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目覚めたら異世界で人魚だった  作者: 御餅屋ハコ
目覚めたら異世界で人魚だった 第五章
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第五章 17 素泳ぎで隣の町へ


17 素泳ぎで隣の町へ 


私はホクトの町に向かって泳ぎを進める。ノアタムも私の横で一緒に泳ぐ。

 辺りを見回すと、同じように泳いでいる人魚が何人も見える。一人で泳ぐ者、数人のグループで泳ぐ者。だが皆、動きやすそうな服で、武器を持っているので、魔物狩り屋だろう。

「魔物狩り屋っていっぱいいるんだねえ」

「だから町には魔物狩り屋向けの店がたくさんあるのだ」

 ノアタムと話しながら泳いでいると、やがて魚車も見え始めた。魚車屋はツウギの町の東側にあるので、ホクトの町に向かう魚車がこの道筋に合流してきたのだろう。荷物を運ぶ魚車も、人を運ぶ魚車も見える。

 その先に目をやると、平坦な海底が広がっている。ツウギの町周辺に大きな山や森はなかった。ところどころに、丘程度のゆるやかな地面の起伏と、林程度の小さな植物の茂みがあるだけだった。

「人通りも多いし、見晴らしもいいし、この辺は魔物は出てこなさそうだね」

「開けた土地だから大きな町ができたのだろうな。それにホクトの町へのルートは人間の世界で言う街道だから、人魚ばかりで魔物は現れないだろう」

 私はうなずき、泳ぎ続ける。

 しばらく進むと、ちらほらと家が見え始めた。

「あれっ、もうホクトの町?」

「いや、あれは農村だろう。畑があるからな」

 ノアタムの言うように、今までの景色は手つかずの海底が広がっていたが、この先の景色は、人魚が手を入れた海底が広がっていた。

 地面が一定の区画に区切られ、区画ごとに同じ植物が植えられている。農作業をしている人魚も見える。

「ノアタムアにおいて、『町』とは、時計塔があって鑑定屋がある場所だ。鑑定屋は国営の施設だし、時計塔も国が設置する。人魚が集まり住む場所がある程度大きいと、それらが作られるのだ。

 だが、『町』以外にも人魚は住んでいる。畑や養殖場に従事する者はその近くに住居を構えているからな。それが鑑定屋などの無い小規模な集落ならば、『村』と呼ばれるのだ」

「そうなんだ。そういえば、双牙舎にあった地図にも『町』しか載ってなかったね。『町』以外にも小さい『村』はいくつもあるんだ」

 私は泳ぎを進めた。やがて、畑だけでなく、養殖場も見え始めた。ビニールハウスのような骨組みの建物に網が張ってあり、中に魚が泳いでいる。赤い魚なので、マレッドかも知れない。

 ずっと泳ぎ続けていると、やがて休憩所が見えてきた。

 高速道路のサービスエリアに似た、食堂やトイレが集まった場所。宿屋もあるようだし、ベージンザメの休む小屋もある。多くの人が休憩しているのが見える。

 休憩所には、目立つ位置に時計も設置されていた。針は左上を指している。

「お昼前か。朝から泳いできたから、三時間……、いや、二時限ぐらいかかったのかな?」

 この世界は一時間半を『一時限』と呼ぶ。私は言い直した。

「タヴィデの町から魚車に乗ったときは、一時限ぐらいで休憩所に着いたよねえ」

「うむ。タヴィデの町とツウギの町は近いから、休憩所は一つしかなかったのだろう」

「素泳ぎだと魚車の倍ぐらい時間がかかるんだね。

 休憩所はだいたい等間隔にあるってあんた言ってたよねえ。てことは、次の休憩所に着くのが昼過ぎ、その次の休憩所が夕方って感じ? 泊まるのは、次の次の休憩所でいいかな」

「それはシンの好きにするがいい」

「じゃ、ちょっと早いけど、朝から泳いで疲れたから、ここでお昼食べちゃおうっと」

 私は食堂に入り、昼食を取った。魚肉と海草の炒め物、メーコのスープで70テニエル。

 休憩して、また北東へ泳ぎ始める。最初と同じく、二時限ほど泳ぐと次の休憩所に着いた。

 休憩所の時計の針は九十度のやや上を指していた。

「昼の三時……いや、昼の三刻のちょっと手前ってとこか」

 この世界は正午を『昼の一刻』と呼び、そこから一時間半ごとに『二刻』『三刻』と刻んでいく。午後三時はノアタムアの時計でも『三刻』なので覚えやすい。

「次の休憩所に行く前におやつ食べようっと。丸一日泳ぎ続けるのって疲れるねえ」

「だが、できなくはないだろう。シンは魔物狩り屋として一人旅を続けてきた、そういう設定なのだからな。素泳ぎで隣町に移動する体力ぐらいはあるはずだ」

 ノアタムの言うように、疲れて動けないわけではない。お菓子でエネルギーを補充すれば次の休憩所まで行けるだろう。

 私はサーミンのジュース、蜂蜜ギーム揚げ(ドーナツ)、砂糖メーコ焼き(クッキー)を食べた。100テニエル。

 休憩を終え、また北東へ向かう。日が暮れ始めるころに、次の休憩所に着いた。

 休憩所の宿屋も、町にある宿屋と似た感じだった。一泊400テニエル。

 私は休憩所の食堂で夕飯を食べた。ブータッポと海草、ギームの炒め物で100テニエル。

 翌朝も同じようにして北東を目指した。同じ間隔で休憩所があり、休みを取りつつ私は泳ぎ続ける。

 やがて、夕暮れで空が赤くなるころに、町の姿が見えてきた。

「ホクトの町だあ!」


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