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スタート 0.3  作者: プーリ
疑惑
10/53

10

 水上の大型ビジョンに表示されているオッズにふと目をやると、平日の夕方で大きいレースではないのにもかかわらず、売り上げがかなり上がっているのが確認できた。

 一流のレーサーとは言えないが、このレースは自分がなかなかの売り上げを持っている。

 オッズのほぼすべてが自分の1号艇が1着での購入になっている。

 ここまで来たら、応援してくれる人やファンの期待を裏切るわけにはいかない。

 5号艇の青井もさすがに人気を持っている。

 ファン的には、地元の自分と青井のワンツーフィニッシュを期待しているのだろう。

「始動!!」

 さぁ、いよいよ本番だ。

 職員の声に合わせモーターを始動させる。

 前を向き、シールドを下げ、ヘルメットを2回コツンと叩く。

 今のところルーティンも完璧で、いつも通りだ。

 出走のランプが灯り、コースへと飛び出していく。

 さぁ、中川さんは…… やはり展示のように無理矢理割り込んでは来ない。

 すんなりと2コースに入っていった。

 無理せず自分のできる範囲で全力でレースすることを選択したようだ。

 展示と同じく、自分で決めている目標物、時間、距離、そして感覚でスタートラインを目指していく。

 中川さんはスモークのシールドのため、こちらからは見えないが、大時計だけではなく、

こちらもチラッと見ている気がする。

「よし!!」

タイミングを計り、スロットルレバーを全力で握り、ボートを全速力にしてスタートラインに向かう。

 少しだけ中川さんの船先が自分のボートより出ている気がする。

 だが、出足に関しても少しだけは妥協したので、これでいい。

 ターンの先に必ず答えは出る。

 スタートまで5メートル。

 まばたきと呼吸を少し止め、一気に集中力を上げスタートラインを通過する。

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