第7章 第五話:観覧車の上書き合戦
本話より仕事の関係上、投稿時間が19時15分に変更になります。
今回の遊園地へは、浩紀がお願いした結果、博康が車を出してくれることになった。
そして、同時に香澄さんの参加も決定した。
これで遊園地へ向かうメンバーは軽井沢へ行った時のメンバーと同じになったのであった。
「みんな、せっかく行くんだから思う存分楽しむんだぞ」
とハンドルを握る博康。
その隣には、どこか落ち着いた雰囲気を纏う香澄が座っていた。
あの時、杏奈はずっと博康を見ていたが、今は浩紀を見ていた。
浩紀は、いつか自分もあんな風にスマートに杏奈をエスコートしたいと、兄の背中に憧れと対抗心を抱いていた。
ーーー
冬の澄んだ空気の中、遊園地に到着し、受付を済ませて園内に入る一行。
ここで博康と香澄は別行動をとることになった。
太田や敦子、そして浩紀たちの笑い声が園内に響いていた。
6人の集団はとても目立っており、周囲の視線を集めていた。
特に女性陣は男女問わず視線を集めていた。
杏奈の服装は白のダッフルコートに、チェック柄のフレアスカート、黒のストッキングとロングブーツを履いているおり、首元にはクリスマスに浩紀にあげたマフラーと色違いの物を巻いていた。マフラーで浩紀とのペア感を出しつつも、杏奈の清楚な魅力を十二分に引き出していた。
沙織は白の体にフィットしたタートルネックにデニムのミニスカート、それにジージャンを羽織っており、足元はショートブーツでオシャレにきめていた。特に沙織の服装は体のラインをきれいに浮かび上がらせており、沙織の魅力的な胸が特に男性の目を引いていた。
薫はベージュ色のエコファージャケットの下には白のゆるふわニット、それにプリーツスカートとニーハイ、そしてハイカットのコンバースとという最強可愛いコーデで、可愛い妹感を前面に押し出していた。
敦子は淡いパステルカラーのニットワンピにボアジャケットはおっており、派手さは無いが敦子の人柄と同様に優しげな雰囲気を醸し出していた。
男性はその華やかな容姿やスタイルに、女性はそのファッションセンスや醸し出される雰囲気に引き付けられた。
本来なら浩紀の横にはピッタリ杏奈が腕を組んで歩いているのであろうが、今回は違っており、沙織がその場所を独占していた。そして、沙織は浩紀の腕をしっかりと胸に抱き、満面の笑顔を浮かべていた。
「今日の遊園地、浩紀の隣は全部私がもらうわ。お礼なんだから、文句ないわよね?」
沙織は浩紀と杏奈から考えておいてほしいと言われていたお礼として「遊園地にいる間、浩紀の隣にいる権利」を申請してきたのであった。
これに対して杏奈は約束であることと、本当に感謝をしていたため、沙織の提案を拒否することが出来なかった。
(せっかくの遊園地なのに……。残念だけど仕方ないわよね……)
杏奈はしぶしぶ了承したのであった。
ーーー
ジェットコースターでもゴーカートでも、沙織は浩紀の隣に座り、ときに手を握ったり、腕に抱き着いたりして浩紀を翻弄していた。浩紀は抱きつかれるたび、腕に押し当てられる感触にドギマギし、翻弄されていた。
杏奈は恩人である沙織に強く言えず、後ろの席から「むぅ……」と頬を膨らませて二人を見つめていた。
太田が「お前ら、相変わらずだな」と笑う中、四角関係の火花は確実に散っていた。
夕暮れ時、一行は最後のアトラクションとして観覧車を選んだ。 沙織との約束通り、浩紀は彼女と二人でゴンドラに乗り込む。
一つ後ろのゴンドラには、限界まで嫉妬を溜めた杏奈と、それを静かに見つめる薫。
「……なんであんなに仲良さそうにくっついてるのよ」
