第六章 13 エンフィ水を持って魔物狩り
13 エンフィ水を持って魔物狩り
三月十七日。私はエンフィ水を持って西の森へ向かった。
弁当はジュース20テニエルといかギーム50テニエル、それから砂糖ギーム焼きと砂糖メーコ焼き、30テニエルを一袋ずつ。
今日はエンフィ水で気力を回復して遅くまで戦うのだ。おやつも多めにいるに違いない。
私は気合いを入れて森の奥に向かった。
やがて、ピクシー二匹と遭遇した。私は昨日と同じように戦った。
私は昨日よりは早く二匹のピクシーを倒すことができた。ピクシーと戦うのに、少しは慣れてきたようだ。
休憩も昨日より短い時間で切り上げ、私はまた魔物を探した。
一匹のピクシーを発見したので倒した。それから、ハリャマー、ハリーギョと遭遇したので戦った。その時点で蓄光石は銀色に輝きだしたが、私はおやつをたくさん食べ、まだ森に残った。
次にハリーギョと遭遇し、倒したとき、木々の隙間から差し込む光はすっかり赤くなっていた。
「いつもならもうとっくに町に帰ってるころだけど、今日はこれがあるもんね……!」
弁当もお菓子もすっかり食べ尽くし、疲れ果てた私は木の幹にもたれてポーチを探る。手の中に収まる、薬液の詰まった小瓶。私はそれをゆっくりと飲み干す。栄養ドリンクのような味がした。
「これが100テニエルだし、いつもよりお菓子も余計に買ってるし、値段分がんばるぞー!」
私が気合いを入れていると、横からノアタムが口を出した。
「値段分では収支が相殺されてしまうだろう。値段以上の働きをしなくては」
「あっそうか。でも、ピクシー一匹で150テニエルだもんね。一匹倒せば元が取れる!」
エンフィ水を飲んでも、力が一瞬で回復するような感じはしない。それは栄養ドリンクと同じだ。だが、『これを飲んだのだから大丈夫!』という安心感が、やる気を起こさせる。
私は魔物を探して森を進んだ。木漏れ日は少しずつ暗くなっていった。
「よし、これも準備しとこう」
私は腰のポーチからペンライトを取り出した。先端のガラス部分の根元の輪をひねり、明かりが付くことを確認する。森はまだ明るさがあるが、完全に日が暮れたらこれが必要になるだろう。私はペンライトの明かりを消し、ポーチの一番上にしまい直した。
やがて私は、ハリャマーと遭遇した。
「魚系を三匹でもいいもんね!」
エンフィ水が体に吸収されてきたのか、元気が出てきた。私はナイフを構える。
ハリャマーは一匹60テニエル、ザーコウオかハリーギョなら50テニエル。まずは目の前のこいつを倒し、あと二匹倒せば元が取れる。
私は張り切ってハリャマーと戦った。
ハリャマーは、全身にとげはあるが、丸っこいので動きはそれほど素早くない魔物だ。
だが、森の中は刻一刻と暗くなってきている。ハリャマーの姿がだんだん見えづらくなってきた。
「じゃあ明かりを……あ痛てっ!」
ポーチからペンライトを取り出そうとした隙に、ハリャマーに体当たりされてしまった。とげとげした体にひっかかれて痛い。
「出してらんないな……さっさと倒しちゃわないと!」
辺りがまだ明るい段階で、ペンライトを光らせておくべきだった。そう後悔しても遅い。私は痛みをこらえ、これ以上辺りが暗くなる前にハリャマーを倒すことにした。
まだ真っ暗闇ではないので、目をこらせばハリャマーの位置はわかる。それに辺りが見えづらいのはお互いに同じだ。私はハリャマーを見失わないよう、気をつけて戦った。
時間はかかったが、私はハリャマーを倒すことができた。
「よし、まず一匹!」
ハリャマーは光になって私の蓄光石に吸い込まれていく。蓄光石の輝きは淡いので、森の中を照らすほどの明かりにはならない。タンクトップの内側に下げると、服の上からは光が見えないほどの輝きだ。
それでも胸元から取り出せば、辺りがすっかり暗くなった森の中で、ポーチを探ってペンライトを出す助けにはなった。
「これで明るくしてっと……。あ、でも、これどうやって持ち運ぼう」
ペンライトを光らせた私はつぶやいた。私が買ったペンライトは一番シンプルな形状で、ただの十五センチぐらいの棒状の物だった。ぶら下げるためのひもなどは無く、ひも通しの穴なども無かった。
「シンは何も付いていないペンライトを買ったからな。少し値が張るが、ひも通し付きの物もあっただろう。そちらを買わなくていいのかとは思ったのだが」
明かりに照らされながらノアタムが近づいてきた。
「そ、そう思ってたのなら言ってくれればよかったのに!」
「店主がいるところでお前と会話するわけにはいかん。それに、シンが自分で考えて選んだ品だ。それが失敗だったとしても、お前自身がその理由を身に染みて理解せねば、お前の成長にはならんだろう」
「し、失敗ってほどじゃないよ! ほら、こうすれば使えるし!」
私はペンライトを腰のベルトに挟み込もうとした。だが、ポーチのベルトも、ナイフのベルトも、腰との間にやや隙間があるのでペンライトが落ちてしまう。
スカートは、縫い込まれたひもを絞ってウエストに合わせるタイプだったので、腰に密着している。私はスカートのウエストにペンライトをはさんだ。
腰のところでペンライトが光り、自分の周りが明るくなる。
「よし、これで大丈夫! でも、すっかり暗くなったなあ」
日が落ちたので、森の中はますます暗くなっていた。
「迷ったら困るから、森の入口のところでザーコウオとか探そう」
私は森の入口を目指して泳ぎだした。




