第3話『不可解』
しばらく歩いて学校への分かれ道にて、大学生の男2人が言った。
『俺たちはここから学校に向かいます!お二人とはここでお別れです!』
『え!一緒に行けばいいじゃないか!?』
俺が尋ねると、男は耳打ちしてきた。
『実は葉月さんはもう学校には行ってるみたいで、ここは元通り二手に別れたほうがいいかなと。それに俺らはお邪魔になっちゃうし、な?』
2人は見合ってうなずいた。
『海斗さん!ここはチャンスですよ!葉月さんかわいいし!羨ましいですねえ!この!』
茶化すように大学生は耳打ちして言ってきた。
『あと葉月さんって何かどこかで会ったことあるような気がするんですよねぇ』
そんな言葉を残して俺たちと別れた2人は学校へと向かった。
俺たちは、街中の聖地を巡礼することにした。
『あ、ここ海斗がソフトクリーム食べてた所!』
『違うよー!笑 食べてたのはたこ焼き!これはこれはこれは、所々知識に穴ができちゃってますなぁ笑』
葉月はからかいながら話してきた。
『全く!愛が足りないからだよー!私なんかこのシーンのセリフ全部言えるからねー!』
『ほう、じゃあやってもらおうか』
俺はムキになって、葉月にセリフを言ってもらうことにした。そして後悔した。彼女のセリフ回しは原作通りの完璧だった。
『ハッハ!まぁ、私にかかればぁこんなもんよ!笑』
『もっとお勉強してきなさいって!笑』
この女め、悔しいが完璧である。
こんな談笑をしながらしばらく聖地を巡っている内に、夕陽になりあたりが暗くなりかかってきた時に彼女が不意に言った。
『海斗って前にも見かけたことあるけど、こんな感じなんだね!暗そうだったのに、話してみると本当おもしろい!』
『へ?冗談言うなよ笑 俺の家どこだと思ってんだよ。適当言ってるだけだろ笑』
『冗談じゃないよ!A県B市の辺りで、会社は確かC社でしょ!?』
俺は驚愕した。なんで知ってんだ。今日初めて会って話したこの子の口から出てくるはずがない単語が並んだことに、少し冷や汗をかいた。
『な、何で知ってんの?笑』
俺は焦りながら聞いた。
『うーん、まぁ仕事柄、全国あちこちに行ったり来たりしてるからね。まぁいいじゃん!たまたま見つけただけだよ!』
『いやよくねぇよ!笑 そんな偶然あってたまるか!怖いぐらいだよ笑』
俺は冗談まじりに若干の恐怖を堪えて話した。
『死ぬわけじゃないんだし、住んでる所バレるくらい大丈夫でしょ!』
そういう問題じゃないだろう。
『それにね、あなたがどこに引っ越しても、いずれまたあなたに会うことになるから!』
何だか怖くなってきた。俺はもしかしたら、とんでもない子に声をかけてしまったのかもしれない。
俺は話を変えようと作品の話を持ち出した。
『それにしても、この雰囲気ってあのシーンと似てるよな。ほら、ヒロインの兄が亡くなっちゃった回想のシーンの!お兄さんって妹を庇って亡くなっちゃった時にどう思ったのかな』
それにしても下手すぎる話の切り替えだった。暗すぎるだろ。
『ああ!あのシーンね!うーん、やっぱり自分自身もこの先やりたいことはあっただろうし、どうなんだろうね。でもそういう人って覚悟を持って亡くなっていくの!だから誰にも止められない。ただ、一つ言えることは、亡くなる時にとても清らかな魂になってることだけは間違いないわ!』
妙に神秘的なことを言う葉月だったが、まぁさっきの雰囲気よりはマシか。
そんなことを話していると空が曇り、次第に雨が降ってきた。
今晩は旅館に一泊して、聖地巡礼は明日出直すことにした。
やっぱりさっきの会話からモヤモヤする。
食事と風呂をお互い済ませて、寝る間際に俺は思い切って冗談まじりに聞いてみた。
『なぁ、葉月って死神とかじゃないよな笑?いや当たってたらヤバいんだが』
俺は息を飲んで答えを待った。
『ぷー笑 何言ってるの!?笑 そんなわけないじゃん!それにこんな近くに死神がいたら、海斗なんてとっくにあの世行きだよ笑』
まあ確かにそれもそうだが。
『じゃあ何で住んでる場所知ってたりしたんだ。もしかしたら死神じゃなくても、その使いとかで死神に連れて行く人とかだったりか?』
『大丈夫だって!笑 もう!何を考えてるのか分からないけど、海斗が心配してるようなことは起こらないよ笑 安心して眠って!あ、襲っちゃだめだからね♡私が安心して寝れなくなっちゃう』
『ばーか!襲ったらあの世行きかもしれないのに、怖さ半分でそんなことできねーよ!笑』
『はあー!?人のことを何だと思ってるの!?こんな美少女と一緒に寝れるなんて幸せなことなんだからね!』
『自分で言うのか……まぁそれは事実だけど……』
『でもさ、俺こんなに好きな事について話せたの、本当に久しぶりだったよ。普段はあんまり話せる人いなくてね』
『それは私もー!ん?てか話せる人いないの?海斗って最初のイメージと違って、話してみるとすごい楽しいんだけどなー!』
『人を友達いないやつみたいに言うな!趣味の合う人がいないって事だよ!てか最初のイメージそんなに悪かったのか』
『ごめんごめん、傷つかないで!笑 でも今日は本当にありがとね!すごく楽しかった!』
『あぁ、こちらこそ!』
その後はしばらく談笑して眠りについた。




