叫喚地獄 5
人造階層、似非地獄。現世の情景を精巧に模倣したその隔離領域は、鬱蒼とした深い森の樹木群によって周囲を完全に包み込まれている。秋の夕暮れを追憶させる鈴虫の羽擦れ音が、吹き抜ける冷たい夜風に揺れる葉のざわめきと交じり合い、聴覚を甚だしく乱す不協和音を現出させていた。
湿気を帯びた土の匂いと腐朽した植物の香りが立ち込める中、その空間における最高標高地点に位置する山頂には、高さ二メートルに及ぶ無機質な鉄柵が、わずかな隙間すら許さず円環状に周囲を隔離している。
網目状に交差する冷たい鋼線の表面には、赤錆にまみれた鋭利な有刺鉄線が不規則な軌道で張り巡らされており、外敵の侵入を徹底的に拒絶する威圧感を放っていた。その堅牢な檻の最奥、中心点には等間隔にそびえ立つ六本の樹木が存在し、古びた注連縄によって六角形の呪術的な結界を形成している。
どこか歪な神聖さを主張する意匠のさらに内側、静寂の只中に置かれているのは、長年の風雨に晒されたが如く全身を錆に侵食された巨大な箱。朽ちかけた木材と酸化した金属の匂いが入り混じるその箱の上に、一人の女が悠然と腰を下ろしている。
「あらら……捕まっちゃったのお? フィデスちゃん……ドジっ子やねえ」
茶髪のウルフカット、左耳の軟骨を貫く十字架のインダストリアルピアスが一本。緑のリブニットに黒のタイトスカートを着こなした、関西圏の訛りが特徴的な女性。外見だけなら二十代後半から三十代前半ほどに映るが、その大人びた雰囲気からして実年齢はもっと高いのかもしれない。微笑むとまるで閉じているように見えるほど細い両目がどこか妖しげで艷やかな、その女。
生前も死後も、時代に応じて名前と容姿を幾度も変え、現在においてはシスター・カタリナと呼ばれる彼女は、眼前の虚空に穿たれた『丸穴』を、細められた眼差しで覗き込んでいた。次元を切り裂いて形成されたその穴の向こう側には、ここから遠く離れた衆合地獄の酩帝街に位置する、寂れた旅館の一室が克明に映し出されている。
「……ふふっ。やあっと見つけた……♪」
自身の血肉に等しく紅い唇の輪郭をゆっくりとなぞりながら、彼女は隠し切れない愉悦の響きを伴う独り言を漏らした。細く長い視線は、次元の断層を隔てた穴の向こう側に立つ、白金色の髪を持つ少女の姿へと真っ直ぐに固定されている。
滅三川ジェーン瞳。滅亡の未来を変えるため、今日まで永きに渡り拷问教會の追跡を躱し続け、歴史に裏側に潜んでいた『くだん』の怪異。
だがその境遇は滅三川だけのものではない。拷问教會の隠れた指導者とも呼ばれるシスター・カタリナもまた、これまで地獄の至るところで暗躍を続けてきた。自身の異能の発動条件のこともあり、カタリナはあらゆる階層のあらゆる場所に自ら出向き、可能な限りその足で踏破してきた。
だからこそ当然の事実として、カタリナは九十九達が現在身を隠している旅館の存在をも、既知の情報として把握していた。フィデスとの定期連絡が途絶えた時点で、カタリナはすぐさま酩帝街において彼女達の潜伏先と成り得るであろう場所に丸穴を出現させ、片っ端からチェックして回った。
そうして見事、引き当てたのだ。まさに今、芥川九十九が今後の指針を決定づけ、明確な意志を宣言しようとするその決定的瞬間。カタリナは誰にも悟られることのない特等席から、彼女らの運命の分岐点を密かに観察していたのである。
「探してたよお……あの日のお礼がしたくって。だってヒトミちゃんは、うちの恩人だもん。当然だよねえ……?」
