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今日は5月29日。景の誕生日、らしい…
景は今仕事で家を空けていて夕方ごろまで帰ってこないらしい。みとは景の見張り役もかねて一緒に事務所に行っている。だから、残りの僕たち3人で家を飾り付けてるため忙しい。
誕生日会なんて初めてだし、ずっと空想のイベントなのかと思ってたけど現実のイベントだったみたいだ。
「朔これも膨らまして!」
僕はひたすら風船を膨らましていた。数字の風船だったり星の風船だったり色々だ。風船の中に風船を入れるという高度な技もこなしていたりする。
「酸欠にならない?大丈夫?」
「これくらい大丈夫だよ」
風船を膨らます程度で酸欠にはならない。それに途中で息吸ってるし。
「お、飾り付けはこんなもんで良いんじゃない?」
「後はみとがケーキを取りに行くだけだよね?」
「うん」
僕がハンバーグやらなんやら作れば終わり。材料はあるから買い出しには行かなくて大丈夫だよね。足りないものあったっけ?
「朔はハンバーグ以外に何作るの?」
「付け合わせとかミネストローネかな」
「豪華……」
普段だったら調味料は目分量だけど今回は計らなきゃな…少し面倒とも思うけど仕方ない。
「朔ごめんね。今日リンク行こうとしてたのに…」
1週間前くらいに謙斗と晴信とみとの3人が部屋に来て懇願してきた。明日景の誕生日だから時間作って欲しいって頭まで下げられたらさすがに断れない。
だから、リンクに行かないことにしたんだけどそれより大変だったのは誕生日プレゼントを用意する事。悠長に選んでる期間なんて無いし、お店に行ってる時間もない。次からはもう少し早めに言ってほしいものだ。
「別に良いよ。景の誕生日なら仕方ないし」
「誕生日じゃなかったら行ってたの?」
「まぁ…うん」
なんなら景の誕生日と知った上でも行くかどうか一瞬迷った。一瞬だけね。
「いや〜これを2人でやるってなると大変だったよ。朔がいて良かった〜」
「風船膨らますの速かったよね。貼り付けるこっちが追いつかないくらい」
「それな。朔毎回二息でくらいで膨らますし。結ぶのも速いし」
そうかな?別に普通だと思うけど…風船膨らますくらいでそんな時間かかってられないし。
「あ、ねぇねぇプレゼント隠さない?」
「え?」
プレゼントを隠す?そりゃあ本人にバレないよう隠すけど……
「宝探しみたいな感じでさ」
「確かに面白そう!見つけないと貰えないよ〜みたいな?」
面白いかな?普通に手渡しで渡せば良いんじゃないかな…誕生日会ってそんな感じなの?
「じゃあ早速隠すか。一個くらいは簡単なところに隠さないとだよね」
「じゃあ僕がクッションの裏に隠すよ」
えぇ…なんか完全に隠す流れできちゃった。どこに隠そう。バレないところでしょ?
「あ、ここ良いんじゃない?」
「そこは定番だからやめようよ」
宝探しに定番とかあるの?定番が作られるくらい宝探しやってるの?
「僕はここにする」
観葉植物の後ろ側にくくりつけた。箱の色が深い緑って感じだしよーく見ないと分からない。
「え、そこ良いじゃん」
「じゃあ僕はここにしよ」
テレビの下の台を開けてとケーブルが入った箱の中に入れていた。分かりそうで分かりにくい絶妙なラインだな…
「お、良いじゃん。みんな今からソファに座っちゃダメだよ」
ひと段落ついたな…朝から動きすぎだよ。全く…
「景の方はどうなってるかな?」
「確か雑誌の撮影した後にレッスンが入ってるんだっけ?」
「そうそう」
「僕も雑誌に載ってみたいな〜」
「載ろうと思えば載れるんじゃないの?」
芸能人なら普通に載れると思うけどな…そうもいかないのかな。
「僕は声優だからね。姿が大事と言うより声だから」
「え、声優だったの?」
「嘘でしょ。そこから?」
全く知らなかった。え、じゃあ晴信は?
