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【本編終了】『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第1章「軽井沢の迷宮」

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第十話:夕闇のBBQ、交錯する恋の火花【加筆&修正】(26年8月8日)

夕暮れ時、別荘の広いテラスではバーベキューの準備が整っていた。

博康と浩紀が手際よく火を起こし、女子たちが野菜を並べる。

炭がパチパチと音を立て、肉の焼ける香ばしい匂いが高原の澄んだ空気に広がっていく。

一見すると楽しげな夏の宴だが、網の上で弾ける火花のように、それぞれの感情が静かに、そして激しくぶつかり合っていた。


会話の口火を切ったのは、焼き上がったトウモロコシを頬張っていた沙織だった。


「ねえ、太田くん。ずっと気になってたんだけど、二人はいつから付き合ってるの? 何かきっかけとかあったの?」


その問いに、隣で恥ずかしそうに俯く敦子を気遣いながら、太田が自慢げに答えた。


「中三のバレンタインだな。こいつ、俺が他の女子から本命チョコを山ほどもらってるのを見て焦ったらしいんだ。『これ以上放っておいたら誰かに取られる!』って思って、その日の放課後に敦子の方から告白してきたんだよ」


「もう、太田くん、言わないでって言ったのに……」


顔を真っ赤にする敦子を見て、一同は「へぇー!」「敦子ちゃん、やるねぇ!」と盛り上がる。

だが、その話を横で聞いていた杏奈の心は、さらに激しくざわついた。


(……取られる前に、自分から告白……?)


今の自分の状況が、そのまま敦子の過去と重なって見えたからだ。

「ヒロは私の隣にいて当たり前」という、根拠のない自信が音を立てて崩れていく。

沙織や薫が、当たり前のように浩紀の隣を狙っている。

もし、浩紀に自分以外の「特別」ができてしまったら、私のこの場所はどうなるの?


(……いやいや! 何を焦ってるの、私。私が好きなのは博康お兄ちゃんなんだから。浩紀が誰かに取られたって、私には関係ないじゃない)


必死に自分を納得させようとするが、胸の奥のもやもやは晴れるどころか、黒く渦巻いていく。


そんな中、太田が今度はコーラのカップを片手に、禁断の質問を投げかけた。


「そういえば博康先輩と香澄先輩って、在学中付き合ってたって聞いたんですけど……。今も付き合ってるんですか?」


空気が一瞬、凍りついた。浩紀が慌てて「おい、太田!」と制止しようとしたが、香澄は穏やかな笑みを崩さずに答えた。


「今は付き合っていないわよ。私がわがままを言って、別れてもらったの。今は一人で自由に、色々なことに挑戦してみたいから」


凛とした声で語る香澄。

その潔さは、大学生らしい自立した大人の魅力を放っていた。

博康は、いつものように完璧な、誰もが憧れる生徒会長の頃そのままの笑顔で頷いた。

けれど、浩紀だけは見逃さなかった。

トングを握る兄の指先が、香澄の「別れてもらった」という言葉の瞬間に、白くなるほど強く握りしめられたことを。

遠くを見つめる兄の瞳に、一瞬だけ、救いようのない孤独がよぎったのを。


(……兄貴、まだ香澄さんのこと……)


そのやり取りを見ていた杏奈の瞳に、再び強い光が宿る。


(……今は、付き合ってない。お姉ちゃんが振ったんだ……)


それなら、今の博康お兄ちゃんはフリーということだ。

お姉ちゃんを追いかけて寂しそうな顔をしている彼を、私が癒してあげたい。

私なら、お姉ちゃんみたいに彼を一人にしたりしないのに。


「博康お兄ちゃん、これ、お肉焼けましたよ! 一番いい焼き加減です。食べませんか?」


杏奈は弾むような声で、甲斐甲斐しく博康の皿へ肉を運び、献身的に振る舞う。


「ありがとう、杏奈ちゃん。よく見てるね」


博康に優しく微笑みかけられ、杏奈の心は一気に浮きたった。

やっぱり、私のヒーローはこの人なんだ。

浩紀のことでもやもやするのは、きっとただの「幼馴染としての独占欲」に過ぎない。

そう結論づけて、自分を強く納得させた。


(……浩紀のことでもやもやするのは、ただの幼馴染としての独占欲。そう。そうに決まってる。だって私が好きなのは博康さんなんだから! ……私は大切な幼馴染のヒロを誰かにとられるのが嫌なだけ)


(……だって、そうでしょ? もしヒロに彼女ができたりしたら……今までみたいに、私の一番近くにいてくれなくなっちゃう。それはなんか嫌なの。ただ、それだけ……)


そう自分を強く言い聞かせ、自分を納得させるように、杏奈は博康に向けた笑顔をいっそう輝かせた。

だが、そんな杏奈の献身的な姿を、浩紀は無言で見つめていた。

そしてその浩紀の横顔を、チャンスを逃すまいと熱っぽく射抜く沙織の瞳と、浩紀の抱える痛みを「私だけが分かってあげられる」と確信し、慈愛に満ちた眼差しを向ける薫。

絡み合う四角関係の視線の熱が、やがて逃れられない「修羅場」へと繋がっていくことを、

まだ誰も気づいていなかった。

第10話を読んでいただき、ありがとうございます!


今回は太田くんのナイスなアシストで、杏奈の考えも変わるか……!?

と思いきや、次の質問のせいで杏奈の「博康お兄ちゃん愛」が逆に強まっちゃいましたね(笑)。

今回の太田くんの評価はプラマイゼロ、むしろマーイですね!(-_-;)


少しでも「先が気になる!」と思ってくれた方、あるいは「太田、余計なことを……!」と物申したい方(笑)、ぜひ【ブックマーク】や【評価(下の☆☆☆☆☆をポチッとな!)】で応援してください。


毎日、19時ごろ(予定)に更新していきますので、明日もお見逃しなく!

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― 新着の感想 ―
Xから来ました! まず、ブックマークと評価をさせていただきました! 今回のお話は、それぞれの恋愛感情や思惑が複雑に絡み合っていて、とても面白かったです。特に杏奈ちゃんの心理描写が印象的でした。 …
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