第5・5章第3話 除夜の鐘はキスと共に
投稿時間が予定より20分ほど遅くなってしまい申し訳ありません。
12月31日深夜。
浩紀の家の居間でテレビを見ながら過ごす浩紀と杏奈の姿があった。
大晦日ということに加え、杏奈の親は桐谷兄弟(浩紀と博康)のことを信用しているため遅い時間の桐谷家への訪問の許可が下りていた。
「ヒロ、今年もあと少しで終わりだね……」
杏奈がスマホの時間を見ながら言った。
時間は23時45分を表示していた。
「今年は色々あったせいか、なんかあっという間に過ぎていったな」
「正直、去年の今頃は私とヒロが恋人同士になるなんて思ってもみなかったわ。」
感慨深そうに話す杏奈。
「俺だってアンが自分のことを見てくれるなんて思ってもみなかったよ」
「いつも支えてくれてたのにちゃんと見てあげられてなくてごめんね」
申し訳なさそうにいう杏奈。
「今はこうして傍にいてくれるから、それだけで俺は幸せだよ」
そう言って心底幸せそうな笑顔を浮かべた。
「私もヒロの傍にいられて幸せだよ。これからはちゃんとヒロのことだけ見ていくからね!」
そんな会話をしていると外から、ゴーン、ゴーンと除夜の鐘の音が響き始めた。
テレビでは毎年恒例の「行く年来る年」が放送されている。
「ねえヒロ、どうせならヒロの部屋のベランダで除夜の鐘聞いてみようよ」
杏奈の意見を聞いて2階の浩紀の部屋へ向かう二人。
部屋につくと浩紀が
「外は寒いだろうから、アンがくれたこのマフラーを一緒に巻こうよ」
といってクリスマスプレゼントでもらったマフラーを手に取った。
ベランダに出ると外気の冷たさが身に染みた。
浩紀は杏奈を抱き寄せるとその上から首に二人まとめてマフラーを巻きつけようとしたが、なれない作業で、なかなかうまくいかず焦る浩紀。それを見て杏奈が楽しそうにくすっと笑い、巻きやすいようにより浩紀にぴったりとくっついた。
二人でぴったりと寄り添うと、外の寒さなど不思議と感じず、逆にじんわりと温かい幸福感に包まれた。
部屋の中で聞いていた時よりも数倍大きな音で除夜の鐘の音が響いていた。
「ヒロ、あと30秒で年が変わるよ」
と画面を見せながら教えてくれた。
今年が後残り10秒になったところで浩紀は緊張した面持ちで杏奈の顎に手をかけ上を向かせる。
そして顔をほんのり赤くした二人は年が変わる直前で唇を重ねた。
その口づけは年をまたいでもまだしばらくつづき、二人は互いの唇の感触と幸せをかみしめ、ただ静かに想いを確かめ合っていた。
そんな光景を向かい側の河合邸の2階の電気のついていない暗い部屋、その窓のカーテンの隙間から薫が無表情に覗いていた。
(お姉ちゃん、今は譲ってあげる。でも最後に隣にいるのは私だからね)
薫が見ていることなど気が付かない二人は、自分たちだけの世界に浸り、その空間だけは冬の寒さとは対照的な春のような暖かさを感じていた。
冷え切った薫の部屋の暗闇と、桐谷家のベランダに灯る二人の体温。その対比はあまりに鮮明だった。
唇を離した二人は月明かりの下で顔を真っ赤にしながら、「今年もよろしくね」と新年のあいさつを交わすのであった。それぞれにとっての新しい年が始まった瞬間であった。
第5.5章 第3話をお読みいただきありがとうございます。
今回は大みそかの夜について書かせていただきました。年をまたいでのキスはいかがでしたでしょうか?
文化祭の時にした10秒の上書きのキスを超える愛あるキスでしたよね。
そしてそれを見ていた薫の不審なつぶやき、今後も目が離せません!
杏奈と浩紀の幸せを感じてくれた方はぜひブックマーク及び評価☆で二人を祝福してあげてください!
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