10日目③
我々はようやく気づいたのだ、魔術師協会のNo.3にまで上り詰めた男は女神正教からのスパイだった。
彼の放った最後の魔法は自らの暗躍の証拠をけすためか、はたまた逆に支持基盤を失った腹いせか、後ろ盾になりつつあった大公含むこの戦争に参加した主要な貴族、独立後は王になるはずだった者達をことごとく死に追いやった。
ポーラはサラに姫と呼ばれている。
ポーラが月の民の中心人物である。
最初から明確に月の民として動いていたのはサラのみ、より王家の血の濃いポーラに危険を及ぼさない為の策だったのだろう。
「サラ、姫はやめてよね、ウォルター先生、だましてごめんなさい。私は月の民の生き残り、王家の血をひくものです。その血はサラよりも濃い、そして女神正教を利用してエルフから祖国を取り戻した。エルフたちは戦乱を避けて避難するけれど。私はどうしても故郷を取り戻したかった。エルフの国はもともと月の民の住んでいた場所。」
ウォルター氏は「」何かを言ったが私には聞こえなかった、月の民の王家の3人は破門になったがそれに関する何かであろうか、サラはその後もウォルター氏の弟子を名乗っていたという話を聞く。
「王族は昔神とあがめられたりしたそうだけれど、わたしは人間ですもの。知っている人が死ねば悲しい。知らない人が死ねば悲しい。嫌っているやつでもさすがに殺したら寝覚めが悪い。それを親友にさせたら永遠に後悔し続ける。」
ポーラはさらに肩を貸し歩き出す。サラは涙を流していた。ポーラは泣いていない。ウォルター氏も魔術師協会の他の魔術師も誰も2人を追わない。
2人の少女の友情は戦争の終わりを感じさせたのだ。
後に月の民が国を作ったとされる月の光で育つ樹木の森には誰もいない事が確認されている。
彼女等3人が本当に月の民の王家の血筋のものかは分からない。本当に国を手に入れたのかも分からない。
サラの目撃情報はたびたび上がるが捕まえる事は誰にも出来なかった。
帝国は崩壊した。誰一人指導的立場の者は存在しない。人々はただうろたえるばかりである。
魔術師は豊かさは作れても人を率いる事は出来ない。
昨日までの9日の戦いではない。
最後の1日。魔術師協会の裏切りものビリーの最後の策は混乱の時代を作ったのだ。




