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~・~ 3 (1) ~・~

あの日から数日が経ち授業を受けてフィギュアの練習をするという日々を送っていた。そして、今日は土曜日、休日だ。学校は空いていないため都内のリンクに向かう。今はその道中だ。花澤さんもリンクに行くらしく一緒に向かっているが会話が一切ない。僕としてはありがたいが、花澤さんはそれで良いのか…


「ねぇ」


「はい?」


「滑るとか見られたくないんじゃないの?」


「そんな事ないですよ。フィギュアの大会は常に観客に囲まれているので見られるのが嫌というわけではありません」


ただ顔を見られたくない。今はマスクに前髪を下ろしているが滑ってる時はマスクを外す。前髪も暑いから退けたいけどまぁ退かせないし仕方ない。


「ふ〜ん…」


まぁガン見されても困るけど…(汗)


そんな事を思っていたらリンクに着いた。今日はあまりお客さんがいないみたい。


「あれ、マネどうしたの?」


マネ?マネージャーの事か?あぁあの男の人?どうしたんだろう。撮影でも入ったのかな?まぁ僕が気にする事じゃないしいいか。


そう思って先にリンクに行った。午前中だからか東京はあまりスケートに関心がないのかお客さんどころか選手も少なかった。


「あ、君が神凪朔くん?」


若い男性が話しかけて来たと思ったら三浦さんだった。思ってた以上に若くて誰かと思った。


「はい。神凪朔と言います」


「よろしくね〜早速だけど軽くテストして良い?」


テスト…?聞いてないけどまぁいいか。


「構いません」


「ほんと?じゃあ着いて来て〜」


着いていった結果スタジオみたいなところに着いた。ちらほら選手もいる。


「先生その人誰ですか?」


小学生くらいかな?身長が小さい。


「神凪朔くんって言うんだよ。今日からこのリンクに所属するの」


「ふ〜ん…じゃあ私たち先輩だから!言う事聞くんだよ!」


そう言って指さしてくる。子供だな。


「分かったよ。でも指で人の事指さないの」


「う、うるさい!」


「はいはい!始めるよ!」


まずはストレッチから始めるみたい。良かった。なんか特殊な事やるんじゃなくて。


「どうせ硬いんでしょ!男子は体硬いもん!」


「そうだね〜」


と言って指示通り開脚して前に倒れた。これくらいは痛くも痒くもない。ちなみに突っかかってくる子は僕よりは硬かった。


「じゃあ今度は左右に〜」


先生はカチコチだった。確かに男性は硬いという仮説はあってるのかもしれない。いや、そんなことないか。


とまぁあの女の子は何かと突っかかってきたが無事にストレッチは終わった。そしてリンクに移動して靴を履いていた。


「ス、ストレッチはできてもスケートはできないでしょ!だって今日からリンク来たんでしょ!」


この女の子は一体なんなんだ……なんでこんなに構ってくるの…もう面倒になって来た……


「佳奈ちゃん行くよ!そんなやつに構ってないで」


初対面の人にそんなやつって言うなら人としてダメだと思う。親はどうゆう教育をしているのか。


「ごめんなさい。あの子このリンクで一番上手だから私たちは何も言えないの」


良い子もいるんだな…でも、安心して。この瞬間から一番うまいの僕になるから。


リンクに入って軽く周回する。壁際に花澤さんがいるのが見えた。あのコーチはいないな。どこ行ったんだ?


円や楕円を描きながらあたりを見渡した。


あの女の子はジャンプ練をしている。基礎もウォーミングアップもやらないで。怪我しても知らないよ。


「ねぇねぇなんでそんな事やってるの?自分は下手だよって見せつけてなんになるの?(笑)」


あ、ウォーミングアップは下手なやつがやるって勘違いしてる頭がw…お花畑の子なんだね。それに、下手と言われるのはいくらなんでも頭にくる。一回痛い目見せてあげようかな。


体も温まってきたし。よし、あの子に一泡吹かせよう。あの子みたいなタイプは実力で示した方が一番効果的だ。


そう思って僕の十八番、トリプルルッツを飛んだ。後ろに流れるよう着氷し、その勢いのままトリプルトウループを飛んだ。


もう2度と下手なんて言わせない。僕が下手なら君は下手というレベルにすらなれないよ。


「な、なんでッ!!なんでそんなに出来るのッ!!嘘だッ!おかしいよッ!」


スケートでズルなんてやる方が難しいよ。ズルでトラプルルッツ、トリプルトウループのコンビネーション飛ぶって…どんなズルだよ。


「神凪く〜ん」


三浦さんが滑ってきた。なんだろう。大会の話?


