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スタート 0.3  作者: プーリ
偽証
20/53

20

 トークショー当日、レジェンド元選手の前田さんと二人で出演することになった。

 前田さんはそんなに大きなレースを勝ったり、名勝負を繰り広げた人ではない。

 今の自分の所属している支部の基礎を作った人と言っても過言ではない。

 一人で時代を20年進めたと言ってもいい。

 前田さんが選手になる前は、いわゆる「やりたい放題」だったらしい。

 金勘定も適当、レースも怪我さえしなくて、怪我させなかったらいいだろうという流れがあったらしい。

 それを反発の中、前田さんが「お客様あってのプロレーサーだ」と誇りを説いたらしい。

 今でも支部の看板は、前田さんの書いた文字のままだ。

 そして、練習方法や戦術についても、惜しみなく後輩に伝えた。

 それまでは「先輩だろうが後輩だろうが全員が敵でライバル。情報は何も渡さない」というのが主流だった。

 だが、前田さんは皆を平等に扱い「みんなでいいレースをしよう。自分のためにも、お客様のためにも」という考えだった。

 その考えは今にも生きている。

 後輩からの質問に先輩は答え、アドバイスを送るなど、支部全体のレベルアップに繋がっている。

 前田さんが現役を引退されてから、自分はレーサーになったので、現役時代のリアルな人柄は知らない。

 引退後も支部の飲み会にフラっと現れ、「アニキ」として皆をまとめる「飲み会番長」としての顔はよく知っている。

 そんな前田さんと挨拶程度の会話しかほとんど交わしたことはないが、2人でトークショーを行う。

「おはようございます、今日はよろしくおねがいします」

 控室に挨拶に行くと、前田さんも準備が整っているようだ。

「おはよ、いいよな〜、俺らの時代はフライング休みでトークショーなんてなかったぜ?あとで一杯奢ってくれよ?」

「いやいや、まずは無事にトークショーを終わらせてからですよ」

 軽快な音楽に合わせてトークショーが始まる。

 約30分くらいの持ち時間だ。

 お客様は立ち見も合わせて100人ほどだろうか。

 先にステージに出た前田さんが挨拶をする。

「皆様お久しぶりです。覚えてますか?」

 長年のファンの声援ともヤジとも言える声が飛んでいる。

「ありがとうございます。今日はね、もう一人現役選手の大バカものを連れてきました」

 お客さんの反応もかなりいい。

「あのフライング野郎です。出てきたら土下座でもしてもらいましょうか。葉山選手です、どうぞ」

 ステージに出て、自分は迷わず土下座をする。

「前田さん、勘弁してくださいよ〜。今の紹介だったら絶対土下座しなきゃいけないじゃないですか〜」

 これは前田さんの優しさでもある。

 先に謝っておけば、後から蒸し返されることはない。

 お客様の怒りもモヤモヤも笑いの雰囲気になる。

「皆様、先日は申し訳ありません。葉山です」

 そう言うと、お客様からは温かい拍手を頂いた。

 その後、前田さんとレースの話、プライベートの話、お客様からの質問などに答え、あっという間の約30分間のトークショーが終わった。

 反響もよく、「また見たい」「OBレジェンド選手と現役選手の組み合わせ最高」とお客様満足度も高い結果となった。

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