~・~ 9 (4) ~・~
ご飯も食べ終え、プレゼント開封の時間が来た。
喜んでくれるかな…人に誕生日プレゼント上げるのも選ぶのも初めてだからなぁ……
「じゃあこの小さい箱から開けるわ」
あ、その箱は僕のだ。
「それは朔のじゃない?」
「うん」
「何入ってんだ?」
「開けて確かめてみてよ」
「え、おしゃれな時計じゃん!」
「景はシルバーが似合いそうだからシルバーにした」
「待ってこれ高いやつじゃない…?」
いや、そんなに値段は高くない。安くもないけどね。
「値段なんて気にせずに使えば良いよ」
「…万単位か?」
「いや。万は流石にいってない」
ただ四捨五入したら万いく…いったっけ?よく覚えてないや。
「流石にいってなかったか。良かった〜」
なぜ謙斗が安心するのか。
「すぐ隣に5万くらいのがあったけどそっちの方が良かった?」
「いやいやいやいや。5万もするやつなんかつけられるわけねぇだろ」
そう思ってちょっと安い方にした。普段使いして欲しいからね。
「僕らのも開けてよ。ちゃんと選んだんだから」
「これはみとだよな?」
「よく分かったね」
「明らかに自分で包装しただろ」
そうなのかな?十分お店でやってもらった並に丁寧だけど…
中に入ってたのはイヤリングだった。選ぶセンスがいい。ちゃんと景に似合いそう。ていうか景ってピアスじゃないんだ。
「相変わらずセンスが良いね〜」
「これ作るの大変だった」
「え、これみとが作ったの?」
「そうだよ」
え、すご。手先器用すぎるでしょ。どうやったらこんなに上手にセンス良く出来るのか…
「こっちは誰だ?」
「俺だよ」
こっちも小さいけどなんだろう。時計被りはちょっと勘弁だな…
「あ、ネックレスか」
チェーンにアルファベットのEがぶら下がっていた。なんでE?
「去年はKで今年はEか」
「来年で揃うね」
「揃えようとすんなよ」
「じゃあいらない?」
「いや貰うけどさ」
来年はIか。その次は名字でも揃えるのかな?それとも、もう揃えた?
「最後に謙斗のか。これなんだ?想像も付かねぇんだけど」
中身は服だった。随分とおしゃれな服だこと。そんな服どこに売っているのか。東京なら当たり前のようにあるのかな?
「かっけぇ服だな。つうかよくサイズわかったな」
「僕より一つ上のサイズ選んできた」
「お前着たら埋まるな」
確かに。謙斗にはちょっと大きすぎるかも。いきすぎたオーバーサイズになるかな。
「はぁ!?別に埋まらないし!逆に僕の服着たらぴちぴちになる癖に!」
「ならねぇよ!お前のサイズでも着れるわ!」
えぇ…?着れるかな。謙斗がオーバーサイズで着てる服なら着れると思うけど…
「はいはい。喧嘩しない。一旦ケーキ食べよ」
冷蔵庫からケーキを持ってきてくれた。でもフォークとライターがないから結局取りにいった。
「ショートケーキじゃねぇか」
「プレートは朔が書いたんだよ」
「なんで?」
「店が書き忘れた」
「そんな事あんのか?」
「ないと思ってた」
ケーキ…何キロカロリー?500…はないか?いや、あるかもしれない…そんなものを食べるの…?僕この上に載ってるイチゴだけでいいかな…
あ、明かりが消えた。いつのまにか蝋燭も立ってるし。
「じゃあ歌う?」
あぁあのハッピバースデーのやつか。
歌うの久しぶりだな。幼稚園以来だ。
「ハッピバースデートゥーユー」
「フゥー」
蝋燭が消えたから真っ暗だ。早く明かりついてくれないかな…真っ暗って本当に好きじゃないんだよね。
「おめでとう〜!」
あぁ…やっと明るくなった。
「じゃあ食うぞ〜!」
取り分けないでそのまま食べるんだ。みんなが気にしないなら別にいっか。
上にのってるイチゴを一つだけ口に入れた。酸っぱいな…もう少し甘くても良いじゃん。
「朔は食べないの?」
「食べたよ」
「イチゴだけだろ」
「朔はケーキ食べた事あるの?」
「これが初めてだね」
「ならもっと食べよ?」
だから食べたって。なんなら生クリームも食べたよ。イチゴについてたから。
「う〜ん…じゃあ1口だけ食べるよ」
