第六章 12 また西の森でそれから
12 また西の森でそれから
私はそのまま海底に降りていく。辺りを見回し、他に魔物の気配が無いことを確認して安心する。
「ピクシー二匹でも、なんとか倒せたー……」
私はナイフを鞘に収め、地面に座り込む。
「うむ。健闘したな」
ノアタムが私のそばに泳いでくる。
「ゴブリン二匹だと、私一人じゃ無理だーって思ったけど、ピクシーなら、体は小さいもんね。魔法は使ってくるけど、ゴブリンの棍棒よりましだって思えたし」
「そう思えるのは、シンが魔物狩り屋として成長したからだ。戦法もいろいろ考えていたしな」
「何度も戦って、ピクシーの動きがわかってきたからね。ああ、とりあえず栄養補給……」
私は近くの木の根元まで行き、弁当を食べて休んだ。いかメーコは、いかめしのような味だった。ジュースの酸味と砂糖ギーム揚げの甘味が染みる。
昨日ピクシーを倒したときと同じように、砂糖ギーム焼きは後のために残し、私は一度森の入口まで戻る。そこで体を休め、トイレを済ませた。
昨日よりも疲労の回復が遅いが、いつまでも休んではいられない。私は森に戻った。
しばらく進むと、ザーコウオ一匹と遭遇した。ザーコウオなので、落ち着いて倒すことができた。
それからまた森を進み、ハリャマーと遭遇した。疲れているのでハリャマーの突進を避けきれず、ダメージを受けた。腕や下半身のうろこに、ひっかき傷がいくつもできる。痛いが、ここで攻撃の手を緩めるとどんどんダメージが増えていくだけだ。私は力を振り絞り、なんとかハリャマーを倒した。
その後で、近くの木にもたれて、回復魔法を掛ける。
「あああ、疲れたああ……」
私は残しておいた砂糖ギーム焼きを食べる。
「疲れたけど、蓄光石がまだ銀色になってない……」
私は自分の蓄光石を眺める。光は500テニエル未満、銅の色だ。
「おやつ食べたし、あとちょっとだけ頑張るか……。ザーコウオぐらいならなんとか……」
今日はもう、ピクシーやハリャマーとは戦いたくないが、ザーコウオ数匹なら倒せそうだ。私は森の入口近くへ行き、そこでザーコウオを探した。
だが、全然見つからない。
「ザーコウオ、いないね……」
「望んだときに望んだ魔物と遭遇できるとは限らん」
「うう……日も暮れてきたし、もう帰ろうかなあ……」
戦闘に時間がかかり、疲労回復にも時間がかかった。日の光は赤くなり始めていた。
私はこれ以上魔物を探すのをやめ、町に帰った。
そして鑑定屋に向かった。今日の稼ぎは415テニエルだった。
「赤字だなあ……でもこのぐらいで森から帰ってこないと、私の気力が……あ……ああ!? そうだ、栄養ドリンク!」
鑑定屋を出て、ノアタムに話しかけているうちに、私はそれを思い出した。
ツウギの町で買い物をした日。ドラッグストアのような店で、エンフィ水という、MP回復アイテムのような品物を買ったのだ。
「ようやく思い出したのか。せっかく買ったのに使わんなと思っていたが」
「リュックにしまい込んでたから忘れてたよー! あれ飲んだら、森でもうちょっと遅くまで頑張れるかな?」
私はそのまま宿に帰り、荷物を確かめた。
普段身につけている腰のポーチとは別の、着替えなどが入っているリュック。
そこに、この間買ったエンフィ水が一本、大事にしまわれていた。
「よおし、これ使って明日は頑張ろう! それと、これもポーチに入れておこう」
同じ日に道具屋で、ペンライトと魔物よけキャンディを買った。これも宿の荷物にしまい込んでいては意味が無い。いつも持ち歩いていなくては。
今日は赤字だったが、明日はもっと稼げるかも知れない。私は前向きな気持ちになった。
それから、夕飯を食べに出かけた。
おいしそうな店で、海藻サラダ30テニエル、練り魚の炒め物50テニエル、メーコとタコのスープ50テニエルを注文した。
練り魚は、かまぼこやちくわのような味と食感だった。それが海草と共に炒めてある。メーコとタコのスープはボリュームがあり、疲労も空腹も満たしてくれた。
明日も頑張ろう。私はそう思いながら宿に帰った。




