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『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第3章 激闘!生徒会長選挙
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第3章 第二話:放課後のマンツーマン特訓

浩紀が生徒会長への立候補を正式に表明してから、校内の空気は一変した。

昼休みには女子生徒たちが浩紀の教室を遠巻きに眺め、放課後になれば、選挙ポスターの作成や戦略会議という名目で、いつものメンバーが賑やかに集まる。

しかし、杏奈だけは厳しかった。


「はい、そこ! 声が小さい。もっとお腹から声を出して、全校生徒の一番後ろまで届けるつもりで!」


河合家のリビングは、すっかり選挙対策本部に様変わりしていた。

杏奈が持っているのは、浩紀が書いた演説原稿のコピーだ。

赤いペンでびっしりと修正が書き込まれている。


「……アン、厳しすぎないか? まだ最初のリハーサルだぞ」


「甘いわよ。あんた、自分がどれだけ注目されてるか分かってないの? 期待に応えられなかったら、『博康さんの弟も大したことない』って言われる。……そんなの、私が一番嫌なのよ」


「……それって、兄貴の評判に響くから嫌なのか?」


浩紀の言葉に、杏奈の体がピクリと跳ねた。

図星を突かれたというよりは、自分の心の中に土足で踏み込まれたような、言いようのない焦燥感が彼女を襲う。


「……っ、何よ、それ。私がそんなに薄情な女に見えるわけ?」

言い返しながら、杏奈の手は無意識に自らの襟元へと伸びていた。

制服の内側に隠された、あの「月のネックレス」の感触を確かめるように、服の上から強く握りしめる。

博康の話をしているはずなのに、不安になった心が真っ先に求めたのは、目の前の浩紀がくれた「月」だった。

その事実に自分自身でさらに動揺し、杏奈はますます声を荒らげる。


「いや、そうじゃないけど。アンが兄貴のことを尊敬してるのは知ってるし。……やっぱり俺が兄貴の顔に泥を塗るのが、アンにとっても一番嫌なことなのかなって」


浩紀は少し寂しげに、自嘲気味な笑みを浮かべた。

自分はどこまでいっても「博康の弟」として見られている。

それは覚悟していたはずなのに、一番近くにいる杏奈にまでそう思われているかもしれないと考えると、胸の奥がチリりと焼けるように痛んだ。


「バカ言わないで!」


杏奈が鋭い声を上げ、手に持っていた原稿を机に叩きつけた。


「博康さんの評判? そんなの、本人が完璧なんだから、あんたがどうなろうと傷つくわけないでしょ。私が嫌なのは……!」


杏奈は浩紀の胸ぐらを掴む勢いで詰め寄った。

至近距離で重なる視線。彼女の瞳は、怒りと、それ以上の「熱」で潤んでいた。


「私が本当に嫌なのは……あんた自身が、周りに『所詮は弟』なんて格下に見られることよ! 誰よりも近くで、誰よりも長くあんたを見てきた私が、そんな評価に納得できるわけないじゃない!」


「アン……」


「あんたは、ヒロは、博康さんの影なんかじゃない。……私だけの、特別な……」


そこまで言いかけて、杏奈はハッと我に返った。

顔が火が出るほど熱い。

口走ってしまった言葉の重みに耐えきれず、彼女は浩紀を突き放すようにして顔を背けた。


「……とにかく! 私が推薦人になった以上、負けも、妥協も、誰かとの比較も、一切認めないから。……わかったなら、次のページ読みなさいよ!」


浩紀は呆然と立ち尽くしていたが、杏奈の震える背中を見て、不思議と胸の痛みが消えていくのを感じた。


「(……俺自身を、見てくれてるのか)」


その時、リビングの扉が音もなく開き、トレイを持った薫が静かに入ってきた。


「お熱いところ失礼します。喉のケアの時間ですよ」


絶妙すぎるタイミング。

薫は二人の間に流れる「一触即発の甘い空気」を、鋭いナイフで切り裂くような冷ややかな笑みを浮かべていた。


「お兄ちゃん、蜂蜜ココアです。お姉ちゃん、さっきのセリフ……『私だけの特別な』の続き、今度ゆっくり聞かせてもらえますか?」


「き、聞いてたのね、薫……!」


混乱する杏奈と、冷静な薫。

浩紀の選挙戦は、立候補直後にしてすでに「博康の弟」という枠組みを超え、彼女たちの剥き出しの感情を飲み込み始めていた。


第3章 第2話をお読みいただきありがとうございます。

今回は土曜日の休日のお供用に1話はやめに投稿させていただきました。


今回は演説の練習風景でした。博康の影に卑屈になりそうな浩紀を、杏奈が叱咤し前を向かせる場面……書いていて熱が入りました!


「私だけの、特別な……」


彼女が飲み込んだ言葉の続き、皆さんは何だと思いますか?

「これだ!」と思い付いた方は感想欄に書きこんじゃってください(笑)

そして最後に登場した薫。やはりこの作品に彼女の毒気(と蜂蜜ココア)は欠かせませんね。


少しでも「先が気になる!」「杏奈、頑張れ!」と思ってくださった方、あるいは薫の淹れた蜂蜜ココアを(冷ややかな視線を浴びながら)飲みたいという猛者な方(笑)は、ぜひ【ブックマーク】や【下の評価☆☆☆☆☆】で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!


完結まで書き終えておりますので、【19時】に張り切って投稿していきます。よろしくお願いします!

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