未だ語られた事の無い過去の因縁を反芻する女は、どこか愉悦を噛み締めるような表情を浮かべながら、ゆらりと虚空の穴の向こう側へ向けて白く細い腕を差し伸ばす。その緩慢な動作と呼応して、彼女の背後に広がる空間そのものが不自然な捻れを生じさせ、次元の亀裂から黒い触手が這い出してきた。カタリナの使役する『禁后』の異能、自律的な意志を備えた黒髪の群れが、生々しい蠢動を伴って獲物へと照準を合わせる。
「ほうら……こっちにおいでえ……――――」
無数の黒い触肢が、狙い定めた滅三川の無防備な背中へ向けて静かに躙り寄る――その刹那の出来事であった。空間の穴から視認できる景色の片隅、滅三川の傍らで深い沈黙を保っていた巨躯の存在。シスター・ドロテアの顔面を覆っていた漆黒のサングラスが、不意に滑り落ちたのだ。そこから露出したのは、黄金色に輝く禍々しい魔眼。
次元という絶対的な壁を隔てているにも関わらず、ドロテアの放つ視線は迷いなく、真っ直ぐにカタリナの細められた瞳と正面から激突した――次の瞬間。
「――――……ッ!? ぐッ……あ……! 痛ッ……たァ~……!?」
脳髄を直接灼熱の鉄杭で貫かれたかのような激痛が、カタリナの全神経に襲いかかる。網膜の裏側で青白い火花が爆ぜ、視神経が千切れ飛ぶような衝撃に、彼女は堪らず腰掛けていた箱からずり落ち、冷たい土の地面に両膝を激しく打ち付ける。
「くううんっ……! やっぱだめかあ~……! オボロちゃんの『邪視』……相変わらず容赦ないねえ。うちの異能と相性最悪やわあ……」
カタリナが使役する『丸穴』の異能は、複数の発動条件を満たした座標に丸穴を出現させ、空間同士を繋げるという能力。丸穴を通じて空間を行き来する事が出来るわけだが、ただしカタリナ本人は丸穴を直接通ることができない。つまり自分以外の任意の対象に丸穴を通らせるには、対象が自発的あるいは偶発的に穴に落ちるか、そうなるように自分以外の何かを利用して誘導してやる必要がある。
とにかくその準備段階として一度、カタリナは目標地点の状況を正確に視認しなければならない。カタリナ自身は丸穴を通ることはできないが、穴の向こう側の景色を視ることはできる。その場所のどこになら丸穴を開けられる余白が存在するのか、空間の把握が必要になるわけだ。
対するドロテアの異能『邪視』は、視覚を通じて対象の精神を『狂気』によって捕食し、あらゆる行動を強制的に凍結させる。加えてドロテアには、あらゆる視線を感知する特異な機能が備わっていた。
異空間の彼方から向けられた視線にさえドロテアは殆ど本能的に感知し、その視線に対して『邪視』を合わせることができる。即ち、カタリナにとってドロテアは最大の天敵だと言えた。
「いてて……はあ。もお……しょうがないにゃあ……」
異空間越しに『邪視』を食らったカタリナはその瞬間、痛覚を遮断しているはずの肉体にさえ無関係に激痛を齎す『狂気』によって、異能の発動を中断させられる。彼女の瞳からは鮮血が涙のように零れ落ち、地面を汚していった。
破滅的な苦痛が脳内を支配している現状において、しかし彼女の口元は依然として歪な弧を描き、薄ら笑いの形を保ち続けている。
「……聞こえてるよねえ? フィデスちゃん」
ゆっくりと顔を上げた彼女はおもむろに、自身の聴覚器官の深部に埋め込まれた人造呪物へと意識を集中させる。『地獄耳』と称されるその機構を通じて、彼女は次元の彼方に縛り付けられている同胞へと、一方的な言葉の通信を投げかけた。
「この状況、なんとかするには……アレを起動するしか無いけど。覚悟はできてるう? 後で恨まないでよねえ? うふふ……」
◆
同時刻。
