第2章 第十話:摩訶不思議、大阪の熱気と加速する鼓動
京都から大阪へ移動し、一行がやってきたのはハリウッドの風が吹くテーマパーク、USJ。
巨大な地球儀の前で記念撮影を終えるなり、沙織が浩紀の腕を引いた。
「浩紀君、まずはあのアトラクション行こうよ! 耳元で音楽が流れるジェットコースター!」
指差したのは、空を駆け抜けるような爽快感が売りの『ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド』。
「……音楽? 面白そうだな。アンも行くよな?」
「えっ、あ、ええ。もちろんよ」
昨夜の「ベンチでの一件」以来、浩紀と目が合うたびに心臓がうるさい杏奈は、断る余裕もなく列に並んだ。
ーーー
■ 暗闇と、服の裾の微かな体温
「ねえ、浩紀君、どの曲にする? 私はこれにしよーかな!」
「俺は、お勧めにあったやつにするよ」
沙織の積極的な会話をBGMに、四人はライドに乗り込んだ。
今回は二人掛けの座席。運命のくじ引きの結果、浩紀の隣は――昨夜の「お返し」とばかりに、杏奈がその席を確保していた。
「……アン、大丈夫か? 顔、ちょっと赤いぞ」
「……日差しが強いからよ。ほら、前見てなさいよ」
ガシャン、と安全バーが下りる。
ライドがゆっくりと地上へと上がり始めた。
大阪の街並みが一望できる高さまで来ると、杏奈の指先がわずかに震えた。
「(……怖い。でも、高いところが怖いのか、隣にヒロがいるのが怖いのか、もう分からない……)」
急降下の直前、音楽が激しく鳴り響く。
「きゃあああ!」という沙織の悲鳴が後ろから聞こえた瞬間、世界が垂直に落ちた。
重力から解放される浮遊感の中、杏奈は咄嗟に隣にある「何か」を掴んだ。
それは、浩紀の制服の裾だった。
「……っ!」
昨夜、浩紀が言った「こっちの手の方が好き」という言葉。
その熱が指先から蘇り、杏奈は思わず、服の裾をぎゅっと強く握りしめた。
浩紀は、驚いたように杏奈を見た。
しかし、彼女の必死な横顔と、自分を頼るようなその小さな手の感触に、昨夜よりも一歩踏み込んだ勇気を出した。
「……アン、大丈夫だ。俺がいる」
風の音にかき消されそうな声だったが、浩紀は杏奈の手に自分の手を重ね、バーの上からそっと包み込んだ。
ーーー
■ 期待と焦燥のミニオン・パーク
アトラクションを降りた後、杏奈はフラフラになりながらも、繋がれた手の余韻を振り払うように歩いた。
「……ヒロ、何が似合うと思う?」
ギフトショップで、杏奈は柄にもなく浩紀に尋ねた。
手に取ったのは、黄色い人気キャラクターのカチューシャだ。
「えっ、アンがそういうの聞くなんて珍しいな」
「……いいじゃない。修学旅行なんだから。……変、かな?」
少し不安げに上目遣いで聞く杏奈。
その姿には、学校で見せる「鉄壁の主将」の面影など微塵もなかった。
「いや……似合ってると思う。可愛いよ」
浩紀の直球すぎる言葉に、杏奈は「……やっぱりバカ」と耳まで赤くして背を向けた。
その横で、沙織は「浩紀君とお揃いがいいな!」と、全力で浩紀の視線を奪い返そうと必死になっていた。そんな中、浩紀が手に取ったものは杏奈とおそろいの物だった。
そして、浩紀は杏奈の背中を見つめながら、昨夜よりも確かな手応えを感じていた。
「(……アン、少しは意識してくれてるのかな)」
賑やかなパレードの音楽が流れる中、二人の距離は、アトラクションの加速よりも速く、確実に縮まり始めていた。
第2章の第10話をお読みいただきありがとうございました。
今回はUSJの回でした。沙織があの手この手で浩紀の気を引こうと頑張ってましたが、浩紀君は微動だにしませんでしたね。今後沙織はどうやって浩紀を篭絡していこうとするのか、今後の展開次第ですね。
あと杏奈は少しだけ素直になって可愛さが倍増してます。こんなの惚れてまうやろ!
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