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目覚めたら異世界で人魚だった  作者: 御餅屋ハコ
目覚めたら異世界で人魚だった 第六章
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第六章 08 鉄板焼きの店

08 鉄板焼きの店


「わ、鉄板焼きだって」

 しばらく泳ぐと、『鉄板焼き専門店』と書かれた店を見つけた。開かれた入口から少し店内の様子が見える。調理場をはさんでカウンター席があり、調理場から客席に向けて鉄板が並んでいる。エプロンを着けた人魚が鉄板の上で食材を焼き、皿に載せてカウンターの客に出している。

「面白そう。ここにしよう」

 私はノアタムを肩に載せ、その店に入った。まだ夕方だからか、客はあまり多くない。カウンター席とテーブル席があり、客席に鉄板はないようだ。調理は店の人魚がして、できたてを客に出すスタイルらしい。だがカウンターだと、鉄板の上がよく見える。私はカウンター席に座った。

「いらっしゃいませー!」

 カウンター内に何人もいるエプロンの人魚が私に言う。

 私はメニューを手に取った。


 つぶしギーム焼き   30テニエル

 つぶしメーコ焼き   30テニエル


 焼き麺(ギーム)   30テニエル

 焼き麺(メーコ)   30テニエル


 具材         10テニエル


 イカ・タコ・エビ・貝・ヒトデ・クラゲ・イソギンチャク・トリポイ・トリポイの卵・ブータッポ・マレッド・マシロン


 具材         20テニエル


 ウーシポ・かに・うに


 基本の生地か麺を選び、好きな具を選ぶスタイルのようだ。私はしばらく悩み、つぶしギーム焼き、イカ、エビ、貝を選んだ。

 カウンター内の人魚が調理を始める。

 器の中にギームの実が入れられ、シーズ水が多めに注がれる。杵のような棒でギームの実を叩き、溶かしていく。以前、オープンキッチンの店で麺を打つ所を見たが、それに似ている。そのときより水が多く、お好み焼きの生地のようにギームが柔らかくなった。

 カウンター内には他にも複数の器があり、器ごとに違う海草が細かく刻まれて入っていた。器にはスプーンが差し込まれており、エプロンの人魚はそれぞれの器からひとすくいずつ海草を生地に入れた。

 エプロンの人魚は生地を軽くかき混ぜ、鉄板の上に丸く広げる。鉄板の下で火を焚いている気配がないので、この鉄板は撤火薪なのだろう。精霊の力で作った『熱池』で、IHヒーターのように鉄板に熱を広げているのだ。

 鉄板の生地の中に、私が選んだ具材が投入される。イカ、エビ、貝だ。下が焼けてきたら、エプロンの人魚がへらでひっくり返す。そこにソースが掛けられ、全体に火が通ったら、皿の上に載せられる。

「はい、どうぞ!」

 できたてのつぶしギーム焼きが、私の前に運ばれてきた。

 客席には、筒状の入れ物にナイフとフォーク、スプーンが何本も立てられていた。日本の飲食店の客席に箸立てがあるような感じだ。私はそれらを一本ずつ取る。

 お好み焼き屋のような雰囲気だが、中世ヨーロッパ風の異世界なので、ナイフやフォークで食べるようだ。

 私はつぶしギーム焼きをナイフで切り分け、フォークで口に運んだ。

 見た目はお好み焼きに似ているが、材料もソースも異なるせいだろう、お好み焼きの味とは少し違う。もっと海の香りが強い感じがする。だがおいしい。

 カウンター席なので、肩のノアタムと会話するわけにはいかない。私は無言で一枚を平らげた。

 まだお腹に余裕があったので、私は更に注文することにした。

 今度は、焼き麺(メーコ)、ブータッポ、トリポイの卵、ヒトデを注文した。

 エプロンの人魚は後ろの器に手を伸ばし、一玉にまとまった麺を取りだした。麺はすでに下ゆでされた物が一玉ずつ準備されているようだ。

 麺が鉄板の上に広げられ、ブータッポの切り身とヒトデが投入される。ソースが掛けられ、へらで全体がかき混ぜられる。その隣で、トリポイの卵の目玉焼きが作られる。

 麺が焼き上がり、器に盛られる。目玉焼きが上に載せられた。

「はい、どうぞ!」

 私の前に、できたての焼き麺が置かれた。

 私はフォークとスプーンでそれを食べた。ブータッポは味は豚肉に似ているが、やはり魚なので、ほぐせばバラバラになる。そしてヒトデは、一センチぐらいの物が星のように散らばっている。フォークで麺を巻き取ると、どちらも麺と共に巻き込まれる。豚肉のような味の魚と、磯の香りのする、弾力のあるグミのようなヒトデ。ソースも海の味なので、日本の焼きそばとは違った味わいがある。これもおいしい。

 私はトリポイの卵の目玉焼きを割って麺に絡めた。こうするとまた味が変わってくる。私は焼き麺も完食した。

 私は代金を払い、店を出る。全部で120テニエル。

「おいしかったあ~。ああいう店もあるんだね」

 店内では話せなかったので、宿に帰りながら私はノアタムに声を掛ける。

「ノアタムアは基本的には中世ヨーロッパ風の世界だが、様々な地方があるからな。一地方で独自に発展を遂げる食文化も多い。それが他の地方に輸入されることもある」

「価格も安めでお財布に優しいし、この町にいる間、ちょくちょく寄ろうっと」

 そう話しながら、私は宿に帰り着いた。

 しばらくのんびりしたり、洗い場で服を洗ったりする。もちろん日記も書く。

 今日の稼ぎは出費より少なかった。明日はもっと頑張ろうと思いながら、私は眠りについた。


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