旅館の薄暗い一室で、芥川九十九がこの先の未来における行動指針を決定づけた、まさにその瞬間。縛られたまま床板に転がされていたシスター・フィデスはその実、気を失っているふりをしながら、自身の脳波に直接響く音声を静かに咀嚼していた。
「(……うるせえナ。いいからさっさとヤレヨ……)」
体内に縫い止められた呪物を媒介として応じ、フィデスは堅く閉じた瞼の裏側で憎悪の焔を燃え上がらせる。彼女の灼眼に宿る熱を帯びたその呪念は、眼前に立つ九十九達の無防備な背中へと、誰にも悟られることなく密かに注ぎ込まれていたのである。
◆
「羅刹王を説得する。その為には、如月真宵を仲間に引き入れる必要がある」
果たして結論は出た。この先の方針を『偽物の悪魔』が決定したその瞬間、因果の法則は変容を遂げ、世界には全く新しい未来の軌跡が産声を上げる。既存の運命の枠組みを破壊し、未だ誰も観測したことのない未知の可能性の枝葉が、無限の広がりを持って宇宙の深淵へと伸びていく。
その産まれる瞬間、世界のシステムそのものが再構築される壮大な変動の余波を、滅三川ジェーン瞳は今正に自身の特異な視覚を通して観測していた。その深紫が見据える未来の景色では、光の奔流となって分岐し交差する無数の因果の糸が鮮明に映し出されている――
「(……未来の軌跡が変わった。芥川九十九が方針を固めたからか。でも……ちょっと待って。これ……この景色……!)」
――しかし。その先に視えた光景は、およそ彼女の期待する希望とはかけ離れたものであった。
「(くそ……やっぱりこうなるのか……! あーしが表に出ることを決めた時点で、こうなるリスクは承知の上だったけど……)」
彼女の認識領域を埋め尽くすのは、一面が漆黒に染まり上がった完全なる終焉の具現。視覚を介さず直接網膜の裏側に焼き付けられた絶望の景色に、滅三川の全身から血の気が引き、指先が微かに痙攣を始める。
「(でも……今から!? ちょっと展開早すぎない!? まさかあいつら……千年前からずっと諦めてなかったってこと……? は……きしょ……マジかよあいつ……『恐怖の大王』……あのクソ怪異……!)」
恐怖の大王。その冒涜的な異形が地獄のあらゆる概念を、そこに生きる者達の叫びごと、骨の髄まで咀嚼し、嚥下していく。街が溶け、空が剥がれ落ち、すべての物語が彼女の胃袋という名の虚無へ吸い込まれていく。血と腐肉の混ざり合ったような悍ましい熱気が、予知という形で滅三川の感覚を直接蹂躙した。
「嗚呼……本当にオメデタイ連中だナ……」
その最中のことである。それは地の底から這い上がってきたような不吉な振動を伴い、空間の至る所へと伝播していく。もはや人間の声帯から発せられたとは到底思えぬ、精神の深奥を汚染するような粘着質の悪意をたっぷりと孕んだ――名状し難い魔女の声。
この場に居る全員の視線が、悍ましく濁った声音の震源地へと向かう。その正体は言うまでもなく、部屋の隅に転がされていたシスター・フィデスの口腔から漏れ出たものである。
「……予定変更ダ。キサマを回収すル……『くだん』の怪異……!」
呪詛を漏らすフィデスは直後、その背部が内側から何かに押し上げられるように、異様な膨張を始めていた。厳重に拘束され身動きひとつ取れないはずの彼女の肉体から、およそ正常な生命活動とは思えぬ異様な高熱が突如として噴き出し始める。
周囲に充満していた甘ったるいアルコールの香りが、肺を焼くような不快な硫黄の臭いへと急速に変質していく。限界まで引き延ばされた皮膚の下では、まるで別の生物が蠢いているかのような悍ましい躍動が繰り返され、生々しい肉の軋む音がこの場の空気を切り裂いた。
「自爆……!?」
