第5.5章 第4話:炬燵であーんは正義
あけましておめでとうございます(笑)。今回はお正月のお話です。
キャラクター総選挙へのご参加もよろしくお願いします(詳しくは後書きにて)
お知らせ:第4章までの加筆&修正作業が終了いたしました。一度ご確認ください。
1月1日お昼過ぎ。
浩紀は河合家のリビングに置かれている炬燵に足を入れて温まっていた。
そしてその隣には当然のように杏奈が陣取り、体をくっつけていた。
そこへ河合家の長女である香澄がやってきて、「杏奈はホントに浩紀君のことが大好きね」と言いながら笑っていた。
「当然だよ、お姉ちゃん。だってヒロは私の全てだもの!」
そういった杏奈の表情はとても晴れやかであった。
「あらあら、ここだけは真夏みたいね」
そう言ってからかう香澄。
「おせちも、お雑煮もたくさん用意してあるから今日はたくさん食べていってね」
香澄はそういいながら炬燵にお重を置いていった。
「ヒロはどのおせちが食べたい?」
ヒロの顔を覗きながら尋ねる杏奈。
「田作とかまぼこをもらおうかな」
杏奈はかいがいしく面倒を見ていた。
浩紀にとり皿とお箸を渡し、そこに田作とかまぼこを取った。
そして、杏奈はそれを自分の箸で持ち、「あーん」といって浩紀に口を開けるように催促した。
「アン、それはちょっと恥ずかしいんだけど……」
「だーめ。今日は最初は私が食べさせてあげるって決めてたんだから。ほら、口を開けて」
催促された浩紀は顔を赤くしながら「あーん」といって口を開けた。
かまぼこを浩紀に食べさせた杏奈は満足そうに
「おいしい?」
「うん、アンが食べさせてくれたから余計においしかったよ」
そんな二人のやり取りを見ていた香澄は
「見ているだけでなんだかこっちが恥ずかしくなってきちゃうわ。そう思わない、博康君」
浩紀と一緒に河合家にお邪魔していた博康に話を振った。
「確かに」といって博康は苦笑いした。
「こうなったら私たちも負けていられないわ!ほら、博康君も『あーん』」
そういいながら、香澄は伊達巻を博康の口元へと突き出した。
「……香澄さんにはかなわないよ」
博康は苦笑しながらも、素直に「あーん」と口を開け、幸せそうに伊達巻を頬張った。
そんな微笑ましい光景が繰り広げられる中、今度はひょっこりと薫がやってきた。
「今度は妹の私の番ですよね」
そう言うと、彼女は杏奈と反対側に座り、浩紀の腕にしっかりと腕を絡めながら、田作をお箸で持ち上げた。
「お兄ちゃん、あーん」
「ちょ、ちょっと、薫!? なにしてるのよ!」
浩紀の口元に田作が迫る。焦る杏奈に対し、薫は涼しい顔で言い放った。
「見ての通り、お兄ちゃんのお世話をしているんですけど」
そう言って杏奈に流し目を送り、薫は淡々と告げた。
「そういうのは私がやるからいいのよ!」
「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんでもあるんですから、わがまま言わないでくださいね、杏奈お姉ちゃん」
板挟みになった浩紀は、困ったように眉を下げた。だが、彼にとって薫は昔からよく知る可愛い妹のような存在であり、その瞳に宿る甘えを邪険にはできなかった。
「落ち着いて、杏奈。……薫ちゃん、今回だけだからね」
そう言って浩紀は、杏奈の方を一瞬だけ見つめて「ごめん」と無言の目線で詫びると、薫が差し出した田作を素直に口へと受け入れた。
「……おいしいですか、お兄ちゃん」
「うん。とってもおいしいよ」
薫は満足げに微笑むと、今度はいたずらっぽい表情で畳みかけた。
「なら今度は、お兄ちゃんが私に食べさせる番ですね」
「そんなのダメよ! 私だってまだヒロに食べさせてもらってないのに!」
杏奈が抗議するのもお構いなしに、薫は平然と言い放つ。
「なら、この後で食べさせてもらえばいいじゃないですか。……ちゃんとお行儀よく順番待ち、してくださいね」
