第三章 13 回復魔法の復習
13 回復魔法の復習
それから私は宿に帰った。
私は部屋のベッドに腰掛け、荷物から眉用のカミソリを取り出した。今からこれで回復魔法の復習をするのだ。食事と休憩をしたことで、確かに気力が回復したように思う。
「じゃあ、自分の怪我を治してみるよ。最初は軽く……」
ノアタムがベッドの脇で見守る中、私は指先にそっとカミソリの刃を近づける。
ちくり、と痛みが走り、指先に血がにじんだ。出血はわずかのため、すぐに周りの水と混ざり、見えなくなっていく。だが指先の痛みはまだ続いているし、皮膚が切れて肌に赤い線ができているのも見える。
私はカミソリを横に置き、痛みを我慢しながら、無傷な方の手を傷のある手にかざした。
「傷よ……癒えよ」
集中してそう言葉を発すると、指先の痛みが和らいでいった。カミソリを当てた箇所からは赤い線が消え、そこを撫でてみると切れたはずの皮膚がつながっている。
「できた! 自分の怪我も治せたよ!」
「うむ、よくやったな」
私は気を取り直し、カミソリでもう少し大きい傷を付けてみる。痛みも大きくなるが、これも自分の回復魔法で治すことができた。
「よしよし、行ける! ……でも、自分で自分を傷つけるのは気持ちのいいもんじゃないね」
「だが、魔物と戦っていれば嫌でも怪我をする。そのとき慌てないように、自分の回復魔法に自信を持っておくことは大切だ」
「そうだねえ……。これぐらいの怪我、自分で治せる!って気持ちがあれば、昨日みたいに大騒ぎしなくても済むかも知んないし」
私は休憩をはさみつつ、自分自身に回復魔法を使う練習を続けた。結局、あまり大きな傷は作れなかったが、『自分の怪我を自分の魔法で治せる』という事実を確認することはできた。
魔法屋で訓練はしたのだ。精霊が作った練習用の怪我は、もっとひどい物もあった。それも治せたのだから、自分の回復魔法は、それなりに威力があるのだ。なにせ中級を習得しているのだから。魔物と戦って怪我をしても、ある程度は、自分でなんとかできるのではないか……。そんな気持ちを持つことはできた。
そうしているうちに日が暮れてきた。昼食が早かったのでおなかが鳴った。
「部屋で魔法の練習をしてるだけでもおなか空くんだなあ」
「精神力を使うからな。それに、本格的に心身を回復させるには食事だけでなく、一晩ゆっくり眠ることが大事だぞ」
「RPGでも、HPとMPの回復には宿屋で宿泊、ってのが多いもんね。じゃ、今日の魔法の練習はここまでにして、あとはのんびりしよう。明日の魔物狩りに備えないとね」
私はノアタムとそう話し、夕飯を食べに行った。海藻サラダ、カニと海草のスープ、魚とメーコの炒め物、海草の実スープを食べた。
それから宿に戻り、寝間着に着替えて肌着を洗濯部屋で洗った。房楊枝で歯を磨き、リラックスしてその日の夜を終えた。