その異形を目の当たりにした瞬間、これから起きようとしている事態を察知した九十九の咄嗟の叫び。殆ど反射的に、彼女は傍に居た一ノ瀬ちりの華奢な身体を抱き締める。その上から更に覆い被さるようにして、黄昏愛が九十九とちりの二人をまとめて抱き寄せ、自らの皮膚を異能によって硬質化させていった。
「チッ……! この狸野郎がア……!」
それまで沈黙を保ち、カタリナの介入を警戒して周囲に視線を走らせていたドロテアが直後弾けるように立ち上がり、その黄金に輝く『邪視』の瞳で真っ直ぐにフィデスを捉える。その瞬間、狂気に至る呪いによってその目から血涙を流すフィデスであったが――しかし、その肉体の膨張は止まらない。
「ククッ……バァカ。テメェの『邪視』が対象に出来るのは視界に映った一人ダケ……そんな目でいくらアタシを睨み付けたところデ……アタシの意思とは無関係に起動するコイツは止められねェヨ……」
今日に至るまでのおよそ一万年という月日は、フィデス達に『净罪』を幾度となく繰り返させ、その身に改造を施すには充分過ぎる猶予だった。あらゆる状況を想定し、フィデスの肉体には夥しい数のメスが入れられている。即ち、増設した人造呪物は地獄耳だけではない。その身に刻まれた奥の手、その内の一つがカタリナによって遠隔起動する。
次の瞬間、フィデスを中心に拡散された極大の閃光によって、周囲の景色は完全に掻き消されてしまった。網膜を直接白熱の火箸で抉り取られるかのような、視覚器官の許容量を遥かに超えた圧倒的な白一色の暴力。一切の陰影を奪い去る光の奔流が、空間に存在するすべての輪郭を無慈悲に漂白していく。
「しまった……催涙ガス……!?」
そしてそれは、単なる光と熱の解放を目的とした爆発ではなかった。直後に眼球と粘膜を容赦なく焼き払う、高濃度の催涙ガスが室内を満たす。
「がァ……ッ!? ぐッ……クソ……やっちまったッ……!」
視界の保護を目的としたドロテアのサングラスは僅かな隙間から侵入した劇物によって何の役にも立たず、彼女から強制的に視力を奪い去る。
目の粘膜を直接焼かれる激痛に誰もが目蓋を閉じざるを得ない、その致命的な一瞬の空白。それを縫うようにして、部屋の壁、床、天井のあらゆる隙間から、粘着液の絡みつくような不快な水音を立てて、夥しい量の黒い毛髪が溢れ出してきた。
それはかつて九十九たちが遭遇した『禁后』の残滓。実体を持った呪縛の質量が、まるで意志を持つ無数の触手のように部屋中を蠢き回る。それは行動不能に陥った滅三川の四肢へ無慈悲に絡みつき、獲物を捕食する大蛇の如く強引に締め上げていった。
「っ……どろろっち……!」
誰もが視界を奪われた暗闇の中、必死に手を伸ばそうとする滅三川の最後の叫びが、虚しく黒い髪の奔流の中へと吸い込まれていく。
「アポロニアだッ! 場所は叫喚地獄! みんなのこと頼んだよ……!」
その叫びを最後に、彼女の身体は異変の中心であるフィデス諸共、抗う間もなく底無しの渦へと引き摺り込まれていった。
「う……っ……」
一方、残された九十九もまた、高濃度の催涙ガスによって呼吸器官を激しく侵されていた。喉を焼かれる痛みに酸素を求めることも叶わず、感覚のすべてが急速に混濁していく。周囲で蠢く不気味な気配も、仲間が飲み込まれた事実も、遠ざかる意識の中でひどく曖昧なものへと変わっていく。
「愛……ちり……ごめ……」
本来、この時間軸における芥川九十九の肉体は『禁后』の後遺症がまだ残っている衰弱した状態。その身体でここまでの無理が祟り、加えて予期せぬ角度からの負荷が最後の引き金となったのだろう。外界との繋がりがひとつ、またひとつと強制的に遮断され、やがて彼女の意識は底無しの暗闇へと引きずり込まれるのであった――
