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【本編終了】『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
間幕

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第三話:中三の時の試合の裏話

お花見の続きです。ここでは中三の時の大会でなぜ浩紀が負けてしまったのかの謎が明らかになります。

花見の宴はさらに続いていた。


「浩紀と太田君ってほんといいライバルって感じなんだね」


沙織のその言葉に太田が反応する。


「確かに1勝1敗で数字的には互角だったけど、中三の時の浩紀は正直実力の半分も出せてなかったんじゃないかな?」


「浩紀、その時体調でも崩していたの?」


沙織が浩紀を見て問いかけた。

それに対し、浩紀がばつの悪そうな顔をして応じる。


「体調っていうか精神面的に試合に集中できてなかったて感じかな」


その言葉を聞いた杏奈もばつの悪そうな顔をしていた。

その杏奈の顔を見とがめた沙織。


「杏奈、あんた浩紀に何したのか正直に話しなさい!」


そういって、沙織がぐっと杏奈に顔を近づけた。

観念した杏奈がぼつぼつと話し始めたのであった。


ーーー


浩紀たちが中学三年生の時の中学男子テニス大会地区予選当日。

今回はいつもの年と違い、高校の硬式テニスの大会も同時に隣の敷地で行われていた。

当然その大会には博康も参加しており、優勝候補筆頭と言われていた。


「博康さんの試合が何時からかちゃんとチェックしておかないと!」


いつもの冷静な杏奈はなりを潜め、いつになく浮足立っていた。


「お姉ちゃんは博康さんの応援に行くの?」


同じテニス部で1学年下の薫が杏奈に尋ねた。


「こんな機会そうそうないんだから当然でしょ!博康さんの華麗なプレイをこの目に焼き付けるんだから!」


目を輝かせている杏奈に浩紀が声をかけた。


「杏奈は相変わらずだね。……兄さんが優勝できるようにしっかり応援してきてあげて」


笑顔で杏奈に告げた浩紀であったが、薫だけはその笑顔が無理に作った仮面であることを見抜いていた。


(お兄ちゃんはなんでそんなに我慢するの?……お姉ちゃんが浩紀さんを見てあげないなら、今日は私が代わりに浩紀お兄ちゃんを応援してあげるんだから)


ーーー


浩紀は順当に勝ち進んでいたが、そのプレイ自体にはいつもの冴えが見られなかった。どこか心がここにあらずといった印象を受けるものであった。


「浩紀お兄ちゃん、大丈夫?」


「薫ちゃん、大丈夫だよ。何か心配にさせちゃったかな?」


「大丈夫ならいいの……。どこか無理して笑っているように見えたから心配になっちゃっただけだから」


その言葉に一瞬言葉が詰まってしまう浩紀であった。

そこへ博康の手を引いた杏奈が帰ってきたのであった。


「ヒロ、聞いて!博康さん凄いんだよ!サーブもレシーブもコースぎりぎりで……」


博康がいかにすごかったかを目を輝かせながら延々と語り続けたのであった。

浩紀は一度下を向いてから、こぶしを握り気合を入れると、いつもの笑顔の仮面をかぶり直した。


「兄さん、優勝したんだね。おめでとう。弟として鼻が高いよ」


「今度は浩紀の番だな。試合見させてもらうよ」


「そうよ、ヒロ。『博康さんの弟』して恥ずかしくない試合をしなさいよね」


浩紀の心に杏奈が無意識に放った『博康の弟』という言葉が重くのしかかっていた。


(やっぱり杏奈にとって俺は『博康の弟』であって、俺個人のことは見てくれないんだね)


浩紀は必死に笑顔を崩さないようにしながら杏奈の顔を見た。


「兄さんの弟として恥ずかしくない試合をしてくるから任せておいてよ」


薫が浩紀を見て胸を締め付けられるような思いを感じていた。


(お兄ちゃんはどうしてそんなに我慢するの……。なんでお姉ちゃんは浩紀さんの悲しみに気が付いてあげられないの……。もしお姉ちゃんがこのまま変わらず浩紀お兄ちゃんを傷つけ続けるのなら、いつか私が……)