前のゴンドラで、沙織が浩紀の肩に頭を預けているシルエットが夕陽に照らされ、杏奈は窓に顔を押し付けてヤキモチを焼く。
ーーー
一方、前のゴンドラ内。浩紀は意を決して切り出した。
「沙織、お願いがあるんだ。……許してもらえるなら、この後アンともう一度観覧車に乗ってもいいか?」
杏奈の様子をずっと気にしていた浩紀の提案に、沙織は少しだけ寂しげに笑い、交換条件を出す。
「仕方ないわね。確かにちょっとかわいそうだったし。……その代わり、この一周が終わるまで、私に肩を貸してね。いいでしょ?」
浩紀の肩に頭を預ける沙織。
二人とも、自分の心臓の音が相手に聞こえてしまうのではないかと心配になるほど、緊張した沈黙が流れた。
ゴンドラが地上に到着し降りる際には、浩紀が沙織の手を取り、エスコートしてゴンドラから沙織を下ろしてあげた。
その光景を見ていた杏奈は当然不機嫌な顔をしていた。
浩紀はそんな杏奈の前にすっと跪く。文化祭の執事喫茶で見せた、あの優雅で真摯な所作を再現した。
「アンお嬢様。……私と、もう一度観覧車に乗っていただけませんか?」
その誘い方に、杏奈の不機嫌は一瞬で霧散した。
杏奈が一度沙織の顔をうかがうと、沙織は苦笑いを浮かべながら「仕方ないわねぇ」とでも言うように肩をすくめてみせた。
「杏奈が浩紀と乗りたくないなら無理強いはしないけどね」
沙織のその言葉に杏奈が急いで浩紀の腕に抱き着いた。
そのまま再度観覧車へと乗り込んでいく二人は、再び動き出したゴンドラの中で、杏奈は浩紀との時間を取り戻すかのように、沙織よりも深く、浩紀の肩に寄り添った。
「ヒロは沙織じゃなくて、私の場所なんだから。……今、ヒロの肩、私の愛で上書きしたからね」
以前浩紀がくれた言葉を、今度は自分が幸せな意味で使い返す。
ゴンドラが一番上まで来たとき、夕日に照らされた二人の影が重なり、浩紀は杏奈の肩を抱き寄せ、二人は唇を重ねていた。
二人の距離はかつてないほどに縮まり、心も一緒に重なり溶けあっていた。
ーーー
幸せな余韻に浸りながら観覧車を降りてきた二人。
しかし、そこで待ち構えていたのは、冷ややかな瞳をした薫だった。
「……二人だけずるいです」
有無を言わせぬ口調で、薫は杏奈から浩紀の手奪い取り、観覧車へと引っ張っていった。
「浩紀さん。当然、私とも一周してくれますよね?」
強引にゴンドラへ連れ込まれる浩紀。
戸惑う彼をよそに、薫は迷わず彼の肩に頭を預け、隙間なく密着した。
浩紀はぴったりと寄り添う薫のジャケットの間は開いており、ニット越しに感じる柔らかな感触と体温、そしてほのかに香る甘い匂いに心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。
沈黙の一周を終え、出口で待つ杏奈と沙織の元へ戻ってきた薫。すれ違いざま、彼女は二人にだけ聞こえるか聞こえないかの微かな、けれど確信に満ちた声で囁いた。
「これで、浩紀さんの肩の上書き……最新は私になったね」
杏奈がハッとした瞬間には、薫は既にいつもの作り笑顔に戻り、平然と歩き出していた。
第7章第5話をお読みいただきありがとうございます。
今回は遊園地回になります。それぞれが自分の強みを活かしたコーデで男性陣を悩殺しにきていました。
皆さんはどの子のコーデがお気に入りでしたか?よかったら感想欄にご記入ください。感想欄に書いてもらえると服装を考えた作者としてもうれしいです(笑)。
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