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~・~ 8 (3) ~・~

「入れまくれ〜!!頑張れ〜!!」


隣で叫んでる裕樹がうるさい。ていうかなんで僕はこの人の隣にいるのか。それはテントに戻してくれなかったからだ。


今5月だよね?なんで5月なのにこんなに暑いの?いや、暑いというより湿気が高いっていうのかな?空気が湿ってる。服が肌に張り付く感じがして慣れない。正直に言えば気持ち悪い。


『なんと!玉入れは緑団の勝利だぁ!!』


「あちゃー負けちゃったか」


「でも2位だよ」


最下位になるよりは良いだろう。それに僕ら1位になったし。別にまだ大丈夫。


「次はなんだ?」


「騎馬戦だね」


騎馬戦か。懐かしい。中学の時は騎手の方をよくやってた。本当は馬の方が目立たなくて良かったから馬の方をやりたかったんだけど。


「朔はやった事ある?」


「あるよ」


「え、あるの!?」


「あるよ。中学じゃ男子全員参加だったから」


「じゃあ玉入れとかも?」


「小学生の時にね。二人三脚とか大玉転がしとかもやった事あるよ。後はリレーとか…大縄もやったね。応援ダンスもやらされたし」


「経験豊富でいらっしゃる…」


確かに。俊太郎達と比べたら運動会の競技経験豊富かも。今まで豊富なんて思ったことも考えたこともなかったな。


「じゃあテニスとかは…」


「ないね。サッカー、野球、バレー、バスケとかなら体育の授業で少しやったけど」


「なんでテニスやらないんだよ〜!」


「ラケットが学校にないからだよ」


ラケットをわざわざ生徒に買わせるわけにはいかないし。買っても使い道困るだけだし。置き場所にも困る。


「じゃあ今度俺らとテニスやろうよ」


「僕球技本当に苦手だからごめん無理かも」


いつも空振りするんだよね。バトミントンとか自分の腕とラケットの長さを把握できてないから変なところに当たって思わぬ方向に飛んでいく。テニスも同じことが起きるだろう。


「さっき例に挙げてたの全部球技だよ??」


「サッカーとバスケは一様できた。バレーはかろうじて。野球は全く出来なかった」


ボールに当たんないしボールをグローブで掴めない。投げるのも加減が分からなくて届かずに地面に落ちるか大幅に飛び越えるかの2択だった。


「野球できないからってテニスができないとは限らないよ」


「僕は出来ない自信しかないけどね」


「そこは出来る自信があってよ」


出来る自信は全くないな。でもバトミントンよりはラケットの面が大きいから当たるかな?いやルールが分からないから無理だ。


「まぁバドミントンできればいけるんじゃない?」


「僕バトミントンできないよ」


「バトミントンじゃなくてバドミントンだよ」


濁点つくんだ。ずっとつかないかと思ってた。競技名を間違えるのは失礼だからちゃんと覚えておこう。


「バドミントンは少しだけやった事あるけど全く出来なかったんだよね」


「バドミントンとテニスは違うからテニスはできるかもしれないよ!」


…出来るかなぁ。ルールも知らない、ラケットの正しい持ち方すら分からない。こんな状態で一体なにが出来るのか。体験の前に座学が入るかもしれない。


「朔が遠い目してる」


「見えてないでしょ」


「見えてないけど雰囲気で分かる」


なんだそれ。雰囲気でそんなに分かるか?