疑問に思って急いでスマホで調べた。あ、俳優だったんだ。4人の情報知りたかった時は調べよ。
「本人の前で調べないでよ。別に良いけど」
「あ、俳優なんだ。あ、このドラマ知ってる。有名になってたよね」
「そうそう。見た?」
「宣伝だけ見た」
テレビで流れてきた宣伝は見た。クラスの人たちが話してる内容も耳に入ってたし。だから、話の内容はなんとなく分かる。青春物語だよね。
「じゃあこのアニメは?」
「名前だけ知ってる」
それも凄い流行してたやつ。舞台が北海道だったみたいだから一時期そのキャラクターのグッツで溢れてたんだよね。どの方向見てもそのキャラクターがいた。
「これは?」
「………」
「知らないなら知らないで良いよ」
「知らない。ごめん」
「朔はアニメ見るの?」
「アニメは見ない。でも、英語の勉強で一時期洋画はたくさん見てた」
外国の選手達と話すために必死に見て聞いてたのを覚えている。あの時は気が狂ったように見てたな…まぁそのおかげで英語話せるようになったんだけど。
「洋画には出てないよ…」
「じゃあこれからは見てね」
「教えてくれたら見るよ」
さすがに友達…で良いのかな。友達が出てるやつは見ないとだよね。景の雑誌も販売されたら買っておくか…?
「やった。じゃあ朔の試合も見るね」
「え、いや。見なくていいよ別に」
見てもよく分からないだろうし…解説もいるけど専門用語が多いし。
「それこそ調べたら出てくるんじゃない?」
「確かに。出てくるかな」
「調べないで。絶対に調べないで」
調べたら絶対あの記事が出てくる。絶対に。あれだけは絶対に知られたくない。知られたらもう終わりだから。
「え、あぁ…分かった」
「そんなに焦らなくても…もう調べないよ」
なら良い。本当に顔見られる以上に見られたくなかったから……
「なんでそんなに調べられたくないの?」
「…顔が写ってるから」
「じゃあ分かった!僕たちは調べません!直接見ます!」
「直接でも見ないで」
まず見るな。見ようとするな。気になるのは分かるけど見ないで欲しい。
「まぁ多分北海道行く時に見れるしね」
「そうそう。朔と裸の付き合いをする日が来るとは…」
「僕部屋に着いてるお風呂入るよ?」
「いやいやいや。温泉行くんだから温泉に入ろうよ。露天風呂とかさ」
「みんなこそ温泉に入って良いの?芸能人だから騒がられるんじゃないの?」
「告知しないし、遅くに入れば人いないでしょ」
まぁ…そうか。それに、温泉で芸能人いるかどうかなんて分かんないだろうし、男性が騒ぐとは思えない。
「だから朔も顔を見られる心配はないよ!」
「いや、みんなに見られるよね」
心配ありまくりなんだけど。他の観光客に見られる心配が減っただけでみんなに見られるじゃん。僕1人で入るならその心配いらないけどそうゆうわけじゃなさそうだし…
「ん?僕らは見ても問題なくない?」
「いやいやいや。謙斗達にも見せたくないよ」
「なんで?肌荒れはしてなさそうだし顔も普通…なんなら整ってる方だよね?」
「肌荒れはしてない。でも、顔は整ってない。みんなと並んだら見劣りするよ」
並ぶのも恥ずかしい烏滸がましい。僕なんて背景で写ってる程度で良いんだよ。人混みの中の1人みたいな存在でいいんだよ。でもあわよくば写真撮る人になりたいかな。
「それこそ違うね。俺らさ芸能界にいるからあらゆるタイプのイケメンを見てきてるんだよね。そこで培ったイケメンセンサーが反応してるから朔は間違いなくイケメンなんだよ」
そのセンサー誤作動起こしてるんじゃない?多分イケメンじゃなさすぎて誤作動起こしたんだよ。修理した方が良いよ。修理屋に出してきたら?
「朔はもう少し自信を持った方が良い。フィギュアスケート以外の自信も持った方が良いよ」
「そうそう。朔はかっこいいからね。仮に顔がカッコよくなかったとしても性格がかっこいいから何も問題ないよ」
「性格に関しては本当にどの要素を汲み取ったらかっこいいと思うの?」
心の底から性格がかっこいいとは本当に思えない。表情も無に等しければ優しくもない。口数も少ないし、心に温もりすら灯っていないこんな僕が。
「えぇ?だって朔は優しいじゃん。表情は乏しいけど雰囲気は柔らかいし、質問したらちゃんと答えてくれるじゃん」
「優しくないよ。それに質問に返すのは当たり前じゃん。そんな人ごまんといる」
「だからこの世の中は性格イケメンで溢れてるんだよ!」
溢れてる?溢れるほどいるわけないだろ。
「……よくわからない」
「じゃあ、いつか分かればいいよ。俺らは朔に朔の良いところ伝えまくるからさ」
「……じゃあ僕も謙斗達の良いところ伝えまくるよ」
「それは恥ずかしいから良いかな」
なんで僕に言うのは良くて僕はダメなんだ。理不尽でしょ。