「八月にある大会の話なんだけどさ、曲と振り付けはあっちで決めたんだよね?」


「はい。一通り踊れるのであとは修正を加えたりするだけです」


「オッケーありがとうね!練習続けてて!」


三浦さんはちびっこの世話で忙しそうだな。まぁ僕はほっといて貰って構わないけど…と思ってジャンプ練に戻った。


あの子に一泡吹かせてやったし暫く安泰でしょ、と思っていた数分前の自分を怒りたい。


あの子は怒りに任せて僕が着氷する寸前にぶつかってきた。もちろんあの子も僕も転んだ。僕はなんとか受け身を取り、頭をぶつける事はなかった。


しかし、四回転していたためそれなりに勢いがあった。そのまま壁まで吹っ飛び衝突した。背中を強打し、頭も打った。


「ゲホッゲホッ!!」


「大丈夫!?」


花澤さんと三浦さんが駆け寄ってきたと思う。前があまり見えない。頭痛い。周りがうるさい…これ、絶対脳震盪起きてる。なんとか立ち上がろうとするが全くできない。氷の上だから余計に。


「あ、謝んなさいよッ!人の事転ばせといて!」


謝るのはそっちだろッ…


「一旦運びましょう」


そうだよねッここは邪魔だよねッ…と思ってなんとか立ったがふらつく。二人に支えて貰いながらベンチまでいく。


「俺のこと分かる?」


「はぃ…花澤さん…ですよね…」


「そうだよ。頭が今切れて血が出てるから安静にしてて」


あぁ…だから頭痛いのか…と思っておでこを触ったら確かに切れていた。


「今救急車呼んだから。もう少し待ってて。あ、タオルある?」


「カバン…」


「あぁあれ?ちょっと漁るね」


確か入ってたはず。朝入れた記憶がある。


「氷持って来ました!」


「ありがとう」


氷?あぁ頭ぶつけたところ冷やすのか…


「練習してきて良いよ…僕は一人で大丈夫だから…」


「バカなの?怪我人ほっといて練習できるわけないでしょ」


「いや…花澤さんの大切な練習時間を妨げるわけにはいきません……」


と言ったら腕を叩かれた。地味に痛い。


「神凪は人に頼る事を覚えろ。とりあえず救急車来るまでここにいるから」


人に頼る……これ以上頼るのは流石に甘えだ。だから、これ以上は頼るのは申し訳ない…


_____________________________________________



あの後、救急車で搬送され検査を受けた。幸い軽い脳震盪と切り傷以外はなんともなかった。切り傷の方は3針縫った。脳震盪は今は大丈夫でも後々ぶり返す事があるから数日は絶対安静とのこと。


帰っても良いという事なので今は帰っている途中だ。病院を出た頃は3時ちょっと過ぎたくらいだ。だから、誰もいないだろう。と思ったら花澤さんがいた。


僕の衣装を直してくれてるみたいだ。


「…あ、おかえり。大丈夫だった?」


「はい。軽い脳震盪でした」


練習しないんですか?と言ったらできる雰囲気では無かったから帰ってきたのだと。なんと三浦さんがあの子をリンクから追い出したみたいだ。大胆な事をするなぁ……


「お昼食べました?食べてないなら作りますけど」


「いや、安静にしてなよ。そっちこそ食べてないでしょ?おにぎり買ってきたけど食べる?」


「僕はお昼いつも食べてないので大丈夫ですよ」


「いや、食べなよ」


「食べると気持ち悪くなっちゃうので」


「でも、食べないと倒れるよ」


「ちゃんと糖と塩分取ってるんで倒れませんよ」


「そうゆう問題じゃない。ちゃんと食べなさい。もう十分細いし軽いんだからダイエットしなくて良いんだよ」


……そうだよね。食べないとだよね……言い訳してないでエネルギー補充しろって話だよね。でも、食べたらダメなんだ。食べたら……いや、やめよう。


「そんなに細くないし軽くないですよ。まぁでも気が向いたら食べます」


「……気が向かなくても食べろ」


それはちょっと無理かな?うん、無理。

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