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【本編終了】『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第1章「軽井沢の迷宮」

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第八話:森の静寂、騒がしい心【加筆&修正】(26年8月1日)

散策に出かける直前、玄関先で沙織に腕を引かれた時、浩紀は真っ先にリビングのソファに座る杏奈の姿を探した。


(アン、誘ったら来るかな……)


一度は声をかけようと口を開きかけた浩紀だったが、彼女の視線の先を見て、言葉を飲み込んだ。

杏奈は、キッチンで香澄と笑い合う博康を、吸い寄せられるような瞳で見つめていた。

その表情は、邪魔することを許さない「恋する乙女の顔」そのものに見えた。


(……邪魔されたくないよな。今は、兄貴と一緒にいたいだろうから……)


自分の胸の疼きを、無理やり「幼馴染としての仮面」で蓋をする。

そんな歪な自己犠牲を胸に、浩紀は沙織の誘いに頷いた。


ーーー


別荘の裏手に広がる、シラカバの林。

都会の蒸し暑さとは無縁の、ひんやりとした風が吹き抜け、とてもさわやかな空間であった。


「空気が美味しい! ね、浩紀君、こっちに珍しい花が咲いてるよ!」


沙織は「浩紀君」と呼ぶたびに、自然な動作で彼の袖を引いたり、肩を寄せたりしてくる。さらにはそのたびに香るかすかな甘い香り。その距離感の近さは、クラスの男子をことごとく虜にしてきた彼女の天性のもので、浩紀も思わずドギマギしてしまう。


「あ、これ……アザミかな」


「物知りなんだね。そういう物知りなところも、私、すごく好きだな」


真っ直ぐに目を見つめてくる沙織。

その攻勢を、すぐ後ろから歩く薫が鋭い視線で射抜いていた。


「浩紀兄ちゃん、見てください。こっちにはとても綺麗な水が流れてる小川がありますよ。行きましょう?」


薫は沙織の反対側に回り込むと、浩紀のシャツの裾をぎゅっと掴んだ。


「薫ちゃん、そんなに引っ張らなくても逃げないよ」


「ダメです。この辺りは道が複雑なんです。浩紀兄ちゃん、私にしっかりついていてくれないと……どこかへ迷い込んじゃいますから」


潤んだ瞳で上目遣いに訴えかける薫。

その言葉には、沙織の軽やかさとは違う、逃げ場を奪うような執着が滲んでいた。

浩紀は、右からの甘い香りと、左からの切実な熱気に挟まれ、案内役どころではない息苦しさを感じていた。


ーーー


一時間ほどして、三人が別荘に戻ると、リビングには重苦しい空気が漂っていた。

太田と敦子はテラスへ移動しており、ソファには杏奈が一人、硬い表情で座っている。


「ただいま。アン、戻ったよ」


浩紀が努めて明るい声で話しかけるが、杏奈は雑誌から目を上げようともしない。


「……随分長かったじゃない。そんなにその辺の草を見るのが楽しかったの?」


「いや、畑中さんが案内してほしいって言うから……」


「私、浩紀お兄ちゃんと歩くの、とっても楽しかったです!」


薫がわざとらしく、けれど確信犯的な笑みを姉に向ける。

その火花を散らす姉妹の間に、沙織がひょいと割って入った。


「本当に! 浩紀君って意外とワイルドなところもあって、惚れ直しちゃった。杏奈ちゃん、こんな『特別な彼』をいつも近くに置いておけるなんて、本当に羨ましい」


沙織の言葉は、まるで「あなたから彼を奪い取る」と宣戦布告を言い渡すようであった。

杏奈の持つ雑誌が、指先でミシリと不快な音を立てる。杏奈は乱雑に雑誌を置くと、


「……別に。ヒロが誰とどこで何しようが、私の知ったことじゃないわよ」


杏奈はそう言い捨てて立ち上がり、逃げるように二階の自室へと向かった。

階段を上る途中で、一瞬だけ、浩紀が自分を追いかけてこないかを確認するように肩を揺らしたが……浩紀は動かなかった。

浩紀は、彼女の背中に声をかけることができなかった。


(……知ってるよ。アンの視界に、最初から俺なんて入ってないことくらい)


誘わなかった後悔と、確信していたはずの拒絶。

夏の軽井沢の午後、そのさわやかさとは対照的に、浩紀の心は静かなる絶望の声を上げているように見えた。

第8話を読んでいただき、ありがとうございます!


沙織の距離感、これは男子が絶対に好きになっちゃうやつですね。

そして薫の「裾掴み+上目遣い」のコンボ……これ、一発ノックアウトの破壊力やん!

2人とも女子力が高すぎて、浩紀が羨ましい(?)状況です。

杏奈ちゃん、ふてくされてる場合じゃないよ!


そしてここで、嬉しいお知らせが!

24日に1~5話を投稿したのですが、28人の方が来て下さり、その内なんと15人もの方が1話から5話までを一気に駆け抜けて読んでくださいました!作者としてこれほど嬉しいことはありません。本当にありがとうございます!よかったらブックマークしてください。


この先、この4人の関係はどうなってしまうのか!?


少しでも先が気になると思ってくれた方、杏奈を励ましたい方(笑)、ぜひ【ブックマーク】や【評価(下の☆☆☆☆☆をポチッとな!)】で応援してくれると嬉しいです!


すでに完結まで書き終えていますので、毎日(19時予定)張り切って投稿していきます。

明日の更新もお楽しみに!

追伸:今日もまた21時ごろにもう一話投稿予定です。よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
甘酸っぱい気持ちでいっぱいです…… 恋愛小説にはあまり詳しくないんですが、多くの感情や思惑が重なっていて、複雑な恋模様にドキドキします ブクマと評価を入れさせていただきます
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