第5話『人智を超えた力』
その瞬間、晴天だった空に徐々に雲が現れ、天候が最悪に悪化し始めた。
風が吹き荒れ、まるで台風のようになった。
異常なまでの風の強さ。俺は目を疑ったが、数十メートル先に巨大な竜巻があった。このままだと巻き込まれる。
思った時にはもう遅かった。身体が徐々に踏ん張りが効かずに竜巻の方に流されていく。もう耐えられない。
せめて葉月だけでも。
俺は葉月を電柱のそばに突き飛ばした。
『そこに捕まってろ!!絶対に離すな!』
そう言った途端、俺の身体は宙に浮いて竜巻に吸い込まれていく。
あぁ、そんな、俺死ぬのか。
こんな所で死ぬなんて、やり残したこといっぱいあるのに。
徐々に竜巻の中央に近づいていく。
諦めかけた直前、目を疑うような光景が俺の前に映っていた。
葉月が俺の目の前に。そして手を握って竜巻から遠ざかっていく。
『え、どうやって……助けて……』
『もう、カッコつけすぎ!君はまだ向こうに行かせないよ!!』
人間離れした能力。この世のものとは思えない力で俺は助けられた。全く状況を理解できなかった。
そして葉月は俺を掴みながら、そのまま砂浜へと着地した。
『葉月、おまえは一体何者なんだ?』
『うーんとね、うん、海斗にはもう話すね!私はあの世に行くには早すぎる人をこの世に舞い戻す精霊なの!やっぱり予定より間違えてあの世に行っちゃう人っているのよね!』
『あの店員さんのおじいちゃんも同じね!あのおじいちゃんは聞く耳持ってくれなくて、「ワシはまだいかんぞー死神!」としか言ってなかったけど、店員の誕生日までは行きたいって本気で願ってたみたいだから、私も全力を尽くして延命させてたの。その後は残念だったけどね』
『んでこの天候だとさ、休日出勤確定なんだよね笑』
俺は唖然として聞いていた。でも信じるには十分すぎるくらいの、人智を超えた力だった。
しばらくして竜巻は去っていった。
葉月は恥ずかしそうに話した。
『海斗!ありがとう。一日一緒にいられて本当に楽しかったよ!普段はあまり人との接触は避けるようにして、正体はあまり言わないように言われてるんだ笑!精霊だってアニメとか見るのに、感想語れる仲間がいなくてさ、ずっと憧れてたの。人間がこんなふうに楽しく談笑してるのにさ!ずるいよー!ほんとに!』
照れた笑顔が素敵だった。そして自然に言葉が出てしまった。
『また、どこかで会いたい……』
『うん……ありがとう!大丈夫!私はいつでもあなたを見てるよ!』
葉月は微笑みながら風のように消えていった。
気づけば夕方。あの告白シーンのように夕日に照らされながら、俺は砂浜で焼けた空を見上げていた。
以上、一夏の思い出を巡礼日記に綴る。




