間幕 第二話:暗闇の甘い罠(薫・恋愛映画編)
デート編2話目です。今度は薫編です。
※5月29日、第1章の加筆&修正作業が完了いたしました。物語の熱量をより深めた内容になっていますので、ぜひ一度ご確認ください。
沙織とのハードなデートの翌週。浩紀は薫に手を引かれ、地元の映画館に来ていた。
「浩紀さーん! こっちです、ポップコーン買いましょう! キャラメル味、半分こですよ?」
今日の薫は、冬の気配を感じさせるダッフルコートに身を包んでおり、腰丈まである柔らかなベージュのコートに、揺れる黒のフレアスカート。歩くたびにその隙間から覗く、健康的な太もものラインが妙に大人びて見えた。
いつもは学生らしいポニーテールだが、今日は毛先を軽く巻き、オシャレに整えられていた。その姿は、浩紀が知る「妹」の可愛らしさと、隠しきれない「女性」としての艶っぽさが絶妙に混ざり合っていた。
浩紀は、はしゃいでいるように見える薫を見て、
(よかった。薫ちゃん、楽しそうにしてくれてるみたいで)
と兄のような素直な感想を持っていた。
しかし、薫の瞳の奥には、姉である杏奈に対する対抗心が静かに燃えていた。
賞品として渡された映画チケットは、今話題の超純愛ラブストーリー。
館内につきダッフルコートを脱いだ薫を、下に着ていたゆるふわニットの上着がより可愛らしく見せた。
館内が暗くなり、上映が始まって数分。
薫が「心細くなっちゃいました」と言って、浩紀の大きな手に自分の柔らかい小さな手を重ねてきました。
暗がりのせいもあるのか、浩紀はその行為にドキッとさせられ、薫の顔を見ました。
それに対し薫は妹としての笑顔で浩紀の警戒心を解いていく。
(薫ちゃんは相変わらず甘えん坊だな)
ほほえましく感じる浩紀がスクリーンに視線を戻すと、薫はさらに距離を詰め、彼の肩に頭を預けてきまた。
(こんなかわいい妹のような存在がいる俺は幸せ者なんだろうな)
仲の良い兄妹のような関係を疑わない浩紀であった。
スクリーンの中で主人公たちがキスをするクライマックスシーン。
薫が顔を上げ、至近距離で浩紀を見つめました。
「ねえ、浩紀さん。お姉ちゃんと1位になったの、本当はすっごく悔しかったんです。私の方が、浩紀さんのこと……」
薫の吐息が頬にかかる距離。
彼女の瞳は潤み、誘うようにわずかに唇が開かれます。
薫に妹ではなく女性を感じてしまう浩紀。
「……浩紀さん、映画より、私を見て?」
薫の顔が近づき、浩紀は薫からするほのかな甘い香りと待機室での唇の感触を思い出し、理性が溶けそうになったが、次の瞬間に大切なことを思い出した。
その時、浩紀の脳裏には、先週の夜、自分の告白に顔を真っ赤にして、震える手でネックレスを握りしめながら、唇を奪っていったアンの姿と唇に感じた確かな熱がフラッシュバックされていた。
あの時のアンの必死な体温と、月のチャームを握りしめていた指先の震え。
その鮮烈な記憶が、今、目の前の薫を受け入れようとする浩紀の心に、鋭いブレーキをかけた。
その一瞬の躊躇を、薫は見逃さなかった。
「……ふふっ、今はダメ、ですか。でも、次は逃がしませんよ?」
結局、映画が終わるまで、二人は手を繋いだままであった。
ロビーに出た時、薫は、
「次は映画館じゃない場所で、二人きりでもっと近くにいたいな」
と、小悪魔的な笑みを浮かべるのであった。
(必ず私がお姉ちゃんのポジションを奪ってみせますからね、浩紀さん)
浩紀は映画館を出てから家に着くまで手を離すことも、薫の顔をまじまじと見ることもできなかった。
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明日の19時に第5章の第1話を投稿します。5章では物語が大きく動き出します!明日の19時をお待ちください。




