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目覚めたら異世界で人魚だった  作者: 御餅屋ハコ
目覚めたら異世界で人魚だった 第五章
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第五章 12 精霊のいる店


12 精霊のいる店


 ティッシュ一箱分ぐらいのちり紙。歯ブラシ十二本分ぐらいの房楊枝。栄養ドリンクのようなエンフィ水が一本。

 弁当など、店で買った品は、いつも腰のポーチに入れていた。だが今日買った分はかさがあり、お店の人が手提げの紙袋に入れてくれた。

「かさばるけど重くはないし、このまま買い物を続けようかな」

 私は人で賑わう町の中心部を泳ぎ続けた。やがて、『魔物狩り向け道具各種取扱・充光の精霊います・道具屋ピイカ』という看板を見つけた。

「充光の精霊? 充光って、ランプに使われてる奴だよね」

 宿屋の各部屋にはランタンのようなランプが設置されている。スイッチをひねるとガラス内が明るくなり、それを天井につるしたりベッドに置いたりする。宿屋の廊下や、食堂の天井にあるランプも同じだろう。

「うむ。日本語で言う電池のように、光のエネルギーを石に込めた物が『光池』、そのときに使うのが『充光の魔法』だ。『充光の魔法』が使える精霊は『充光の精霊』と呼ばれる」

「でもさあ、魔法屋の精霊は回復魔法以外も知ってるんでしょ? じゃあ充光の魔法も使えるんじゃないの? あれは充光の精霊とは呼ばないの?」

「精霊には複数の能力を持った存在と、一点の能力に特化した存在とがある。

 前にも言ったように、精霊は、人魚が国に、『こういう能力を持った精霊が欲しい』と申請し、国から許可をもらうことで具現化する。

 魔法屋の精霊は複数の能力を持った存在だ。だから精霊のストレスも大きく、反動で生まれる魔物も多い。そのため、所持するには高い税金を払わなければならん。

 充光の魔法一つが使えればいい精霊ならば、精霊のストレスも小さいので、税金も安くすむ。

 充光の魔法しか使えないから、『充光の精霊』と呼ばれているのだ」

「なるほど」

「それから、これも前に言ったが、人魚が使う魔法は、『人魚の精神力を使い、精霊の力を借りて、一瞬だけ、その場に世界のエネルギーを呼び出した』状態だ。だから戦闘で魔法を使ってもすぐに消えるのだ。『世界のエネルギーをずっと出現させ続ける』ためには、人魚ではなく精霊の力で、世界に変化を起こす必要がある。

 魔法屋の精霊は、『人魚に魔法を教える存在』だからな。充光の魔法を人魚に教えることはないから、充光の魔法は専門外だろう」

「ああ、そうだったね。だから『精霊の作ったアイテム』がいっぱいあるんだっけ。

 でも、ちょっと面倒だよね。ランプは毎日使うのに、その充電式の電池を、家のコンセントじゃなくて電気屋に行って充電するようなものだもん」

「うむ。だから、充光の精霊がいる店は町にそれなりにある。町の住人向けのランプ専門店や、家具全般を扱う店。そして魔物狩り屋向けの店などにな」

「魔物狩り屋向けの店は、懐中電灯みたいなのが売ってるってこと?」

「そうだ。洞窟など、暗い場所もあるからな」

「でもさあ、あんたと私が最初に会った洞窟、あそこ明るかったじゃん? あかるいわだっけ? 岩が光るんだよね。あそこはランプなくても平気だったけど」

 もう十日ほど前のことだ。自分はこの世界に現れて、洞窟の中でノアタムと会話した。その洞窟は青く光っており、『明岩』でできているのだとノアタムが説明した。

「もちろん明岩の洞窟もあるが、そうではない場所もある。夜遅くまで魔物狩りをする場合もあるし、魔物狩り屋が小型の照明器具を欲しがってもおかしくないだろう」

「でもさあ、光る岩があるんなら、それ切り取って明かりにはできないの? 魔物狩り屋だけじゃなく、町の人も、いちいち精霊のアイテムを使わないで、明岩を持ってきて町の明かりにしたらいいじゃない」

「明岩は小石程度の大きさでは光り方が小さいのだ。岩山のように、ある程度の量が集まらないと光が強くならない。

 地上で見る海も、遠目には青いが、手ですくうと透明な水になるだろう。それと似たようなものだ。

 そして、明岩は重いので建築材料には向かない。だから山から切り出して町の建物に使われることはない。結局、町の明かりには光池のランプが一番なのだ」

「そっかー。じゃあ私も、懐中電灯一つぐらい買っといてもいいのかな?」

「それはシンの好きにするがいい」

「よし、あのお店に行ってみよう」

 私は『道具屋ピイカ』に向けて泳ぎだした。

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