ーーー


浩紀は決勝戦のコートの上にいた。ネットを挟んで向かい側にいたのは去年決勝を戦った太田であった。

太田が浩紀に声をかける。


「前回の大会ぶりだな。今回は俺が勝つから覚悟しとけよ」


そう言って握手を交わした二人であった。

実力の拮抗している二人であり、去年と同じように一進一退の試合になるかと思われたが、要所要所での浩紀のミスが目立った。

浩紀の目には試合中にも時折、杏奈が博康にかいがいしく、水筒のお茶を渡したり、楽しそうに声をかけている姿が入ってきてしまっていた。そのたび心がかき乱されてしまい、ボールにもそれが反映されてしまっていたのであった。

ふがいない浩紀の姿を見た博康は「浩紀の奴、試合に集中しきれてない感じがするな……」と的確に浩紀の状態を捕らえいていた。

そして、杏奈はミスを続ける浩紀に対し、大きな声で声をかけた。


「ヒロ、あんたそれでも博康さんの弟なの!博康さんの弟として恥ずかしくない試合をしなさいよ!」


その言葉は浩紀の精神を完全に折ってしまう。浩紀のミスがより増えていき、ゲーム差が広がる一方であった。そのたび杏奈は『博康さんの弟として』恥ずかしくないのかといった内容を無自覚に浩紀にぶつけていた。このゲームを太田が取れば太田の勝ちが決まるゲームが始まる。


「ヒロ、博康さんに恥をかかせるつもりなの!」


その言葉をずっと隣で聞いていた薫が我慢できずに杏奈に怒りをぶつけようとしたが、それより一瞬だけ早くコートの中から、杏奈に対しどなり声がぶつけられた。

杏奈に対してどなったのは太田であった。


「そこの女!いい加減うるせーぞ!さっきから聞いてれば『博康さんの弟』、『博康さんの弟』って!俺が今試合しているのは『博康さんの弟』じゃねえ!桐谷浩紀っていう一人の男だ!わかったら黙ってろ!」


杏奈は急にどなられて固まってしまう。そして同時に浩紀に対してしていた自分の過ちにも気が顔を青くしたのであった。

コート上に浩紀は予想外の援護射撃に驚きながらも、自分の気持ちをわかってくれた人がいたことに涙が出そうになった。気合を入れて涙をこらえると「太田君、ありがとう」と短くお礼を言った。

その後の試合内容は、気力を取り戻し、試合に集中した浩紀と太田が前回の決勝戦を思い出させる様な一進一退の攻防を繰り広げ、観客をうならせる素晴らしい試合になった。


ーーー


「試合自体は最初の大きなリードが効いて、太田が勝ったんだよね」


そう言って杏奈は話を終えたのであった。


「浩紀、今度の三年の大会で本当の決着をつけようぜ!」


「望むところだ!今度は杏奈もちゃんと俺を見て応援してくれるだろうしね」


そう言って杏奈にウィンクをする浩紀であった。


「うん。もう浩紀の事見失わないから安心して!」


杏奈はそう言って浩紀に笑顔を向けたのであった。


「浩紀、今度は勝利の女神と呼び声の高いこの沙織様も応援に行ってあげるからね!」


「お兄ちゃんを元気づけるのは、可愛い妹の役目ですから!」


そう言って浩紀に迫る沙織と薫であった。


「だから、ヒロは私のヒロなんだからね!」


お花見の席で杏奈は同じフレーズを何度も叫ぶのであった。

間幕第三話:中三の時の試合の裏話をお読みいただきありがとうございます。


今回は中三の大会でのエピソードを書かせていただきました。

中学生杏奈の無自覚な浩紀への精神攻撃にちょっと書いててイラっとさせられました(笑)。

読者の皆さんはどう感じましたか?よかったら教えてください。


皆様からの応援(ブックマーク&評価&感想&アクション)を心よりお待ちしております。


明日からは外伝にて博康と香澄のエピソードを投稿させてもらいますので、よろしくお願いします。

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