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『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第1章「軽井沢の迷宮」

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第五話:すれ違うヒーロー、芽生える覚悟【加筆&修正】(26年5月26日)

※26年5月26日に再度【加筆&修正】を行いました。

終業式を目前に控えた放課後。

浩紀は生徒会長の加奈子に呼び出され、夏休み中の役員会議に参加していた。


「アン、ごめん。今日は生徒会があるから、先に帰ってて」


「……えー。わかったわよ、じゃあね。あんまり遅くならないようにね?」


少し不満げに、けれどいつものように強がって手を振る杏奈を見送った浩紀は、申し訳なさを覚えながらも生徒会室へと向かった。


ーーー


一方、一人で帰路についた杏奈は自覚なしにすれ違う男性の目を引いていた。杏奈は駅近くの本屋により雑誌を眺めていた。そして、店を出た直後、見知らぬ二人組の男に声をかけられる。


「ねえ、君めっちゃ可愛いじゃん。これから暇? ちょっとお茶でも行こうよ」


男たちはそういいながら杏奈の全身をいやらしい視線でなめまわしていた。


「すみません、急いでるので……」


「そんなこと言わずにさ。楽しませてあげるからさ。可愛いけど君ってモデルさん?」


断っても男たちは一向に引き下がらない。それどころか、一人が杏奈の細い手首を強引に掴んだ。


「ちょっと……! 離してください!」


恐怖で足がすくみ、声が震える。周りの人たちは遠巻きに見ているだけで誰も動こうとしない。


(……ヒロ、助けて……!)


心の中で無意識に幼馴染の名を呼んだその時、鋭いブレーキ音とともに一台の黒いSUVが歩道脇に止まった。運転席から降りてきたのは、たまたま通りがかった博康だった。


「……君たち、その子から手を離してくれないか」


博康が放つ圧倒的な「大人」の威圧感と、元生徒会長らしい隙のない佇まいに、男たちは舌打ちをして逃げるように去っていった。

助手席に乗せてもらい、家まで送ってもらう道中。杏奈はハンドルを握る博康の横顔を盗み見る。


その醸し出される大人の雰囲気と精悍な顔立ちが、恐怖で固まっていた杏奈の心をほぐし、さらには熱くしていく。中学の頃から自覚している憧れを、杏奈は強く意識させられた。


(……やっぱり、かっこいいなぁ。博康お兄ちゃんは、いざという時に絶対に守ってくれる……)


恐怖から救われた安堵と、長年抱き続けてきた憧れ。助手席という近い距離も相まって、杏奈の胸は激しく高鳴っていた。


ーーー


その夜。生徒会を終えて帰宅した浩紀の携帯が鳴った。杏奈からだった。


『ねえヒロ、聞いてよ! 今日、駅前で変な男たちに絡まれちゃったんだから』


「えっ!? 大丈夫だったのか!?」


慌てて聞き返す浩紀の声には、切実な響きがあった。しかし、電話越しの杏奈はどこか陶酔したような、甘い声で続けた。


『うん。誰かさんは必要な時にいなかったけど……』


『博康お兄ちゃんが助けてくれたの。車から降りてきた時、本当に王子様みたいで。』


『あんな風に守られたら、好きになっちゃうよね』


「……そっか。やっぱり兄さんは凄いな」


浩紀は電話を握る手に、じわっと力がこもるのを感じた。

まずは、何よりも杏奈が無事でいたことへの心からの安堵感。けれどその直後、「自分がそばにいれば」という激しい後悔と、何をしても敵わない兄への強い劣等感が、重く胸にのしかかってきた。


「……本当に、無事で良かったよ」


『もう、他人事みたいに言わないでよ。じゃあね、おやすみ!』


明るく切られた電話の音。

静まり返った部屋の中に、ツーツーという電子音が鳴り響いていた。


浩紀はスマホを握りしめ、部屋で一人、深くため息をついた。博康を思いながら話す杏奈の甘い声が耳から離れず、浩紀の心を重くしていった。


ーーー


同じ頃、河合家のリビングの隅で、その会話のすべてを耳にしていた人物がいた。

末っ子のかおるだ。


(……お姉ちゃん。浩紀兄ちゃんがどんな気持ちでその話を聞いてるか、考えたことないの……?)


自分を一番に想ってくれている浩紀に対して、あまりにも無神経な言葉を投げかける姉。電話を切った後の浩紀の痛みを想像するだけで、薫の胸は張り裂けそうだった。


(お姉ちゃんが、あんなに無自覚に浩紀兄ちゃんを傷つけ続けるなら……)


薫は拳を強く握りしめた。

薫は電話の向こうの、悲しい顔をする浩紀を思うと、胸が強く痛んだ。そしてその光景が「もうお姉ちゃんには任せておけない」と、薫に新たな決心を促す。

軽井沢の夏休み。そこで浩紀がまた一人で傷つくことがないように。


(……私が、浩紀兄ちゃんを救ってあげる。お姉ちゃんよりずっと、私の方が浩紀兄ちゃんを大切にできるもん)


少女の純粋な恋心に、浩紀を無自覚に傷つける姉への強い反発が鋭い棘として混じり始めた。

永徳高校の夏休み。それは、この幼馴染たちの関係を根底から揺るがす3日間になろうとしていた。

第5話を読んでいただきありがとうございます。


……浩紀、強く生きてくれ( ;∀;)。

好きな女の子から、別の男(それも自分の実の兄)を王子様呼ばわりされる電話なんて。

書いている私自身も、浩紀の気持ちを思うと辛かった……私がそう書いたせいなんですけどね。ゴメン、浩紀(-_-;)


そしてついに、末っ子の薫が覚悟を決めました。

この子は沙織とはまた違う感じに……。これ以上は、恐ろしくて言えません((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル


杏奈の無自覚な振る舞いが、静かに、けれど確実に「幼馴染」という関係を壊し始めています。

皆さんは、今の杏奈をどう思いましたか?(でも、あんまり責めないであげてくださいね)


感想や、浩紀への応援(笑)、ぜひ【ブクマ】や【評価】で届けていただけると嬉しいです!

完結まで、このままの熱量で走り抜けます!

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― 新着の感想 ―
杏奈ちゃん‼︎の気持ちです…… 薫ちゃんの気持ちを思うと切ないです。 一話ごとに盛り上がりがあってキュンキュンしてます。 乾いた心に染み込んでくる素敵な作品です! 続きを読ませて貰います!
 冒頭の5話まで読ませていただきました。  自分も基本は現実恋愛系を書いてますので、すごく興味深く読ませていただきました。誰かひりだけの目線ではなく、多くの方が『みる』視点での物語は、膨らませ方が広…
よくあるパターンで日常だと説明と会話になってるので情緒的な表現がほしいですね!
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