の?』
「分からないに耐える」
『七割』
「低い」
『残り三割は、分からないって言いながら全部聞いて回ってるから』
「知りたいのはいいでしょ」
『いいわよ。だから七割もあるの』
「高い?」
『私基準なら』
子供は笑った。
◇
夜。
東側では、名前のない光が昼に移動した位置から動いていなかった。
新しい微弱反応は、光が近づいた直後に一度だけ下がり、その後は元の水準へ戻っている。
小空洞には六度目の反応はまだない。
三つの関係は、昨夜よりさらに分かりにくくなったようにも見えた。
昨夜。
小空洞が先に反応。
五呼吸ほどあと、新反応が強まる。
名前のない光は変化なし。
今日昼。
名前のない光が新反応へ近づく。
その途中、新反応が一度だけ弱まる。
小空洞は変化なし。
同じ三つでも、動き方が違う。
それは仮説を壊す材料にもなり、別の仮説を作る材料にもなった。
西側では、第二排水支路点検口候補が初めて部分的に開かれた。
内部には小さな点検空間。
奥壁には「排水圧」と読める文字を持つ丸い金属蓋状設備。
人間側は中へ入らず、点検口を再び閉じた。
開けた。
見た。
閉じた。
それだけなら、生活観測区画の木箱と似ている。
けれど理由は違う。
子供は怖くなって閉じた。
西側の調査班は予定していた確認を終えたため閉じた。
同じ行動でも。
同じ時間でも。
同じように見える変化でも。
その理由まで同じとは限らない。
◇
寝台へ入った子供は、今夜は木箱ではなく顔のない存在を見ていた。
「アリシア」
「うん」
「今日、この人十歩」
「うん」
「窓の近くまで行った」
「うん」
「私、嬉しかった」
「うん」
「でも、この人が行った理由は分からない」
「うん」
「私が前に行ってほしいって言ったから?」
「分からない」
「窓見たかった?」
「分からない」
「歩きたかった?」
「分からない」
「たまたま?」
「それも分からない」
子供は少し笑った。
「全部分からない」
「そうだね」
「でも、十歩歩いたのは分かる」
「うん」
「窓の近くにいたのも」
「うん」
「私が嬉しかったのも」
「うん」
「それは私の理由?」
「嬉しかった理由?」
「うん」
「この人が十歩歩いたのを見たから?」
子供は少し考える。
「それもある。でも、前より窓に近くなったのが嬉しい。自分で行ったのも嬉しい」
「うん」
「二つある」
「あるね」
「同じ嬉しいでも理由いっぱい」
「そうだね」
子供は布団を少し上へ引き上げる。
「東も、同じ時間に動いたから同じ理由じゃない」
「うん」
「西も、私も箱閉じた。でも理由違う」
「うん」
「顔のない人も、歩いた日毎回同じ理由じゃないかも」
「うん」
「じゃあ、人が何かしたとき、理由を勝手に一個にしない方がいい?」
アリシアは少しだけ考えてから答えた。
「聞ける相手なら、聞くのが一番かもしれないね」
「聞けない人は?」
「分からないって残すこともある」
「この人みたい」
「うん」
「光も」
「うん」
「白い花は?」
「花がどうして落ちたか?」
「うん」
「乾燥とか時間とか、分かることはあるけど、全部を一つの理由にできるかは分からないね」
「難しい」
「うん」
「でも、勝手に理由作らない」
「うん」
「作りたくなる?」
「なることはあると思う」
「アリシアも?」
「かなり」
『かなりどころじゃないでしょう』
「ノア」
『事実よ』
子供が笑う。
「ノアは?」
『私は人間ほど余計な物語を作らないわ』
「でもアリシアの気持ち決める」
『あれは顔に出てるから』
「またそれ」
アリシアが不満そうに言うと、子供の笑い声が少し長く続いた。
やがて静かになる。
「アリシア」
「うん」
「明日、箱開けるかな」
「どうだろうね」
「開けたいはある」
「うん」
「怖いもある」
「うん」
「昨日少し開けたから、今日はもっとじゃない」
「うん」
「明日の私は、明日決める」
「うん」
「顔のない人も?」
「どういうこと?」
「明日歩くか、明日のこの人が決める?」
アリシアは少し困った。
「この人が何を“決めている”かまでは分からないけど、少なくとも人間側が今日十歩だったから明日は十一歩って決めることではないと思う」
「うん」
「東の光も?」
「うん」
「西は?」
「人間は計画するけど、明日の状態を見て変えることもあるよ」
「全部、今日の続きだけど、同じじゃない」
「そうだね」
子供は目を閉じた。
「じゃあ今日は今日」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみ」
◇
夜半。
東側中継観測室では、三つの記録が今日も並べられていた。
小空洞。
新しい微弱反応。
名前のない光。
昨夜は二つが近い時間に上昇した。
今日は光が動き、その途中で新反応が一度だけ低下した。
同じ対象。
違う変化。
それを見た若い観測員は、夜勤へ引き継ぐ前に記録を眺めながら小さく言った。
「昨日だけ見てたら、小空洞が新反応を強くしたって考えたかもしれない」
サーラが隣で資料を閉じる。
「はい」
「今日だけ見てたら、光が近づくと新反応が弱くなるって考えたかもしれない」
「はい」
「両方見ると?」
「どちらも、まだ断定できない」
「ですよね」
若い観測員は少し笑った。
「一日だけで答え作るの、怖いな」
「だから記録を残します」
「前のも、新しいのも」
「はい」
「動いたものも、動かなかったものも」
「はい」
「同時だったものも、ずれたものも」
「全部です」
観測室の魔導灯が夜用の明るさへ切り替わる。
東側の三つは、今はどれも静かだった。
同じ時間に変わることがある。
違う時間に変わることもある。
一方が動いて、もう一方が動かないこともある。
似た出来事が並べば、人間は同じ理由を置きたくなる。
違う出来事が並べば、今度は別々だと切り離したくなる。
けれど、どちらも早すぎることがある。
生活観測区画では、同じ「閉じる」という行動に、子供と西側調査班で違う理由があった。
同じ「嬉しい」という感情にも、子供の中では複数の理由があった。
顔のない存在が十歩進んだ理由は、まだ誰にも分からない。
それでも十歩進んだ事実は残る。
東側で二つの反応が近い時間に変化した理由も、まだ分からない。
それでも、五呼吸と十呼吸の差は記録へ残る。
同じように見えるものを、同じだと決めない。
違って見えるものを、別物だと急いで切り離さない。
その間にある、少し面倒で、少し落ち着かない場所へ留まる。
今の学院は、そこに以前より長くいられるようになっていた。
そして生活観測区画では。
眠った子供の隣で、顔のない存在の胸にある十一の光のうち、二つだけが淡く明るさを増した。
それが今日十歩歩いたことと関係しているのか。
眠りに入ったことと関係しているのか。
あるいは、まったく別の理由なのか。
誰にも分からない。
だから観測記録には、ただこう残された。
夜間。
胸部十一光のうち二点、淡く光量上昇。
位置変化なし。
その他、目立った変化なし。
理由の欄は、最初から存在していなかった。