このままだと埒が明かないし…1口だけならなんともないよね?1口ならすぐ消費できる。
「1口と言わず5口くらい食べたら?」
「いやそれはさすがに食べない」
そんなに食べたら気持ち悪くなる。気持ち悪くならない程度で楽しみたいからそんなには食べれない。
「まぁ最初の朔と比べたら食べるようになったんじゃない?」
「確かに。最初の頃より喋るようにもなったし」
「外じゃマスクつけてるのに俺らの前だったら外してくれるしね」
最初と今も喋ってる回数変わってないと思うけどな…それに、家までマスクを付けたくないというか見られてるし付ける意味もないしなと思っただけだし。
「そんなに変わった?」
「変わったよ〜最初会った時凄い暗かったもん」
「多分それは憂鬱だったからじゃないかな。元々一人暮らしする予定だったのに親が反対して無理矢理ここに入れさせられたんだよ」
まぁ結果的に入ってよかったけど当時は文句しかなかった。
「あ、そうだったんだ。今はどう?入って良かった?」
「え、…まぁ………うん」
「……え、普通に嬉しいんだけど」
「朔がやっと素直になった」
「お母さん感動」
「晴信は僕の親じゃないでしょ」
でも、晴信が僕の母親だったらどれほど楽だったことか。
「じゃあ朔は俺らと友達?」
「……友達…僕と友達で良いの?」
「え、僕らもう友達って思ってたんだけど」
「……この先も友達でいてくれる?」
「死ぬまで友達でいてやるよ」
「うん。でも、友達じゃなくて親友になるかもしれないけど」
その今言った言葉が嘘じゃない…って信じて良いのかな。いや、晴信たちは僕の事を裏切らないと思う。だから…
「…じゃあ僕たちは友達だね」
「今日一番のプレゼントかもしれねぇ」
「それな。朔が僕らを友達と認めてくれた…」
元々認めてたけどそれを言って良いのか分からなかった。僕以外は友達って思ってないかもって…でも、これからはちゃんと言える。みんなと友達だって。
「これで朔が感情を出してくれれば完璧なんだけどな〜」
「それはまだ早いんじゃない?ゆっくりで良いからね」
…感情を出してないというより出し方が分からない。覚えてない。そもそも僕は昔感情を出していたのかすら最近怪しくなって来た。
「…いつかね」
約束は出来ない。無責任な約束はしたくない。
「分かった。いつか見せてね」
「俺らはいつでもスタンバイしてるからね〜」
常にスタンバイしてたら疲れないか?
「常にじゃなくて良いよ。何年後かもしれないし」
「90年くらいなら待つよ」
「多分それもう寿命がきてる」
今から90年後って105歳だよ。流石にそこまで長生きはしないと思う。てか、そこまで待って出てないなら諦めた方が良い。
「だから一生待つって事だよ」
「…みんながいなくなる前に見せられるよう努力する」
「頑張って」
自分でもどう努力する。どう頑張れば良いのか分からないけど頑張ってみるか。
「そもそも朔はなんで感情を出さないの?それとも出ないの?」
「……なにも、…聞かないで」
「…そっか。ごめん。嫌な事聞いちゃった?」
「別に大丈夫。僕の事を知ろうとして聞いたのは分かってるから」
この話は僕が話したくないし、みんなも知らない方良い。聞いて気分が良いものでもない。なんなら悪くなるだろう。だから、知らない方が良い。
それに、もしこの話を聞いて僕から離れていったら僕はもう今度こそ耐えられない…この人たちにだけは、見放されたくない………
「…本当に俺らは待ってるからね。朔が決心できたら話してくれれば良いよ」
「いつか今まで何があったのか話して、笑った顔を見せてくれれば良いよ。いつか本来の朔と話せれば良い」
……僕はいつかばっかりだな……何か言われたらいつか話す、いつか見せるの繰り返し。
あぁ…本当になんで期限を決めないのか。やらなくて良いっていう逃げ道を作るのか。僕は臆病者ものだ。
「朔。焦らなくて良いからね。ゆっくりで良いから。何年かかっても良いからね」
「……うん」
なんでみんなはこんなに優しいの…?なんでこんな僕にそんな言葉をかけてくれるの…?
僕には、よく分からないよ…




