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『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第1章「軽井沢の迷宮」

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第七話:高原の波乱、揺れる境界線【加筆&修正】(26年5月26日)

26年5月26日に加筆&修正を行いました。

桐谷家の別荘は、築年数こそ経っているものの、手入れの行き届いたシックな木造建築だった。

吹き抜けの玄関から入り、浩紀は初めて訪れた沙織、太田、そして太田の彼女である花山敦子はなやま・あつこを案内する。


「ここがリビングで、奥がキッチン。二階に寝室がいくつかあるから、適当に荷物を置いて」


「わあ、すごい! 本当にドラマに出てきそうな別荘だね、浩紀君!」


沙織が目を輝かせてはしゃぐ横で、太田の隣に寄り添う敦子は、気後れしたように部屋の様子を控えめに窺っていた。

敦子は小柄で守ってあげたくなるような雰囲気の、おとなしくて可愛らしい少女だ。太田とは保育園からの付き合いで、中三の時から付き合っているという。

永徳高校の面々に囲まれ、少し緊張した面持ちで太田の袖をぎゅっと掴んでいた。


ーーー


【 部屋割りと自己紹介】


「それじゃ、女子は二階の大きい二部屋に分かれて。男子は一階の予備室を使おうか」


博康の仕切りで部屋割りが決まり、荷物を置いた一行は再び一階の居間に集まった。改めての自己紹介タイムだ。


「えっと、太田君の彼女で花山敦子です。別の高校なので緊張してますが……よろしくお願いします」


「敦子は人見知りだけど、いい子なんだ。みんなよろしくな!」


太田がデレデレしながらフォローを入れると、場が和やかな空気に包まれる。誰に対しても分け隔てなく接し、自然とフォローができる太田の性格は、グループ内でも愛される理由の一つだった。


その後はしばしの自由時間となった。夕食の準備まで、各々が読書をしたり、テラスで涼んだりして過ごす。

博康と香澄はキッチンで何やら親しげに食材の確認をしており、杏奈はリビングのソファから雑誌をめくるふりをしながら、その様子をじっと監視していた。


ーーー


そんな中、沙織が浩紀の元へ歩み寄った。


「ねえ、浩紀君。せっかくだから別荘の周りを少し案内してくれない? 森の空気を吸いたいな」


浩紀は反射的にリビングのソファに座る杏奈の姿を探した。


(アン、誘ったら来るかな……)


一度は声をかけようと口を開きかけた浩紀だったが、彼女の視線の先を見て、言葉を飲み込んだ。

杏奈はキッチンで香澄と笑い合う博康を、吸い寄せられるような瞳で見つめていた。その表情は、誰にも邪魔されたくない聖域のようにも見えた。


(……いいか。今は、兄貴と一緒にいたいよな)


「ああ、いいよ。そんなに遠くまでは行けないけど……」


「やった! 二人きりでデート気分だね」


沙織が冗談めかして浩紀の腕を掴もうとした瞬間、背後から「私も行きます!」と鋭い声が響いた。薫だ。


「浩紀兄ちゃん、私、この辺に珍しい高山植物が咲いてるって聞いたんです。一人だと迷いそうだから、私も一緒に行ってもいいですよね?」


「えっ、あ、ああ。薫ちゃんも行くなら賑やかでいいな」


「……あはは、薫ちゃんも一緒かぁ。いいよ、みんなで行こう!」


沙織は一瞬だけ頬をひきつらせたが、すぐに持ち前の笑顔で薫を迎え入れた。

こうして、困った顔の浩紀を真ん中に挟んだ「三人での散策」がスタートした。


ーーー


一方、リビングのソファでは、杏奈が一人でファッション雑誌をパラパラとめくっていた。

視線の先には、キッチンで親しげに夕食の相談をしている博康と香澄がいる。

そんな複雑な思いに耽っていると、テラスから太田と敦子のカップルが戻ってきた。


「お、杏奈。お前一人か? 浩紀ならさっき、畑中と薫ちゃんに連行されて外に行ったぞ」


太田が苦笑いしながら、テラスの方を指差した。


「え……? ヒロが?」


杏奈は顔を上げ、驚いたように瞬きをする。


「そうだよ。畑中が『案内して!』って浩紀を誘い出してさ。そこに薫ちゃんが『私も行きます!』ってすごい剣幕で割り込んで……。結局、浩紀を真ん中にして、三人で森の方へ消えてったぞ」


「……三人で?」


杏奈の手が止まる。博康と姉の様子に気を取られすぎて、自分の「定位置」にいたはずの浩紀が、他の女の子たち……しかも自分の妹まで加わって出かけてしまったことに、今の今まで気づかなかった。


「なんだよ、お前。一緒に行かなくて良かったのか? いつも浩紀の隣にいるのに」


太田の何気ない一言が、杏奈の胸に刺さる。


「……別に。ヒロだって、たまには私以外の人と遊んだ方が楽しいでしょ。私は、博康お兄ちゃんたちが何作るのか気になるし」


「そんなこと言って、浩紀をとられても知らないからな?」

太田は少し苦笑いをしながら忠告した。


「だからヒロは単なる幼馴染なんだから!……だから私は別に気にしてないし……」


(そうよ、ヒロは単なる幼馴染ってだけなんだから……)


杏奈は努めて無関心を装い、再び雑誌に目を落とした。けれど、モデルの笑顔も最新の服も、全く頭に入ってこない。そしてつい浩紀のことを、さらに一緒に行った沙織や薫のことを考えてしまう。


(……ヒロ、私のこと誘ってくれなかった。っていうか畑中さん、そんなに堂々と……。それに薫まで……)


いつもなら、自分の手の届く距離にいたはずの浩紀。

その彼が、自分以外の女子たちに当たり前のように連れ出され、奪われていく。

そんな現実を突きつけられ、杏奈の心に冷たい風が吹き抜けた。


第7話を読んでいただき、ありがとうございます!


とうとう沙織と薫が動き出しました。

浩紀はまさに「両手に花」状態ですが、肝心の杏奈は博康さんに夢中……。

書いている私自身も「ヒロ、辛すぎるよ!」と叫びたくなってしまいます(笑)。


もし「ヒロ、負けるな!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【評価(下にある☆☆☆☆☆)】で応援のパワーを届けていただけると、執筆の大きな励みになります!


すでに完結(約100話)まで書き切っていますので、最後まで安心してお付き合いください!

次回もお楽しみに


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