第四章 18 そこで出会った人魚
18 そこで出会った人魚
貝取屋のある場所から少し離れ、人通りの減ってきた地区。とはいえ、まだ繁華街と呼べるようなおしゃれな店はいくつか並んでいる。
そんな空間に、その人魚はいた。
銀色の髪に、白い肌。白っぽい服から覗く魚部分も銀色のうろこが輝いている。だが、髪は一部分だけが赤かった。銀色の髪は肩ぐらいの長さだが、赤い髪だけをお下げのように束ねて、腰あたりまで伸ばしていた。服も、全体的には白いが縁取りや飾り紐が赤いので、髪型とそろえているのかもしれない。
顔立ちは整っており、服装と相まって高貴な印象を受けた。
何より、眼鏡をしている。眼鏡は高級品だと以前ノアタムに聞いた。若者で眼鏡をしている人魚に会ったのはこれが初めてだ。目の前の人魚は自分より少し年上、程度の年齢に見えた。つまり地球の暦で二十代半ばぐらい。この世界の暦でも、まだ若者の範疇だろう。
わあ、かっこいい……さっきなんとなく想像したイケメン男性みたい……。
と私は思いかけたが、よく見れば、目の前の人魚の胸には、膨らみがあった。あまり大きくはないが、それでも女の胸であることは確かだ。
イケメン男性じゃなかった、そんなに都合良く現れるわけないか、でもこの人、なんか見覚えあるような気がするなあ……。
そう思いながら、私は彼女に近づいた。
「ありがとうございます! 拾っていただいて……」
彼女は涼やかな声で答えた。
「ああ、構わないよ。きみもこのお祭りに参加するのかい?」
彼女は私が落としたチラシを見て言った。
「ええ……楽しそうだし、行ってみようかなって」
彼女の手前まで泳いできた私は、そう答えて泳ぎ止まる。ノアタムも私の隣まで泳いできて、静かにする。
「かわいいね。なんて名前?」
彼女が尋ねる。
「ああ、ノアタムです」
私はノアタムを見ながら答えた。私以外の人魚がいるときは静かに私にくっついてるから、ノアタムのことかわいいって言う人多いよなあ、しゃべると偉そうだけどなあ、などと思いながら。
「そうじゃなくて、」
彼女は手を伸ばした。
白く綺麗な指が私の顎に触れる。
ノアタムを見ていた私の顔が彼女の方向に向けられる。
「きみのことだよ」
「ふあ!?」
私の口から言葉にならない声が漏れた。




