第六章 10 西の森でそれから
10 西の森でそれから
辺りを見回すが、他に魔物の気配は無い。私はナイフを鞘に収め、さっき背にした太い木の根元に行く。もう一度木の幹を背中に当て、脱力する。
「ピクシー、倒したー!」
「よくやったな」
ノアタムが泳いできて、私の隣に三脚魚の姿勢で立つ。
「魔法を使う敵でも、なんとか倒せたよー。ああ疲れた……ご飯食べよ……」
私はポーチから弁当を取り出し、食べる。戦闘で疲れたし、戦闘時間もかなり長引いた。もう昼頃のようだ。私はしばらく無言で食事をむさぼった。
「ピクシー、いくらぐらいなんだろ」
イカのはさみパンとジュースを平らげ、蜂蜜メーコ焼きを少し食べて、ようやく落ち着いた私はつぶやいた。
「ゴブリンが、ええと、一匹150テニエルだっけ。強さ的にはピクシーも大体同じぐらいかなあ。ゴブリンは魔法は使ってこないけど、体が大きいから倒すのに手こずるし」
蜂蜜メーコ焼きも全部食べてしまいたいが、この後も魔物狩りで疲れることを考え、私は我慢してそれをポーチにしまう。
「そんなところだろうな」
「蓄光石の色も変わらないし……。休んだらまたがんばろうっと」
ザーコウオとピクシーを倒しても蓄光石は銅の色、500テニエル未満の輝きだ。これが銀色に輝かなくては、収入が支出を超えることはできない。
「ここで休んでいると、いつまたピクシーが出てくるかわからんぞ」
「あっそうか。じゃあ一度森の入口に戻るか。トイレもあるし」
私は森と平原の境目にある公衆トイレのところまで引き返した。そこでしばらく体を休め、トイレを済ませた。ピクシーとの戦闘で大ダメージは負わなかったが、軽い火傷や打撲はあちこちにあったので、自分に回復魔法も掛けた。
森の外周なので、休憩している間、魔物とは遭遇しなかった。
「よーし、もう一度頑張るぞ!」
休んで回復した私は、また森の奥に向かった。
そして、また、ピクシー一匹と遭遇した。
私はさっきと同じように、ピクシーの風の魔法を木の幹を背にして耐え、火の玉の魔法で反撃した。隙を突いて近づき、ナイフでダメージを与えた。
一度倒した相手なので、前より落ち着いて戦うことができた。
とはいえ、ピクシー一匹を倒すにはかなりの労力を使う。
私は森の奥から少し引き返して、残りの蜂蜜メーコ焼きを食べた。
それから、ハリーギョと遭遇した。一匹なので冷静に倒すことができた。その後でザーコウオ二匹とも遭遇したが、ザーコウオなので慌てずに倒すことができた。
「ああ、銀色になったあ!」
ザーコウオ二匹を倒した後、蓄光石を確認して、私は声を上げた。
「だが、今倒して銀色になったのだから、500テニエルを越えたばかりだぞ。倒したのはザーコウオだし、何百テニエル分も増えたわけではない」
「いや、今日は疲れたからもう帰るよ。そろそろ夕方だし……」
木々の隙間から差し込む光は少し赤みを帯びてきていた。それに、私にこれ以上戦う気力が残っていなかった。
「今日はゆっくり休んで、また明日来るよ」
「……そうか。シンがそう決めたのならそうすればよい」
私はホクトの町に帰った。
そして鑑定屋に向かった。今日の稼ぎは五〇八テニエルだった。ピクシーは一匹150テニエルとのことだった。
「今日もマイナスかあ。でもピクシーの倒し方がわかってきたし、ご飯一杯食べて、明日また頑張ろう」
私は夕飯を食べる店を探した。
そして、海藻サラダ30テニエル、ハンバーグ(ウーシポ)100テニエル、ゆでメーコ30テニエル、木の実の蜂蜜漬け50テニエルを注文した。
ハンバーグは魚のすり身を丸く成形し、焼き上げてソースを掛けた物だった。ウーシポが材料なので牛肉ハンバーグと似た味がする。
木の実の蜂蜜漬けは、一口大に切られた果実が小皿に載って出てきた。サーミンやピチク、それから名前を知らない何種類もの果実が一皿の中に入っていた。口に含むと果汁と蜂蜜が混ざり合い、疲れた体に染み渡っていく。
今日の支出も収入を上回ったが、明日また頑張ろうという気力は沸いてきた。
私は明日に備え、宿でゆっくり休んだ。




