~・~ 8 (2) ~・~
「位置について、よーい…」
パンッ!!!
ピストルの音と共に走者は駆け出そうとするが盛大に転けた。赤団以外は。
会場には応援の声と笑いが響き渡った。笑うなんて失礼だが仕方ないのも分かる。僕も開始早々転ぶとは思わなかった。
青団と緑団は赤団に追いつこうと必死だけど転ぶ。青団は早々に立って進む事を諦めて四つん這いで進んでいた。緑団は恥を捨てきれないのか転びながら進んでいる。
『赤団速い!まだ一度も転んでいない赤団はバトンを次に渡した!』
速いのは当たり前。この競技の要は焦らない事。絶対にスピードを出そうとしちゃダメ。転ばないのが一番速い。進む事だけに集中すればいい。
『なんだこの赤団の転ばなさっぷりは!もう3人目にバトンが繋がるぞ!』
転ぶ事を恐れてはいけない。転んでも必ず諦めない。諦めずに立って進み続けるんだ。
「朔の教え通りだね」
「みんなの努力の結果だよ」
方法を教えても本人が努力しないと何にも意味がない。みんなが努力したから今転ばずに一位になれてる。
『おおっと?青団が速い!このままだと赤団に追いつくか!?』
追いつかれても問題ない。僕が挽回するから。
「じゃあ行ってくるよ」
ここから運動が得意な人達が集まってるから最下位になることはない。
「いってらっしゃい」
まだ一位のまま。このまま裕樹にバトンが渡れば大丈夫。
『赤団がバトンを繋いだ!アンカーまで残り4人!赤団は1位をキープできるのか!?それとも青団に抜かれて2位に落ちてしまうのか!緑団も地道に追い上げます!これは接戦になりそうだ!』
「各団のアンカーはゼッケンを取りに来てください」
『おぉっと!ここでアンカーが判明!青団アンカーはスノーボード世界王者、三輪選手!緑団アンカーは体操高校生日本代表の柏木選手!そして現在1位の赤団のアンカーは…え!?フィギュアスケート全日本ジュニア3連覇の神凪選手!って君アクロバットボーイじゃないか!君スケート選手だったの!?』
会場から聞こえる驚きの声。反則だという声が聞こえてくるがルール上何も問題ないでしょ。
『驚きを隠せないが、青団と緑団はどう打ち勝つのか!赤団はどんな滑りを見せてくれるのか!』
あ、先輩にバトン渡った。ならそろそろ出ないと。
さてと他の団の心を折るとするか。これはもう競走じゃない。一つのショーだ。
『おおっとここで赤団とにバトンが渡った!青団と緑団も続いて渡った!アンカー最初の障害物はピンポン玉運び!の前に10周回るという試練がある!って赤団そんなにスピード出して良いのか!?』
スピード出さないとスピンできないでしょ。
最初はフライングシットスピンを披露した。5回転回ったところでパンケーキに体勢を変えた。
『速い速い!赤団回るの速すぎる!これがジュニア3連覇の力!目は回らないのか!?』
よし。10周回った。さっさとピンポン玉を運ぼう。
『目が回ってる気配なし!しかし、それは他の団も同様!10周回る意味はあったのか!』
なんちゃら弾10粒完了。さっさと一本橋?渡るか。
『またまた赤団は加速!その先に待ってるのは一本道だが大丈夫なのか!?』
ここはスパイラルの姿勢で抜けるって決めていた。
足を片手で持って伸ばし、スプリットスパイラルの体勢になる。ビールマンと迷ったがスパイラルだとこっちの方が見た事ある人が多いだろう。
『体が柔らかい神凪選手!そしてここで逆転!緑団が2位に躍り出た!そしてこの一本道をなんと側転で切り抜けた!』
側転かぁ…僕も側転すれば良かったかな。いや、体操選手に側転の上手さで勝てるわけないか。
次の障害物は平均台か。何で潜るか迷ったけど最終的にこれに決めた。みと、ちゃんと見ててよ。
『なにあの余裕の走行!神凪選手横を向いて滑り出した!一体何をするのか!』
体を倒して氷と平行になる。
『なんだあの技!低すぎないか!?でも、体は浮いている!なにをどうしたら浮いていられるのか!そしてここでまた逆転!青団またまた2位になった!このまま1位になるのか!』
1位を渡すわけないだろう。みんなが一位を死守してくれたんだ。それを台無しにするわけにはいかない。
『赤団またまた加速!?そのスピードでカラーコーンを避ける事が出来るのか!?』
こんな広い隙間があるんだ。避けるのは簡単。問題は芸術点を貰えるかどうか。
『なんだあの足捌き!しかも片足でコーンを避けている!なぜ転けないんだ!?おおっとこれは痛恨のミス!ここで青団コーンを倒してしまった!』
よしコーンゾーン抜けた。後はゴールするだけ。
『赤団ゴール目前!一体今度は何を披露してくれるんだ!?』
僕の得意ジャンプのトリプルルッツを飛んで着地と同時にゴールテープを切った。本当だったら4回転やりたかったけど助走まともに出来てないから無理だった。
『今一体何周した!?3回転くらいはしてそうだ!そして、赤団1着でゴール!!続いて青団、緑団の順にゴール!』
「朔凄いよ!!圧倒的じゃん!障害物避けてるなんて思えないくらい滑らかだったじゃん!!」
「そう?なら良かった」
「これが世界王者の力か」
「世界王者……なのかな」
ジュニアのなかで世界一ってわけであって大人とかも含めたら世界一ではない。
『さて審査員の皆さん!何か感想はありますか?』
『はい。まず赤団は終始冷静で一度も転ばずに滑りきっていました。これはとても凄い事でたくさん努力したんだなと思いました。青団、緑団も諦めずに最後まで勝つ気持ちでいたのがとても良いなと思いました。惜しくも一位を逃してしまいましたが、よい試合だったと思います』
『なるほど。確かにその通りだと私も思います。他の審査員は何かありますか?』
「はい。えーまず選手の皆さんお疲れ様でした。私は赤団の皆さんがなぜこんなにも安定しているのか不思議でしたがアンカーの選手の情報を聞いた時納得しました。まさかフィギュアスケート選手を出してくるとは思いませんでした。これは赤団圧勝で終わるのか、と思ったらそうでもなく、各団の持ち味を活かして接戦に持ち込んだ事にとても感心しました。今回は赤団が一位で終わりましたが、これからの競技でも頑張ってください」
「じゃあ最後に俺だな。俺は各団の発想の豊かさに驚いたよ。側転したり緑団の子は飛んで一回転したりね!非常に面白かったです。赤団の子もさすがフィギュアスケートやってるだけあるな〜最後のジャンプとかスピンとか自分の武器を存分に活かしてると思う走りでした。俺的には全員優勝でも良いところだけどそうもいかないのが残念だよね〜順位を決めなきゃいけないから。あ、もう発表しちゃう?」
『そうですね!時間も時間ですし芸術点の方を発表しちゃいましょう!さて、審査員の方…ボードをオープン!!』
赤団は満点だった。良かった…まともに助走できない状態でやったから微妙に不安が残ってたんだよね。
「朔すげー!1人で満点取った!」
赤団のみんなから祝福された。髪グッシャグシャにされたからちょっと嫌だった。でも、喜んでくれて良かったと思った。
「次はなんだっけ。あ、玉入れだ」
玉入れって…誰が出てたんだっけ。みとだっけ?
「朔も応援しに行くぞ!」
「分かってるよ」
長い長い体育祭はまだまだ続いた。




