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『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第5章:聖夜の審判、そして約束の指輪

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第5章 第六話:ヒロとアン、始まりの記憶

浩紀は暗い部屋で椅子にじっと座っていたが、おもむろに立ち上げると、コートを羽織った。


(このままここでじっとしていると嫌なことを考えちゃうし、気持ちを落ち着かせるために自販機までコーヒーでも買いに行こう)


浩紀は羽織ったコートのポケットに指輪の入ったケースを押し込んだ。


(今日はせめてこの指輪を持っていてあげないとね)

明日以降は机の奥にしまわれてしまうであろう指輪のことを考えて持っていくことにしたのであった。


外はすでに雪はやんでいた。

浩紀はスマホも持たずに缶コーヒーを買うため、昔杏奈たちとよく遊んだ児童公園の横に設置されている自動販売機に来ていた。そこでホットのブラックコーヒーを買った浩紀は懐かしそうに公園を見渡した。


(ここでアンたちとよく遊んだよな。……そういえばあのベンチに前だったよな)


浩紀は大切な思い出のあるベンチへと自然に歩きだしていた。ベンチ前に来ると、ベンチに積もった粉雪を手で払い、そこに腰を下ろした。


(小学2年生の時にこのベンチでアンにおもちゃの指輪を渡してプロポーズしたんだっけ……)


9年前の出来事に思いを馳せる浩紀であった


ーーー


9年前の児童公園。この公園横の神社を中心に商店街にかけて地元のお祭りがおこなわれており、結構な数の縁日が並んでいた。

そんな中、杏奈を連れて浩紀は公園のベンチへとやってきていた。そこで浩紀はおもむろに先ほど露店でこっそりと購入したおもちゃの指輪を取り出し、杏奈の目の前に突き出した。そして、真っ赤な顔で杏奈に告白した。


「杏奈ちゃん、これ上げるから僕と結婚してください!」


その指輪を見た杏奈は嬉しそうにはしゃいで指輪を受け取った。


「これってさっき私が欲しがってた三日月に指輪だぁ。ありがとう、浩紀君」


そのあと少し悩んだ顔をした杏奈は


「でも私たち子どもだし、まだ結婚はできないんだよ、ごめんね」


申し訳なさそうに謝る杏奈。そして指輪を返そうとすると、浩紀はそれを杏奈の方へ押し戻した。


「これは杏奈ちゃんへ将来プロポーズするための約束の指輪だから。10年後にまた、今度は本物の指輪を用意してプロポーズしてみせるから、返事はその時にお願いします。」


真剣な表情で表情で話す浩紀。


「10年は長いよ。私おばさんになちゃうもん。」


後ろで聞いていた杏奈の母親の目が少し怖くなったことはいまだに秘密である。


「杏奈ちゃんは何歳になってもおばさんにはならないよ!……ならせめて9年後でお願いします。」


「じゃあ、特別に9年後にしてあげるからちゃんと本物の指輪を頂戴ね。後これは二人だけの秘密だからね」


満面の笑みで答える杏奈であった。ここで杏奈が1つ浩紀に提案する。


「これからは名前を呼ぶ時、二人だけの特別な呼び方にしよ!……私は浩紀君を『ヒロ』って呼ぶね!」


「なら僕は杏奈ちゃんを『アン』って呼ぶよ」


2人だけの特別な関係になれたことに喜ぶ浩紀。


「これからよろしくね、ヒロ」

「こっちこそよろしくね、アン」


こうして高校生になった今までこの呼び方が続いているのであった。

杏奈は最後に浩紀に目をつぶるように言い、素直に指示に従う浩紀であった。


「絶対に目を開けちゃだめだからね!これは指輪をくれたお礼と9年後に本物をくれる約束へのお礼なんだからね」

そういうと、何があるんだろうと不思議そうに眼をつむる浩紀の唇に、杏奈はチュッとかわいらしい音がしそうなフレンチキスをしたのだった。

突然の出来事に固まった浩紀と、耳まで真っ赤にして恥ずかしがる杏奈、そんな二人を少しだけ離れた場所から微笑ましく見守っている杏奈の母親の姿がそこにあった。


ーーー


高校生の浩紀が過去に思いを馳せていると、不意の声をかけられた。

声をかけてきたのは杏奈の姉である香澄であった。


「浩紀君、こんなところで何してるの?……さては杏奈と待ち合わせなんでしょ」


いたずらっこを見つけたような顔をする香澄。


(香澄さんにはアンが博康兄さんに告白しに行ってることは言えないよね……)


「あはは……」と愛想笑いでごまかす浩紀。


「それじゃあ、邪魔しちゃ悪いから私は行くわね。浩紀君が一緒なら大丈夫だろうけど、杏奈にあまり遅くならないように言っておいてね」


そう言うと香澄は実家である河合邸へと帰っていった。

夜空には奇麗な三日月が浮かんでいた。








第5章第6話をお読みいただきありがとうございます。


今回の回想シーンですが実はキャラクター総選挙で浩紀か杏奈が一位になった時に書こうかと思っていた話の一部に当たります。過去の幸せな光景と今の孤独との対比を意識して書いてみました。

この話の後はあと2話で5章も終わりとなります。結末がどうなるのか是非ご覧ください。


早く続きを読みたい方、浩紀を応援して下さる方はぜひブックマーク及び評価★にて応援して下さると嬉しいです。またまだ第1回キャラクター総選挙の投票は受け付けていますのでぜひご参加ください。


毎日19時頃に投稿していきますのでよろしくお願いします。


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