第4章 第六話:執事とメイドと、嫉妬の浴衣【加筆&修正】(26年6月7日)
開会式を終え、浩紀と沙織のクラスでは「メイド&執事喫茶」が開店した。
クラシックな執事服に身を包んだ色気があふれる浩紀と、その魅力的な胸や足を強調するフリルが揺れるメイド服の沙織が並ぶと、クラスメイトたちから感嘆の声が上がる。
「うわ、浩紀マジで似合いすぎだろ!」
「沙織も可愛すぎ。この二人、並ぶと本物のベストカップルって感じだよな」
周囲の冷やかしに近い称賛に、沙織は内心ガッツポーズを決めていた。
ここで更に沙織が動いた。
「浩紀、ネクタイ曲がってるよ?」
そう言って、必要以上に顔を近づけて甲斐甲斐しく世話を焼いていく。
フリルの隙間から覗く華奢な鎖骨や、至近距離で見つめてくる潤んだ瞳。
そして、その華奢なラインとは反比例するように、男性を誘うように開かれたメイド服の胸元で確かな存在感を主張している豊かな胸の谷間。
浩紀は沙織の髪から香る甘いシャンプーの香りと、目のやり場に困るその魅力的な谷間にドキッとする。
教室の喧騒が一瞬だけ遠ざかり、沙織の指先がネクタイに触れるかすかな感触だけが、妙にリアルに伝わってきた。
沙織のスキンシップは、明らかに「友人」の範疇を超えていた。
ーーー
そこへ、午前中が自由時間だった杏奈が、薫を連れてやってきた。
杏奈は約束通り、着付けが得意な友人に頼んで仕上げた紺地の浴衣姿だ。
その姿は濃い紺色に包まれ、涼しげでいてどこか艶っぽく、大人なびた感じを受けた。
(杏奈は子供のころからいつも紺地の浴衣だよなぁ……。当時も可愛いと思ってたけど、今の姿は驚くほど綺麗だ)
凛とした佇まいに、教室内が一瞬静まり返る。
「ヒロ。……結構、様になってるじゃない」
ぶっきらぼうに、けれど視線は釘付けの杏奈。そこへ、上機嫌な沙織が割って入った。
「私は? 私はどう、杏奈ちゃん!?」
「沙織、いいから早く接客しなさいよ! ……紅茶とシフォンケーキ、二人分お願い」
杏奈が照れ隠しに注文を投げると、浩紀はスッと背筋を伸ばし、完璧な執事の礼を取った。
「かしこまりました。……お嬢様方」
(……かっこいい)
その場にいた杏奈、薫、そして沙織の三人の心が、同時に、そして全く同じ言葉で重なった。
ーーー
「浩紀、こっちこっち! 注文通しに行くよ!」
沙織に腕を引かれ、親しげにキッチンへ向かう二人。
それを見送る杏奈の心に、どす黒いモヤモヤが広がる。
(なによ、沙織のやつ……ベタベタしすぎじゃない?)
さらに追い打ちをかけるように、隣の席の女子グループからヒソヒソ声が聞こえてくる。
「あの執事の人、超タイプなんだけど」
「連絡先とか渡したら、受け取ってくれるかな?」
杏奈の不機嫌は最高潮に達した。
(……なによ。ヒロは私の幼馴染なんだから!)
内心では、自分以外の人にも彼の魅力が認められたことに、少しだけ誇らしい気持ちもあった。けれど、その気持ちはすぐさま激しい独占欲にかき消されてしまう。
そこへ、注文の品を運んできた浩紀が戻ってくる。
「ちやほやされて、随分楽しそうね。鼻の下、伸びてるんじゃない?」
皮肉たっぷりに言い放つ杏奈。
浩紀は一度困ったように苦笑したが、ふと表情を和らげると、杏奈だけに聞こえる距離まで身を乗り出し、その耳元で囁いた。
「浴衣姿のアンお嬢様、とても似合っていてお綺麗ですよ。……食べてしまいたいぐらいです」
「っ……!!」
杏奈の顔が一瞬で林檎のように赤くなる。
「……と、特別に、今の無礼は許してあげるわ」
さっきまでの不機嫌はどこへやら、杏奈の口角は今にも緩みそうだ。
それを見ていた沙織と薫は、全く同じ表情で溜息をついた。
(沙織:杏奈ちゃん、本当にチョロいんだから……。でも、私もいってほしいかも……)
(薫:お姉ちゃん、本当に分かりやすいんだから……。できたら、わたしにもいってくれないかなぁ……)
甘いシフォンケーキと紅茶の香りが漂う中、3人の独占欲が胸の中で熱くうねっていた。
波乱の1日目は、まだ始まったばかりだった。
第4章第6話をお読みいただきありがとうございます。
今回は杏奈のツンデレぶりが全開でしたね(笑)。
浩紀の「食べてしまいたい」発言、書いていて私自身も「ナイス!」と叫びたくなりました。
皆さんは、浴衣姿の杏奈と、メイド姿の沙織、どちらが好みでしたか?(笑)
やはりかわいい女の子のツンデレ(と、たまに見せるデレ)は神です!今後も二人の攻防に期待してください。
少しでも「先が気になる!」と思ってくれた方、ツンデレは神という意見に賛同していただける方(笑)、ぜひ【ブックマーク】や【評価(下の☆☆☆☆☆をポチッとな!)】で応援してください。
毎日、19時ごろ(予定)に更新していきます。




