第9章 第一話:沙織、恋と友情のあいだ
風邪でダウンしていましたが、だいぶ体調が戻ってきましたので、気を取り直して、頑張って第9章の投稿を始めていきます。ぜひ、ブックマークと評価で応援していただけると、作者の体調がさらによくなると思いますので、ご協力のほどを(笑)
2月14日、バレンタインデー。
放課後の生徒会室には、冬の柔らかな夕日が差し込んでいた。
生徒会長である浩紀のデスクの脇には、すでに大きな手提げ袋が置かれている。
その中には、今日一日で女子生徒たちから贈られた、色とりどりのラッピングに包まれたチョコレートが山のように詰まっていた。
「はい、会長! お疲れサマー!」
隣の席から、副会長の沙織が勢いよく身を乗り出してきた。
彼女は学園屈指の陽キャで、その明るい性格から男女問わず人気が高い。
今日も廊下を歩けば「沙織ー!」「チョコくれよ!」とあちこちから声がかかる、まさに学校のヒロインの一人だ。
沙織は浩紀の足元にある手提げ袋を覗き込むと、ニマニマとからかうような笑みを浮かべた。
「またまた、たーくさんもらったね! 流石は我らが生徒会長。これ、全部食べたら鼻血出ちゃうんじゃない?」
「……勘弁してくれよ。ありがたいけど、整理するだけでも一苦労だよ」
浩紀が苦笑いしながら書類をまとめると、沙織は自分のカバンから、ひと際ポップで可愛らしくラッピングされた箱を取り出した。
「はい、これ! 私から浩紀への『特別』な一品。……しっかり味わいなさいよ?」
「お、沙織……。サンキュ。俺に、でいいのか?」
「当たり前じゃない! 勘違いしないでよね、なんて今さら言わないわよ? あんただって分かってるでしょ? 私は杏奈からあんたを奪い取るって、学校中に堂々と宣言してるんだからね!」
沙織は椅子をくるりと回転させ、腰に手を当てて不敵に笑ってみせた。
彼女の好意は、隠すことも濁すこともない、真夏の太陽のように強く真っ直ぐなものだ。
「でも、今回は特別に杏奈に譲ってあげる! せっかくの品川だもんね。会長、気合入れなさいよ。……あ、でもこれだけは忘れないで」
沙織は一歩歩み寄り、浩紀の目を真っ直ぐに見据えた。
その瞳には、ライバルとしての誇りと、親友への想いが同居していた。
「杏奈が少しでも浩紀を不安にさせたら、その隙に私が浩紀をかっさらっていくから! ……そのこと、ちゃんと杏奈に伝えておいてよね!」
「はは……。わかった。杏奈にしっかり伝えておくよ」
「よろしい! さて、私はこれから廊下で待ってる連中にチョコ配りに行ってくるわ。みんなが『よこせ』ってうるさいのよ。品川、楽しんできなさいよ! 湿っぽくしてたら、月曜日の会議で吊るし上げるからね!」
そう言って、沙織はカバンいっぱいのチョコを抱え、弾けるような笑い声と共に生徒会室を飛び出していった。
外からはすぐに「沙織ー!」「待ってたぞ!」という友人たちの賑やかな声が響いてくる。
彼女のカラッとした明るい激励は、浩紀の中にあった緊張を、心地よい高揚感へと変えてくれた。
しかし、その直後。 賑やかな沙織の声が遠ざかった生徒会室に、音もなく滑り込んできた影があった。
「……随分と、楽しそうですね。お兄ちゃん」
振り向くと、そこには夕闇を背負った薫が、静かに佇んでいた。
第9章第一話をお読みいただき、ありがとうございます。
この第9章をもって第2部が終了となります。
さらに、予定ではこの章をもって本編を終えるつもりです。
この9章ではバレンタインについて書いていきます。
沙織の爽やかなチョコの渡し方に対して薫はどのような方法で来るのか明日をお楽しみ。
あと気が付かれた方がいるかはわかりませんが、第1話の題名は昔、竹野内豊さんが主演をした映画の題名からヒントを得てつけました。
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明日も19時15分に投稿予定です。よろしくお願いします。




