第五章 14 魔物よけのアイテム
14 魔物よけのアイテム
「ねえちょっと!」
店を離れ、ひと気の無いところまで泳いでから、私はノアタムに向き直った。
「魔物よけキャンディなんて物があるの? 今まで知らなかったよ」
「ちょっと高めのアイテムだからな。魔物狩り屋向けの店にしか置いてなくても不思議はない」
「RPGでもエンカウント率を下げるアイテムとか魔法とかあったりするけど、ノアタムアだとそれが飴なんだ?」
「そうだ。魔物は人魚の気配を察知して襲ってくるが、その気配を消す『魔物よけの魔法』を精霊が込めて作ったアイテムだ。精霊のアイテムだから価格は高めだ」
「しかも飴ってことは、食べればなくなっちゃうんでしょ? ていうか、海の中で飴って溶けたりしないの?」
「ノアタムアにも一応、飴はある。水ではなく人魚の唾液に反応して溶ける食品だ。海中では海藻の形を保っているが、人魚が口に入れると形が溶けてしまうメイアという海藻があってな、メイアの成分に甘味などを加えて飴にするのだ。密閉容器に入れておけばそれほど劣化はしない。
それに加えて、魔物よけキャンディは精霊の力で作られたアイテムだからな。口に入れなければ長期間の持ち運びが可能だ」
「でも、舐め終わったら効き目はなくなるよね?」
「もちろんだ。人魚が魔物よけキャンディを舐めている間だけ、人魚の気配が中和されるのだ」
「この飴食べてれば魔物に気づかれないなら、遠くにいる魔物にこれ食べながら近寄って、背後から攻撃してそのまま倒しちゃうこともできるんじゃない?」
「気配を感じないとはいえ、攻撃されれば魔物だって気づく。先制攻撃は可能だろうが、その後は反撃を受けるだろう」
「なるほど。でもこういうの持ってた方が安心だよね。うっかり強い魔物が出るところに迷い込んじゃったときとか」
「そうだな。それに怪我をして町に引き返す場合も、これを舐めながら帰った方が安全だろう」
「あっそうだよねえ、一人旅だし。あめ玉一個20テニエルって考えると高いけど、やっぱ買っといて良かった。
あとさあ、精霊! あんな小さいのもいるんだね」
「一つの魔法のみを扱う精霊は小型の場合が多い。その方が税金が安いからな。
精霊は基本的に、体が大きい方が力が強いのだ。『世界のエネルギーを切り取って一時的に精霊の形にしている』わけだからな。
一つの魔法専門の精霊ならば、体が小さくてもいい。
だが、複数の魔法を使う精霊は、体が人魚サイズでないと対応しきれんだろう」
「つまり、精霊は、体の大きさに比例してマックスMPが多くなるってこと?」
「そう考えても良い。また、体が小さいと精神年齢も低めになる傾向がある」
「確かに、さっきのピイカちゃんは子供っぽかったもんねえ。鑑定屋の精霊とかは大人って感じだけど」
私は納得し、また買い物をするために泳ぎだした。




