11日目
内戦は終わった。
魔法使いは魔法を制御する。
深い傷は何の予兆もなくそのままひっつき、浅い傷は人と同じように薄くなり消えていくがそのペースは人よりも速い。
死んだものさえ、それが例えかけだしの魔法使いであろうとも9割方は復活するのだが今回はその不死性を超える猛者達がぶつかりあったため、多くが死んだ。
緑郎の死体が消えている。
この内戦の重要人物である彼は必ず処刑台に送らねばならない。
一昔前、いや、11日前なら考えられない事だ。
魔術師協会は王に利用されないために、また権威を見せつけるために魔術師の犯した罪を矮小化して来た歴史がある。
1300年前のまだ魔術師協会が世界的な組織ではなく、少人数の集団であったころから変わらない。
ある心優しき魔術師が両親を人質に取られ戦争に参加させられた。10万人を超える犠牲者を出した事件は、
まだ魔法が今より発展していない時代から魔法使いが戦争に参加することは凄惨をきわめることをしめす。
ひょっとして当時の世界人口は今の700分の1程度でまさに当時の再現かとも考えたがさすがにそんなことはない。
やはり今回の内戦は過去に類を見ない大規模な戦争だった。
心優しき魔術師は心を鬼にし、権力に恐れられる組織をつくる。それが現代の魔術師協会であり、今や名ばかりで実効力をもたないという事を見せつけられた組織である。
緑郎が復活した事は想像できる。彼は優秀な魔術師でありこの内戦でも屈指の実力者であるサラに守られた。
私が皆を見渡すと皆がそれぞれが思い思いの方法で泣いていた。叫ぶもの、耐えるもの、真っ白な感情となった者。叫ぶ言葉すら見つからないもの。彼等はまだよい。多くはそうでは無い。
魔術師は不老不死、見た目は若い。
才能が有るほど若く見た目が止まるという俗説もあるが40代程度の見た目になる人さえまれなのだ。
そんな奴らが何もなさずにようやく自分は全能でないと知り怒りでも悔しさでも無い無力感で泣いている。
気色が悪くて仕方がない。
魔術師から傲慢を取れば気色悪さだけが残る。
我々はつよい力を持つだけの子供。
傲慢になれば残虐になり、自信を失えば感情があふれた訳でもなく涙を堪えられない。
しかし内戦に参加しなかった魔術師達と我々はもう同じになれない。心に一つ恥じらいという呪いを受けた。
もう我々は今までのように傍若無人に振る舞う事は出来ない。
人はそうして成長していく。
魔術師はどうなのだろうか。
7000万人という大きすぎる被害を前に我々は今、心を見つめ直している。




