表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編終了】『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第4章:繚乱!文化祭と恋の火花

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/135

第4章 第十七話:視線の交差、静かなる宣戦布告【加筆&修正】(26年6月9日)

いつもありがとうございます!

今回は物語が佳境を迎えていることもあり、皆様のお昼休みにあわせて急遽1話投稿させていただきました。

今後も物語の盛り上がりにあわせて不定期に投稿を行うことがありますので、ぜひブックマークを登録の上、更新通知を受け取れるように設定してお待ちいただけると嬉しいです!(今日の19時にも、もう一話投稿する予定です)

「……もう見ないで、浩紀さん。このままだと浩紀さんが壊れちゃうから……」


生徒会待機室。窓の外で博康と睦まじく過ごす杏奈から目を逸らさせるように、薫は浩紀の腕を抱き寄せ、その背中に静かに語りかけた。

彼女の温もりは、凍りついた浩紀の心に、救いのように、そして呪いのように浸透していく。


(ああ、あの時は……浩紀さんがこうして私を見つけてくれた……)


薫の脳裏に、古い記憶が蘇る。

何でも完璧にこなす才媛の長女・香澄。そして、天真爛漫で誰もが目を奪われるスター性を持つ次女・杏奈。

二人の優秀すぎる姉たちの下で、「出来損ないの三女」として卑屈になっていた幼い日の薫。

周囲の大人たちの「やっぱりお姉ちゃんたちは凄いわね」という無神経な言葉に、彼女は何度も心を殺し、独り暗い部屋で膝を抱えていた。


そんな彼女を見つけ出したのは、姉たちを追いかけていたはずの、隣家の1歳年上の少年だった。

浩紀は杏奈たちから薫が落ち込んでいることを聞かされて、薫を一人で探していたのだった。


「薫ちゃん、ここにいたんだ。……これ、あげるよ。薫ちゃんに似合うと思ってさ」


差し出されたのは、道端に咲いていた小さな、けれど凛とした青い花。

浩紀は姉たちの話など一度もせず、ただ薫の隣に座り、彼女が泣き止むまでその小さな手を握りしめていてくれた。

薫が落ち着くと、彼は静かに語りかけた。


『上が優秀だとホント大変だよね。俺もその苦労はわかるからさ。俺でよかったらいつでも話聞くからね。俺は薫のお兄ちゃんだからさ』


そう言って浩紀は優しく微笑んだ。

香澄お姉ちゃんでも、杏奈お姉ちゃんでもない。

「私の中の孤独」を見つけてくれたのは、浩紀さんだけだった。

あの時もらった青い花は香澄お姉ちゃんの手を借りてしおりにし、宝物として大事にとってある。あの時、杏奈でなく香澄を頼ったのは、そのころから無意識に浩紀の心を独占する杏奈をライバル視していたからなのかもしれない。

今度は自分が、傷つき、打ち捨てられた浩紀を見つけ出し、救い上げ、私が横で支えてみせる。

たとえそれが姉妹の関係を完全に決裂させることとなったとしても。


「……浩紀さんは、私が守ってあげますから」


彼女の囁きは、浩紀を窓際から引き剥がし、薄暗い部屋の奥へと誘う。

その様子を、何かに導かれるように校庭から見上げた杏奈ははっきりと目撃してしまう。

浩紀に密着し、まるで自分の恋人であるかのように彼を連れ戻す薫の姿を。


(なんで……。あんなの、もう『妹』の距離じゃないじゃない!)


胸を焼くような焦燥感から逃れるように、杏奈は隣に立つ博康の腕に、さらに強く自分の腕を絡めた。


ーーー


その後、四人はテニスコートで合流する。

薫を伴って現れた浩紀に対し、杏奈は自分でも制御できない刺々しい声を向けた。


「遅かったわね、ヒロ。生徒会長様は随分とお忙しいこと」


浩紀は、杏奈が博康の腕に自分の腕を絡ませているのを見て、窓から見ていた以上の痛みを覚えた。

けれど、彼はそれを悟らせないように、いつもの穏やかな笑みを浮かべる。


「ゴメン、すぐに準備するよ」


そう答えて、浩紀は逃げるように一般客の指導へと向かった。

しかし、杏奈は見ていた。

浩紀が背を向ける直前、ほんの一瞬だけ、泣き出しそうなほどつらそうな顔をしたのを。


(……なんで、そんな顔するのよ)


締め付けられるような感覚におそわれる胸を落ち着かせるように、杏奈はさらに博康への「憧れによる依存」を加速させた。

浩紀は指導をしながらも、横目で常に二人の親密な姿を追い続けていた。

見てしまえば心を壊されてしまいかねないとわかっていながらも、けっして目を離すことが出来なかった。

熱を帯びていくコートの上で、浩紀の心はついに限界を迎え、仮面がはがれようとしていた。

第4章17話をお読みいただきましてありがとうございます。


今回は浩紀の心が壊れてしまうのではないか、最初から最後まで心配しっぱなしな回でした。

優秀な姉たちに囲まれて孤独だった薫ちゃんを救ったのが、かつての浩紀だった。そして今、壊れそうな浩紀を救おうとしているのが、その薫ちゃんであるという事実……。まさに情けは人の為ならずですね。


「もう壊れる前に薫に乗り換えたら?」と言ってあげたいぐらい、浩紀の「仮面」が限界に来ています。


次回、ついに第18話。

仮面が剥がれ落ちた浩紀が、博康さんにどのように挑むのか。

そして、その結末は……。次回をお楽しみに!

毎日19時ごろに投稿します。時々午前中にも投稿する可能性がありますので、ブックマークでの対応をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