第4章 第十九話:伝説の幕開け、三つの純愛【加筆&修正】(26年6月9日)
文化祭もいよいよ大詰め。夕闇が迫る中、特設ステージの照明が鮮やかに輝き、全校生徒の視線が一点に集中していた。
ついに、誰もが待ち望んだ「ベストカップルコンテスト」の結果発表である。
そんな中、浩紀は生徒会長として、壇上でゲスト審査員の席に座っていた。
「それでは、栄えある第3位の発表です!」
実行委員の声がスピーカー越しに響き渡る。
「第3位……河合薫さん & 桐谷浩紀さん ペア!」
会場がどよめきに包まれた。
名前を呼ばれ驚く浩紀。
ステージに上がった薫は、事前に親友たちへ「私と浩紀さんの組み合わせに絶対投票して!」と根回しをしていた成果に満足げな笑みを浮かべ、事態をよく呑み込めていない浩紀を舞台の真ん中に連れてくると、浩紀の右腕をギュッと抱きしめた。
「第3位のお二人には、映画チケット(恋愛物)を贈呈します! さて、薫さん、今の心境は?」
「はい! 浩紀さんと二人で、この映画を観て甘い時間を過ごしたいと思いまーす!」
満面の笑みで答える薫。
しかし、驚きはこれだけではなかった。
「続いて第2位……畑中沙織さん & 桐谷浩紀さん ペア!」
どよめきが悲鳴に近い歓声に変わります。
薫は少し目を細め壇上に登ってくる沙織を見つめた。
(沙織さんも同じことしましたか……)
沙織もまた、持ち前のカリスマ性で周囲を巻き込み、組織票を固めていたのである。
「第2位の賞品は、JOYPOLICEのペアチケットです! 畑中さん、桐谷会長とどんなアトラクションに行きたいですか?」
「もちろん、絶叫マシン!そこで彼をドキドキさせて、私なしじゃいられなくしてみせるわ」
不敵に微笑む沙織は空いている左腕に抱き着いた。
浩紀は左右の腕を薫と沙織に確保され、冷や汗を流しながらとまどっている。
それを見ていた観客から「会長羨ましいぞ!」「私も会長とデートしたい!」などのヤジが飛んでいた。
そして、会場のボルテージが最高潮に達した時、ついに第1位が発表された。
「今年の圧倒的な支持を得て選ばれた、伝説の第1位は――」
「河合杏奈さん & 桐谷浩紀さん ペアです!!」
地響きのような拍手が沸き起こった。
友人たちの工作ではなく、全校生徒が二人の絆を「本物」だと認めた純粋な結果であった。
名前を呼ばれた杏奈は、嬉しさが顔に出そうなのを必死にこらえ、澄ました顔を作り、震える足でステージへ歩み寄る。
「第1位のお二人には……なんと! 東京品川プリンスホテルの高級宿泊券、さらに水族館ペアチケット付きを贈呈します!」
豪華すぎる賞品に会場は騒然。
実行委員が杏奈にマイクを向け、生徒たちの誰もが知りたがっていることをストレートに尋ねた。
「杏奈さん、この宿泊券、もちろん桐谷会長と使うんですよね?」
「えっ……あ、えっと……」
観衆が見守る中、杏奈はしどろもどろに答えると、自分を複雑な表情で見つめる浩紀と視線を合わせた。
博康への憧れと、浩紀への無自覚な独占欲の間で揺れていた彼女の心に、この「1位」という事実は、確かな温度を持って杏奈の心に自然に溶け込み、無意識のうちにその胸を高鳴らせていた。
浩紀は、戸惑う杏奈に優しく、けれどどこか切なげな微笑みを向けました。
「やったね、アン……俺たちが1位だってさ」
「……うん。……そうだね、ヒロ」
(……そうよ、悩む必要なんてないわ。だって、この宿泊券はヒロとのペアでもらったんだからヒロと行くのが当たり前よ。沙織や薫だってヒロと行くんだし、恋人だとかそんなことは関係ないんだから。……いつか、私はヒロと……)
浩紀を挟んで、右に薫、左に沙織、そして正面に浩紀の制服を恥ずかしそうに、でもしっかりと掴んで立つ杏奈。
桐谷浩紀が上位三組すべての相手として選ばれるという、前代未聞の「伝説」が誕生した瞬間であった。開場のあちこちから「会長」コールが叫ばれる中、夕暮れに染まるグラウンド。
この結果が、五人の関係をさらに激しく加速させていくことになるとはまだだれも考えていなかった。
第4章19話をお読みいただきありがとうございます。
浩紀君、前代未聞の三冠達成です!
薫ちゃんの根回し、沙織さんの組織力、そして杏奈さんとの「本物」の絆……。
本人はそれどころじゃないでしょうが、客席は大盛り上がり間違いなしの伝説の夜になりました。
「宿泊券とか、もう逃げ場がないじゃない!」
「ヒロを挟んで三人がバチバチなのが最高にハラハラする」
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次回、文化祭編もいよいよフィナーレ。
伝説の夜が明け、この豪華賞品の行方やいかに……
毎日19時頃の更新をお楽しみに!