◆
沈む。沈む。
これ以上沈む先など無いはずの地獄においてすら、彼女は沈み続ける。泥でもない、血でもない、透き通った液体の中で、彼女はその身を漂わせている。
遠く、遠く、遥か上空の彼方。眼前に広がる空が、赤でもなく、黒でもなく、見たことすらない鮮やかな色彩に染まっている。頂に浮かぶ太陽も、見慣れた地獄のそれではなく、ただただ眩しく、光り輝いていた。
自分を取り巻く液体も、頭上に広がる空の色も、太陽の色さえも――芥川九十九の語彙では表現すら出来ない。
それは、願っても届かない場所。夢にすら見ない、可能性の景色。
『やあ。キミが此処に来るのは……もう何度目だっけ?』
そんな景色の中に、まるで紙魚のように滲み出た不純物がひとつ。
『さて、ボクはこれでも一応ロアだからね。案内人らしい振る舞いはしておこう』
少年とも少女とも受け取れる、判別の難しい性別不詳のその『声』は、芥川九十九の頭の中に直接響いてくるようだった。
『これからキミ達は叫喚地獄へと向かい、そこに囚われた滅三川ジェーン瞳を救い出す。それが当面の目標だ』
その時、芥川九十九の眼前に淡い光の粒子が集まり、ヒトの形へと変わっていく。やがてそれは、癖のある白い長髪に平凡な黒いジャージを着た、少女の姿に成った。 白い瞳孔と白い睫毛が褐色の肌に映えるその少女――『ヒストリア』は、淡々とした口調のまま言葉を続ける。
『今回の敵は『恐怖の大王』。タイムリミットは七日間。それまでに滅三川を救出できなかったらゲームオーバー、世界は滅ぶ。そうなったらもう打つ手は無いから、諦めていいよ』
少女は嘲るように八重歯を剥き出して、わざとらしく肩を竦める。そうして九十九の顔を少女が指差すと、周りの景色を上から塗り潰すが如く、遙か上空の光が強く輝きを放ち始めた。
『それと、キミ自身の安全も第一に考えるべきだ。『偽物の悪魔』も無敵じゃない。如月真宵の発明品の中に、閉じ込めた物を時間という概念から隔絶してしまう『箱』があるだろう。アレにキミ自身が囚われでもしたら、本当に一巻の終わりだ。それだけは絶対に避けてほしいし、だから正直、今の衰弱し切った隙だらけの状態で叫喚地獄には向かってほしくないな。そうだね、一日くらいは酩帝街でゆっくりと休養の時間を取ってもいいんじゃない? それくらいの猶予ならあるし、むしろそうしてくれ。わかったかい?』
透明だった何もかもが、白によって覆い隠されていく。引っ張り上げられていく。海面に浮上するように、意識が現実へと引き寄せられていく。
『ボクからの案内はここまで。はあ……これでいい? まったく、創造物が創造主に命令するなんて……いったい誰に似たんだろうね。親の顔が見てみたい……って、ああ。そりゃボクか。だったら納得』
淡々と紡がれるその言葉の意味は、彼女にとって直ぐには理解できないものだった。
『何を言っているのか解らない? そりゃそうさ。キミにとっては知る由もない事だからね』
ただ、今この瞬間。芥川九十九が確かに感じていたものは――その『声』に耳を傾けるほど、肉体に感覚が蘇っていくという、間違いのない実感。
『ゲームオーバーの条件は憶えたね? だったらほら、早く再開しようよ。この物語の続きが読みたいと思っているのは、他の誰でもない、ボク自身なんだから』
光は輝きを増していく、その中へ吸い込まれるような感覚に身を委ね、自ら手を伸ばす。誰かにそれを掴まれたような感触を、その時確かに味わって。
『キミの企みが、上手くいくことを願っているよ』
そして――




