第2章 第十二話:お初天神、恋みくじの裏側
USJで「正々堂々と戦う」ことを誓い合った杏奈と沙織。
その足で四人が向かったのは、梅田のビル群にひっそりと佇む「お初天神」だった。
「よし、ここはやっぱり『恋みくじ』でしょ!」
沙織が意気揚々と声を上げる。
杏奈も「……まぁ、旅の記念にね」と澄ましているが、その目は真剣そのものだ。二人は並んでおみくじを引き、一斉に広げた。
「あ……『吉』だ。待ち人、すぐ近くにあり……。浩紀君、これってもしかして?」
沙織が嬉しそうに浩紀を覗き込む。
一方、杏奈の手の中にある紙には、力強く**『大吉』**の文字。
「……『想い、必ず通ず。迷いを捨てよ』……ですって。フン、当たり前じゃない」
昨日までならここで沙織を睨みつけていたはずの杏奈だが、今はどこか余裕があった。
「ねえ、沙織。吉でも『すぐ近くにいる』なら、可能性はあるんじゃない?」
「あ、杏奈ちゃん、優しい……! でも大吉には負けないからね!」
二人の間に漂っていたトゲトゲしい空気は、いつの間にか「好敵手」としての柔らかな連帯感に変わっていた。
ーーー
■ 願掛けの火花
次に四人は、絵馬を書くことにした。 少し離れた場所で、沙織が真剣な表情でペンを走らせている。
「……できた! 浩紀君は絶対見ちゃだめだからね!」
沙織は絵馬を両手で隠し、顔を赤らめながら吊るしに行く。
それを見届けた後、杏奈も無造作に絵馬を掛けた。そこには、彼女らしい達筆な文字でこう記されていた。
『誰にも渡さない』
もはや「お願い」ではなく「宣言」である。
絵馬をフックに掛けた拍子に、前かがみになった彼女の胸元から、あの「月のネックレス」がするりとこぼれ落ちた。
カチリ、と小さな音を立てて、シルバーの月が自ら書いた『誰にも渡さない』という文字に触れる。
まるで、その宣言に力強い判子を押したかのような、不思議な光景だった。
そんな中、浩紀は太田と二人、手持ち無沙汰に境内のベンチに座っていた。
「浩紀、お前……あの二人が急に仲良くなったの、怖くないか?」
「……怖いよ。特にさっきから、二人でこっちを見てニヤニヤしながら小声で話してるのが一番怖い」
ーーー
■ ライバルの結束、浩紀を弄ぶ
参拝を終えた杏奈と沙織が、こちらへ歩いてくる。
その足取りはどこか軽やかで、それでいて威圧感があった。
「ねえ、ヒロ。これから道頓堀でおやつ食べるんだけど、あんた、私たちの荷物持ってくれるわよね?」
「えっ、あ、ああ。いいけど……」
「やった! さすが浩紀君。あ、でもその代わり、たこ焼きは私が『あーん』してあげるからね!」
沙織が当然のように言うと、杏奈がすかさず被せる。
「ちょっと沙織、一人占めは禁止ってさっき決めたでしょ。……最初は私よ、ヒロ。あんた、口開けて待ってなさい」
「……えっ? いや、自分らで食べるから……」
「「だーめ」」
二人の声が完璧に重なった。
つい先日まで、一人が「あーん」をすればもう一人が怒り狂っていた。
しかし、今の二人は**「浩紀を愛でる(あるいは振り回す)」**という一点において、恐ろしいまでのチームワークを発揮し始めていた。
「……行こう、沙織。地下鉄に乗れば、道頓堀なんてすぐよ」
「そうだね、杏奈ちゃん! くいだおれの街で、浩紀君をたっぷり甘やかして(振り回して)あげよう!」
道頓堀に移動した4人。浩紀の目の前には二つの熱々のたこ焼きが、
「浩紀君、どっちがいい? 私のふーふーしたたこ焼きか、杏奈ちゃんの熱々のたこ焼きか!」
「……究極の選択ね。さあ、選びなさい、ヒロ」
「……浩紀、南無三」 太田が隣で手を合わせる。
夕暮れの大阪。 夕日に照らされた二人の美少女に挟まれ、両手に大量の紙袋を下げた浩紀は、幸せなはずなのに、どこか遠い目をして道頓堀へと歩き出した。
二人の少女の間に流れる空気は、これまでにないほど澄み渡っていた
第2章 第12話をお読みいただきありがとうございます。
今回の舞台は「お初天神」です。
実は私の趣味の一つが「御朱印集め」でして、以前この地を訪れた際、多くの女性が真剣に恋愛祈願をされている光景がとても印象に残っていました。いつか物語の重要なシーンで使いたいと思っていた場所なので、今回登場させることができて嬉しいです。
恋みくじに恋愛成就の絵馬……まさに女子にはたまらない重要スポットですよね。
女の子らしい願いを込めた(と思われる)沙織に対し、杏奈は「誰にも渡さない」という男らしい?宣言。対照的な二人の攻防に、今後もぜひご注目ください!
この物語の続きが気になるという方、「私もお初天神に行ったことがあるよ!」という方も、ぜひ【ブックマーク】や【評価(下の☆☆☆☆☆をポチッとな!)】で応援をいただけると、執筆の大きなエネルギーになります!
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