第3章 第四話:踏みにじった真心
【祝・累計1000PV突破!】
皆様のおかげで、ついに累計1,000PVを突破することができました!本当にありがとうございます!
第3章完結後、4章へ行く前の間幕として 「第3回緊急対策会議:祝・累計1000PV達成座談会」 を投稿する予定です。(本編とは一切関係ありません)
キャラクターたちと一緒に大騒ぎする予定ですので、ぜひお楽しみに!
引き続き、応援よろしくお願いします!
暗い部屋の中、杏奈は布団にくるまりながら、これまでの浩紀との日々を呪うように思い出していた。
「……最低よね、私」
浩紀はいつも、杏奈の隣にいた。
杏奈が「博康さんのあそこが素敵」「博康さんと話したい」と無邪気に騒ぐたび、浩紀は一瞬だけ、胸を突かれたような、ひどく悲しい顔をするのだ。
けれど、彼は次の瞬間には必ず、無理やり作ったような歪な笑顔でこう言った。
『……そうだな。兄さんなら、きっと喜ぶよ。アン、頑張れよ』
浩紀が自分を好きなことには、ずっと前から気づいていた。
気づいていながら、私はあえてその想いを無視した。それどころか自分の恋を応援させることで、彼を自分たちの「仲介役」として繋ぎ止めてきたのだ。
浩紀が一歩引いて、自分の背中を押し続けてくれたその「作り笑顔」に、私は甘え続けてきた。
ふと、今年のバレンタインのことを思い出す。
高校生になったこともあり、私は「今年は博康さんに特別なチョコを渡したい」と、浩紀に相談に乗ってもらっていた。
相談を受ける浩紀は、いつもの笑顔で優しく対応してくれていた。
私はその優しさに、どこまでも甘えていたのだ。
「今年は手作りチョコを博康さんに贈りたいの。だから、私を手伝って」
そう言って浩紀を連れ回し、材料や道具、チョコレートの作り方の特集雑誌などを買い歩いた。
何度も試作品を作っては彼に味見をさせ、ようやく一セット分だけのチョコレートを完成させた。
丁寧にラッピングを終え、いよいよ渡す当日。
博康さんの教室へ向かおうとする私に、浩紀は言った。
「アンが兄さんのために頑張ったんだから、きっと喜んでくれるよ。……頑張れよ」
そう言って、いつもの笑顔で私の背中を押してくれた。
浩紀が笑う直前、ほんの一瞬だけ、泣きそうなほど悲しい顔をしたことに――私は、気づかないふりをして駆け出した。
そんな浩紀に対し、私が渡したのは、他の友達にあげたものと同じ市販の義理チョコだった。試行錯誤で材料が尽きてしまい、博康さんの分しか用意できなかったからだ。
その時のことを思い出し、さらに胸が苦しくなる。
杏奈は必死に胸元の三日月を握り締め、暗闇の中で届くはずのない謝罪を、心の中で浩紀に何度も、何度も繰り返していた。
ーーー
■ 償えない代償
もし今、浩紀を「好きだ」と認めてしまえば。
それは、私が世界で一番「最低な女」だと認めることになってしまう。
自分の恋を応援させて、彼の心をボロボロに削りながら、私はその「痛み」を自分の恋の燃料にしてきたのだ。
今さら「本当はヒロが好き」なんて、それは救いでも告白でもない。
浩紀がこれまで流してきたはずの血を、笑って踏みにじるような、あまりにも傲慢な暴力だ。
(……私は、博康さんを好きでいなきゃいけないの。そうじゃないと、私はただの最低な人間になっちゃう……っ)
浩紀に「応援してる」と言わせ、彼に身を切るような立ち位置を強いてきたのは、他ならぬ杏奈自身だ。 今さら「本当はあんたが好きだった」なんて、どの面下げて言えるだろうか。そんな身勝手な告白は、浩紀がこれまで耐えてきた「作り笑顔」の時間を、すべて踏みにじる行為に思えた。
ーーー
■ 仮面の決起
翌朝。
学校の廊下で浩紀に会った杏奈は、いつものように傲慢なまでの自信を装って声をかけた。
「おはよ、ヒロ! ほら、背筋を伸ばしなさいよ。候補者がそんな弱気な顔してどうするの?」
「……ああ、おはよう。アン、朝から元気だな」
浩紀は、いつものように穏やかに笑う。
その笑顔を見るたびに、杏奈の胸は締め付けられる。
(その笑顔に、私はどれだけ甘えてきたんだろう……)
「今日の昼休み、演説の修正案を見せるわ。……博康さんを超える、最高にカッコいい演説にするんだから。いいわね?」
「ああ。楽しみにしてるよ」
浩紀の優しい返答が、今の杏奈には何よりも痛かった。
彼女は「推薦人」という盾を使い、浩紀を支えることで、過去の罪滅ぼしをしようとしている。
けれど、それは同時に、浩紀を「幼馴染」という枠に閉じ込め続ける、新たな呪いにもなっていた。
遠くから、その様子を冷ややかに見つめる瞳がある。
「……お姉ちゃん、相変わらず自分の首を絞めるのが上手だよね」
三女・薫は、姉の虚勢と後悔をすべて見抜き、薄く微笑んだ。
「罪悪感に縛られている人間に、お兄ちゃんを愛する資格なんてありません。……ねぇ、浩紀さん?」
選挙戦という舞台の上で、杏奈の「偽りの恋心」は、静かに綻びを見せ始めていた。
代3章 第4話をお読みいただきありがとうございます。
今回は杏奈の心の中の葛藤をメインで書かせていただきました。
杏奈の心が向かう先には誰がいるのか、今後も一緒に見ていきましょう。
この物語を面白いもしくは先の話が気になるという方、杏奈を正しく導いてくれる方、ぜひ【ブックマーク】や【評価(下の☆☆☆☆☆をポチッとな!)】で応援してください。
本日19時、そして明日以降も毎日19時ごろに更新していきますので、お見逃しなく!




