第三章 12 昼食と鑑定屋
12 昼食と鑑定屋
私が選んだのは、オープンキッチンで麺を打つところを見せる店だった。広い台の上でコック服に身を包んだ人魚が作業するところを、客席からじっくりと眺めることができた。
まず、台の上に、器に盛られた、たくさんのギームの実が置かれる。そこに水差しからシーズ水が注がれる。そして人魚は杵のような棒を取り出し、餅つきのようにギームの実を叩いていく。するとピンポン球のような丸い実が少しずつまとまっていき、パスタの生地のようになった。
コックはそれを台の上に移し、めん棒を押しつけて転がす。生地は薄く広がり、それを刃物で手際よく刻むと、細いパスタになった。
パスタはかまどの上の鍋で茹でられ、客席に運ばれてくる。
私は『魚卵のパスタ』と『木の実ジュース』を頼み、少し早い昼食を堪能した。
まだ早い時間なので店はすいており、私はゆっくりと腹を満たしてから店を出た。
宿に帰る前に、私は鑑定屋に寄った。昨日魔物と戦った分を換金するためだ。
今は鑑定屋はそれほど混んでおらず、建物に入ると、並ばずに換金の窓口に向かうことができた。
「いらっしゃいませ」
窓口の人魚が言い、横で宙に浮いている眼鏡の精霊も笑顔を見せる。
「鑑定をお願いします」
私は首に掛けた蓄光石を外し、カウンターの上に置いた。蓄光石の輝きは銅の色だが、キヴァーヲ一匹とザーコウオ二匹を倒している。昨日よりは多い金額がもらえるはずだ。
「では、鑑定いたします。こちらの蓄光石に蓄積された功績は……186テニエルとなります」
日本円にして一八六〇円。昨日よりは多い。だがそれよりも私は、端数があるのが気になった。昨日ザーコウオ一匹分を換金したときは、ぴったり50テニエルだったのだ。
「精霊の鑑定にお間違いはございませんか? でしたら、お金を準備いたします」
受付の人魚にそう言われたので、私は尋ねた。
「あの、これって、内訳ってわかるんですか? というか、どの魔物がいくらなんですか?」
「我々は蓄光石に溜まった光の総量を読み取りますが、魔物の残り香のような物は感じます。ザーコウオとキヴァーヲを倒されたようですね。ザーコウオは、基本が50テニエル、キヴァーヲは基本が80テニエルとなります。個体差によって金額は多少、前後します」
私の質問に、精霊が穏やかな声でそう答えた。それで端数が発生したのか。キヴァーヲはザーコウオよりやや強かったので、値段がやや上回るのも納得だ。
「よろしいでしょうか?」
受付の人魚に言われ、私はうなずいた。お金が準備され、カウンターの上に置かれる。
「では、こちらの蓄光石の光を、これだけのお金と交換いたします。ご確認ください」
「はい」
「では、光を吸い取らせていただきます」
後のやりとりは前回と同じだ。蓄光石は黒色に戻り、私は100テニエル銅貨を一枚、10テニエル銅貨を八枚、1テニエル銅貨を六枚手に入れた。
「またよろしくお願いします」
受付の人魚と精霊に見送られながら、私は鑑定屋を後にした。




