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【本編終了】『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第9章:チョコレート白書

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第9章(最終話) 第六話:特別な朝、二人だけの誓い

9章の最終話になります。浩紀と杏奈の時別な時間をお読みください。

この話が終わりますと残す本編はエピローグのみ。是非明日もお見逃しなく!

品川の空が、淡いブルーから黄金色へと溶け始め、ホテルの部屋に静かな朝が訪れた。

遮光カーテンの隙間から差し込む一筋の光が、昨日までの迷いを洗い流すように、二人の眠るベッドを優しく照らしている。

浩紀は、腕の中で目を覚ました杏奈の柔らかな体温と、規則正しい寝息を感じながら、その髪をそっと撫でた。


「……ん……ヒロ」


杏奈がゆっくりと瞼を持ち上げ、至近距離で浩紀と目が合う。彼女の頬は瞬く間に桜色に染まったが、その瞳は、昨日の夜を経て迷いが完全に消えたかのように澄み渡っていた。


「おはよう、アン」


「おはよう、ヒロ。……ねぇ、ヒロ。昨日、博康さんのことを聞いたでしょ? 私、あの時ちゃんと伝えきれなかったことがあったから、今、言ってもいい?」


杏奈はシーツの中から手を伸ばし、浩紀の胸にそっと置いた。その手の震えは、緊張ではなく、決意によるものだと浩紀には分かった。


「私にとって、ヒロがかっこいいとか、勉強ができるとか、スポーツ万能でみんなに気配りができるなんてことは、全部ただの副産物なの。もちろん素敵だとは思うけど、それが理由でヒロを選んだわけじゃないのよ」


杏奈は一度言葉を切り、浩紀の手を強く握りしめた。


「子供の頃からずっと私の隣にいて、私が泣いている時に一番に気づいて支えてくれた。それに……私が博康さんに告白しようとしたときも、自分の気持ちに蓋をしてまで、私のために全力で応援してくれたでしょ?」


「アン……。それは……」


浩紀は言葉を詰まらせた。あの日、自分の心を殺して、泣きたいのを堪えながら杏奈の背中を押した記憶。それがずっと、自分の「弱さ」であり、情けなさだと思っていた。だが、杏奈は慈しむような微笑みを浮かべて首を振った。


「そんな風に、自分を後回しにしてでも私を大切にしてくれた……。そんな『私のヒロ』であることが、私にとって何よりも重要で、一番大切なことなの。博康さんみたいに、いくら完璧でみんなが憧れるような人でも、私は憧れることはあっても『ずっと一緒にいたい』と思うのはヒロだけ。どんなに立派な人が現れても、私の隣にいていいのはヒロだけなの」


杏奈は浩紀の首に腕を回し、その耳元で誓うように囁いた。                

「そうね、月に例えるなら……博康さんはね、満月みたいに、遠くにいてもたくさんの人を惹きつけるし、みんなを等しく照らせる月だと思う。でも、私はそんな大きな光が欲しいわけじゃないの」


彼女は三日月の指輪が輝く手で胸元のペンダントを握りしめ、その銀の三日月を浩紀の心臓に近い場所に押し当てた。


「私は……このペンダントと同じ。形は不揃いで、どこか不器用で。でも、たとえ満月の様に強い光でなくても私一人だけに、一生懸命その光を向けてくれる……そんな三日月みたいなヒロがいいの。ヒロじゃなきゃ、嫌なの」


「だから……どんなことがあっても、私がヒロから離れることはないよ。これからは私に、ヒロの弱いところも全部見せてほしい。かっこ悪いヒロも、悩んでるヒロも、全部、私が愛するヒロなんだから」


それは、浩紀が人生の半分以上をかけて、最も聞きたかった言葉だった。 あの日、必死に隠したはずの「蓋をした気持ち」を杏奈は分かってくれていた。

そして、それを「ヒロの欠点」ではなく「自分への深い愛」として受け取ってくれていた。

その事実が、浩紀を長年縛り付けていた劣等感を、一気に溶かしていった。


「……アン。ありがとう。俺……ずっと怖かったんだ。アンのために無理して笑ってた自分が、いつか君に見透かされて、愛想を尽かされるんじゃないかって。でも、今のアンの言葉で、ようやく自分を誇りに思える」


浩紀は、杏奈を折れそうなほど強く抱きしめた。


「俺にとっても、アンは同じだ。……博康兄さんへの対抗心でも、幼馴染だからでもない。アンだから、俺は隣にいたい。これからは、何も隠さない。誰にも惑わされない。全部さらけ出して、一緒に前に進もう。……愛してる、アン」


「……うん。私も愛してる、ヒロ」


二人は、どちらからともなく深い口づけを交わした。

それは、昨日までの「確認」のためのキスではなく、共に歩む「未来」のための誓いの儀式だった。

幼馴染という殻を脱ぎ捨て、互いの魂の形を理解し、受け入れ合った二人。

品川の街が本格的に動き出し、窓の外に日常の音が響き始める。

けれど、その日常は、昨日までとは全く違う、輝かしい世界に変わっていた。

二人はシーツから抜け出し、新しい一日を始めるために立ち上がる。

それは、一対の男と女として、迷いなく手を携えて生きていく決意の朝だった。


第9章第6話をお読みいただきありがとうございます。


この話では特別な朝を迎えた二人が新たな決意をして前へと進んで行こうとする場面を描かせていただきました。いかがでしたでしょうか?

本話話が第9章の最終話であり、本編は、明日投稿する本編エピローグを残すのみとなります。

是非明日の投稿もご覧ください!

また、ブックマーク及び【評価☆☆☆☆☆】での応援をよろしくお願いします。


明日も夜19時15分に投稿を行いますのでよろしくお願いします。

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