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『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第1章「軽井沢の迷宮」

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第十一話:高原の朝食、コートに舞う火花【加筆&修正】(26年5月29日)

本日2本目の更新です!

軽井沢の二日目。

カーテンの隙間から差し込む眩しい朝の光と、高原特有の様々な種類の小鳥のさえずりで、浩紀は目を覚ました。

一階へ降りると、冷ややかな空気の中に焼き立てのパンとコーヒーの香りが満ちている。そこには既にエプロン姿の香澄と、手伝いをしている薫の姿があった。


「浩紀くん、おはよう。昨日はよく眠れた?」


「おはよう、香澄さん。……うん、涼しくて最高だったよ」


テーブルには、地元のパン屋で買ってきたばかりの厚切りトースト、新鮮な高原野菜、そして香ばしいベーコンエッグが並んでいく。

そこへ、寝癖を気にした様子の太田と敦子、そして最後に、どこか眠たげな杏奈と、対照的に朝から完璧な笑顔の沙織が合流した。


「杏奈、そんな眠たそうな顔してると浩紀君に嫌われちゃうわよ」


と香澄が冗談ぽくいうと、杏奈がそれに対して向きになってこたえた。


「だから、ヒロは単なる幼馴染なんだって言ってるでしょ!」


「はいはい。まあいいわ。」香澄はそう言うと博康の隣の席に座った。


その博康はみんなを見渡し、今日の日程をみんなに伝えた。


「みんな揃ったね。今日は午前中、近くのコートを予約してあるから。しっかり食べて体力をつけておいてくれよ。ちなみに午後はアウトレットに行くからな」


博康の爽やかな言葉に一同のテンションが上がる。

しかし、サラダを口に運ぶ杏奈の視線は、博康と親しげに話す姉・香澄と、浩紀に「あーん」の真似事をしてからかっている沙織の間を、行ったり来たりと忙しく動いていた。


ーーー


別荘からほど近いテニスコート。

高原の風は涼しいが、ネットを挟んで対峙する面々の間には、朝食時以上の熱気が立ち込めていた。


「よし、まずはダブルスで一試合しよう。浩紀・畑中(沙織)ペア対、博康・杏奈ペアだ」


太田の審判で試合が始まる。


「浩紀君、私テニスは自信あるんだ! 足、引っ張らないからね」


「ああ、頼りにしてるよ、畑中さん」


浩紀が沙織と軽く拳を合わせる。その光景を見た杏奈の瞳に、スッと嫉妬の色が混じった。


「博康お兄ちゃん。……絶対に勝ちましょうね。手加減なし!」


杏奈はあえて弾むような声で言うと、浩紀に見せつけるように博康へ拳を向けた。

博康がそれに気づき、優しく微笑んで拳を合わせる。


(……よかったな。アン、ずっとああやって兄貴と並びたかったんだよな)


ネット越しに、憧れのヒーローと触れ合って頬を輝かせる杏奈を見て、浩紀の胸がチクリと痛む。自分も沙織と触れ合っているはずなのに、視線は無意識に、博康の隣で「ヒロ、見てなさいよ」と言わんばかりに胸を張る幼馴染を追っていた。


試合が始まると、沙織の動きは軽快だった。

浩紀とのコンビネーションも驚くほど良く、ポイントを決めるたびに二人はハイタッチを交わす。


「やったね、浩紀君!」


「ナイスショット、畑中さん!」


笑顔で触れ合う二人。それを見るたびに、杏奈のラケットを握る手に力がこもる。


(……なによ、あんなに楽しそうにしちゃって。私との練習の時は、そんな顔しないくせに!)


大好きな博康とペアを組めている喜び。それと同じくらい、自分以外の女子と息を合わせて笑う浩紀への苛立ち。矛盾した二つの感情が、杏奈のプレーを攻撃的に変えていった。

浩紀が放った、わずかに浮いたチャンスボールを彼女は逃さなかった。


「そこっ!」


渾身の力で叩き込まれたスマッシュが、沙織の足元を抜ける。


「やるな、アン! ……でも畑中さんは素人だし、もう少し優しく打ってあげてもいいんじゃないか?」


浩紀が、隣で驚いている沙織を庇うように一歩前に出て言った。

その言葉を聞いた瞬間、杏奈の心の中で「ブチッ」と何かが切れる音がした。


(……は? 今、ヒロ、私じゃなくて畑中さんの味方をしたの……?)


今までなら、どんな時でも「ナイスショット!」と自分を褒めてくれたはずの浩紀。それが今、他の女のために自分に意見してきた。

浩紀が素人で同じチームの沙織をかばうことを頭では理解できるが、心がその事実を受け入れることを拒絶していた。

博康に「凄いね」と言われるよりも、浩紀が沙織を「庇った」ことへの怒りが、無意識に杏奈の胸を黒く染め上げていた。


「テニスは真剣勝負だもん。手加減なんて、相手に失礼でしょ?」


冷たく言い放つ杏奈の視線は、もう隣の博康ではなく、真っ直ぐに浩紀だけを射抜いていた。

そしてその様子を静かに薫が見ていた。

青空の下、黄色いボールが描く軌跡とは裏腹に、四人の想いはさらに泥沼へと引きずり込まれていった。

第11話を読んでいただき、ありがとうございます!


11話の最終チェックなどが終わり、投稿できる段階になったため、本日2回目の投稿を行いました。


念願の博康お兄ちゃんとペアを組めて、幸せ絶頂の杏奈ちゃん。

……のはずが、ヒロの「沙織を庇う一言」で一気に激おこモードに!

杏奈ちゃん、ちょっと情緒不安定やね(-_-;)


ヒロの無自覚な(?)反撃が光ったテニス回、楽しんでいただけたでしょうか。


少しでも「ヒロ、もっとやれ!」と思った方、あるいは「杏奈、素直になれよ(笑)」と悶絶した方、ぜひ【ブックマーク】や【評価(下の☆☆☆☆☆をポチッとな!)】で応援をいただけると嬉しいです!


【毎日19時ごろ】に更新していきますので、明日もお見逃しなく!

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