そう言って、薫は杏奈に勝者の余裕を見せつける。
浩紀は「まったく、仕方ないなぁ……」と苦笑しながらも、薫に何が食べたいか尋ねた。
「私、お兄ちゃんに食べさせてもらうなら……数の子がいいです」
「数の子なんて、随分と渋いものを選ぶんだね」
浩紀が苦笑しながら、お重の中の数の子を箸で掴んだその時だった。薫は、腕に絡めていた浩紀の手をゆっくりと自分の下腹部へと誘導し、ピタリと密着させた。
そして、浩紀の耳元で、甘く、けれど浩紀にしか聞こえない音量で囁く。
「浩紀さん、数の子って……子孫繁栄の縁起物なんですよ。お兄ちゃんには、私のこと、たくさん可愛がってほしいですから」
耳元で響いたその言葉と、下腹部に押し付けられた自分の手の感触に、浩紀の思考は一瞬でショートした。ボトッ、と無機質な音を立てて、箸から数の子が取り皿へ転がり落ちる。
「……薫ちゃん?」
喉から絞り出すようにそう呼ぶと、薫はすぐに先ほどまでの妖艶な眼差しを消し去った。
「なんですか、浩紀お兄ちゃん?」
そこには、さっきまでの「女」の気配など微塵も感じさせない、純真な妹の顔があった。小首をかしげ、不思議そうに自分を見つめるその表情に、浩紀は自分が何をされていたのかさえ確信が持てなくなるほどの眩暈を覚えた。
改めて数の子を口に運ばれ、満足げに微笑んだ薫は、小さく耳打ちする。
「あんまりお姉ちゃんをからかうと後が怖いんで、この辺でやめておきますね」
そう言って、薫はあっさりと席を立った。
それを見た杏奈は、待ちきれないとばかりに浩紀の顔を自分の方へと引き寄せた。
「……薫にはもう終わり! 今度は私が食べさせてもらう番なんだからね」
ムッとした表情で唇を尖らせる杏奈が、たまらなく愛おしい。
浩紀はいたずらっぽく笑みを浮かべた。
「なら、杏奈も数の子食べてみなよ」
「どうして数の子なの?」
「いいから、いいから」と言い、首をかしげる杏奈の口元へ、浩紀は数の子をゆっくりと運ぶ。
「あーん」と雛のように口を開けて待つ彼女の口に、数の子をそっと入れてやり、浩紀は顔を赤くしながら囁いた。
「……数の子にはね、子孫繁栄って意味があるんだって。だから……杏奈に食べてほしくて」
真っ直ぐに自分を見つめる浩紀の瞳と、その言葉の意味に気づいた杏奈の頬は、お重の中の海老よりも鮮やかな赤色に染まった。
彼女は言葉を詰まらせながら、小さく、けれど確かにそう呟いた。
「……ヒロのエッチ……」
それでも、杏奈が浩紀の手を振り払うことはなかった。それどころか、彼女は浩紀の腕にさらに強くしがみつき、その胸元に熱い顔を隠してしまう。
杏奈のつぶやきを聞いた浩紀の顔も同じであった。
炬燵の熱気も手伝って、二人の世界は、もはや誰にも邪魔できないほど濃密な空気に満たされていた。
第5.5章第4話をお読み頂きありがとうございます。
今回は「あーん」がテーマになっているお話でした。杏奈のあーんが初々しいのに対して、薫の「あーん」は凄かったですね(-_-;)
そして最後の浩紀の「あーん」に対する杏奈のつぶやき……「ヒロのエッチ」はまさにご褒美です!
私も言われてみたいです(笑)。
杏奈に「〇〇のエッチ」と言われてみたい方、この作品を応援して下さる方で、まだブックマークと評価☆をされていない方はよろしくお願いします。皆様の応援が今後の投稿を続けて行くための活力となります。是非ご協力ください。
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ちなみに作者が1位になった際には作者自身のことを書いてもどうかと思いますので、日ごろかけないようなギャグに振り切った内容の物を書かせていただくことにしましたのであしからず(笑)。
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