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【本編終了】『幼馴染の境界線 ―僕の祈りと、君の憧れ―』  作者: サッサン
第8章:絆の証明

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第8章 第六話:気づかされた過ち

放課後のA組の教室。

沙織は浩紀に声をかけた。


「ねえ、浩紀。あんた、最近の自分と杏奈や薫との関係をどう思ってるの?」


「……どうって、普通だよ。杏奈との時間も、薫ちゃんへのサポートも、ちゃんと両立させてるつもりだけど」


浩紀のその「優等生すぎる回答」に、沙織は短く、吐き捨てるようにため息をついた。


「それが一番危ないって言ってるのよ。あんた、薫ちゃんに頼られるのを『妹だから』って理由で全部受け入れてるけど、それ、杏奈に対しての裏切りだって自覚ある?」


「裏切り……? そんな大げさな。杏奈だって、薫ちゃんが一緒なのは分かってくれてるし、何よりアンに頼まれていることだし……」


「杏奈の『分かってる』『頼んでる』は、あんたを信じてるからでしょ。でもね、浩紀。あんたが薫ちゃんに与えている『安らぎ』や『甘え』は、本来杏奈にだけ向けるべきものなのよ。あんたは『妹』という免罪符に甘えて、自分の恋人に対する感覚を麻痺させてるだけ」


沙織は浩紀の胸元を指差し、言葉を続けた。


「優しさは、時として諸刃の剣よ。あんたが薫ちゃんを突き放さないのは、優しさじゃない。自分が悪者になりたくないだけの、ただの逃げよ。杏奈は、あんたの隣に立つために、必死でその『麻痺していく感覚』に耐えれるように慣れようとしているの。……感覚を麻痺させないと、あんたの隣に立っていられないのかもしれないって、考えたことはないの?」


「…………」


沙織の言葉は、浩紀が心の奥底に蓋をしていた「違和感」を、容赦なく暴き立てた。

自分が薫に感じていた、あの「重荷を下ろせる感覚」。

それは杏奈を愛するがゆえの疲労から逃げるための、卑怯な逃避場所だったのではないか。

その時、教室のドアが勢いよく開いた。


「ヒロ、お待たせ!ホームルーム、長引いちゃってごめんね」


隣のクラスから駆けつけてきた杏奈は、いつものように太陽のような笑顔を見せ、浩紀の腕を掴んだ。


「ううん、大丈夫。お疲れ様、アン」


「ねえ、今日の帰りも、薫と一緒に帰るんでしょ? きっと、私達と一緒に帰るために、薫はもう準備して待ってると思うよ」


杏奈が「三人の帰り道」を当然のこととして口にする。

その健気なまでの「物分りの良さ」を見た瞬間、浩紀の脳裏に沙織の『感覚を麻痺させないと、隣に立っていられないのかもしれない』という言葉が鮮烈に蘇った。


(……アンに、こんな顔をさせちゃダメだ)


目が覚めたような感覚。

浩紀は杏奈の肩を抱き寄せると、沙織の方を向いていたずらっぽく笑った。


「今日は部活動も生徒会の仕事もないし……たまには二人だけで寄り道デートして帰ろうよ。アン、いいだろ?」


「えっ……? でも、薫が待ってるし……」


「大丈夫。薫ちゃんのことは、沙織にエスコートをお願いするから。沙織、いいよね?」


「はあ!? なんで私が……」


沙織は呆れたように眉を寄せたが、杏奈のぱあっと明るくなった表情を見て、小さく息をついた。


「……まあ、いいわよ。あんたたちのノロケに付き合わされるよりはマシだし。薫ちゃんには私から言っておくわ。これは二人への貸しだからね」


「ありがとう! 行こう、アン。今日はあそこのカフェ、寄ってみないか?」


「うんっ! 行きたい!」


浩紀に連れられ、弾むような足取りで教室を出ていく杏奈。

その背中を見送りながら、沙織は「……最初からそうしなさいよ、バカ」と独り言をこぼし、一年生のフロアへと向かった。


ーーー


一方、一年生の教室前。

沙織から「今日は二人はデートだから、私が代わりに駅まで送るわ」と告げられた薫は、一瞬だけ、その完璧な微笑みを凍りつかせた。


「……そうですか。わざわざ、ありがとうございます、沙織さん」


並んで歩く帰り道、沙織はそれとなく釘を刺すように、昼休みの話を薫に聞かせた。


「浩紀も、たまには二人きりになりたいって言ってたわよ。やっぱり、恋人には恋人だけの時間が必要だものね。……薫ちゃんも、いい加減独り立ちしなさいよ?」


薫は「そうですね」と殊勝に頷きながら、内心では激しい焦燥と、計算外の事態への苛立ちを感じていた。


(沙織さん……。余計なことをしてくれましたね)


沙織の指摘によって、浩紀が「理性」を取り戻し、自分に寄りかかっていた「重み」を引き剥がそうとしている。このままでは、せっかく浩紀の中に侵食した「安らぎの場所」としての私の存在が、全て杏奈お姉ちゃんに取り返されてしまう。


(……計画の修正が必要です。お兄ちゃんが私を求めるのは、お姉ちゃんの隣で『疲れている』時だけ。……なら、もっともっと、お兄ちゃんを疲れさせてあげないと)


夕闇に溶けていく沙織の背中を見つめながら、薫の瞳には、以前よりも深く、そして暗い執着の光が宿っていた。


第8章第6話をお読みいただきありがとうございます。


この話では沙織が大活躍でしたね。いつも二人が危ういところで助けてくれる沙織はホントに素敵な女の子ですね。

これによって計画が崩れた薫が新たな一手を打ってきそうな予感。

今後の話から目を離さないでくださいね。


この物語を気にってくださっている方、また、今回の話を読んで「沙織ちゃん素敵!」「薫ちゃん怖いよ」と思ってしまった方、まさに私の希望通りの反応です。ここは私の読みを讃えて、是非ブックマーク&評価☆にて応援をよろしくお願いします。

ちなみに現在、総合評価942PTとなっており、あと約60PTで1000PT達成となります。

是非1000PTを達成させてやってください。

その暁には以前の座談会で書いた通り「新たな座談会」を開かせていただきます。

是非ご協力のほどよろしくお願いします。


明日も19時15分ごろに投稿する予定ですので、よろしくお願いします。


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