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【本編終了】『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第8章:絆の証明

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第8章 第十一話:奪われる特等席、湧き上がる独占欲

総合評価ポイントが1000PTを達成することができました。これも御応援いただいた皆様のおかげです。ありがとうございました。

テニス部の厳しい練習が終わり、夕闇が校庭を包み込む頃。

浩紀と杏奈は、心地よい疲れを感じながら二人で並んで校門へと向かっていた。


「あー、今日のサーブ練習、きつかったね」


「はは、アンは頑張りすぎなんだよ。でも、その分上達も早いけどさ」


そんな、いつも通りの恋人同士の会話。

浩紀の心は、杏奈という光によって平穏に保たれているはずだった。

しかし、その平穏は、校門の先に見えた二人の影によって一瞬で崩れ去る。


「……あれ? 薫じゃない?」


杏奈の言葉に、浩紀の視線が吸い寄せられた。

少し先を歩く、薫の姿。

けれど、いつもと違うのは、その隣にテニス部1年の期待の新星、佐々木が並んでいることだった。

佐々木は端正な顔立ちで女子からの人気も高く、今、薫の顔を覗き込んで楽しそうに笑いかけている。


「へえ……。あの子、いい相手見つけたのかしら。お似合いじゃない?」


杏奈が少し感心したように呟き、それから悪戯っぽく浩紀の顔を覗き込んだ。


「ねえ、ヒロ。今まであんなに慕ってくれてた可愛い女の子が、他の男の子にとられちゃうかも、ってなると……やっぱり、ちょっとは寂しい?」


「……っ。な、何言ってるんだよ。俺にはアンがいるんだから、寂しくなんかないよ。薫ちゃんに良い相手ができるなら、兄貴分として応援してあげなきゃな」


浩紀は動揺を隠すように、無理やり苦笑いを作って答えた。

口から出たのは、100点満点の正論。

けれど、その言葉とは裏腹に、浩紀の心臓は激しく、不快な音を立てて波打っていた。


(……応援? おれが?)


声に出すことさえ憚られる、醜い問いかけが脳裏を支配する。

脳裏に、あの資料室の光景が、望みもしないのに鮮やかに蘇る。

自分だけが見ることを許された、薫のあの白く綺麗な身体。

自分だけを求めて震えていた、あの柔らかな指先と熱。

他の誰も知らない、自分だけが知っている「女」としての薫。


(……あの身体も、あの感触も、俺だけのものだったはずなのに)


その瞬間、心臓の奥底からせり上がってきたどす黒い独占欲に、浩紀は激しい衝撃を受けた。


(ハッ、俺は何を考えてるんだ……! 俺にはアンがいるじゃないか!)


浩紀は必死に心の中で自分を叱りつけ、邪悪な思考を否定した。

隣には、自分を信じ、一点の曇りもない笑顔で寄り添ってくれる杏奈がいる。

彼女こそが自分のすべてであり、守るべき唯一の存在なのだ。

けれど、一度自覚してしまった感情は、そう簡単には消えてくれなかった。


(……でも。あの日、薫ちゃんは『俺に』抱いてほしいと言った。あの子をあんな顔にさせたのは、俺だけだったはずだ)


否定すればするほど、記憶の断片が熱を帯びて疼き出す。

佐々木が薫の肩に手を伸ばそうとするたびに、浩紀の指先は無意識に、奪い返すように強く握りしめられる。


(あんな奴に奪われるぐらいなら……)


「……ヒロ? ぼーっとして、どうしたの?」


「……あ、いや。なんでもない。ちょっと練習で疲れてるのかな」


杏奈の優しい声に、浩紀はさらに激しい罪悪感を覚えた。


(俺は何を考えていたんだ……。俺にはこんなにも自分のことを大切にしてくれる杏奈がいてくれるのに)


隣にいる最愛の人に愛を誓いながら、頭の片隅では、他の男と歩く恋人の妹の「肌の感触」を思い出して、手放したくないと願っている自分。

薫は結局、一度もこちらを振り返らなかった。

校門を出て、佐々木と並んで駅へと向かう彼女の後ろ姿が、今はひどく遠く、そして恐ろしいほどに艶っぽく見えた。

その夜、浩紀は自室で一人、ベッドに倒れ込んだ。

杏奈を愛している。

それは真実だ。

けれど、胸の奥に残った「もやもや」とした不快感は、霧のようにじわじわと彼の理性を侵食していく。


(俺はあの日、彼女を拒絶した。……なら、彼女が誰とどこへ行こうと、俺には関係ないはずなのに)


自分でも制御できない、醜い独占欲。

それは、薫が仕掛けた「間接的な毒」が、浩紀の心の中で完璧な結晶となった証拠だった。


(……ダメだ。このままだと、俺は本当におかしくなる……)


天井を見上げる浩紀の瞳には、かつての清々しい「王子様」の面影はなかった。

暗闇の中、ただひたすらに、あの日の薫の体温が、掌の中で疼き続けていた。


本日は第8章第11話をお読みいただきありがとうございます。


本日なんと総合評価ポイントが一つの目標にしていた1000PTを達成することができました。これもひとえに応援いただいた皆様のおかげです。

今後も一話一話誠心誠意投稿させていただきますので、今後ともよろしくお願いします。また、まだブックマーク&評価をされていない読者さまがいらっしゃいましたら、ぜひ応援いただけると嬉しいです。


明日も19時15分頃に投稿する予定ですので、よろしくお願いします。

ちなみに明日は第8章の最終話になります。ぜひお楽しみに。

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