「朔の雰囲気の変わりようは分かりやすいよな」


「雰囲気で分かりやすいなら顔にも出やすいのかな?」


「確かに。顔出してみてよ。そうすればどんな事思ってるのか分かるから」


「顔は出してるよ」


別に仮面つけてるわけじゃない。


「いやそうじゃなくて。前髪上げたら良いのに」


「上げない。必要な状況でしか上げない」


「じゃあ今必要だ!」


「なんで?」


「俺たちが見てみたい!」


「却下」


理由がくだらない。命に関わるとかだったら検討したけど興味があるだけなら見せない。僕には見せる必要性が感じない。


「さてはお前…イケメンだから顔を隠したいのか!?だってマスク越しで分かるその顔のラインがイケメンだと物語っている!」


「俺もそう思うんだけどね〜運動神経いいし」


「輪郭も綺麗だし高身長だし」


輪郭が綺麗とは?輪郭に汚い、綺麗とかあるの?その基準いまいち分からないんだけど。否定も肯定もしづらいじゃん。


「肌も白いし綺麗だよね。髪質も良いし」


「肌は別にスキンケアしてたらなんともならないと思う。それに日焼け止め塗ってたら日焼けしないよ」


「真っ黒の俺らにそれ言う?」


「ゆうて真っ黒じゃないじゃん。それに僕の場合は屋内だから日焼けしてないだけだし」


「良いな〜あそこ涼しかったもん。夏とか最高じゃん」


「でも、冬はすごい寒そうだよね」


冬は確かに寒いけど全然我慢できる。それに動いてたらなんともならない。なんなら暑くなる。


「手とかキンキンになるじゃん」


「カイロあるから大丈夫」


「でも温かくなるまで時間かかるじゃん」


「充電式だからすぐ温かくなるよ」


「なにそのハイテクカイロ」


「冬場の大会とかだと持っておいて損はないよ」


テニスは屋外だから寒いと思うし手が悴んでると試合に支障が出ると思う。手が冷たいとラケットも持ちづらいだろうし。


「それ買おうかな。充電さえあればずっとあったかいんでしょ?」


「うん。あと温度調節もできるよ」


「すご。マジで帰ったら速攻買うわ」


「いくらくらいするんだろう」


「確か3000円くらい」


僕が買ったやつはそんくらいしたな。温度調節機能とかもついてるとやっぱそれくらいの値段はするだろう。


「高いけど今後の事考えたら安いものか?」


「寒い地域とか行っても役立つだろうし」


「今の時期に南半球行く予定があるなら買ったら?」


「なんで南半球なんだよ」


「南半球は今冬だからだよ」


「え?」


え、知らないの?南半球と北半球は季節が逆な事。学校の授業で習わなかったのかな?この学校ならあり得るのか?


「まさかこの学校では習わない?」


「いや習った習った。こいつが覚えてないアホなだけ」


流石に習ってたか。そりゃそうだよね。基礎くらいは習ってるよね。


「アホってなんだよ!お前も同じくらいだろ!」


「俺は赤点取ってないから全然違うわ!」


「ゆうて10点差じゃねぇか!」


10点差って結構差が大きいよ。ゆうてじゃ済まされないと思う。


「それは大差だわ」


「はぁ!?ちょ、朔はどう思う!?」


「大差だと思う」


「お前もそっちの味方かよ!」


「いや、よく考えてごらん。テニスで10点差で負けましたってなった時実力差は誤差って言える?」


「…言えねぇ」


「でしょ。だからテストでも10点差は誤差じゃないと思う」


「…朔って実は頭が良い?」


今の会話で僕の頭の良さが感じられる会話はなかったと思う。裕樹の馬鹿さが感じられる会話ではあったが。


「多分違う」


この学校だと多分頭悪い方に分類されるんじゃないかな。特進科の人たちにはどう足掻いても勝てないと思う。


「…朔は謙虚だから多分頭良いんだろうな」


「今度あるテストで何点取るのか楽しみだね」


「多分半分くらいじゃないかな」


この学校の偏差値高いからテストも難しいでしょ。だから現実を見て半分かな。あわよくば60はいきたい。


「…これ70くらい取るやつじゃね?」


「多分取るね」


「取れないって」


この学校のテストで70とれるわけない。だって小テストより明らかに難易度上げてくるでしょ?ならもう確実と言って良いほど高得点は取れないだろう。


「…謙虚すぎると相手に不快感覚えさせるから気をつけなよ」


「僕は謙虚にしてるつもりはない」


「ならお前は自分の能力を把握してないただの馬鹿だ」


「能ある鷹は爪を隠すってやつかもしれないよ?」


「何それ」



・ ・ ・ ・ チーン。


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