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『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
【第二部】第6章:異物によって試される絆

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第6章 第九話:上書きの誓い(第6章完結)

第6章の完結話です。明日は間幕として薫の過去のお話を投稿する予定です。詳しくは後書きをご覧ください。

騒動の後、杏奈は大事を取って保健室のベッドに横たわっていた。

葛谷は警察に連行され、沙織は証拠提出のために教師たちに同行している。

薄暗い室内で、杏奈は浩紀に借りたジャケットの袖を、指が白くなるほど強く握りしめていた。

テープによって拘束されていた手首や足首は赤くなっていった。

そして、葛谷に耳元で囁かれた言葉の数々が、目を閉じるたびに泥のような質量を持って蘇る。


(……私、本当に汚れてないのかな。ヒロを縛り付けて、ダメにしてるんじゃないのかな……)


「アン、水、持ってきたよ」


隣に座る浩紀がそっと紙コップを差し出した。

杏奈がそれを受け取ろうとした瞬間、指先が激しく震えた。

カチャカチャと音を立てる紙コップが、彼女の心が限界であることを物語っていた。


「あ……ごめんね、ヒロ。私、なんだか……」

浩紀は何も言わず、杏奈の手からそっとコップを取り上げると、そのまま彼女の震える両手を自分の大きな手で包み込んだ。


「アンは何も悪くないよ。……怖かったよな。今は無理に笑わなくていいから」


「ヒロ……あいつがね、『絆なんて安っぽい』って。私みたいなのが隣にいると、君のその『無自覚な優しさ』や『人を疑わない素直さ』が、彼を傷つけ、いつか彼を殺してしまうかもしれないって……。それに、椅子に縛られて、あの人に首や顔を触られ、色々なことを耳元で言われた私は本当はもう汚されてるんじゃないかって不安で……。そう思ったら、ヒロに触れられるのが、少し怖くなっちゃって……」


涙が溢れ出し、枕を濡らす。

浩紀は彼女の横に身を寄せ、震える肩を抱き寄せた。


「アン、俺を見てくれ。……あいつが言ったことは全部嘘だ。あんな状況でもあいつに屈しなかったアンを、俺がどれだけ誇りに思っているか。そんなアンがそばにいてくれるだけで俺の心は誰よりも強くなれるんだ。だからあいつの言葉でなく俺を信じて一緒にいてほしい」


浩紀は、震える杏奈の左手をそっと取り、その薬指に光る「銀の指輪」に自分の唇を寄せました。


「この指輪を見て。……これは、俺たちが聖夜に誓った『本物の絆』だ。あいつが何を言おうと、俺がアンにこれを贈ったという事実は変わらないし、アンが俺を想って守り抜いた事実も、傷一つついてない」


さらに浩紀は、杏奈の襟元から「月のネックレス」を優しく引き出しました。

三日月のチャームが、保健室の淡い光を反射して静かに輝きます。


「アン。この月は、お前が俺を選んでくれた証だ。お前は少しも汚れてなんていない。……俺にとっては、あいつに立ち向かったお前の魂こそが、この月よりもずっと気高くて眩しいんだよ」


浩紀は、赤く腫れた杏奈の頬にそっと指先を滑らせる。


「あいつが残したおぞましい記憶も、その震えも、全部俺が塗り替えてやる。……お前が自分のことを『汚い』なんて一瞬も思わなくなるまで。何年かけても、何度でも、俺の愛で上書きしてやるから」


浩紀は、杏奈が死守したその唇に、祈るような口づけを落とした。

葛谷の残した冷たい気配を、浩紀の体温が一つずつ丁寧に溶かしていく。


ーーー


翌日。葛谷の退学が決定し、校内には一時の平穏が戻った。

放課後のコート脇、杏奈を心配してテニスコートまで来ていた沙織が杏奈にドリンクを手渡す。


「杏奈、無理しなくていいのよ」


「ありがとう、沙織。……大丈夫。ヒロが、ずっと側にいてくれるから」


杏奈は努めて明るく笑った。

だが、沙織は気づいていた。杏奈がラケットを握る際、ふとした瞬間にすでに消えている自分の腕にあった「痕」を確認するように、落ち着かなく視線を泳がせることを。


(……杏奈、あんなクズに……。浩紀、早く杏奈を元気にしてあげなさい。じゃないと、私があんたを奪いに行けないじゃない)


コートの入り口では、先に練習を終えた浩紀が杏奈の練習が終わるのを待っていた。


「アン、行こうか」

「うん!」


駆け寄る杏奈。浩紀は彼女の手を引くとき、いつもより少しだけ強く、そして優しく握る。

かつてのトラウマが完全に消えたわけではない。

けれど、今の杏奈には自分が感じた恐怖を「上書き」し、そばにいて「守ってくれる」大切な恋人がいる。

二人は夕暮れの並木道を、未来を確かめるように一歩ずつ、ゆっくりと歩き出した。



第6章第9話をお読みいただきありがとうございます。


第6章はこれにて完結となります。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

葛谷の破壊された二人の絆を再度構築していく二人を書いた章になります。

今後も、この二人が迎える壁を越えれるように応援してあげてください。


この物語を気にってくれてる方、浩紀と杏奈を応援してくっる方、薫や沙織も頑張れと思ってくれる方はぜひブックマーク及び評価☆で応援をよろしくお願いします。


明日の19時に薫の過去の話である「間幕:あの日の青い花(薫編)」を投稿します。薫が浩紀に恋し、執着をするようになるきっかけのお話です。是非ご覧ください。




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良かったぁぁぁぁ号(இдஇ;)泣、、、、、、
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