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スタート 0.3  作者: プーリ
疑惑
11/53

11

 中川さんがほんの少し前にいるように感じる。

「いける!どうだ!!」

 第一ターンマークで中川さんを置き去りにするようにモンキーターンをする。

 我ながら完璧なターンになった。

 名前をつけるなら、やはり「介錯ターン」だろう。

 もうプロとしての諦めもつくだろう。

 気がつくと、大時計前の失格ランプが付いている。

 最悪だな。きっと中川さんだ。クビ確定のレースで勇み足。踏んだり蹴ったりな展開だろう。

 やけに失格艇番号が付くのが遅い。 

 こういうときは2艇以上のフライングで、慎重な判定が行われていることが多い。

 自分は……つられてないよな……

 失格艇確定ランプが付く。


「1」


 え?

 嘘だろ?

 久しぶりの準優勝戦とはいえ、自分が気合の空回りとは……

 ただ、「2」は付いていない。

 スタートラインが見えないとはいえ、中川さんは2センチは前にいたような気がする…

 自分がレースから離れた後、中川さんは1着でゴールをした。

 笑顔はなかった。

 レースが終わり、陸上に上がる。

「行ってくる。片付けよろしく。福田、ごめんな」

 ここでいう「行ってくる」とは、「運営本部に謝りに行ってくる」ということだ。

「失礼します!!」

 目の前に現れたのは遠藤競技委員長、通称「エンチョウ」

 職人気質で神経質な事もあり、法律にはもちろん、外部に出ない内部規定にも厳しく、自分にも他人にも厳しい、いろいろな人から信頼されている委員長だ。

「お前が珍しいな。勘弁してくれよ」

 自分には頭を下げることしかできない。

「本当に申し訳ないです…」

「タイミングは掴めてたのか?」

「掴めていたはずだったんですが…掴めてませんでした…」

 委員長は深い溜め息の後、告げた。

「反省文な」

 地元では約5年ぶりのフライング。

 反省文を書きながら、リプレイを見る。

 どう考えても中川さんは自分の前にいたはずだ。もし前じゃなくても、同時くらいのタイミングでスタートを切っている。

 しかし、リプレイを見る限り、中川さんは自分より少し後ろにいた。

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